綺想宮殺人事件 森江春策シリーズ |
---|
作家 | 芦辺拓 |
---|---|
出版日 | 2010年04月 |
平均点 | 4.78点 |
書評数 | 9人 |
No.9 | 6点 | モグラの対義語はモゲラ | |
(2022/07/17 18:18登録) 読んだのは単行本版。 面白かったっちゃあ面白かったが、なんというか主張が強いなあというのが作品のどの要素よりも印象に残った。 それこそ奇書にかぶれた者たちなんかが展開する、斜に構えたミステリ論や探偵論に挑む、これこそが探偵の使命である!という強い意志は好きではあるのだが、キャラ付けが軽すぎるあたりや後半で物語の形でなく完全に「主張」として書いてしまっている辺りがあまり好かない。ネットの内輪っぽいネタも多くない? 5番目の奇書という触れ込みを聞いて読んだのだが、いちばん近いのは虚無への供物だろうか? 作品としてちゃんと楽しめたかは微妙だけどこういう「強い」作品は好きなのでこの点数。 |
No.8 | 4点 | びーじぇー | |
(2019/08/06 17:33登録) 森江春策はある探偵の代理として、琵琶湖畔に聳え立つ綺想宮を訪れる。広大な敷地には時代も様式もばらばらな怪建築が建ち並び、その内部には、人類が生み出したありとあらゆる異形の発明・奇書が詰め込まれている。そして、そこに集う人間たちもまた、奇矯な怪人揃いだった。彼らから、死せる大富豪が未完成の綺想宮に込めた遺志を解き明かすように依頼された森江だが、推理する間もなく、連続猟奇殺人劇の幕が切って落とされた。 「黒死館殺人事件」の再建に、きわめて今日的な意味を見出した本書では、全篇に溢れかえる奇怪なペダントリー、異説怪説の洪水はひとつとして単なる雰囲気作りのガジェットなどではなく、全てミステリ的な必然性を持っている。しかし、それらの伏線はかえってそれら自身を無化し、ついには推理や探偵、本格ミステリ自体をも、ここ何年も本格ミステリを揺るがしてきた問題に、著者ならではの解答を突き付けた、問題作のひとつといえるでしょう。 |
No.7 | 2点 | HORNET | |
(2016/09/03 20:39登録) まぁきっと私が頭が悪いのだろう。 読後の正直な思いは「時間の無駄だった」。読み始めた以上は読了しなければという意地と、「それでも最後まで読めば何かしら面白さがあるのでは…」という期待感とで頑張ったが、結局報われなかった。今となっては事件の内容すらあまり頭に残っていない。 クイーンがちりばめる薀蓄や、ファイロ・ヴァンスが披瀝する薀蓄はそれほど苦ではない私だけど、それでもこれは苦痛だった。後半は「早く読了して次の本を読みたい」それだけだった。 ゴメンナサイ。 |
No.6 | 5点 | いいちこ | |
(2016/06/23 17:43登録) 容疑者の人物造形が甘く、明かされた真相に安易さを感じるものの、ミステリのありように一石を投じようとする狙い・意欲は買える。 ただ、その主張を作品に織り込めず作品外で主張するなど、作品として未成熟な印象は否めず、その狙いが成功しているかは疑問。 またリーダビリティが高く、平易であるために、却って「奇書」には当たらない印象 |
No.5 | 5点 | 測量ボ-イ | |
(2012/08/18 18:12登録) う-ん、これは奇想天外・複雑怪奇。現代ミステリ中の奇書 といっていいでしょう。 国内ミステリの3大奇書といえば、「虚無えの供物」「ドグ ラ・マグラ」「黒死館殺人事件」が有名ですが、当初の印象 は「虚無・・」かと思うも、よく読めば「黒死館・・」に近 いですかね(因みに後者は未読)。 書いてある内容が一部理解できず、従い謎を推理しようとい う気にはどうもなれなかった作品。よって採点は辛め。 |
No.4 | 4点 | 江守森江 | |
(2011/01/03 15:58登録) 私のHNの由来の半分である森江春策が登場している(無条件で1点加点しているのでゴメンナサイm(_ _)m)故に、ウンザリしながらも読み切ったのだが・・・(本質を読み取れたか甚だ疑問) 現代の奇書を目指した作品だから一般読者を寄せ付けなくて当たり前で、極々限られたファンから絶賛されれば作者の目論見は達成される。 しかし、一般読者が凄い作品だと騙されて購入したら悲劇でしかなく、古本屋も高価買取はしないだろうし、残念ながらゴミと化す。 この手の読者を置き去りにする作品は私的にはゴミだと思うし「絶対に購入してはいけない」と警告を書くしか為す術がない。 |
No.3 | 9点 | ぴあん | |
(2010/10/20 10:06登録) 「そういう」作品だから、評価が割れるのは納得。 ゴテゴテにまぶされた砂糖に辟易して、途中で挫折する方が多そうだなとは思うけれど、それを差し引いても奇作の傑作。いわゆるミステリという枠組と構成要素、屋台骨から装飾までを自ら完膚なきまでに踏みつけてみせる纏め上げ方は、読みながらニヤニヤが止まらなかった。「最後の探偵小説」の称にふさわしいと実感。 |
No.2 | 4点 | abc1 | |
(2010/05/21 23:56登録) 今年最高の話題作! という触れ込みに期待して読んだがさほどでもなかった。薀蓄は嫌いではないが、展開して行かずにただ羅列されるのみなのでちょっと退屈。もっと説明が必要だっただろうが、それをやるとさらにリーダビリティが低下するだろうから、難しいところだ。 そして最後の仕掛け・・・うーん。何で好き好んで袋小路に入るんだろ? |
No.1 | 4点 | kanamori | |
(2010/05/21 18:59登録) 琵琶湖のほとりに建つ「パノラマ島」を彷彿とさせる建築群内での見立て風の連続殺人を扱っています。 登場人物のセリフ「ああ、もーう退屈っ。何なのよ、この蘊蓄合戦は!」が、そのままこの小説の読後感想です。 古今東西の科学、数学、文学、歴史、芸術などあらゆる分野の奇説・珍説の蘊蓄&ペダントリーが、探偵のみならず複数の登場人物から発せられ、この衒学趣向に辟易しました。それが伏線だとしても、真相に繋げられる読者はいないでしょう。 最後のメタ的オマケもなんだかなぁという感じでした。 |