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ミステリの祭典

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魔女が笑う夜
HM卿シリーズ 別題「わらう後家」

作家 カーター・ディクスン
出版日1958年01月
平均点5.45点
書評数11人

No.11 7点 クリスティ再読
(2022/06/30 10:23登録)
何て言うのかな、「バカミス」って呼び方がやはり随分罪作りな気がするんだよ。本作だったらイギリスの田舎を舞台にしたコージー・ミステリとして楽しい作品なんだと思う。けど、作者がカー、で密室もあるよ!という話になると、途端にパズラー・マニアに一言があることになる。「進化論」的なミステリ観をもう誰も信じなくなっている状況だと、一歩引いたネタ消費的な視点が優勢になって「バカミス」という妙に便利な表現が発明されてウケるようになったんだろうね。

だから海外のミステリ・ファンにはたぶん、「本格」との相関概念である「バカミス」という表現は理解できないとも感じる。いや本作なんて楽しく書かれたユーモア・ミステリだし、密室の扱いも、不思議ではあっても事件が深刻ではないから、扱いが軽い。まあだって、解決篇が100ページ弱あることもあるカーにしては、本作の解決篇はわずか20ページくらい。謎解き興味は薄い作品だと思うべきなんだろう。

珍しいことかもしれないが、カーで感動、みたいな感情も評者は覚えたんだ。体裁屋の親に抑圧された少女が、親とそれにツケこむドイツ人の精神分析医に責め立てられてるのを、HMが救出する....「あなたは"鎧を着た騎士"みたい」。ここに、英米人のコモン・センスの良さというものを本当に実感する。

としてみると本作は、そういうコモン・センスによる密室の解明、というのものなのかもしれない。評者が「黄色い部屋」の密室に強く共感したのも、実はそういうコモン・センスにある。だから、本作の「密室」は、実は正統な「黄色い部屋」の後継者なのかもしれないよ。

(今風に読むんならさあ、牧師の残念なイケメンっぷりがナイスってどうかしら?)

No.10 6点 レッドキング
(2021/06/13 20:25登録)
「あざける後家」と呼ばれる12mの奇岩のある寒村。住民達に郵送される数々の醜聞手紙が、自殺・密室幽霊事件・殺人を引き起こし・・クリスティー「動く指」と同じネタだが、「完璧な密室」も付いてて、こういうトリック大好き。

No.9 3点 きんぽうげ
(2019/11/04 12:30登録)
カーファンである自分は、出来不出来の波が激しいカーの作品に対して、単純に楽しめればいいと云う立場を貫き(?)通しているが、本作に関しては「とほほ・・・」が正直な感想である。カー初心者の皆様、間違っても手に取る一作目を本作にしないように。なぜなら「火刑法廷」やら「三つの棺」やらの傑作を物したこの巨匠だけに、この落差は寂しい限りであるからだ。だが、私は盲目的なファンの悲しい性で、結局受け入れてしまうしかないのである。評価は低いが、カーのおバカな作品であっても、彼のサービス精神の一端は伺えるし、ここら辺りを抑えておけば、その後の評価は、これ以上落ちることはないと思うから。

No.8 5点
(2019/07/06 11:44登録)
 サマセット州ののどかな村ストーク・ドルイドで起こった「中傷の手紙」事件は、六週間に渡って人びとの体面をめった打ちにしていた。北東の川に近い草原にそびえる巨大な石像――"あざ笑う後家"にちなんで〈後家〉と署名された手紙が、次々と村人に送られてくるのだ。仕立て屋の妹アニー・マーチンの溺死も〈後家〉の手紙に耐えられなくなっての自殺だと、村では噂されていた。
 事態を憂いた村の古書籍商レイフ・ダンヴァーズは名探偵ヘンリー・メリヴェール卿を村に招き、ジョゼフ・フーシェの回顧録を餌に事件の解決を要請するが、神出鬼没の〈後家〉の新たな行動は間近に迫っていた・・・
 「ニューゲイトの花嫁」と同じく1950年発表のHM卿もの。しょっぱなの車輪付きスーツケースの暴走から、解決間際にインディアンの酋長に扮し、主教を迎えた教会バザーでの泥んこ合戦と、終始大暴れ。同時に二組のカップル誕生も描いたコージー風ミステリ。
 バカミスとして有名な作品ですが、メイントリックはそこまで酷くは感じません。とはいえ、この長さを支えるには少々弱い。後味の悪さを緩和するため、ひいてはストーリーを補強するため、HM卿のドタバタとロマンスを加えてバランスを取っているとも言えます。
 動機がいくぶん不明ですが、事件をわざわざ大戦直前の1938年に設定している事が答えではないかと。戦後の回想部分もあり、V2号によるロンドン空爆やナチスの影も見え隠れします。開戦間際のストレスを抱えた、不穏な社会情勢を背景に起こった事件ということでしょう。
 この頃のカーは歴史ミステリに移行する時期でもあり、現代への不満や、その裏返しとしての騎士道礼賛がときおり見られます。本書でメリヴェールがレイシー母娘を精神的に救い、「"鎧を着た騎士"みたい」と呼ばれるシーンは、その典型例でしょう。H・Mファンには見所が多いですが、ミステリとしてはゆるめの出来栄えです。

No.7 5点
(2017/04/19 23:34登録)
久しぶりの再読で、覚えていたのは有名なバカミス・トリック以外には、中傷の手紙が本作の中心主題であることとH・M卿が「後家」の正体を見破る手掛かり、H・M卿が女の子にカード奇術を見せたりするくだりぐらいでした。7割を過ぎてからやっと殺人も起こるのに、それに関する記憶は全く残っていませんでした。
現象だけ見れば『黄色い部屋の謎』をも連想させる密室(殺人ではない!)トリックは、特にひどいわけでもないと思います。それよりも気になったのが、Tetchyさんも指摘されている、中傷の手紙の再開と密室の演出について動機の説明に説得力がないことでした。また、村に大探偵が来るという噂の出所が全く説明されていないこと、さらにカーにはよく出てくる無鉄砲な恋と冒険を演じる若者らしき人物が本作では2人もいることが、むしろストーリーの求心性を損なっていると思われる点が不満でした。

No.6 6点 nukkam
(2016/08/24 09:54登録)
(ネタバレなしです) 1950年発表のH・M卿シリーズ第20作にあたる本格派推理小説で、色々な書評でトリックの無茶苦茶ぶりが取り上げられています。面白いことに本書と同年発表の某女性作家の作品でも類似のトリックが使われているのですが、そちらはその作家の代表作として高評価を得ています(無論トリックが誉められているのではありませんが)。トリックメーカーとして評価されている作家は辛いですね(笑)。トリック以外にもファルス(笑劇)ミステリーとしてのどたばたぶりや匿名者の中傷の手紙についての心理分析など読ませるポイントは結構多い作品だと私は思っていますが。

No.5 5点 了然和尚
(2016/03/31 20:02登録)
カーのパズル小説としては最低レベルでした。ピースも組み立て方も出来上がった絵も特に印象に残りません。HM得意のドタバタ劇が本作では序盤とクライマックスと2回読めます。なんかドタバタ劇に関しては手抜きなしな感じで力が入ってます。HMものはこの後2作となってしまいましたが、紹介文を読めば、2作ともドタバタが楽しめるようです。実は大昔に両方読んでるのですが、内容はすっかり忘れてます。

No.4 8点 はっすー
(2016/02/23 00:12登録)
カー屈指のバカミスとして有名な作品
密室トリックはまさにバカバカしいのだがそれ以外のファースがとても面白い
またその後の犯人との対決(?)は心に響く…
ただ粗はやはりありカーが好きということで点数は甘め…
本当なら6点かなぁ…

No.3 5点 ボナンザ
(2015/01/19 20:05登録)
なんという馬鹿ミス・・・。
巨匠、思いつき一つで長編を書くの巻。

No.2 5点 kanamori
(2010/06/27 21:46登録)
ある村での「悪意の手紙」をテーマにしたH・M卿もの。
クリステイやセイヤーズならともかく、このテーマをカーが書くとは思わなかった。
<後家>と称する犯人が、ある女性の部屋から消失するトリックのバカバカしさは有名になってしまいましたが、前段のドタバタ喜劇の中にキッチリ伏線を張っているのはさすがと言うべき。

No.1 5点 Tetchy
(2008/09/08 20:22登録)
カー版コージー・ミステリとも云うべき、ストーク・ドルイドという小さな街で起こる小さな事件の物語。

で、本作の真相と云えば、いささか首を傾げざるを得ない。
肝心の動機が曖昧だからだ。
なぜ犯人は悪意のある手紙を出し続け、また密室状態でジェーンに深夜後家が逢いに行ったのかの理由が全く見えない。

HM卿の奥さんの名前が判明したのだけがマニア向けの収穫か。

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