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ミステリの祭典

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わが一高時代の犯罪
神津恭介/表題作ほか角川版は短編4本、光文社、ハルキ版は中編『挽歌』を併録

作家 高木彬光
出版日1976年03月
平均点6.46点
書評数13人

No.13 3点 文生
(2024/09/22 09:47登録)
ストーリーは可もなく不可もなくといった感じですが、表題作の人間消失トリックにはただただ脱力しました。

No.12 7点 虫暮部
(2024/08/23 13:14登録)
 ネタバレするがミステリ的には微妙であって、それは真相の一部が伝聞でしか伝えられていない点である。ドン・キホーテの死の状況はあれが真実なのか。
 反戦運動に対する憲兵の追及が厳しくなると、彼との交遊がリスキーだと感じる者もいるだろう。組織内での内輪揉めだってあり得る。それゆえ例えばあの二人が彼を追い詰めて自決を強いたのかもしれない。もしそうであっても、それ以降の展開(偽装工作)は作中の通りで成立しそうである。

 と言うイチャモンはあるのだが、それでも尚、コレはなかなか凄い。
 いかにも “作者の体験が反映されています” って感じだが、一高と言う “場” への愛慕、時代の影、そして青春への挽歌。魂を削って書き付けたような熱を孕んだ文章。色鮮やかなリアリティと随所に埋め込まれたリリシズム。やれば出来るじゃないか。下駄を鳴らして奴が来る。神津恭介は蛮カラ気質の中で目茶苦茶浮きそう。

 ところが併録の短編はどれもダラーッとしていて、別の人が書いたんじゃないかと思うくらいなのだった。

No.11 3点 ねここねこ男爵
(2020/04/08 01:16登録)
表題作のみの採点。

若かりし頃の神津恭介や、当時の雰囲気を楽しめるかどうかだけの作品かと…残念ながら。
消失トリックは「雪道に足跡をつけたくなかったのでジャンプした」くらいのノリです。必要な材料をあんなにあからさまに盗んだりしたら騒ぎになるのは当然で、隠蔽したいのか発覚させたいのかよく分からない(もちろん現場の不可思議な状況を無理やりにでも作りたかったのであろうことは分かるが)。
何より、あんなに手数をかけて密室状態にする必然性が全く無い。普通に失踪すればよい。「密室の謎が解けない限り失踪した人間は見つけられない」とでも思っているのだろうか…
いないとは思うけれど、もし高評価に釣られて他の神津恭介シリーズを読まずにこの作品に触れる人がいたら、多分怒ると思う。

No.10 9点 ミステリーオタク
(2017/08/21 13:04登録)
亡き祖父から旧制高校の話はよく聞かされたが、そのエッセンスと時代背景に各種寮歌が彩りを添える不可思議ミステリーの表題作は素晴らしい。
他の作品も昭和中期のレトロなミステリアスに包まれた佳作集。

No.9 5点 E-BANKER
(2014/11/30 20:11登録)
1951年発表の中編。
今回はハルキ文庫版にて読了。表題作のほか、続編的位置付けの「輓歌」を併録した中編二編にて構成。

①「わが一高時代の犯罪」=~時あたかも大東亜戦争を目前にしたある日、一高で発生した奇怪な人間消失事件。本館正面に聳える時計塔の中からひとりの学生が忽然と姿を消した! 事件前日に彼を訪ねたひとりの女と一高生に扮した偽学生の影が見え隠れするなか、事件は悲劇的な展開を見せ始める・・・~

これは何とも言えない暗い時代背景。それがメインテーマだろう。もちろん謎の中心は「時計塔の屋上という準密室からの人間消失」ということになるのだが、このトリック自体は別にどうということはない。名探偵・神津恭介なら看破して当然というレベル(実際話中でもすぐに分かったという表記あり)。学友のために身を賭して事件に立ち向かう神津恭介の姿に痺れる、そんな作品。(しかも松下は最初から松下だったのね)

②「輓歌」=青髯、フラテンなど①と重なる人物が登場する続編的作品。堅物・神津恭介をも揺さぶるほどの美女が登場し、男たちの心を弄ぶ。その美女が暮らす名家が今回の舞台。折から戦争前のきな臭い雰囲気が流れる中、突如発生する殺人事件と謎の白木の箱。一体、彼女はどのような秘密を抱えているのか? というのが粗筋なのだが、神津が煽った割にはそれほど大した結末を迎えるわけではない。とにかく“若い”、ひたすら“若い”・・・神津や松下の姿が痛々しさまでも感じさせる。
まぁミステリーとしては二級品としか言いようがないが、①とともに名探偵・神津恭介の「エピソード0(ゼロ)」という扱いでよいのではないか。そういう意味では、ファンにとっては外せない作品かも。

以上2編。
上記のとおりで、それほど高い評価は難しい。
作者もまだまだ試行錯誤だったのではないかと感じさせる作品。
(とにかく暗~い時代だったのね・・・)

No.8 6点 ボナンザ
(2014/04/08 00:37登録)
中編としては出色のでき。一高って呼び方が時代を感じさせますね。決して作者が東大出身を自慢する話ではありません。

No.7 6点 メルカトル
(2013/09/04 22:15登録)
再読です。
中編である表題作を含む短編集。今思うと、どの作品のトリックも凡庸で看破しやすいものがほとんどだが、初読時はそれでも感心して読んだものだ。
私の一推しはロマンチシズム溢れる『月世界の女』である。これも分かりやすいトリックだが、結構いい話ではないだろうか。
そしてラストの『鼠の贄』は最初から手掛かりを大胆に提示しているが、この心理的な誤謬に気づく人は少ないかもしれない。
この仕掛けは現在でも十分通用するものだろうし、なかなか気の利いた短編だと思う。
本来ならば、平均点が示しているように、もう少し高得点でも良かった気もするが、やはりいま読み返すとこの点数も已む無しといったところか。

No.6 7点 isurrender
(2011/09/03 12:00登録)
タイトルがお洒落だと思う
人間味あふれる神津探偵を味わえるのも面白いです

No.5 6点 江守森江
(2010/04/10 14:14登録)
※はじめに(但し書き)
表題作は中編で、神津恭介シリーズ作品集として、何種類も出版され、他の収録作品が違う為、この書評は表題作単独の扱いにした。
2つの消失の謎を含む事件全体の真相から、神津&松下の生涯唯一の犯罪と友情を描いた本格探偵小説としては異色な作品。
時代背景と謎の融合のさせ方も上手い(但し謎自体はチープ)
それ以上に神津恭介の成長過程が読めるのが嬉しい。
神津恭介シリーズを読むと毎度の事ながら、名探偵が中短編で示す才能が長編では最後にしか発揮されない本格探偵小説のシリーズ探偵が抱える弱点が顕著に露呈し、苦笑を禁じ得ない。

No.4 8点 給食番長
(2009/06/05 23:58登録)
私の祖父に読ませたかった。

No.3 8点 E
(2009/03/28 11:10登録)
時代をとても感じました。「蝋勉」なんかも・・。
事件よりも「その時代の学生」を読んだ印象です。
そして最後は何とも哀しく・・・。
学生時代の神津&松下氏を読めたのは嬉しい。

No.2 9点 mike
(2008/04/15 23:23登録)
雰囲気がとてもいい作品です。神津物では必読だと思います。

No.1 7点 vivi
(2008/03/05 01:13登録)
神津恭介の高校生時代が分かる作品。
神津ファンには、絶対見逃せない作品(短編集)です。
相棒役の松下との関係なども、新鮮です。

かなり、時代的な背景はありますが、
その中での神津の推理の切れ、
そして人間としての苦悩などが表現されていて、
作中の松下と同じように、驚いてしまいました(^^;

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