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sophiaさん
平均点: 6.91点 書評数: 394件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.234 9点 medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 2020/03/17 21:12
翡翠タンハアハア・・・じゃなくて、
これは究極のリドルストーリーですね。読者は騙されたのか否かすら判然としません。前3章を別アプローチで振り返る構成にしびれました。香月と翡翠の関係性には、今村昌弘の「屍人荘の殺人」シリーズの葉村譲と剣崎比留子の関係性を重ね合わせて読みました。それ故に最終章は衝撃的でしたよ。ラブコメ要素がちょっとあるだけでラノベだ何だと批判する読者へのアンチテーゼのようにも感じました。

No.233 7点 罪の声- 塩田武士 2020/02/28 13:07
グリコ・森永事件が起きたのは70年代ぐらいのイメージでしたが80年代なんですね。割と最近でびっくりしました。まあそれはさておき、犯人グループの人数が多く事件の顛末もかなり複雑であるため読むのが難儀でしたが、2人の主人公俊也と阿久津が交わり始めた辺りからぐっと面白くなりました。俊也の「追う者と追われる者」の葛藤がよく書き表されています。
調査の糸が都合よく繋がり続け、しかも何だかんだで取材に協力的な人ばかりなので話がとんとん拍子に進みますが、それもあの入り組んだ世紀の大事件の全容を解明するという主題である以上は仕方がないのでしょう。
ひとつ気になった点を。事実に沿った話なので突っ込むのは野暮かもしれませんが、小2の弟はともかく中3の姉は自分がやっていることの意味が分からなかったのでしょうか。

No.232 7点 竜が最後に帰る場所- 恒川光太郎 2020/02/21 01:54
●風を放つ 5点・・・何か起きそうで何も起きない。
●迷走のオルネラ 5点・・・何これ。
●夜行の冬 7点・・・「秋の牢獄」の世界観に似ている。ラストがちょっと分かりにくい。
●鸚鵡幻想曲 9点・・・「白昼夢の森の少女」にも2編あったメタモルフォーゼもの。前半を読んでいて後半こんな話になるとは全く予想できませんでした。
●ゴロンド 8点・・・壮大な話。手塚治虫の「火の鳥」のよう。

何と言っても「鸚鵡幻想曲」です。これですよ、これ。私はこの作者にこういうのを求めているんです。下手に縛りのある連作短編より、ワンアイディアで作れる独立した短編の方が向いてますよ絶対。「迷走のオルネラ」は現実的な世界観でのぶっ飛んだ話でどうも受け入れられなかったです。

No.231 8点 教室が、ひとりになるまで- 浅倉秋成 2020/02/16 00:03
あらすじからは予測できないSFミステリー。設定がとても面白いです。この設定で引き込まれない人はいないでしょう。最初は「デスノート」かと思いましたが、「ジョジョの奇妙な冒険」の「スタンド」や「HUNTER×HUNTER」の「念能力」に着想を得ているのかもしれません。調べたらこういうSF的な作品が得意な作家さんのようですね。能力のヒントを自伝にさりげなくちりばめているところがとても上手い。主人公が何か隠している風な描写だったのもやはり意味がありましたし、バイト先の先輩や路上ミュージシャンなどサブキャラクターたちに最後世界をひっくり返される構成も効いています。ただ、文章がところどころ軽くて変なんですよね。もっと硬質な筆致でいいと思うんですけど。あと、〇〇〇〇〇の自殺の理由が遺書を読んでもよく分かりませんでした。

No.230 6点 南の子供が夜いくところ- 恒川光太郎 2020/02/12 00:17
前作「草祭」の南国バージョンといったところ。相変わらず各エピソードの関連性が薄い。どの話も面白くなりそうでいまいちならず、雰囲気を楽しむ作品に帰結しているのも同じ。「草祭」よりは引き込まれたのですが。連作短編全体を通した大きな流れと大きなオチが欲しい。ふむう。

No.229 5点 草祭- 恒川光太郎 2020/02/07 20:51
これはよく分かりませんでした。あくまで雰囲気を味わう作品なのでしょうか。5つの話は別個に成立し得て、「美奥」という地名で無理やりまとめた連作短編集という感じがします。「風の古道」や「神家没落」と似た話もありますし、「天化の宿」などはすごく面白くなりそうでならず残念。どうもこの作家さんの限界が見えてきたような。このまま読み続けて行っていいものかどうか。「夜市」や「秋の牢獄」や「銀の船」のような起承転結がはっきりしており切れ味の鋭い話が読みたいのですが。

No.228 5点 十二人の死にたい子どもたち- 冲方丁 2020/01/30 22:59
人の動きをただただ複雑にしたばかりで、謎が解けたときの爽快感がない。「ミステリー畑ではない人が頑張って作ったパズル」の域を出ない。解決編の話の流れがとても分かりにくい。真犯人(と呼びます)の名指しを最後に回すためでありましょうが、探偵役が不合理な話を敢えて進めていくので読者はいたずらに混乱させられます。しかもその肝心の真犯人の名指しのキレ味が悪い。9番のパートナーを特定する根拠も弱く、階段から突き落とした犯人を特定する論理もよく分からない。2人が屋上に一緒にいた理由も説明されていない。そして謎と作品のテーマがいまいち絡み合っていない。4番の喫煙とかゼロ番の運搬手段とかはそもそもがどうでもいい謎。過去に本屋大賞を獲った作家さんですが、ミステリーは書き慣れていないのが露わです。あと最後まで登場人物の名前が覚えられなかった。演出とはいえカタカナ表記はやめてほしかった。
追記 映画も観ましたが、原作で描写不足だったところが補足されておりよかったです。

No.227 6点 雷の季節の終わりに- 恒川光太郎 2020/01/20 00:11
「穏」の世界観は面白かったですが、全体の構成があまりよろしくないのかなあと。茜パートはもっと早く始めて欲しいですし、最後の最後にトバムネキが主人公みたいになるのがちょっと。この作者は短編の方が向いているような気がします。

No.226 8点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2019/11/24 00:18
ジェノサイドあり、カニバリズムあり、死体の解体描写ありで、なかなかにブラックな短編集でした。亜愛一郎シリーズのようなファニーな雰囲気を想像していたので衝撃を受けました。「狐の面」と「歯と胴」だけがややいまいちで、後は全部面白かったです。「閏の花嫁」はトラウマになりそうです。

No.225 7点 秋の牢獄- 恒川光太郎 2019/11/16 17:40
●秋の牢獄 8点
●神家没落 7点
●幻は夜に成長する 6点

何と言っても表題作でしょう。そうなった原因が何か存在して、それを解決することで解放されるというような展開を想像していましたが違いました。原因は不明。出口は見えているもののその先がどうなるのか分からない。絶望→希望→絶望→達観と経てからの終わり方が素晴らしかった。
しかし次の「神家没落」もそうですが、この方の作品の主人公は異常な状況を理解して受け入れるのが早くないですか?もう少し困惑したりパニックになったりするものじゃないのかなと思うのですが、敢えて淡々と描くのがこの方の特長のような気もしますね。

No.224 8点 Iの悲劇- 米澤穂信 2019/11/04 23:06
山間部の廃村に人を呼び戻すプロジェクトに携わる公務員たちの話。雑誌掲載したものを軸にした連作短編集ですが、書き下ろしを挿入したり順番を変えたりして一つの壮大な作品に再構築しています。雑誌掲載分を読んでいた人たちは、まさかこんな話だったとは思っていなかったんじゃないでしょうか。考えさせられる一冊でした。

No.223 8点 夜市- 恒川光太郎 2019/10/03 22:28
表題作ほか1編を収録。日常のすぐそばに存在する異世界というコンセプトでしょうか。ホラーというジャンルではありますが人情話でもあり、おどろおどろしさはそれほど強くありません。2作とも大切な物を取り戻す旅です。どちらの話の異世界にも主人公の先達と言える存在があり、物語の重要なカギを握っています。結末に関しては「夜市」はどちらかと言えばハッピーエンド、「風の古道」はどちらかと言えばバッドエンドでしょうか。しかしどちらの話も一概にそうとは言えない温かい寂寥感を残して終わります。「白昼夢の森の少女」では「銀の船」が一番よかった私にとりましては、なかなか楽しめる世界観の2編でありました。

No.222 4点 いけない- 道尾秀介 2019/09/29 18:40
これは近年稀に見る期待外れ。帯やらメディアやらで絶賛してハードル上げ過ぎですよ。各章最後に地図やら写真やらを載せてさも思わせぶりに謎解きを投げかけていますが、いずれも大した解答ではありません。いや、そもそも問題にするところを間違えてないですか?さらに読者の想像に任せている部分が多すぎて、読後のカタルシスがありません。東野圭吾の「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」もそうでしたが、やはりクイズの体裁をとった作品で傑作は難しいと再認識いたしました。

追記 文庫版は画像の画質が粗いので出来れば単行本で読むことをお勧めします(その代わり第1章の地図の範囲を狭めたりといった改善も見られますが)。

No.221 8点 火の粉- 雫井脩介 2019/09/25 00:23
設定が既に面白いので面白くなる予感しかしませんでした。最後まで読むと過去の犯行の一部始終が具体性を持って読者の頭に浮かんで来るのがこの作品の肝。隣人に信頼を寄せている人物、不審感を持っている人物、板挟みで動けずにいる人物、家族それぞれの視点から隣人が描かれ、正体が浮き彫りになっていく手法が採られています。メインの視点人物は雪見ですが、もう少し勲の視点で読みたかったかなと思います。馬鹿息子には辟易しておりましたが、最後の最後に男っぷりを見せてくれて溜飲が下がりました。しかし、赤の他人の男に義母の介護を手伝わせるというのはあり得なすぎます。

No.220 7点 白昼夢の森の少女- 恒川光太郎 2019/09/18 23:21
著者の作品を読むのはこれが初めてです。「変身」「再生」「永遠」といったテーマを持っていると思われる前半の話が面白かったです。中でも「銀の船」は突出して素晴らしい。後半の話になると趣はガラッと変わりますが、どうもオチがいまいちな話が多いです。あとがきで著者も書いている通り、寄せ集めの短編集なので仕方がないかもしれません。しかしながら、他の著書も読んでみようという気にさせるには十分な一冊でありました。

No.219 6点 猫丸先輩の空論 超絶仮想事件簿- 倉知淳 2019/09/11 21:09
●水のそとの何か 6点・・・作中の小説を元ネタにされてもいまいちピンと来ず
●とむらい自動車 7点・・・タクシー運転手たちの口論長すぎませんか(笑)
●子ねこを救え 6点・・・猫モノなら「失踪当時の肉球は」の方が好き
●な、なつのこ 7点・・・アレとアレとでは重量がだいぶ違うのですぐ気付きそうなものですが
●魚か肉か食い物 6点・・・これはちょっと論理の飛躍。レンゲに持ち替えるのなんかも自然な動作であり、伏線として機能しているのかどうか。旧友に気を遣ってプラマイ0にしようとした、の方が綺麗だった気がしますが。
●夜の猫丸 5点・・・何だこりゃ

全体的にまったり(ダラダラとも言う)としており、「幻獣遁走曲」のテイストに近いのかなあと思います。前作「猫丸先輩の推測」の完成度には遠く及ばない感じです。「超絶仮想事件簿」というサブタイトルの意味も全く分かりませんし。

No.218 7点 犬はどこだ- 米澤穂信 2019/09/03 00:27
二つの依頼に共通点があることは早い段階で読者には分かっているのですが、いかんせん報連相のなっていない二人の調査員たちは気付きません。しかしながら二つの依頼がどう絡み合うのかまでは終盤まで読者にも分からないという構成。絡み合ってからは急加速で面白くなりました。ネットから現実世界に移った鬼ごっこの構図の反転が鮮やか。しかし、最後あっさりしすぎでは?更なる高評価もあり得た作品だと思うのでちょっともったいなかったですね。あと、主人公がなぜ犬捜しを専門にしたいのかがよく分かりませんでした。タイトルに「犬」を入れる程であれば語って欲しかったです。語ってましたっけ?
余談。「鎌手」は「構ってちゃん」ってことかと思ってました(笑)それと「2ちゃんねる(今は5ちゃんねるですが)」という言葉が小説にはっきり出てくるのは新鮮でした。

No.217 8点 猫丸先輩の推測- 倉知淳 2019/08/24 23:35
●夜届く 8点・・・銭湯のエピソードがヒントにもなり、煙幕にもなっています。
●桜の森の七分咲きの下 8点・・・私を含め、もうひとつの可能性の方を考えた読者が多いことと思います。裏切られました。
●失踪当時の肉球は 8点・・・最後の分かるような分からないような歯医者の例えが印象的。
●たわしと真夏とスパイ 8点・・・冷えてないことに気付かなかったのか?という瑕疵はありますが。
●カラスの動物園 7点・・・「桜の森の七分咲きの下」同様の裏切り。
●クリスマスの猫丸 7点・・・何てことはない真相を魅力的な謎に仕立てるのが上手い。

「日常の謎」としてはかなりハイレベルな短編集ではないでしょうか。毎回変わる視点人物も個性的。特に探偵さんはよかった。各タイトルは全部何かの文学作品に因んでいるんですね。「たわしと真夏とスパイ」と「カラスの動物園」は無理やり合わせにいった感じがしますけど(笑)
なお、本作の猫丸先輩の行いは「推理」ではなくタイトルにあるように「推測」であると言われますが、物的証拠はなくとも状況証拠を元にしているので「推理」と言っていい気がします。ただし確認を取っていないという点で「推測」なのかなと。であれば「たわしと真夏とスパイ」は犯人の自白を取っているので「推測」には終わっていないと言えるのではないでしょうか。このようなことまで考えさせられる、なかなかに奥の深い一冊でありました。

No.216 7点 怪物の木こり- 倉井眉介 2019/08/04 21:19
主人公が襲撃の被害者であると同時にリベンジャーであり、警察に真実を隠すことから事態が複雑に展開していき、読み応えがあります。終盤に訳が分からなくなり戸惑っていたら、時系列をずらしたんですね。これは結末に向けて効果的だったと思います。ただ、人物造形の浅さが気になります。例えば、主人公は邪魔者を何人も殺してきたサイコパス弁護士という設定ですが、弁護士としての仕事ぶりも、邪魔者をどう殺してきたのかも具体的に描かれていません。作品のキーワードになっている「脳チップ」も、ネーミングが何とも安っぽいのでもうちょっと考えて欲しかったところです。

No.215 6点 幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート- 倉知淳 2019/07/30 22:54
●猫の日の事件 5点
●寝ていてください 5点
●幻獣遁走曲 7点
●たたかえ、よりきり仮面 7点
●トレジャーハント・トラップ・トリップ 6点

初めの2話をその後の3話で取り返した感じです。「日曜の夜は出たくない」は割と硬派な本格ミステリー短編集でしたが、本作は誰も死にませんしプロットも複雑なものはなく、ライトな味わいの短編集となっています。アメトークの読書芸人の回でとある芸人さんが本作をお薦めしたそうですが、そういう観点からだと思われます。まあ時にはこういうのも悪くないんじゃないでしょうか。余談ですが、創元推理文庫新版のあとがきによりますと、本作のジャンルは日常の謎ではなく「非日常の謎」なのだそうです。何はともあれ、次作「猫丸先輩の推測」に期待しておきます。

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sophiaさん
ひとこと
世評の高い物を中心に読んでいっています。採点に際してはストーリー性や読み易さも重視します。ジグソーパズルのような複雑な作品やオチのない話、リドル・ストーリーは苦手です。
好きな作家
最近だと米澤穂信 今村昌弘 方丈貴恵 知念実希人あたりを好みます
採点傾向
平均点: 6.91点   採点数: 394件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
米澤穂信(16)
道尾秀介(14)
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