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たかだいさん
平均点: 5.07点 書評数: 183件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.103 7点 不死症- 周木律 2025/02/07 17:51
冒頭いきなり瓦礫の中からスタートし、訳も分からないまま生存者が集まり出した所で、一般的に言う所のゾンビに当たる異形「ウェンディゴ」の襲来…
まさに、カプコンの名作タイトル『バイオハザード』が日本で起こったらこうなるといった感じに話が進みます
純然たるバイオホラー物ではありますが、主人公の失われた記憶にもある種の仕掛けがあり、ミステリーとしての側面もあって飽きさせません
また、希望と絶望の調整が絶妙で、単なるサバイバーで終わらない魅力があるように感じました
元々バイオハザードシリーズが好きで、こういったバイオホラー、サバイバルホラーも好きなジャンルだから嗜好に合っていたのも多分にありますが、この手の小説としてはわりと薦められる完成度だったかと思います

No.102 4点 図書館の美女- ジェフ・アボット 2025/02/06 17:13
とある田舎町で頻発する爆破事件、土地開発に揺れる開発業者と反対派の不和、そこにかつての恋人が現れて混沌とする中、遂に殺人事件まで起こる
なにかと詰め込まれた印象があり、事実、それに振り回されて(負傷もしながら)事件に巻き込まれていく図書館長ジョーディの活躍を描く「図書館」シリーズの2作目
話自体は真相も含めてなかなか面白かったです。登場人物は曲者揃いで、特にいかにも黒っぽいのに白くも見える終始灰色な元カノの存在感は大きかったように思います
ただ、個人的に引っ掛かったのは主人公・ジョーディのキャラクター。私が前作を読んでないから余計にそう感じるのか、そこはかとなく良い人風な割に優柔不断、元カノに対する接し方なんかも嫌悪感が湧くなど、主人公として決して好きになれないタイプの人物でした

No.101 3点 連続殺人鬼 カエル男- 中山七里 2025/02/06 10:07
中山七里はわりと好きな作家だし、本作に関しても「このミステリーがすごい!大賞」の最終候補の一つに選出された程で、氏の代表作の一つなのは間違いない
…が、面白かったか?と問われると、私は首を傾げる
幼子がカエルを苛めるように幼稚で残虐な犯行を繰り返す殺人鬼「カエル男」の正体に迫るサイコスリラー的な話で、いわゆる『序破急』といった感じのスピード感がある語り口が魅力だとは感じた
しかし、良かれ悪かれ勢い任せな印象で、特に住民達が暴徒化して警察署を襲うシーンなんかは演出過剰な気がして、個人的には冷めてしまった
また、この手の犯人(サイコパス)としてキャラ付けが微妙というか作り物めいて感じられたのも楽しみ切れなかった一因かもしれません(似た感じ方をしたサイコパス犯人としては「レモンと殺人鬼」の「ウシワカ」とかもそうでしたが…)
私としては中山七里の作品としては「護られなかった者たちへ」や「隣はシリアルキラー」のほうが断然オススメ出来ますね

No.100 5点 架空犯- 東野圭吾 2025/02/04 15:18
とある夫婦が死亡し、稚拙な自殺偽装に隠された意図であるとか、秘された人間関係であるとかが徐々に浮かび上がり、入り組んだ果てにある一つの真相に辿り着くまでの流れが素晴らしい
ガリレオシリーズは勿論、一見似た傾向がありそうな加賀恭一郎シリーズとも一線を画す警察小説だったかと思います
ただ、個人的に東野圭吾作品にしては本作はちょっと読みにくく感じて、読み切るまでいまいちペースが上がらなかった印象です

No.99 8点 久遠の檻 天久鷹央の事件カルテ- 知念実希人 2025/02/04 08:27
個人的には、今の時点でこのシリーズ作品中最も好きな作品
本作では、ある意味で医療ミステリーらしい「不老不死」をテーマに挙げている
昔と寸分変わらぬ幼さすらある容姿で現れたアイドルの少女。あまりの異様さに鷹央先生が呼ばれるも、彼女の身内によるガードで、詳しく調べる事も難しい。そんな中、当の少女は崖からの飛び降りを生中継しながら、その場で蘇生して見せ、世間を熱狂させていく
十何年経ても容姿が変わらない不老、一見生存不可能な飛び降りからの復活。そこに、倒産した芸能事務所の敷地から見つかったタイムカプセルに入れられた遺体、海から打ち上がった謎の女性の腐乱死体まで係り、いかにも現代的な企みまで見えて来る
1冊に納めるには中々の詰め込み具合だと思う。それらを破綻なく収束させ、不老不死の真相は興味深く、追い詰められる黒幕にカタルシスを覚え、ある意味で一番の被害者とも言える人物にも希望が与えられて幕を下ろす。綺麗に、すっきりとした終わり方に満足です

No.98 6点 VR浮遊館の謎ー探偵AIのリアル・ディープラーニング- 早坂吝 2025/02/04 08:03
そう遠くない近未来の現実を舞台に、「名探偵」のAI・相以と「犯人」のAI・以相の対決を描く「探偵AI」シリーズの4作目
今回の舞台はVRゲームの中、1人に付き1種、特定の魔法を扱う事が出来る浮遊する館。浮遊し続ける館の謎を解き、既に発動している魔法を解除し、無事に脱出するのが目的となる。そんなゲームに紛れ込んだ現実のシリアルキラーが、ゲームと思っている参加者を実際に殺し始めて…
あらすじの時点で、このシリーズらしさもあって好きです。ある種の館物でもあり、特殊設定が活きる謎と、現実的な謎も混ぜ合わさってシリアルキラー「骨折りジャック」に辿り着く感じが良い
あと、なんやかんや言って「探偵」相以は勿論なんですけど、なにかと天邪鬼な「犯人」以相が輔の言葉に振り回される様子は微笑ましいというか可愛らしいです。こう言った憎めない悪役の存在も、本作の面白さだと思います
シリーズを1作飛ばした事に気付きましたので、その内、抜けた3作目も読みたいと思います

No.97 3点 神話の密室 天久鷹央の事件カルテ- 知念実希人 2025/02/03 00:43
現役の医師でもある著者による人気シリーズの一つで、お固そうな医療ミステリーでありながら、専門用語や聞き慣れない病名が絡みつつもライトな語り口で堅苦しくなく楽しめる実績ありきのシリーズ
今作の場合、『密室』にフォーカスした中編2本で構成され、『閉鎖病棟で酔っ払ったアル中患者』(物理的な密室)と、『衆人環視の場で急死した選手』(状況的な密室)という毛色の異なる密室の謎が楽しめる
だが、(特に前者に言える事だが)本作はどちらかと言うと事件カルテというより推理カルテ寄りな内容で、正直あまり楽しくはなかったというのが正直な感想です

No.96 4点 ミステリークロック- 貴志祐介 2025/02/03 00:26
例によって著者の「密室」に対する拘りが詰まった短編集
防犯カメラと迷路に阻まれた犯行現場、突如ボートから投げ出されて海の藻屑となった男。この2編は結構好きで、特に後者(「コロッサスの鉤爪」)はボリュームといい内容といい文句はない。前者については、映像化した際に映えるようなトリックである為、文章で訴えるには分が悪い感じはしたが内容自体は面白かった
逆に、表題作になっている「ミステリークロック」に関しては、作中で一番力が入ったトリックが用いられているのはヒシヒシと感じるが、一方で、それが空回っていたように感じてしまった。はっきり言って、「すげぇな」と思う前にダレてきてしまい、トリックが緻密で壮大な割に受け手に響かない自己満足になってしまっていたように思う(少なくとも私はそう思った)

No.95 5点 狐火の家- 貴志祐介 2025/02/03 00:08
かつてドラマ化もされた「鍵のかかった部屋」の原作で、著者が『密室』に拘りを持って放つ「防犯探偵・榎本」シリーズの2作目
日本家屋、蜘蛛の飼育部屋、閉じ籠った棋士、凶暴な番犬…例に漏れず様々なシチュエーション下で意図的もしくは偶発的に発生した4つの密室が提示される
個人的に発想の面白さでは毒蜘蛛を使ったトリックは好きでしたが、一方で古い日本家屋で起きた実質的密室殺人(表題作)の真相は話の雰囲気が良いだけにちょっと物足りなさがあり、残る2編は正直良くも悪くも特にこれといった印象に残らない凡作と感じられました

No.94 5点 悪夢のドライブ- 木下半太 2025/02/02 23:50
木下半太によるユーモアミステリーシリーズ「悪夢の○○」の一つで、今回は、食っていく為に止むなく運び屋のバイトを引き受ける羽目になった売れない芸人が主人公
車を所定の場所まで運転するだけのお仕事だった筈が、やがて命の危機にも直面し、思ったより多くの人間が関わる一大事へと発展していく
木下半太の軽快な文章と、アフロヘアーの売れない芸人(主人公)など分かりやすく個性的なキャラクター、そこに勢いのある展開も相まってまさに珍道中といった感じが魅力の作品
あまりシリアスになり過ぎていないのが逆に功を奏している気がしていて、木下半太が描くユーモアミステリーは本作がある意味で最適解なのではないかとも思う

No.93 5点 炎冠 警視庁捜査一課七係・吉崎詩織- 戸南浩平 2025/02/02 22:32
ハチ公前で女性ランナーが爆死するというインパクトのある開幕から始まるサスペンス長編で、人を爆破する事に快感を見出す異常犯「カントク」を主人公含め警視庁捜査一課が追う警察小説
祖父の死をきっかけに歪んだ欲望を肥大化させていく「カントク」の狂気や、警察を嘲笑うような愉快犯的言動、なかなか尻尾を掴ませない狡猾さ等、悪役としてのキャラが立っていて個人的には結構好きなタイプのキャラクターでした
逆に、(むしろ敢えて狙って描かれてもいそうですが)主人公・吉崎詩織の相棒に関しては偏屈過ぎるというか僻みっぽいというか、終盤に掛けて彼の本音本心が見えてくるとは言え好きになれる人物ではないなと終始思いました
同じく警察小説である麻見和史の「殺人分析班」シリーズに近い物があり、もしシリーズ化されるようなら次作も読んでみたいと思う位には読み易く、面白い作品だったかと思います

No.92 5点 上海魚人伝説殺人事件- 天樹征丸 2025/02/02 06:57
映画化ありきの作品らしく、確かに映像化に向いた作風になっていると思う
事件の流れ自体は、原作でもたまにある逃避行物というか、状況から犯人と決め付けられた青年と一が警察から逃亡しながら事件の真相に迫っていく
肝となるのは凶器の隠し場所だが、このトリック自体なかなか大胆で面白かった。少なくとも私は、こういったトリックを採用した作品を(似たのも含めて)他に知らないので、新鮮でもあった
とは言っても、個人的にあまり印象に残る程の話でも無かったのも事実としてあり、言うほど特徴のあるストーリーじゃ無い為、原作漫画含めて他の事件に埋もれがちな普通の内容といった評価に落ち着いた

No.91 4点 殺戮のディープブルー- 天樹征丸 2025/02/02 06:45
ノベルス版金田一少年の事件簿において異色、異彩を放つ作品
というか金田一少年の事件簿全体を見ても、こういった事件は異例な気がする(他にはゲーム版の「地獄遊園殺人事件」が近いくらいだろうか?)
テロリストに占拠されたホテルからの脱出を目指す最中、脱出を目指す仲間が殺されていく
結構、緊迫感が生じ易く映像化に向いた内容(実際、アニメとして映画化し、普通に週1のアニメも放送された)なのだが、良かれ悪かれ金田一の小説は文体が軽い傾向にあるのでサスペンスになり切れてないというか中途半端な印象が拭えない
その辺りは原作の雰囲気や、メインとする対象を考慮するとやむを得ない部分ではあるのかも知れませんが、ちょっと残念に思います

No.90 5点 鬼火島殺人事件- 天樹征丸 2025/02/02 06:30
ノベルス版金田一少年の中で、犯人の意外性という意味では本作と「雷祭殺人事件」がツートップかなと個人的には思ってます
ミステリーとしてはそう珍しいパターンでもないのかもしれませんが、少なくとも金田一少年の事件簿においては珍しいパターンだった気がします
また、メインの消失トリックも大味ながら一応納得も出来る感じで、塩梅としては丁度よかったのかもしれない

No.89 8点 電脳山荘殺人事件- 天樹征丸 2025/02/01 19:24
小説版金田一少年の中で、最も完成度の高い作品
当時まだ珍しかったハンドルネームを用いたチャットでのやりとりを上手く事件の肝に活かす事で、見事な叙述トリックを成立させている
著者曰く、金田一少年というブランドが無くとも成功出来た自信があると自画自賛していたのを聞き覚えがあるが、そう言いたくなるのも頷ける出来栄えだと思う
(基が漫画という事もあるからか)どうにも文体が軽かった印象だが、そこは逆に言えば読み易いと捉える事も出来る
いずれにせよ、作品としての質は高いと思います

No.88 6点 黒いトランク- 鮎川哲也 2025/02/01 07:15
アリバイ崩しを得意とし、後身の育成にも尽力した大家・鮎川哲也の代表作と名高い本作
トランクに詰められていた男の腐乱死体、トランクの送り主は溺死してしまい、その送り主が犯人なのかと思いきやそう単純な話でもない。調べれば調べる程、混迷していく捜査状況は読んでいて惹き込まれるものがありました
派手さ珍しさは無くとも堅実な本格推理を楽しめる名作だと思います
正直、アリバイトリックがアレコレ複雑に入り組んでいる印象で全体像が理解しにくかったのはご愛嬌。個人的な読解力の問題もあるでしょうが、「なんかすげぇ事やってるな」程度の認識であっても事件の真相、裏側が判明する頃には感嘆する事請け合いです

No.87 5点 露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜- 椙本孝思 2025/02/01 03:46
帯にて様々な状況に対する挑戦状を突き付けてくる「迷探偵・白鷹黒彦の事件簿」シリーズの3作目で、本作は「村ミステリ」への挑戦状と位置付けられてます
奇妙な宗教に狂った名家に支配された田舎の寒村を舞台とした連続殺人を描いており、内容の凄惨さも相まってある種の金田一耕助みがある作品ではあったかなと思います
一方で、主人公とヒロインのやり取りが軽妙で一種の清涼剤になっている為、その辺りを雰囲気を壊すと捉えるか、雰囲気を和ませると捉えるかで作品の印象は大分変わる気はします。個人的にはこのシリーズの2人のやり取りはラブコメ的で嫌いじゃないので特に問題はなかったです
事件そのものは大掛かりな割にあっさりしていた感じがして若干の物足りなさを覚えましたが、シリーズ物としてはラストの展開など興味深い内容でした

No.86 4点 悪夢の六号室- 木下半太 2025/02/01 03:33
とあるモーテルタイプのラブホを舞台に、拉致され殺し屋と同室している男、裏金を持ち逃げしたヤクザの息子とその愛人、どちらもあと一歩で地獄待ったなしの状況で繰り広げられる人間模様を描いたサスペンス物
相変わらず軽快というか軽妙な文体で書かれている為、サクッと読めるのは魅力だと思う
その分、ミステリアスな雰囲気になり切れてないとも言え、今作に限って言えば他の悪夢シリーズのようなコメディ要素もあまりないので、作品として薄っぺらく感じてしまう
一応、予測不能な展開は健在なので、本格的もしくはヘビーなサスペンス大作とではなくライトノベル的な感覚で読む分には楽しめる作品ではあったかと思います

No.85 2点 転売ヤー殺人事件- 松澤くれは 2025/01/29 22:10
そのものズバリなタイトルやあらすじは面白そうで期待値が上がったものの、実際に読んでみたら拍子抜けな内容でした
転売ヤーという存在を殊更悪として描いていて、しかも内容が大分くどい…
確かにあまり褒められた行為ではないのは分かりますが、この話のように晒し者にされているのも不快感がある
もっとも、その転売ヤーである主人公のキャラクターも自己正当化と開き直りが酷くて好意的には見えずらい
では事件そのものはどうか?と言えば、これも薄っぺらい
「転売ヤーが殺される」
ただこれだけの内容で、それ以下はあっても以上はない作品でした

No.84 6点 桜の下殺人事件- 西村京太郎 2025/01/28 00:27
個人的に西村京太郎の作品は箸休めに丁度いい(言い方は悪いが)小物が多いという印象を持っているが、一方で発想が大胆で先鋭的なテーマも決して少なくない
この作品の場合は、まさに後者であり、あらすじの時点でなかなかに興味深い
当時は概念としても新しかった「多重人格」を扱った作品であり、派手さはないがサスペンス物として大いに興味を惹かれた作品です
また、捜査に関してストイックな姿勢と熱い想いを抱く十津川警部をして、本作のラストはなかなかに異色。それだけ事件の真相、黒幕に対する怒りがまさったという事でしょうが、話の締め方が他の十津川警部シリーズとは一線を画す終わり方で、ここまでキレた十津川警部を見られるのも珍しい気がします
ともあれ、西村京太郎作品としても、十津川警部シリーズとしても読み応えのある、隠れた名作といっても良い作品だったかと思います

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平均点: 5.07点   採点数: 183件
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