皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 魔神館事件 夏と少女とサツリク風景 〈迷探偵黒彦〉シリーズ |
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椙本孝思 | 出版月: 2007年09月 | 平均: 5.25点 | 書評数: 4件 |
角川書店 2007年09月 |
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012年09月 |
No.4 | 7点 | mediocrity | 2021/03/25 04:30 |
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ライトノベル畑の作家さんということで、500ページ超の割にはサクサク読めた。
現実的な解決を予想していた人にとっては低評価になるのは仕方ないと思う。 私はもっとアホなことを考えていたので「意外とまともだった」ということでこの点数。 <以下ネタバレあり> 全ての殺人が起こった時点で、「果奈が人間型万能怪力殺人ロボットで、世界最高の知性、犬神博士が全てを計画した」以外の論理的な解決は不可能なのではないかと考えていた。本格推理のふりをしたDr.スランプというオチなんじゃないかと。 よって、本作の真相は私には突飛どころかむしろ現実的に感じられた。ああ、その手があったかと膝を打った。 |
No.3 | 6点 | 人並由真 | 2020/04/05 04:35 |
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(ネタバレなし)
高校生・白鷹黒彦は夏休みのある日、西木露子という未知の女性から電話を受ける。露子の本来の用向きは、彼女の主人である実業家・東作茂丸の意向で、黒彦の父・武雄を、信州の奥地にある東作の洋館風の邸宅「魔神館」に招待する事だった。だが武雄は、彼の愛妻で黒彦の実母の弓子ともども11年前に死んでいた。露子は代案として、黒彦の星座が父と同じ射手座であることを確認した上で、黒彦を武雄の代わりに洋館に招待する。奇妙な思いを抱きながら魔神館に向かう黒彦だが、そこで彼が遭遇したのは悪天候によって外界と閉ざされた館のなかでの連続殺人事件であった。 改定された2012年の角川文庫版の方で読了。 うーん。謎解きミステリというジャンルの基幹のひとつは遊戯ブンガクなのだから、とにもかくにも、作者が「これは面白いだろう」と思ったネタを形にしようと実行すること自体は、とても結構だと思う。 しかしうまくやればかなり破格でパワフルな秀作もしくはケッサクなバカミスになるところ、演出の下手さと随所の細部のツメの甘さで、いずれの方向でもものにならなかった感じである。ああ、もったいない。 まあトリックそのものには、古今東西の作品を見渡せばまったく前例がない訳でもないけれど、こういう長編作品の作り方は意外にそんなにないような気もするので(そうでもないかな)、焦点を絞り込んだ筋立てにしてくれていたらなあ、という思い。 (名探偵ジャパンさんのレビューの、もっと短ければ、という意見にはうなずける。) ゾクゾク感がもうひとつふたつ欲しいあたりも、ちょっと気になった。 ただ本作単体では面白いとはとうてい言えず、それどころか「出来はよくないけれどキライになれない」と弁護する意欲もあんまり湧かないのだけれど、それでもこのネタを形にしようと試みたことだけで、なんか褒めてあげたい心情にもなっている。そーゆー、ちょっとクセのある作品だった(笑)。 シリーズの続きは、またいつか読むでしょう。 |
No.2 | 6点 | 公アキ | 2015/01/19 12:59 |
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登場人物の「名付け」って、すごく作家さんの好みが出るなぁと思うのですが、この作品の登場人物の名前は、現実にいそうなものではなく、少年漫画作品のような印象。自分にはそれが読みやすさに繋がりました。
事件は謎の天才建築家・香具土深良が建てた「魔神館」で起こる、連続・不可能殺人事件です。主人公の男の子と女の子のやりとりやら設定やらはライトノベル調ですが、文体はライト過ぎず、若い感性と安心感のある文章の両立がなされていると思います。 (以下、ネタばらし有り) 真相は、私のような無類の「クローズドサークルもの」好き以外に受け入れられるかはわかりません。その意味では、この長編は、ストライクゾーンの狭い作品かもしれません。 真相に至る手順というか、連続殺人が起こるのと同時に進む操作や推理の過程が緊張感のあるものです。が、それだけに、その末に「その結末」というのは、良いカタルシスを迎えるか、「ふざけんな!」となってしまうか……幸い、私はぎりぎり前者でした(笑)。 (以下、メイントリックへの言及有り) 館そのものに様々な仕掛けが施されていて、とても人間業には思えない殺人現場は、人間によるものではなかった、という真相は、半分がっかり・半分感心です(笑)。事件が起こる度にエントランスにある巨大な石像の一部が壊れるというのは、どういうことなんだと思ったら、館による自壊だったとは(笑)。細部は覚えてないので、いつか再読したいとは思っているのですが、真相のインパクトが強すぎて、中々手が出ません。 (もう何年も前に読んだきりの状態でのレヴューです) |
No.1 | 2点 | 名探偵ジャパン | 2014/10/07 17:58 |
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こういうオチを全面的に否定するつもりはないが、こういうことをやるなら、本編はもっと短くまとめるべき。こっちは「このトリックは一体? 果たして犯人は?」と、真面目に読んでいるのだから、そういう無為な時間は極力短く抑えてもらわなければ。このオチに辿り着くまでの無為な読書時間で、他のまともなミステリを一本くらい読むことができたと思えば、これはもう時間泥棒です。
このオチで堂々長編を書いてしまおうという神経が図太い。作家に「読書とは読者の時間を奪って読んでもらっている」という感覚が持てるなら、「こんなの考えたけど、短編にまとめてちょっと軽く読んでもらおうかな」くらいに留めるはず。 「館ミステリへの挑戦」という触れ込みで売り出されたらしいが、プロレスのチャンピオンに挑戦したはいいが、受け身などまともな基礎もできておらず、凶器攻撃に頼るしかなく、それもまったくチャンピオンには通用せず、あえなく敗退してしまいました。そんな感じ。 |