皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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たかだいさん |
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平均点: 5.04点 | 書評数: 204件 |
No.144 | 6点 | 新任警部補- 佐竹一彦 | 2025/03/16 22:37 |
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古の推理小説の王道パターンを地でいく安定したスタイルと、元通訳係で現場経験はからっきしの警部補を主役に据えるという今時のミステリーでもあまり見ない奇抜な設定が内混ぜになった独特の警察小説
とある老夫婦が何者かに惨殺され、しかもその状況は家の鍵は全て閉められた密室であり、凶刃を振るった犯人は忽然と消え失せてしまった…いわゆる雪の密室を扱った本作であるが、そのトリックというか真相は中々面白く、(犯人以外)誰が悪いとも言えないリアリティがあって興味深かった 一方、そう言った話の核心については供述調書という形で犯人自身の口で語られる辺りも個人的には新鮮に映った部分で、昨今の警察小説と比べてもやはり本作の立ち位置は独特だと改めて思います ついでに言うと、こんなにもセンス0の改題も珍しいなと少々呆れる思いもあり、正直この改題されたタイトルを見て「面白そう」と手に取ることはほぼないと断言出来るくらいには魅力を感じません。その点は非常に勿体無く思う一方で、カッパ・ノベルス版の方を知れて本作を読めた事はある種の幸運だったと言えるかも知れません |
No.143 | 7点 | ヨモツイクサ- 知念実希人 | 2025/03/16 13:02 |
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アイヌの伝承とバイオホラーをうまく融合させ、そこにミステリー要素も掛け合わせたホラーの大作といった作品
タイトルにもなっているヨモツイクサをはじめ複数種の化け物が登場する為に読んでいて(種類の区別が)訳がわからなくなる部分もあったものの、人を襲い喰らう正体不明の化け物としての恐怖感はあったので満足出来ました また、著者が医師だからか医療的な観点から化け物の存在にアプローチする場面があったかと思いますが、その辺りにもフィクションの中にもリアリティが感じられて個人的には好感が持てました クライマックスのミステリー的な仕掛けも併せて、バイオホラー物としてはここ最近で一番面白かったように思います |
No.142 | 3点 | 霧枯れの街殺人事件- 奥田哲也 | 2025/03/15 18:27 |
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長編デビュー作という割には、良く言えば『落ち着いていてしっとり』、悪く言えば『徹底して地味でパンチがない』作品だなというのが率直な感想
日常的に深い霧に包まれる田舎町を舞台とした殺人事件の謎を追う話なのだが、いまいち本作の面白みが分からない (話の構成を無視してインパクトのみを追求するなら)後半に登場する男の首無し死体を最初に持ってきた方が猟奇性が上がって読み進める意欲にも繋がろうというものだが、実際には女の首吊り死体か見つかった事から全ての事は始まる 一応、現場に残された足跡の謎であったり、わざわざ林業署の職員を巻き込んで死体を発見させた通報者の意図といった謎は提示されるが、それだけで読み進めさせるには文章や構成にパワーを感じられない また、4人の刑事があれこれ話ながら事件を解決していく流れではあるのだが、その話の最中にちょいちょい茶々が入るのも、話をぶった斬られるようで個人的には不快に感じた部分です あと、のちに改題されていた事をこの場で知ったのですが、改題しない方がしっくりくるタイトルだったように思えてなりません |
No.141 | 4点 | 動く家の殺人- 歌野晶午 | 2025/03/13 22:55 |
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初っ端に探偵の死を告げられ、それから少し時間軸を戻して本編が始まるというのは掴みとしては良い
動く家(実際には家ではなく劇場だが…)というあからさまに怪しいタイトルでミスリードを誘う姿勢は割と嫌いじゃない だが、「面白かったか?」と問われると、非常に微妙な所です 劇場を丸々使ったトリックだと思わせてからの真相が個人的にイマイチで、噛み砕くと「実は単なる自己満足の○○でした」「動機は、確証はありませんがこうゆう事では」な内容になる為、若干白ける それだったら、作中で否定された上演中の凶器入れ替えトリック(とその際の犯人)が真相だった方が、トリックの観点では面白かったように思えた |
No.140 | 5点 | 魔神館事件 夏と少女とサツリク風景- 椙本孝思 | 2025/03/13 18:04 |
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ライトノベルとして楽しむ分には十分楽しめる一方、「館ミステリーへの挑戦」という謳い文句を鵜呑みにガチガチのミステリー小説を期待すると肩透かし、人によっては憤りを覚えかねない作品
この作品自体は単行本の方を発売当時に読んで、尚且つ以降のシリーズ作品も読了した上での感想としてはミステリー云々よりか主人公とヒロインのラブコメ的な絡みの方が面白味の比重は重いというのが正直な所で、2人のやり取りはほっこりして安心感があります 一方で「ミステリー的な部分はどうか?」としては、ヒロインの正体には「おぉ…」というある種の戸惑いを覚えた記憶があれど、事件の真相自体はライトノベルとして見るなら許されるって感じかな… このシリーズは毎回何かしらの挑戦をしていますが、館ミステリーとしては禁じ手的で異端な気がしないでもないです ミステリーの雰囲気を楽しむライトノベルとして、私としてはシリーズ通して好きな作品ではあります |
No.139 | 6点 | 雪密室- 法月綸太郎 | 2025/03/11 06:15 |
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降り積もった雪に残された足跡は第一発見者のものしかなく、すべて内側から鍵が掛けられた室内で女が首を吊った。事件現場、検死結果、動機…あらゆる状況が自殺を物語る中、名探偵「法月綸太郎」が見出した真相とは?
読者への挑戦状も付いた古き良き推理小説って具合で、雪という自然の産物が生み出した強固な密室の謎(トリック)が見所となってくるわけだが、肝心となるこのトリックもなかなか悪くない。ある種の意外性と大胆さが売りと言える大味なトリックだと個人的には感じたが、しかし、幾ら時間帯に気を遣った不意打ちとはいえ「(積極的なネタバレを避ける為に一部伏せ字で)○を○と○○させるのは苦しくない?」とも思えたので緻密さには欠ける印象も受ける また、個人的に話の主体となる探偵・法月綸太郎の父・法月警視のキャラが(この作品中では)イマイチ掴み切れなかったのは残念な所。私の読解力不足もあるかも知れないが、(話の都合もあるとは言え)自殺を否定し殺人と断ずる根拠が薄弱過ぎて警視自身が周りの話を聞かない独断の人というか頑ななわからず屋というマイナスの印象を受ける(実際の所、他作品も見るとそんな事はないと分かってくるが…) とりあえず、残念に感じる部分はありつつ、トリックであったり犯人の正体であったりといった推理小説としての根幹部には概ね好感が持てる良作だったとは思います |
No.138 | 5点 | 葡萄街道の殺人- 平岩弓枝 | 2025/03/09 21:28 |
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ドイツにおける葡萄栽培やワイン醸造が盛んな地方「葡萄街道(ワインロード)」を巡る旅の最中、粗暴な弟とその妻が殺され、犯人と思しき人物は服毒自殺を遂げた
作品のおよそ半分くらいのページ数を費やして被害者へのヘイトを稼いだ後に一気に4人もの人が同日に死亡する急転直下、事件は一応解決するも不審点が残る中盤から後半に掛けてのサスペンス性、クライマックスにおけるちゃぶ台返しの如き真相が明るみになっての、引きのラスト… 特別なトリックが仕掛けられている訳でもなく、わりと地味めな作品です。ですが、その地味な内容を丁寧に描く事で読後に満足感を得られるだけの力もあるお話かと思います また、事件が起きてからの後半は前述のようにまさに怒涛で、一気にラストまで引き込む展開のスピーディさも当作の魅力だと思います |
No.137 | 2点 | 特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来- 南原詠 | 2025/03/08 23:08 |
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主人公が(言い方は悪いけど)元は特許を盾に金をむしり取る側から一転して防衛する側へと転身した弁理士という設定、そこに昨今では群雄割拠に乱立しているVtuberを絡め、特許権を巡る企みが描かれる
とりあえず、設定に関して言えば新しく、そこは面白いと思います また、堅苦しいイメージが浮かぶ特許権侵害だとかライセンス契約といった題材をVtuberを絡めて非常にライトに書いている点も評価に値すると思っています しかしながら、「(作品として)面白かったか?」「楽しめたか?」と問われると個人的には否と言わざるを得ない 終始盛り上がりに欠ける展開で、敵対者との最後の攻防も淡々としていた感があり、キャラクター自体もあまり好感が持てなかったので、はっきり言って私としては設定だけが良い作品と化していました さらに言うなら、作中を通してのVtuberの捉え方にも違和感というか引っ掛かりを覚えてしまったのも印象としてマイナスでした、とVtuber好きとして付け加えておきたい |
No.136 | 6点 | 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 | 2025/03/08 05:48 |
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かつて大量殺人が行われた惨劇の現場「金雀枝荘」。時を経てこの山荘を訪れた者達による推理合戦の末に辿り着いた驚愕の真実とは
なかなかキャッチーな導入で、(読んだのが大分前なので記憶違いだったら赤面ものだが)かの島田荘司の名作「占星術殺人事件」を思い起こさせる 肝心の内容についても、過去に行われた犯行が時に大胆に、時に慎重に行われた様が詳らかにされていき、現在においても傲岸不遜な不審者が乱入して場を盛り上げる かなり盛っている印象ながら、王道のクローズドサークル物にして館物として手堅くまとまっていると感じ、オカルトはオカルトとして否定せずに作中に暗示している辺りも今邑彩らしくて好感が持てた |
No.135 | 3点 | ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 | 2025/03/08 00:21 |
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一度日本で映画化された後、韓国でもリメイクされ計2度も映画化の機会を得たサスペンス大作
今以上の情報監視社会となった仙台を舞台に、首相暗殺の犯人として追われる身の上となった男の緊迫感溢れる逃避行が描かれます …と、こうしてストーリーの上辺を見る分には伊坂幸太郎らしさも感じられ、クセが強い傾向にある伊坂作品の中でも一番に推すファンが結構居る印象なのだが、個人的にはいまいち入り込めなかったというのが正直な感想 いわゆる『敵』の正体が掴めないのはサスペンス作品としてはプラス要素だと思われますが、一方で話が壮大な割に全体的に淡白なストーリー展開だったように感じられ、結果、単調というか持ち味を生かし切る前に終わった感が強く残った ただ、やはり映像化には向く作品だろうとは思います |
No.134 | 7点 | 天使の耳- 東野圭吾 | 2025/03/07 21:48 |
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殺人事件に遭うよりも余程身近な危険である交通事故に焦点を当てた東野圭吾の短編ミステリー集
信号無視、駐車違反、煽り運転といった違反行為から派生する謎解き要素が結末のどんでん返しも含めて面白く、また、目の付け所が良いなと感心した所でもあります 話としては、盲目の女性が音を頼りに同乗車が信号無視をしたという無実を証明してみせる表題作『天使の耳』が一番面白かった一方、(幾つかのお話で言われているように)例えば当て逃げのような人死もなく加害者が見つかる見込みも薄い事故では警察も形式的な対応以上の事はしてくれないという泣き寝入りの現実も一緒に書かれているのが印象に残りましたかね |
No.133 | 4点 | メビウスの殺人- 我孫子武丸 | 2025/03/06 00:42 |
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ハンマー男と絞殺魔。謎の殺人鬼による連続殺人に速水兄妹が挑むシリーズ第3作
内容としては被害者に隠されたミッシング・リンクを探るのがメインで、現場に遺された数字のメモが謎に拍車を掛けるーーそんな構成になっており、作中に色々な方面からのダミーが入り混じる為、一定の緊張感を保って物語が終始していた印象があります また、犯人視点と捜査陣視点が交互する都合上、明確な犯人当てが必要ない分、サスペンスとして十分楽しめました ただ、このシリーズはいわゆるユーモアミステリーの類かと思われますが、キャラの掛け合い部分があまり好みではなかったです。特に主役である三兄妹の長男で刑事の恭三の性格が個人的には好きになれず、刑事の勘を重視するというか思い込みが激しいというか、昭和の堅物な刑事像を見せられるようで正直辟易しました |
No.132 | 6点 | クロスファイア- 宮部みゆき | 2025/03/02 23:35 |
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念じるだけであらゆる物を炎上させるパイロキネシスの能力を持つ女が法から逃れた無法者を私刑にしていくサスペンス物で、そこに秘密組織から来た軽薄そうなあんちゃんや、その辺りの事情は知らないまでも正攻法から徐々に女の存在を知り超能力の存在にも気付いていく刑事らが加わって物語に深みを与えている印象
話の主軸としては、凶悪犯罪者を処刑する事に自己を見出し、自らを「(弾が)装填された銃」と嘯き、あえて孤独を選んだ(もしくは選ばざるを得なかった)女が、とある出会いから『人間』になるも、時既に遅過ぎたという救われない話 能力を生まれ持ったが故に歪んでしまったとも言える女の(作品を通して描かれる)生涯は悲劇的ですが、精緻もしくは繊細な描写のお陰か壊れていながらも人間味のあるキャラに仕上がっている辺り、宮部みゆきらしい作品だと思わされた 正直、上下巻で中々読もうという気にならなかった作品だったのですが、事の他スラスラ読めた印象で、内容そのものも悪くなかったです。スティーブン・キングの某作品を読んでいるとまた違った感想を抱くのかもしれませんが、そちらを未読の私的には意外と面白い作品でした |
No.131 | 6点 | 行動審理捜査官・楯岡絵麻VSミステリー作家・佐藤青南- 佐藤青南 | 2025/03/01 21:12 |
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相手の微細な反応から嘘を見抜いて真実を暴き出す「行動心理捜査官・楯岡絵麻」シリーズの一つで、著者と同じ名前を与えられたミステリー作家「佐藤青南」との対決を描いた長編作品
天性の才能によって人身を掌握して一種のカルトを築き上げた一方、基本的に自身を認めさせる事以外には興味がなく、批判者や後輩には苛烈な攻撃を加えるサイコパスとしての「佐藤青南」は、ミステリーの悪役として結構好きでした 心理学を学び自身を取り繕う事も出来る佐藤と絵麻の(取り調べ室での)対決は特に熾烈で、佐藤が仕掛けた(というか実行した)非常に気の長い狂気染みた犯行に戦慄しつつ、普段はソリが合わない現場組との二人三脚で辛うじて絵麻が佐藤に対して突破口をこじ開ける様は読んでいてスカッとするものがあります あからさまに続きがあると匂わせる終わり方をしているので続きが気になりつつ、(「サイレント・ヴォイス」で感じた個人的な危惧はあるものの)シリーズの他作品も徐々に読み進めようと思います |
No.130 | 5点 | 八甲田山殺人事件- 吉村達也 | 2025/02/28 00:02 |
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温泉好きの志垣&和久井コンビが活躍する「温泉殺人事件シリーズ」の一つで、読後にやるせなさが残る作品
大量の氷と共に湯船に浸かって凍死した女性、女性が死んでいた部屋の借主が真っ先に疑われるも、その男も青森・八甲田山の山中で顔面を殴り潰されて死んでいた… かなり猟奇的な事件で真相が気になる導入であるが、この作品に大掛かりな仕掛けやトリックのようなミステリー的に面白いギミックはない(少なくとも私としては無かったと思う) だが、決して詰まらないとは感じなかった ただ、読み終えて「何で…」とは思わずに居られない『真相』に少なからず胸が痛む。確かに一般的に見て誠実では無かっただろう。身も蓋もない言い方をするなら損な性格だっただけ。故に行き違いが生じて誤解が誤解を生んだ。が、命を払う程の罪か?と問われれば、ほとんどの人はNOと答える。ドミノ倒しのように、悪い方へ悪い方へ歯車が噛み合ったが故の悲劇 ミステリーは好きで色々読んでいるつもりだが、こういったタイプにはまだ出会った事が無かった気がする。とびきり良いとまで言わないまでも、比較的読み易い事もあって悪くなかったです |
No.129 | 4点 | サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻- 佐藤青南 | 2025/02/27 20:58 |
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人が無意識のうちに出してしまう反射的な微細行動を見極めて相手の嘘を見抜く事が出来る刑事・楯岡絵麻が活躍するミステリーシリーズの(おそらく)1作目
短編形式となっており、取調室を舞台に、取り調べを受ける被疑者の嘘を見抜き、その先に隠された真実を暴き出すトリッキーな警察小説 相手の油断を誘う言動で侮らせ、不意を突いて嘘を一つ一つ潰しながら追い詰めるというのが大まかな流れとして確立している作品であり、一転して被疑者の嘘を封殺していく様は結構気持ちいいです フィクションとは言え、相手の反応だけで(被疑者自身は一切触れてないにも関わらず)秘密の場所の特定までしてのけるのは実際の所「どうなんだろ?」とか「やりすぎじゃない?」みたいに野暮な事を思ってしまったり、何より前述のように大体の流れが出来上がっているので若干飽きるというかワンパターン気味な印象を受けました |
No.128 | 4点 | 札幌駅殺人事件- 西村京太郎 | 2025/02/25 17:05 |
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西村京太郎作品でお馴染みの「十津川警部シリーズ」であり、特定の駅に注目した「駅シリーズ」とも分類されるシリーズ物の一つ
札幌駅を舞台に、自身を裏切った弟分を殺害して札幌へ逃亡した男を十津川警部らいつものメンバーが追い掛ける普遍的な話かと思いきや、駅内のコインロッカーを悪用した麻薬取引、拳銃を持った殺し屋も現れ、それらが同時進行で事件を起こす事で事態が混迷していくてんこ盛りな作品となってます 上記のように複数の事件が同時に起こる事でボリュームを持たせていると言える作品であり、ある意味では飽きのこない仕上がりになっていますが、ミステリーとして捉えるとちょい薄っぺらい 事態がひたすらにとっ散らかった印象で、盛り過ぎで薄味になってしまっていると感じました |
No.127 | 6点 | 隣はシリアルキラー- 中山七里 | 2025/02/25 12:11 |
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些細な事でも一度気にしてしまうと非常に気になって仕方ない、そんな心理状態が疑心を掻き立てる話の流れが面白いと感じた作品です
また、猟奇殺人を繰り返すサイコパスを扱ったサスペンス作品は数多ありますが、そこに、いわゆるどんでん返しとは若干趣きが異なる真実を設ける事で独自の立ち位置を確立している作品でもあるように思います 読む前に半ば想定していた「騙された」というような快感はないのに、前述した身近な心理状態で共感し易い事も手伝って(いい意味で)不思議と満足度はありました |
No.126 | 5点 | 女が死んでいる- 貫井徳郎 | 2025/02/25 11:37 |
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著者としては数少ない短編集の一つで、バラエティに富んだ8編が収録されてます
文庫の解説によると既に2〜3冊の短編集が出せるくらいには様々な形で短編を書いているらしく、著者の拘り故に短編集自体の冊数は少ないのだという この辺りの事情を知ると「なるほど」と思わせる所は確かにあって、総じて収録された短編の質が高い、もしくは一定の水準を満たしているというのはあると思います(話の好みはさて置いといて) 多かれ少なかれどんでん返しの要素がある上で本格、社会派、誘拐物、果てはライトな作風のミステリーまでミステリーの方向性がバラエティに富んでいながら、あからさまに詰まらないと感じる作品が無かったのは流石だと思う。著者の拘りで収録作品を厳選した結果なのだとしたら納得です(解説を読んでの推測なので事実かどうかは分かりませんが) あと、個人的には表題作の「女が死んでいる」が収録作の中では一番読み応えがあって好きで、「殺人は難しい」に関しては作品そのものよりも世に出た経緯というか初出先が面白いなと思いましたね |
No.125 | 6点 | 鑑定人 氏家京太郎- 中山七里 | 2025/02/24 16:44 |
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元科捜研研究員という経歴を有する鑑定人・氏家京太郎と仲間達が事件の物証から真実を暴き出すサスペンス作品
残忍な手口で女性を手に掛け逮捕されたシリアルキラーが、2人の殺害はすんなり認めながら3人目については自分ではないと否認。誰もが極刑を免れる為の悪足掻きと思う中、先入観のない鑑定を心掛ける氏家達にも危険が迫り…と言った内容で、わりとスラスラ読めて面白かったです また、裁判の進行だとか鑑定手順だとか、普通あまり知る機会がないような舞台裏というか裏事情が丁寧に書かれているので、そう言った点でも興味深かった作品になります 各々のキャラクターが重きを置く理と情、拘りや柵、あとは因縁といったモノでの対立関係も強調されて描かれていた印象で、最新技術を用いた科学捜査(DNA鑑定など)で判明する事実に基づき事件の真実が解明されていくという意味では警察小説にも近しい作風かと思います |