皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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たかだいさん |
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平均点: 5.11点 | 書評数: 159件 |
No.119 | 8点 | 時計館の殺人- 綾辻行人 | 2025/02/17 09:25 |
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綾辻行人が手掛ける「館」シリーズで、個人的には「十角館の殺人」よりもこちらの方が好きな作品です
スケールの大きなメイントリックや、その伏線の貼り方が秀逸で、なんとか閉じ込められた地下の館から這い出た者(のちに口封じされる)のパニックに等しい驚愕のリアクションだとか、食事シーンでカップ麺が美味く感じないなんてさり気ない所まで、トリックが分かると「なるほど」と唸る部分が多分に含まれ、館シリーズとしてもミステリー作品としてもレベルが高いと感じてます 反面、キャラクターに関しては非常に曖昧で、一応、「奇面館の殺人」以外のシリーズは全て読破済みにも関わらず、メインとなる2人のキャラがイマイチ思い浮かばない。奇人変人なら良いってものではありませんが、キャラ付けに改良の余地がある気はしてます |
No.118 | 6点 | ワトソン力- 大山誠一郎 | 2025/02/16 15:46 |
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「アリバイ崩し承ります」といい本作といい作家・大山誠一郎はこういった形式(短編形式でのシリーズ物)が得意なんだろうか?
そんな事はさて置き、本人はごく普通の凡人刑事、しかし彼の周囲にいる者に頭の冴え・推理力を与える特殊能力を持っていた。言わずもがな、特殊設定に基づく短編ミステリー物である 事件は全部で7話あり、それらの合間に差し込まれるプロローグ、インタールード、エピローグもまとめて読むと1本の短編となっている構成。 真っ暗な空間で起きた殺人、飛行機内で毒殺されま男、不可視の凶弾に倒れたオリンピック候補者、バスジャックと同時に発覚した車内の殺人。 一つ一つは小粒な印象もありますが、前述の特殊設定によって容疑者全員が突然探偵となって自説を披露しだす辺りは格式美のようであり、『Aが推理したら穴を突き、次いでBも推理するが否定される、そんな中でCがAやBの推理を一部認めながら正しい真相を言い当てる』大まかに言ってこの流れが確立している点も、本作を楽しみ易い理由なのかも知れない そもそも、1編1編が短編としても短めなので、少しずつ読み進めるのに向いている点で読者に馴染みがない人にも薦めやすい作品でもあると思います |
No.117 | 9点 | 地雷グリコ- 青崎有吾 | 2025/02/15 22:43 |
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個人的にはこの作品を読んでいて真っ先に「ライアーゲーム」を思い出したが、話の内容的に両者は非常に近しいと改めて思いました(あちら程、物騒というかシビアな世界観ではないですが…)
グリコ、ジャンケン、神経衰弱、だるまさんがころんだ…大抵の人に馴染みがある分かりやすい遊びを下地にしているだけあってゲーム内容を理解し易く、それらに特別ルールを付与する事で独特の駆け引きが生まれている辺りも上手いと思う。その上での必勝法の模索や盤外戦術も含んだ騙し合いが行われる為、話の流れとして勝つんだろうなとは思っていても一定の緊張感を保って楽しめました ゲームのプレイヤーとなる真兎のキャラクターも、最初こそ人間味を感じない所があってあんま好きになれないかなと不安でしたが、最後まで読むにつれてそんな上辺に隠れた本心が見えてくると一転魅力的に見えてくるから不思議なものです 話題になっていたのとあらすじを聞いて事前に面白そうだとは思っていましたが、実際、読んだ感想としてはシンプルに面白かったので満足しています |
No.116 | 7点 | 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー | 2025/02/15 10:37 |
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クリスティ作品として「ポアロ」シリーズと双極を成す「ミス・マープル」シリーズは未だ手付かずだったので、まずはという事で本作を読了
相変わらずというべきか、少し前に「ゴルフ場殺人事件」を読んだ時も思った事ではあるが、推理小説の書き方が上手いなと思う 登場人物の皆が皆それぞれに容疑者たる要因や怪しさを持ち、まして本作は、事件が起きて直ぐに警察へ自首する者(しかも2人)が出る所から話が膨らむ事もあって余計に(良い意味で)混迷するのが読んでいて楽しい また、被害者が遺した手紙、当てにならない時計(時間)、何者かから掛かってくる電話、銃声が聞こえたタイミングや、登場人物たちによる噂や証言も謎に拍車を掛ける ラストの謎解きパートで多少「ん?」と思わない事もない箇所はあったものの、それは些細な事と思えるような怒涛の真相に満足出来た |
No.115 | 3点 | クラリネット症候群- 乾くるみ | 2025/02/14 05:51 |
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ある日突然「何者か」に身体を乗っ取られた少女と、壊されたクラリネットと同じ音階が聞こえなくなった少年をそれぞれ主人公とする2編の中編から成る特殊設定の青春ミステリー
まず、前者はブラックユーモアが効いている怪作で、そのオチまで思えばむしろホラー小説な気もします。主人公となる少女も含め大体の人物が大なり小なり狂っていて、最後に皆んなで笑ってるシーンで狂気が最高潮に達するというか異様な読後感を与えます 後者に関しては、前述の特殊設定は踏まえつつ、暗号解読の方が主体となるミステリーです。ただ、これ(暗号)もあまりすっきりする代物で無かった上に、やはりオチというかクライマックスに狂気が混じる為、読後感は良くありません 読み易い部類の小説ではあると思いますが、一方で、話に毒が含まれる分好みははっきり別れる類の作品集かと思われます |
No.114 | 5点 | PIT 特殊心理捜査班・水無月玲- 五十嵐貴久 | 2025/02/13 15:56 |
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プロファイリングや最新のAI解析などを用いて現場の捜査をサポートする捜査チーム・PITの活躍を描く本格派というか現実的な警察小説
通称「V」と呼ばれる猟奇殺人鬼の人物像解析に始まり、その途中からは「ジャック」と呼ばれる別件の殺人犯に関する捜査や、残虐な手口で現職刑事が殺害される等、一際残忍で難解な事件が幾重にも重なって同時進行するボリュームの大きさに、まずは圧倒される また、チーム内のメンバーも一枚岩でない辺りにも深みが感じられ、プロファイルの向上に務める者、AIの力を過信する者、それらを一纏めに反発して地味な捜査に拘る者…個人個人の思惑や考え方が入り混じり、時に激しくぶつかりながら事件に向き合う様には真に迫るリアリティがあったように思います 警察小説としてかなり骨太な作品である一方、それ故に個人的には読みにくさも感じた作品でした |
No.113 | 5点 | 御堂筋殺人事件- 内田康夫 | 2025/02/12 17:42 |
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内田康夫の旅情ミステリーシリーズ「浅見光彦」の一つで、今回の舞台は大阪・御堂筋
御堂筋で行われたパレードの最中、とある地元の有力企業と契約しているモデルが毒に苦しみ、パレードの乗り物から転落して死亡する 元々が雑誌連載の作品らしく、その第1話に当たる上記のインパクトは悪くない そのモデルの死をきっかけに第二第三の殺人も起こり、その最中には謎の強請り電話が掛かってきたり、更に技術盗用といった社会的な謎まで絡んでくるので、全体像が余計に掴みにくく浅見光彦も苦戦を強いられる そこまで派手な作品ではないものの、エピローグにて事件の全容が解ってくると「ほぉ」と感心出来るくらいには上手く事件の流れが繋がっていて悪くなかったです |
No.112 | 3点 | 名探偵のままでいて- 小西マサテル | 2025/02/11 22:29 |
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認知症を患い、日常的に幻視に苛まれる元名物校長の祖父
いわゆる安楽椅子探偵と呼ばれる探偵にしても、かなり攻めたキャラ設定かと思います とは言っても、前述の病はありながら、煙草の紫煙を吹かしつつ、思わず聞き入る語り口で孫が持ち込む様々な謎に対する推理を聞かせてくれる。このお爺ちゃん、中々、良い探偵をしていると思う 本作は基本的に孫が謎を持ち込み、祖父が答えるの繰り返しから成る連作ミステリーで、個人的にあまり好きではない日常の謎も多分に含まれる内容となっています そのせいか、私としては設定の面白さは認めながらも、正直あまり面白く感じなかったです クライマックス辺りで盛り返して来ますが、読んでいて中弛みしてしまいました |
No.111 | 7点 | 犬神館の殺人- 月原渉 | 2025/02/11 18:07 |
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実際に読んだのはちょっと前なんですが、猟奇性とある種の幻想が同居した独特のシチュエーションがお気に入りの作品です
3つの扉の奥にある部屋。部屋を隔てる3つの扉には人が入る箱があり、扉が開けられるとギロチンが落とされ、中の人を寸断してしまう。要は、「人を3人殺してまで密室を破りたいですか?」という人の命を盾としたある意味で物理的かつ精神的な鍵が掛けられている 新興宗教の儀式という体で作り出されたこの独自のシチュエーションに加え、問題の部屋には凍りつき氷像と化した死体があり、最奥へと逃げた筈の犯人は忽然と消えていたという所までがメインの謎となる いわゆる館物の本格ミステリーとしてテンプレ的でありながら、独自の持ち味もきちんと持ち合わせた秀作だと思います |
No.110 | 4点 | 仮面劇- 折原一 | 2025/02/10 20:02 |
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完璧な計画に基づいて実行された保険金殺人に端を発し、その後、謎の脅迫者との対決を経て、とある人物による自宅監禁へと結び付いていく…そんな話だった筈
本作は三部構成になっており、そのうち二部までは面白かった記憶があります。個人的には脅迫者との対決までがピークで、それ以降の展開は取ってつけたように感じられたのが理由です 著者の持ち味(叙述トリック)も活きていたと思うし、無駄に複雑過ぎない分、分かりやすい話ではあったと思います それだけに三部の展開(話の〆)がイマイチだったのは残念です |
No.109 | 3点 | 死仮面- 折原一 | 2025/02/10 19:43 |
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なにが現実で、なにが虚構か…次第にあやふやになって驚愕の真実へ⁉︎
そういった狙いの作品なのは理解してますが、それを踏まえてもこの小説に面白味を見出す事が出来ませんでした クライマックス辺りはサスペンスとして少し興が乗ってきた部分はありましたが、全体的には肉付きのない骨格標本とでも言いますか、なんか単調で退屈に感じてしまいました |
No.108 | 5点 | 螺旋館の殺人- 折原一 | 2025/02/10 15:40 |
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私は「螺旋館の奇想」と改題された文庫本を読んだので気にならなかったものの、原題のまま本作を読むと本筋と違った意味で騙された、もしくは肩透かしと思うのも分かる気はします
山奥に隠居する大御所が十年ぶりに本格ミステリを執筆する所から話は始まり、ファンだという女性の来訪を受けながら完成した原稿が紛失。後にとある盗作疑惑が持ち上がる あらすじは中々に面白く、比較的読みやすい文章でスラスラ読める魅力はあります 本作に関しては著者お得意の叙述も二重に張られていて、そこまで複雑じゃない分、分かりやすかった(親しみやすかった)気がしました |
No.107 | 2点 | 潜伏者- 折原一 | 2025/02/10 15:04 |
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正直言って読み終わって得た感想が、「コレ何が面白いん?」というある種の戸惑いでした
叙述トリックの名手と知られる作家・折原一は、面白いと詰まらないがかなり極端なピーキーな作家というのが個人的な主観なのですが、本作は後者でした… 「○○者」という一種のシリーズで、中でもタイトルに惹かれて読み進めましたが、複雑な割に叙述に嵌ったというカタルシスもあまり無く、淡々とした印象 思ってた話とちょっと違ったなという感じで、退屈に感じてしまいました |
No.106 | 6点 | 夜葬- 最東対地 | 2025/02/10 12:57 |
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日本ホラー小説大賞の読者賞を受賞した作品
ミステリー要素も含むホラーはチラホラ読んでいたが、この手の純粋なるホラー小説となると久々な気がする 死者の顔を抉って地蔵の顔に埋め込み、顔のない遺体に供物を詰めて弔う なかなか衝撃的な土着信仰に基いた怪奇現象を描いた作品で、過去の似た傾向の作品を挙げるとすれば、かの名作「リング」がストーリー展開としても近いだろうか 個人的には古き良きジャパニーズホラーのテンプレに則った良作だと思った。純粋なホラーが久々で、新鮮に感じられたのもあったかも知れない 話にスピード感もあって、グロさと怖さも程よい作風で読み易いホラー小説だと思います |
No.105 | 6点 | 蘇る殺人者 天久鷹央の事件カルテ- 知念実希人 | 2025/02/09 05:27 |
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今回のテーマは、死者蘇生といった所でしょうか
連続猟奇殺人が起こり、犯人の目星も付いている。唯一、問題なのはその人物は既に死んでいて、しかも、その死亡判定をしたのが他ならぬ天久鷹央その人であるという一点 読んだのが一年くらい前なのでうろ覚えですが、確かそんな筋書きだったかと思います 本作も例に漏れず、ミステリーとして楽しみつつ、人体の不思議を純粋に学べる内容となってます。まして今作のような事例は医療関係者でなければ知る由もない内容ながら、「そんな事が起こるんだ」という関心度合いはシリーズ中でも屈指の印象で楽しめました |
No.104 | 5点 | 変な家- 雨穴 | 2025/02/08 16:17 |
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まずYouTubeの動画を見る機会があり、雨穴氏の動画は粗方興味深く観させつつ頂きました
その上で、この「変な家」の書籍化が発表され、発売当時も楽しみにしていたものです で、その感想ですが、良いとも悪いとも言い難い… 怪しい間取り図は更に2枚追加、それに伴い怪し気な新キャラや旧家の因習が絡んでボリュームはアップしている でも、正直言って動画で見た「変な家」(本書でいう1話もしくは1部に当たる)で完結していた方が気味の悪さといい、話の余韻といい、想像の余地がある分、いろいろと膨らませて楽しめていたと思うのです 雨穴氏の話の持ち味はリアル寄りな薄気味悪さだと私は思っているので、本書のように左手供養(...でしたっけ?)みたいなB級ホラーの要素を出されるとなんか冷めるんですよね 色々文句は言ってますが、詰まらなくは無かったですよ。雨穴らしさが薄れてる印象はありつつ、ホラー小説としては普通に楽しめます。少なくとも、あの映画版とは雲泥の差です |
No.103 | 7点 | 不死症- 周木律 | 2025/02/07 17:51 |
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冒頭いきなり瓦礫の中からスタートし、訳も分からないまま生存者が集まり出した所で、一般的に言う所のゾンビに当たる異形「ウェンディゴ」の襲来…
まさに、カプコンの名作タイトル『バイオハザード』が日本で起こったらこうなるといった感じに話が進みます 純然たるバイオホラー物ではありますが、主人公の失われた記憶にもある種の仕掛けがあり、ミステリーとしての側面もあって飽きさせません また、希望と絶望の調整が絶妙で、単なるサバイバーで終わらない魅力があるように感じました 元々バイオハザードシリーズが好きで、こういったバイオホラー、サバイバルホラーも好きなジャンルだから嗜好に合っていたのも多分にありますが、この手の小説としてはわりと薦められる完成度だったかと思います |
No.102 | 4点 | 図書館の美女- ジェフ・アボット | 2025/02/06 17:13 |
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とある田舎町で頻発する爆破事件、土地開発に揺れる開発業者と反対派の不和、そこにかつての恋人が現れて混沌とする中、遂に殺人事件まで起こる
なにかと詰め込まれた印象があり、事実、それに振り回されて(負傷もしながら)事件に巻き込まれていく図書館長ジョーディの活躍を描く「図書館」シリーズの2作目 話自体は真相も含めてなかなか面白かったです。登場人物は曲者揃いで、特にいかにも黒っぽいのに白くも見える終始灰色な元カノの存在感は大きかったように思います ただ、個人的に引っ掛かったのは主人公・ジョーディのキャラクター。私が前作を読んでないから余計にそう感じるのか、そこはかとなく良い人風な割に優柔不断、元カノに対する接し方なんかも嫌悪感が湧くなど、主人公として決して好きになれないタイプの人物でした |
No.101 | 3点 | 連続殺人鬼 カエル男- 中山七里 | 2025/02/06 10:07 |
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中山七里はわりと好きな作家だし、本作に関しても「このミステリーがすごい!大賞」の最終候補の一つに選出された程で、氏の代表作の一つなのは間違いない
…が、面白かったか?と問われると、私は首を傾げる 幼子がカエルを苛めるように幼稚で残虐な犯行を繰り返す殺人鬼「カエル男」の正体に迫るサイコスリラー的な話で、いわゆる『序破急』といった感じのスピード感がある語り口が魅力だとは感じた しかし、良かれ悪かれ勢い任せな印象で、特に住民達が暴徒化して警察署を襲うシーンなんかは演出過剰な気がして、個人的には冷めてしまった また、この手の犯人(サイコパス)としてキャラ付けが微妙というか作り物めいて感じられたのも楽しみ切れなかった一因かもしれません(似た感じ方をしたサイコパス犯人としては「レモンと殺人鬼」の「ウシワカ」とかもそうでしたが…) 私としては中山七里の作品としては「護られなかった者たちへ」や「隣はシリアルキラー」のほうが断然オススメ出来ますね |
No.100 | 5点 | 架空犯- 東野圭吾 | 2025/02/04 15:18 |
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とある夫婦が死亡し、稚拙な自殺偽装に隠された意図であるとか、秘された人間関係であるとかが徐々に浮かび上がり、入り組んだ果てにある一つの真相に辿り着くまでの流れが素晴らしい
ガリレオシリーズは勿論、一見似た傾向がありそうな加賀恭一郎シリーズとも一線を画す警察小説だったかと思います ただ、個人的に東野圭吾作品にしては本作はちょっと読みにくく感じて、読み切るまでいまいちペースが上がらなかった印象です |