皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
たかだいさん |
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平均点: 5.19点 | 書評数: 81件 |
No.81 | 1点 | 元彼の遺言状- 新川帆立 | 2025/01/20 23:15 |
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事件のきっかけになる異質な遺言状や、その後に起こる弁護士殺害と盗まれる金庫など魅力的な謎、それらがスピーディに進みながらも綺麗に纏められているとは思います
しかし、それ以前に主人公のキャラクター性がとことん無理でしたので、読むのがひたすらに苦痛でした(一応、折角買ったので読み切りましたが…) いわゆる『強い女性』を描きたかったのかと思いますが、個人的に主人公に対して感じたのは強さとかいうポジティブな印象より、ガメつく傲慢な鼻持ちならない女というネガティブな印象しか受けず、最初のプロローグ的な章の時点で「なんだコイツ…」とひたすらにドン引きでした ミステリーとしての面白さ・新しさはあったものの、主役のキャラが致命的な位に私とは相性最悪で、全てを悪い意味で打ち消してくれました |
No.80 | 4点 | 天河伝説殺人事件- 内田康夫 | 2025/01/20 18:39 |
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旅情ミステリーの大家として知ってはいても作品は未読でしたので、軽く調べて氏の代表作に数えられる本作をチョイスしてみました
内容としては、古典芸能の「能」がテーマとなっており、能の宗家にまつわる不審死、更に東京で起こった毒殺事件の謎に、浅見光彦が巻き込まれていく話 とりあえず、(先入観もあるかも知れませんが)2時間サスペンス的なストーリーだなと思いつつ、幾つもの謎が少しずつ順当に分かってくる流れは丁寧で安定感があったように思います 相応に重めな話を綺麗に纏めている印象がある反面、飛び抜けた所が見当たらない作品でもあったと感じます また、十津川警部並みに知名度はあると思われる本作の探偵「浅見光彦」ですが、少なくとも本作を読んだ限り、キャラクターとしてパッとしないのも難点かと…。本人曰く「落ちこぼれ」でダメ人間らしいですが、あまりそういった感はない為、例えば普段と調査の過程でギャップが生じるような魅力もなく、「普通に優秀な人じゃね?」という面白みの薄いキャラになってしまっていたように思います |
No.79 | 4点 | 東京・山形殺人ルート- 西村京太郎 | 2025/01/18 18:40 |
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身元不明のバラバラ死体が発見された事を皮切りに、僅かな手掛かりに縋って十津川警部が山形に赴くトラベル・ミステリー作品です
文庫本には「本格推理小説」とありますが、作風としてはサイコパスを扱うサスペンス物となります 引き起こされる凄惨な事件など前提となる設定が結構面白く、個人的には僅かな手掛かりから捜査線上に挙がった男「黒田」のキャラクター性が割と好きで、捜査線に名が出るや自ら十津川警部に接触を持ち、疑われている前提で嘲笑うように捜査を掻き回す。愉快犯的であり、言葉巧みに女性を信用させる詐術の持ち主であり、大胆不敵で抜け目のない狩人でもある「黒田」のキャラクターが、この作品のすべてと言ってもあながち言い過ぎではないかと思います ただ、それだけにラストが呆気なさ過ぎた感が否めない。その直前に、十津川警部との水面下での攻防に勝利しているだけに、余計、唐突に負けた感が拭えなかった そこが残念に感じた点であり、詰まらなくはないがイマイチという評価に繋がったポイントです |
No.78 | 4点 | 爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー- おぎぬまX | 2025/01/12 17:02 |
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お蔵入りの憂き目にあったご当地ヒーローが、誘拐犯や薬の売人といった悪人を殺害するという奇抜なストーリーが特徴的な作品
また、ストーリーの奇抜さの中にきちんとミステリーとしてのロジックというか面白みが軸としてある為、ただのキワモノで終わらない魅力のある作品だと感じました ただ一方で、パワハラ三昧で部下に(控え目な表現で)根性焼きを強要するような制作会社の社長など負のキャラ付けをされた人物も多く、個人的にそういった人物は総じて胸くそだったのであまり好きになれず、読後感も悪かったです ミステリーとしての骨組みは面白いがキャラデザで印象があまりに悪い作品、というのが個人的な所感ですね |
No.77 | 5点 | 吸血鬼の原罪 天久鷹央の事件カルテ- 知念実希人 | 2025/01/11 08:32 |
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アニメの放送も好調な知念実希人の「天久鷹央の推理カルテ」シリーズの一つで、今回は『吸血鬼』をテーマに挙げている作品
失血死した外国人が発見された事を機に傍若無人な鷹央先生が謎の解明に乗り出し、いつも通り、『吸血鬼』と病の関わりが暴かれていく流れは最早、安定感すらあって気軽に楽しめる 尤も、今回の話では海外実習生制度の闇や、それに伴う反社組織による組織犯罪にも焦点が当てられる都合上、若干の重さがあった気はします シリーズを通して突き抜けた魅力は弱い印象ながら、安心して楽しめるクオリティではあったかと思います |
No.76 | 2点 | ルパン三世 THE NOVEL 謎の宝石と伝説の王国- 井上尚登 | 2025/01/08 18:47 |
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馴染み深い「ルパン三世」の完全オリジナルストーリーを、以前読んだ「T.R.Y.」の著者が書くという事で期待したのですが、正直言って微妙な出来…
ミステリーやハードボイルド系としては薄っぺらく、ライトノベルとして見てもハラハラしない どの角度から見ても、あまり面白くない 全体を通してなんだかんだでルパン一味に余裕がありストーリーに緊迫感が感じられず、次元と五右衛門対策で呼ばれた殺し屋との死闘もあっさり終わり、古の大公国由来の傭兵やその首魁にしても語る程の魅力がない あまりにあっさりし過ぎて、なんとなく「ルパン三世」の世界観は壊してないってくらいしかフォロー出来るポイントが思い付かない作品でした |
No.75 | 4点 | 全員犯人、だけど被害者、しかも探偵- 下村敦史 | 2025/01/05 17:18 |
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廃墟に閉じ込められた男女。犯人以外は全員、毒ガスで殺される。そんな状況下で、各々がいかに自分が犯人であるかを語り、またその騙りを周囲が否定する。果たして、最終的に『犯人』と認定される生者は誰か…
コンセプトが非常に面白く、ある意味で話の全てを物語るタイトルも非常にユニーク しかし、個人的にはそこ留まりに感じた作品でした 既に自殺として処理された社長の死を「あぁでもない」「こうでもない」と考察(自白)するのが主な流れなんですが、自白しては否定されが何度も繰り返されるので、ちょっと単調に感じてしまったのが理由かと思います |
No.74 | 5点 | アリス殺し- 小林泰三 | 2025/01/04 12:42 |
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個人的にはホラー小説のイメージがあった作家・小林泰三による独特な世界観を有する個性派ミステリー
「不思議の国のアリス」の世界観に則った夢パートと、主人公含めて大学周辺の人々が暮らす現実パートが交互に繰り返される中、夢パートで殺人(?)が起きるとその死が現実にも影響する事に気付いた事からストーリーは動き出します ホラーのようであり、SFチックでもあり、でもちゃんとロジカルなミステリーという不思議な魅力があり、大元の「不思議の国のアリス」の世界観を壊す事なく一つのミステリー作品として仕上げている印象があって好感度も高いです ただ、試みやプロットは面白いと思いつつ、文章等に少し読みづらさがあった為、総合的には真ん中の5点評価に落ち着いた感じです |
No.73 | 6点 | レモンと殺人鬼- くわがきあゆ | 2025/01/02 13:55 |
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読んでみてまず思ったのは、意外と闇深い話だったなって事
終盤に掛けての怒涛の展開、どんでん返し云々も勿論良かったと思うのだが、何より登場するキャラクターの二面性が凄く闇を感じる 物語の主役である主人公からして大人しいキャラと思っていると(過去のせいもあって)どこか精神的に壊れている部分が見え隠れしてくるし、味方サイドかと思いきや態度が豹変し、嫌味な敵かと思っていたら(何かに)怯えているのを必死に隠していたり…、人物の表と裏、光と闇が克明に描かれている印象があった それが悪いとは思わないし、この作品の味だと思うのだが、その結果としてこの作品は闇が深いという印象になった気がする いわゆる、嫌ミスの類ではない(個人的主観)ですが、ちょっと万人受けするタイプのミステリーでもないかなと思います |
No.72 | 5点 | 仙台駅殺人事件- 西村京太郎 | 2025/01/01 09:39 |
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特定の駅をメインに据えた十津川警部シリーズの一つ「駅シリーズ」の仙台駅Ver.です
ある女性が住むマンションの自室で男性の遺体が発見され、なにやら恐喝されていた痕跡がある女を追って十津川警部と亀井刑事のコンビが仙台駅へ向かうというストーリー 一応、本格推理小説と銘打たれていましたが個人的には推理小説というよりサスペンスかなと思うのは、本書も同じでした 地道な調査によって事件の全容が少しずつ分かってくるという形式で話が進むので、事件の背景や犯人の正体といった部分に推理の余地は微妙にあるかも知れませんが、特別、何かしらのトリックが仕込まれていたりも本書には無かったですしね とは言え、女の行方を主軸としながら、事件の背後に見え隠れする恐喝犯の存在や、連鎖的に引き起こされる殺人、一筋縄にはいかない関係者達などを西村京太郎らしい安定感のあるトラベルミステリーだったかと思います |
No.71 | 5点 | 廃遊園地の殺人- 斜線堂有紀 | 2024/12/31 17:47 |
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とある遊園地のプレオープンで起きた銃乱射事件に端を発し、廃墟化した遊園地を舞台に殺人が起こるお決まりの流れ
一癖ある主要人物達、廃墟マニアにして謎の資産家、廃墟の所有権を賭けた宝探し、着ぐるみを着て串刺しにされた遺体、炎上する施設、過去の事件に秘められた事柄を告げる告発 なかなかに面白い謎が提示され、順当に解決していく為、読んでいて心地良いです 敢えて難を挙げるなら、ストーリー展開が内容の割に平坦かなって所ですかね また、主人公含め魅力的とまで感じるキャラが居ない点も、ちょっと寂しさを感じた所以かも… 面白いか面白くないかで言えば、面白い。だが、今一歩足りない。そんな作品だったように思います |
No.70 | 7点 | そして誰かがいなくなる- 下村敦史 | 2024/12/30 06:41 |
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聞くところによると作者自身が建てた自宅を、そのまま本書の舞台に利用している作品だとか。なかなか挑戦的で、その試み自体が既に面白い
肝心の中身に関しては、ミステリー史における古典的名作を思い起こさせつつ、独自の面白さを出す事にも成功している気がします 謎の覆面作家、そんな(知名度と反比例して)不詳の男に呼び集められた男女。そこで「とある盗作の告発」を予告され一堂が困惑する中、家主の覆面作家が悲鳴と共に姿を消してしまう わりと王道のクローズドサークル物となっており、館の構造を利用した大胆なトリックも、個人的には好きでした |
No.69 | 8点 | 護られなかった者たちへ- 中山七里 | 2024/12/28 06:20 |
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本来なら最後のセーフティとして機能する筈の社会保障制度、そこから零れ落ちる者もいるという厳しくも残酷な現実を背景に、被害者を拘束して餓死させるという時間掛けた(ある意味で)最も残忍な手口で殺人を行うに至った経緯が語られる社会派ミステリーの傑作
犯人の正体や事件の真相であったり事件自体の謎も勿論面白いのだが、なにかと理由を付けて生活保護を受けさせて貰えない者が居る一方、規則を破って生活保護を不正受給する輩も居る、そんな制度の闇が克明に描かれ、思わず考えさせられる作品です |
No.68 | 5点 | 臨床真実士(ヴェリテイエ)ユイカの論理 文渡家の一族 - 古野まほろ | 2024/12/28 05:59 |
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個人的には、挑戦的というか、かなり個性的なミステリーだと感じました
複数の証言を基に嘘つきを当てる、いわゆる「嘘つき村と正直村」クイズをミステリー小説に仕立てた。そんなイメージが一番近いかと思います 相手の嘘が瞬時に分かってしまう疾患を抱えた探偵役が、とある大事故を契機に一族郎党で山奥に引き篭もってしまった旧家の血生臭いいざこざに介入するストーリーです 前述のクイズの要領で謎を解いていくロジカルな作品ですが、「嘘」に並々ならぬ拘りが見られ、単純に嘘と言っても、故意的にわざと吐いた嘘に、本人にその気はないが実際には嘘といった変則パターンも加わる為、嘘が細分化され謎解きの難易度を上げている気がします 勿論、それだけがこの作品の全てではないし、一族の秘密や暗号、被害者が殺される理由などミステリー小説的な見所もある良作だとは思います |
No.67 | 6点 | 覚悟はいいかね、ボンド君- ジョン・ガードナー | 2024/12/27 22:56 |
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イアン・フレミング財団公認の作家ジョン・ガードナーによる「007」シリーズの6作目
とりあえず、ジョン・ガードナーが手掛けたシリーズの中で、最もスパイ小説らしい作品 かつて秘密作戦に従事して敵地から亡命した女達が次々と『処刑』されていく。休暇という建前の元、孤立無援のミッションに挑むボンドの前に、あの仇敵の影もチラつき始める 王道のスパイ小説って感じのするあらすじで、秘密作戦の真実、味方の情報を洩らす裏切り者の存在、熾烈な攻防を繰り広げた組織との邂逅、敵味方が二転三転する予想不能の展開等々、ハラハラする展開の連続で読み応えは抜群 個人的にはクオリティの高い作品、かつジョン・ガードナー版の「007」としては最高峰の1作だったかと思います |
No.66 | 5点 | あなたが誰かを殺した- 東野圭吾 | 2024/12/25 22:30 |
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一度に発生した死傷者数が比較的多く、犯人も捕まっているという状況下、腑に落ちない被害者遺族がもう一度集まって事件の考察を行う事になる
なかなか凝った趣向が目を惹く作品で、内容としては可もなく不可もなく 個人的には加賀恭一郎シリーズで似たようなタイトルのシリーズが2作程ありますが、そちらのように「真相は自分で推理してね(答え合わせなし)」のパターンじゃなくて安心したって部分が本音だったりします |
No.65 | 3点 | 回廊亭の殺人- 東野圭吾 | 2024/12/22 19:12 |
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恋人を殺され、自らも襲われた女が自分の死を偽装した上で『老婆』に化けて復讐の機会を窺う
なかなかパンチの利いた前提設定だと思い、読む前からある程度、期待をしていた作品 実際には、女が復讐を開始する前に1人が殺さた為にそれどころではなくなり、復讐に暗雲が立ち込めてくる まあその流れは別に良いのだが、いかんせん事件としてインパクトがない 真相に関してはまあまあ良いと思いつつ、勝手ながら期待した程ではなく、若干退屈に感じてしまいました 正直、オチも微妙で、女の正体がバレかかる終盤からのラストまでが、どうにも「そうじゃない」もしくは「コレじゃない」感が… |
No.64 | 3点 | オーデュボンの祈り- 伊坂幸太郎 | 2024/12/22 02:20 |
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独創的な作品が多い印象のある個性派作家という認識がある伊坂幸太郎のデビュー作
コンビニ強盗をきっかけに外界から隔絶された孤島に連れて来られた主人公が、一癖も二癖もある島民との交流を経て、散りばめられた謎にも触れていくミステリー的な幻想小説(だと思います) とにかく独特の世界観で描かれる一風変わった作品で、前述した癖の強い個性的な登場人物が織りなす不思議な人間模様が魅力の作品かと思います そんな中、喋るカカシ(⁉︎)が殺されるという事態が物語を加速させ、その謎が本作最大の見所です とまぁ好意的に書きましたが評価が非常に難しい作品でもあり、個人的には好みの問題でイマイチとさせて頂きます |
No.63 | 6点 | 殺人偏差値70- 西村京太郎 | 2024/12/22 00:20 |
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西村京太郎によるノンシリーズ物の短編を収録した短編集
氏の代名詞であるトラベル・ミステリー物はなく、十津川警部も1編にゲストで登場する程度で基本登場しない そんな本書の中身だが、嘘の爆破予告をして受験に間に合った浪人生、沈没しながらも全員生還した奇跡の漁船、TVで紹介された人力車曳きの女性、自殺を図った有名レーサーの恋人、謎の失踪を遂げる官僚、秘密を売買する謎のクラブ、罠に掛けられた新社長、助けを求める旧友ーと、なかなか個性的な話が収録されてます 中でも初っ端に収録されている「受験地獄」は発想から皮肉なオチまで面白くて好きな作品です 漁師にまつわる問題を根底にした作品や、マスコミ業界に関わる問題提起的な作品もあって、短編とはいえ満足感はある収録内容だったかと思います |
No.62 | 2点 | ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!- 深水黎一郎 | 2024/12/21 07:13 |
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文庫本の「最後のトリック」の方を読みましたが、いまいち納得はいかず…
古今東西、ミステリー小説のパターンは数あれど未だ誰も成し遂げていない『読者が犯人』というパターンに果敢に挑戦した意欲作ーというのは評価に値すると思います 作中におけるその実現方法(やり方)はミステリーという分野に一石を投入する物だとは思うのですが、面白かったか?と問われると個人的には、否 前提条件が難しいから仕方ないんでしょうが、そんな真相で被害者が死んだと言われても… |