海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

みりんさん
平均点: 6.66点 書評数: 533件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.353 7点 人間椅子- 江戸川乱歩 2024/09/24 10:08
可愛らしいデザインの角川文庫のもので読みました。
『人間椅子』は乙女の本棚シリーズで読んでいたので再読。
初読時はよくぞこんなニッチな異常性癖を…と楽しみましたが、あの『芋虫』を読んでしまった後はまだまだ振り切れていないなと。感覚器官欠損の美学として『芋虫』は『人間椅子』の強化版です(私見)。そして、最後の最後でリアリズムというか、著者の中の理智が勝ってしまったような葛藤が読み取れる。
『目羅博士の不思議な犯罪』は鏡(模倣)の恐怖をテーマにしていて、怪奇短編『鏡地獄』が探偵小説寄りになったような感じか?これは両者引き分け。なんだかこの目羅博士、夢野久作の作品にも出てきそうな感じがする(笑)
『押絵と旅する男』も人ならぬものに恋煩った男の話。これもどこか『人でなしの恋』とダブる。老化はやはり人生における最大の敵ですな。

No.352 5点 ポー詩集- エドガー・アラン・ポー 2024/09/24 00:34
短編『ライジーア』からポーの詩集に興味を持って読んだ。リズムや旋律、韻が大事な詩を翻訳版で読んで、果たして意味があるのか?それは知らん。
『大鴉』は詩人ポーが名声を得た出世作。愛するレノアを失った男はただの鴉を見るだけでも激情に駆られる。亡くなってしまった人はネバーモア(またとない)ゆえに正気ではいられない。うむ、こんな単純な解釈しかできん(^^;)
詩の内容がかろうじて理解できなくもないのは、私からするとこの『大鴉』と『アナベル・リイ』と『黄金卿』あたりか。
ポーは母親や義母、従姉妹の妻など、愛する女性達に尽く先立たれているそうです。その暗澹たる人生のためか、女性に関する詩は神秘的な美しさの陰で底知れぬ寂寥感を伴う詩ばかりですね。愛する女性の死を詠うポーの哀愁と憂鬱を感じ取れたらひとまずは良いのかな。

No.351 7点 黒猫・アッシャー家の崩壊 -ポー短編集Ⅰ ゴシック編-- エドガー・アラン・ポー 2024/09/23 20:18
【注意】【感想の最後にダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』のネタバレのようなものがあると思われる(うろ覚え)】
再読はほぼしない私だが、エドガー・アラン・ポーはお話について行くだけで精一杯なので2周するくらいがちょうど良い。巽孝之氏の解説を読んで結構満足。
『黒猫』は何度でも読める犯罪小説。
『赤き死の仮面』は初読時には雰囲気に惑わされていたが、7つの部屋は一体何を表しているのでしょうかね。最後が「死」を表しているのだとして、人生におけるターニングポイントのようなもの?それともすべて死にまつわる何か?うーんわからん。「仮面の人物に実体がなかった」というのも不思議だ。実体を伴わない方が恐怖が増大するというだけの理由でそうしたとは思えない。うーんわからん。結論:再読してもわからん。
『ライジーア』は意志は肉体を超越するということについてだけど。最後の"奇跡"については、ライジーアの意志なのか語り手の意志なのか、対象が謎ですよね。ポーの詩集も読んでみるかな。
『落とし穴と振り子』は幻想風味はなく、リアリティと臨場感溢れる脱出ホラー。まあまあ。
『ウィリアム・ウィルソン』はドッペルゲンガーを扱った恐怖小説。今読むとよくある話だなあと思ってしまいますが、やはりポーがこのジャンルの先駆者なのでしょう。

私の頭の中でガバガバゴシック方程式ができました。『ライジーア』+『アッシャー家の崩壊』=『レベッカ』

No.350 7点 黒蜥蜴- 三島由紀夫 2024/09/20 22:58
『金閣寺』を読んだ時に三島由紀夫が本サイトに登録されていて驚いた記憶があるのですが、『黒蜥蜴』のおかげだったのですね。
謎解き要素や怪奇趣味を薄めてロマンスを主軸にしたため、かなり別物になっています。戯曲版ゆえにセリフや演出がすこぶる洒落ていて、何度も読み返したくなるようなセリフがたくさんありました。
なんといってもルパン三世『カリオストロの城』の誰もが知る銭形警部のあの有名なセリフ!アレですよ!まさか元ネタが三島由紀夫だったとはね…(未調査)

原作だけでなく、こちらも絶対に読むべきですよ。あ〜『黒蜥蜴』の舞台どっかでやってねえかなあ…

No.349 7点 心理試験- 江戸川乱歩 2024/09/13 01:47
本サイトに登録されている乱歩作品の中で最高評価を受けているのが本作。この雑味のないシンプルさと心理分析の納得感に起因しているのでしょう。罠の引っかかり方だけを抽出すれば犯人はただのアホにしか見えないところなのだが、犯人の行動原理を的確にプロファイリングした明智の賢さを実に巧みに示している点が流石乱歩だと思います。


【ネタバレのようなもの】



お金を半分だけ盗む→自演で交番に届ける
もし仮に強盗目的であることが発覚しても、逮捕には繋がらない。これ何気に賢いなと思いました。これのせいで疑われたことを差し引いても、なかなかのトリックじゃあないですか?

No.348 6点 D坂の殺人事件- 江戸川乱歩 2024/09/13 00:08
日本最古の密室もの(1925)らしい。ソースはwikipedia(^^;)
海外ではポー、ドイル、ルルーなどが既に優れた密室を生み出していた中、本作の功績は「日本の家屋で密室を成立させるのは不可能」という定説を覆したことらしい。ほんとですか?じゃあ+1点しとくか。
全体的に『モルグ街の殺人』の影響が色濃く出ているのを感じますが、真相のぶっ飛び具合で遠く及んでいないという印象。明智小五郎という探偵が有名になりすぎてしまったのも一つの弊害か。
密室ものだけどその構築方法は肩透かしで、HowよりWhyの方がはるかに印象に残りました。

No.347 6点 黒蜥蜴- 江戸川乱歩 2024/09/11 13:15
明智ィ〜さすがにモブ盗賊の命の扱い酷くねえか?笑
流石に誘拐犯対名探偵の頭脳戦はご都合主義で子供騙しに感じてしまいましたが、私は好敵手から想い人へと変わってしまう黒衣婦人のヒロイン小説として楽しみました。最後のキスシーンで、毒を口移しにして共倒れエンドにしていたら、私の好みの結末でした。
三島由紀夫ってこういうのも好きなんだ、意外。三島由紀夫版も読まないとねえ…

No.346 8点 芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2- 江戸川乱歩 2024/09/10 17:27
表題作『芋虫』はあまりにも凄惨を極めた内容で衝撃を受けました。評点は『芋虫』だけの評価。
外界からの(性的)刺激を受信する感覚器官の欠損という点で『人間椅子』に通ずる異常性愛の形であると読み取ることもできます。
『人でなしの恋』は性愛の異常さでいえば、『芋虫』には遠く及びません(我基準)が、両作ともに残された妻は生涯罪の意識に苛まれることでしょう。

探偵小説的趣向が強いのは『夢遊病者の死』とせいぜい『双生児』くらいで他はほぼ怪奇小説。
『芋虫』と『人でなしの恋』以外は正直4〜6点ほどで、『踊る一寸法師』が結構よかったかな。元ネタのエドガー・アラン・ポー『ちんば蛙』も読まねばならん。

あと巻末の三津田先生の解説が良い。未収録の『陰獣』で解説を〆るほどお気に入りなのが面白い。

No.345 6点 暗黒星- 江戸川乱歩 2024/09/10 01:57
このレベルのミスリードにすっかり騙されてしまうのは私くらいなものか…(苦笑)
手垢のついたプロットかもしれないが、少年の気持ちになって雰囲気を存分に楽しんだ。「暗黒星」とは明智小五郎にとってだけではなかった。伊志田一家にとっても、十年以上目に見えぬ脅威として鳴りを潜めていた。まさに隕石級の底知れぬ執念がそこにはあったということか。

No.344 6点 屋根裏の散歩者- 江戸川乱歩 2024/09/09 22:40
犯罪のもつ魅力に取り憑かれてしまった男。狂人の異常心理を扱った犯罪小説パートが80%、シンプルなトリックと明智小五郎の冴え渡る推理を楽しむ本格探偵小説パートが20%。どちらかというと前者が乱歩の持ち味かな〜という風に思います。こういうトリックも好きですけどね
そういえば『陰獣』にもこんなやついたなあ。というか元ネタか。読む順番逆だったな。

No.343 7点 迷蝶の島- 泡坂妻夫 2024/09/08 21:31
長編は極めて本格プロットだった泡坂妻夫(たぶん)、第五長編ではじめてサスペンスに舵を取る。
清涼感あふれる青春の幕開けかと思いきや愛憎渦巻く三角関係へと発展し、中盤以降は船と孤島でのサバイバル。本格成分薄めでありながら、小説として大変面白くて一気読みしてしまいました。そして毎度アーサカさんに騙される私。
精神科医の分析がいい味出しています。逆にこれがなかったらアンフェアとまではいかなくても不満だったかも。

No.342 7点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2024/09/08 12:26
うーんこの人今のところハズレがない。すごい。
いつもの泡坂流逆説が楽しく、なかでも『椛山訪雪図』は芸術的な域の"騙し"に仕上がっています。『歯と胴』は短編集の中では一風変わった倒叙もの。某技術は1980年頃には既にあったのか…現代ほど浸透していたら、逆に特定には繋がらないだろうなと。『開橋式次第』の鮮やかな伏線と論理は『亜愛一郎の狼狽』を彷彿とさせ、読後清々しい気持ちになります。特に上記の3つが気に入り、泡坂短編集の最高傑作との評価にも頷けます。まだ短編4作しか読んでないけど。

No.341 7点 信仰- 村田沙耶香 2024/09/07 13:20
世の中には虚業(超広義)があまりにも多すぎますよね。コンサル、銀行、商社、保険、広告代理店など挙げ始めるとキリがありません。そして虚業ほど儲かるのがこの世の中です。
財やサービスで挙げるとブランド服・高級腕時計・葬式・結婚式などは私の中ではカルト宗教と変わりありません。商品の価値は材料、機能性、利便性などで評価されるべきであると切実に願っています。目に見えない幻想に金を使いたがらず、口癖は「原価はいくら?」である主人公ミキの考え方には甚く共感してしまいました。しかしながら、この考え方は『現実』を信仰している一種のカルトであるとこの作品は問いかけてきます。そうか、私も『幻想』を信仰できたらどれほど良かったのだろうかと思いを馳せるのです。まだまだ青臭い考えを捨てきれません。

No.340 6点 チョコレートゲーム- 岡嶋二人 2024/09/01 03:46
昭和の推理作家協会受賞作。
ずっとひた隠しにされていた"チョコレートゲーム"が私にも馴染みのあるものだったとは… 中学校は社会から隔絶した閉塞空間。そんな歪な環境が時には大人も驚愕するほどの闇を生むことも…将来子育てをする際に心がけるべきなのでしょう。
いやしかしこの作家はやたらめったら読みやすい。会話中心だからかな?

No.339 7点 殺人出産- 村田沙耶香 2024/08/31 22:15
『コンビニ人間』で衝撃を受けた村田沙耶香の奇想・異常・狂気の詰まったSF短編集。「10人出産すれば1人を殺すことが許される」という異次元の少子化対策を打ち出した日本。その制度に対する意見の割れ方が現代における死刑制度の比ではないことは想像に容易いですね。あまりにもショッキングなラストは『コンビニ人間』の狂気のラストを連想せずにはいられない。異常の描き方に著者の信念のようなものを感じる。
他にも生殖や生死に関する短編が3つ。1時間半ほどで読める満足度と完成度の高い短編集。
非ミステリ作家の中で今最も気になっている作家です。

No.338 7点 Another- 綾辻行人 2024/08/31 19:19
夏の終わりにとっておきのホラー 

【以下鋭い人にはネタバレになると思われる】





あの趣向は伏線の妙・衝撃度・納得感どれもが確実にレベルアップ。ただなあ… 島田荘司の某作を読んだ時と同じ感じの・・・そう、アレよ。呪いの設定は緻密に作り込まれており館シリーズよりも空間的な広がりがあって、 760ページあっても一切飽きさせない力作であることは確実です。一般人(というか私の友達)には「綾辻行人って『Another』の人?」と言われるほど、その後のメディア展開で出世した新たなる代表作。デビューから20年を経て再度脚光を浴びた人ってあまりいない気がする…いや、結構いるんか??もう37年経ったのでそろそろ円熟期、3度目のデビューを期待していますよ。
雰囲気は同じ学園ホラーの『緋色の囁き』の方が好きだったりする。

No.337 5点 空飛ぶ馬- 北村薫 2024/08/29 20:51
これは美しい…得点分布が。普通に万人受けする作品かと思っていたら、『黒死館殺人事件』並みの評点の割れ方(笑)
「日常の謎」のはしりとして著名な作品をいまさら読みました。謎のスケールに興奮を覚える殺人・密室・首無中毒者の私には少々物足りないけど、等身大の女子大生を主人公にして、日常に潜む謎と人間心理をハートフルに描き出す。
-人間というのも捨てたものじゃないでしょう-

No.336 3点 誰が勇者を殺したか- 駄犬 2024/08/27 03:19
ライトノベル新作歴代売上第1位で今大ヒットしてるそうですよ。Amazonのレビューも超高評価だし、タイトルもザ・フーダニットミステリで、知人にも勧められたのでこれは読むしかありません。
しかし、珍しく大ネタが分かってしまったんですよね。エピローグはほのぼのしてて好き。
これが大ヒットするのならば、数多の本格ミステリはもう少し脚光を浴びても良いのでは…… 評点は辛口かと思いますが、↑のように捻くれた目で見なければ普通に楽しめると思います。まあ誰にでも逆張りしたい時期ってありますよね。そういうことです。

No.335 7点 この闇と光- 服部まゆみ 2024/08/27 02:28
印象に残った一文があったので引用しようとしたら、お二方が既に挙げておられるのでやめた(笑)
独自の幻想世界の構築という点でここまでのめり込むように魅せられる作家はそういないのでは。盲目の少女の想像する世界が鮮やかな色彩を持って見えてきます。解説では中井英夫や赤江瀑(最近読んだ^ ^)が引き合いに出されていますが、その通りだと思います。

【察しのいい人は察するかもしれない感想注意】




前半は人の心を惑わすようなあやうい美しさを放つメルヘンファンタジー。前半の路線をずっと期待しつつ、心の中では種明かしを欲しがっている2人の自分がいました。物語がどこへ向かうかは読んだ方のお楽しみ。この主人公は三島由紀夫『金閣寺』の主人公と重なった。ミステリーというより文学よね後半。

※こちらもみんな教えてで知った作品です。ありがとうございました。

No.334 9点 少女には向かない完全犯罪- 方丈貴恵 2024/08/24 10:14
私は本サイトのレビュアーの方々を大まかに4種類に分類してます。
思ったことを率直に書く「感想型」と作品の位置付けや優劣を客観的に書く「評論型」で2通り。お気に入りの作家の評点を甘く付ける「贔屓型」、好きな作家でも作品に対しては一歩引いて吟味する「平等型」で2通り。まあ「感想型」のなかにもパッション系とか評論入り混じり系とか色々いらっしゃるわけで、十人十色なこのサイトを眺めるのは楽しいですよね。
で、私はというと完全なる「感想/贔屓」型。よって評点はバリバリ贔屓してます。下記の感想もポジティブ部分ばかりに着目してしまっています(笑) なのであまり参考にしない&期待値上げないでください。

【ここから感想】
「少女×幽霊」最弱にして最強の異色コンビによる復讐譚です。
幽霊と聞くと方丈先生お得意の特殊設定か?と思いきや、今作は鳴りを潜めています。その代わりに中盤の不気味な犯人とのチェイスには心臓が縮み上がり、圧巻の多重解決が読者に襲いかかってきます。雪密室や天井の足跡などの不可解な謎を起点として扱われる膨大な伏線の量とクレイジーな謎解きにはもはや唖然というほかありません。そしていつも通り優秀なパズラーとしてだけでなく、小説としても進化を遂げている方丈貴恵の新境地!この飛ぶ鳥を落とす勢いのまま、本格の道を突っ走って欲しいです。多重解決が好きな方にオススメですね。

キーワードから探す
みりんさん
ひとこと
(未登録)
好きな作家
(未登録)
採点傾向
平均点: 6.66点   採点数: 533件
採点の多い作家(TOP10)
ジョン・ディクスン・カー(32)
島田荘司(31)
夢野久作(23)
アガサ・クリスティー(22)
連城三紀彦(21)
エドガー・アラン・ポー(21)
江戸川乱歩(19)
三津田信三(15)
泡坂妻夫(12)
綾辻行人(12)