皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
◇・・さん |
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平均点: 6.03点 | 書評数: 183件 |
No.43 | 10点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2020/06/06 20:16 |
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第一の犯行現場も、続いて起こる惨劇の舞台もすべて公共交通機関という乗り物尽くしで、いったんは不特定多数の人間が容疑者となる。そこからたった一人の人物を突き止めるというスタイルをクイーンは完成させた。
またダイイング・メッセージはクイーンの十八番である。判じ物みたいなものだから、ロジカルに解読できるものではないし、間違っても犯人指摘の決め手にしてはならない。よってスマートで節度ある使い方が求められるのだが、本作においては上々の出来上がりだろう。 またこの作品で展開されるレーンの推理は、溜息が出るほどで、「こうだったとも考えられるではないか」という反論の余地がなく真相の意外性も十分。 |
No.42 | 5点 | レッド・オクトーバーを追え- トム・クランシー | 2020/05/30 19:47 |
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きわめて正確と評されたソ連とアメリカの諜報機関に関する分析、潜水艦の構造の詳細、腹の探り合いなどが興味深く、刻々と変化する状況にどっぷりのめり込んでしまう。
シンプルな文章だが専門用語が多く、状況把握が難しいかもしれない。 |
No.41 | 5点 | 呪われた町- スティーヴン・キング | 2020/05/24 18:53 |
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セイラムズ・ロットという小さな田舎町を想定し、どこにでもみられる平々凡々な市民を描くことで、かえって自分たちの周りにも、いつこんな事件が起こるかもしれないという恐怖を駆り立てている。
本作は、忠実な伝統を踏まえた吸血鬼小説であり、ブラム・ストーカーやロバート・マキャモンら多くの作家たちに影響を与えたように、キング以後の何人かの作家たちのバイブルとなった。 |
No.40 | 6点 | 逃走と死と- ライオネル・ホワイト | 2020/05/17 20:03 |
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競馬場の売り上げ金強奪を計画する五人の男の行動を描くサスペンス。
登場人物たちの心情と行動の様子が、同時多元描写でなされている手法がとにかく画期的だった。 S・キューブリック監督の映画「現金に体を張れ」の原作でもある。 |
No.39 | 6点 | カリブ諸島の手がかり- T・S・ストリブリング | 2020/05/16 18:01 |
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舞台がエキゾチックでトロピカルな幻想味というか、そういうのが当時強烈にアピールしていたんでしょう。今読んでもけっこう楽しい。なんといっても「ベナレスへの道」という短編は突出した異様な印象を受ける。 |
No.38 | 3点 | ボーン・コレクター- ジェフリー・ディーヴァー | 2020/05/09 17:24 |
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スピード感があり、どんでん返しが多いプロットで、ごまかされそうになるけど、ご都合主義の嵐。
読者を驚かせたいがために、無理に無理を重ねていて...。しかし、そんなに無理されても読んでるこちらの方が辛い。 |
No.37 | 4点 | スリーピング・マーダー- アガサ・クリスティー | 2020/05/04 18:10 |
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事件の起きた系列を順序を入れ替えて物語を説明している。時計の描写だとか、時間が後からわかるような手掛かりがない。これでは読者には推理しようがない。これは、アンフェアです。
犯人は、周りに誰もいないにもかかわらず、殺人現場に初めてきた振りをする。そんなことはあり得ない。 |
No.36 | 7点 | ロウフィールド館の惨劇- ルース・レンデル | 2020/05/03 19:03 |
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最初から犯人と動機を明らかにしたうえで「なぜ」を説明してゆく。
心理スリラーは当時としては新鮮だった。だがそれだけではく、著者の描くダークな心理劇の絶妙さに病みつきになる。文章は簡潔だが卓越した人物描写は文芸書のよう。 |
No.35 | 9点 | ジャッカルの日- フレデリック・フォーサイス | 2020/05/02 14:27 |
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イギリス空軍のパイロットと従事記者を体験した著者は、1962年に実際に起きた大統領暗殺事件未遂をヒントに、ジャーナリストの手法で事件を綿密に調査して書いた。そのために、スリラーでありながらノンフィクションを読むような充実感がある。
読後何十年経っても強く印象に残っている作品であり、現在読み直すと歴史ルポのような新たな面白さもある。 著者のデビュー作にして、政治スリラーの最高峰。プロットは複雑だが、文章は記事のようにシンプルで理解しやすい。 |
No.34 | 5点 | 薔薇の名前- ウンベルト・エーコ | 2020/04/26 11:06 |
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本は分厚いし、語り口が現代風じゃなくて読みづらい。話の進み方も、嫌がらせかと思うくらいかったるい。しかし、根底にあるのは本物の教養。
これを「歴史ミステリ」と呼ぶのなら、「ミステリ」より「歴史」に重きを置いて書いていると思う。全体として、ミステリという物語部分は後景に引いている。逆に歴史とか中世哲学とか神学談義とかが、みっしり詰まっている。ある意味、蘊蓄小説と言える。 |
No.33 | 7点 | 明日に賭ける- ウィリアム・P・マッギヴァーン | 2020/04/25 17:11 |
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都築道夫が「本篇で探偵小説の限界にきてしまったという気がする。これ以上のものを書かなければならないとすると、探偵小説にならなくなるのではないか」と絶賛した名作。
銀行襲撃に失敗した除隊兵の白人と賭博師の黒人が、逃走する途上で抱く憎悪の感情と友情の芽生えが、二重の意味で胸を打つ。しかし、これは新訳でないと現在の出版は許されないかも。 |
No.32 | 6点 | 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ | 2020/04/19 20:37 |
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江戸川乱歩が、読むたびに印象が変わる万華鏡のような作品だと言い、最も評価した作品で、ある一族を襲う悲劇の物語。単純に見えた事件が二転三転し、意外な結末を迎える。
特に冒頭の径で女と会う場面。当たり前だけど、初読の乱歩が言った万華鏡という言葉は、印象が変わるということも言っているんだけど、全編に満ちる色彩とかのイメージが素晴らしいことを指して言っているんでしょう。 フェアプレイという意味で言うと、今だと御法度かなというような記述、無理めのトリックもあるけれど、それを割り引いても推理小説の楽しさに満ち満ちている。 |
No.31 | 8点 | 鷲は舞い降りた- ジャック・ヒギンズ | 2020/04/18 17:07 |
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大英帝国からの祖国解放のために協力するアイルランド共和軍のデヴリンと、勇敢で名誉を重んじるシュタイナ中佐はそれぞれ魅力的で、戦争というものの複雑さをしみじみ感じさせる。
著者が調査したルポのスタイルを取っているのもリアル感を与え、歴史、サスペンス、アクションと楽しみどころが多い。軍事スリラーとして最高傑作のひとつと言えよう。 |
No.30 | 7点 | 郵便配達は二度ベルを鳴らす- ジェームス・ケイン | 2020/04/12 19:33 |
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ミステリの枠にとどまらず、暴力と性を主題にしたことで、本作品はアメリカ文学全体にも大きな影響を与えた。
文体においても、浮浪者である主人公の一人称、つまり、日常の言葉で綴られるという画期的なスタイルになっている。今日では珍しくもないが、当時は衝撃的だった。このような文学史上の価値は別にしても、ミステリとしても優れている。 二百頁足らずの中編だが、いわゆる倒叙形式で、完全犯罪が実行され、それが意外な形で破綻していくまでが描かれ楽しめる。 |
No.29 | 8点 | ナイン・テイラーズ- ドロシー・L・セイヤーズ | 2020/04/12 19:29 |
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墓に埋葬された死体の上に、新たな死体が。教会の鐘の音を背景に、寒村で起きる怪事件。
五百頁近い大作だが、最初の百頁過ぎまで、事件は起きない。鳴鐘法の説明から始まり、二十人近い村人たちが入れ替わり登場するので、人物を把握するのが大変だ。 しかし、それを乗り越えると、事件が動き出し、人物像も把握できるようになり、俄然面白くなる。いかにもイギリスの古き良き時代の探偵小説という雰囲気を味わえる。 「ナイン・テイラーズ」は十一冊のウィムジイ卿ものの第九作。一作ごとに事件としては独立しているが、卿の恋愛、結婚、新婚というプライベート面での変化があるので、第一作「誰の死体」から順に読むのがいい。 |
No.28 | 6点 | 大いなる眠り- レイモンド・チャンドラー | 2020/04/11 14:35 |
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マーロウは私立探偵として報酬のために、堕落した裕福な階層の人々の間で孤独に生きるが、そうしながらも欲に溺れた彼らの赤裸々な人間性を見、その真実に迫っていく。金、セックス、暴力の支配する社会の中で、自己の誠実さを保つタフな彼は、現代に生きるヒーローである。誰からも依頼されていないことへ自ら係わっていくマーロウの行動は意味深い。
1930年代の雰囲気を彷彿とさせながら、そのまま現代に通じる作品であるのは、都市の非情さをマーロウが一身に受け止めていいるせいであろう。そこから作者独特のハードな詩情が漂い出てくる。 |
No.27 | 7点 | さらば愛しき女よ- レイモンド・チャンドラー | 2020/04/11 14:28 |
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これは短篇を寄せ集めたがゆえではあるけれど、無関係に見えるといくつかの事件が、ラストで不意につながってくる展開もすごいし、なにより心象風景の描き方の巧さは感じさせられる。
ある意味ではミステリで、ある意味では文学で、当時の読者はどういうふうに捉えたらいいのかわからなかったという分析もあるけど、今読むと本当にいい配合だと思うよ。芸術とエンタメのバランスが。この比率を考えただけでチャンドラーの名前は残るし、つまりミステリ界に「チャンドラー流」って流派を打ち立てたんだと思う。 |
No.26 | 4点 | プレード街の殺人- ジョン・ロード | 2020/04/05 17:51 |
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よくミッシングリンクものの傑作みたいなことを言うけど、それは間違っている。
冒頭に裁判の場面があって、本章にはいると、それに出席した人が一人ずつ殺されていく。どこにミッシングリンクがあるのかといっても何もない。最初から分かっている。 |
No.25 | 8点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2020/04/05 17:48 |
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「首の無い死体」が出てくれば、被害者と犯人が入れ替わっていると、疑ってみるのがミステリの鉄則だが、その「死体」が四つもあるとなると...。
最後の最後の第四の殺人にいたり、たった一つの証拠物件をもとに、エラリイが明晰な論理で解決する。この真相には唖然とするだろう。本格ミステリの真髄がここにある。 |
No.24 | 6点 | さむけ- ロス・マクドナルド | 2020/04/04 14:08 |
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一人の若い女性の失踪をきっかけに、次から次へと明らかになる複雑な人間関係。ハードボイルドに新境地を切り開いた名編。
アーチャーによって少しずつ明らかになる人間関係。その人間関係をほぐしていき、真実に辿り着く。時としてそれは誰も幸福にしない結末となる。 人間関係を正確に理解するのは、難易度が高い。 |