皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
|
ことはさん |
|
|---|---|
| 平均点: 6.14点 | 書評数: 331件 |
| No.171 | 5点 | カマラとアマラの丘- 初野晴 | 2023/03/12 02:54 |
|---|---|---|---|
| 初めて初野晴を読んだが、どうにも、掴みどころがわかる前に読みおわってしまった。
まず、設定は「廃墟となった遊園地に秘密の霊園があり、ここを訪れる者がいる」というものだが、これが「現実設定なのか」、「現実設定に特定の特殊設定が追加された(キング作品のような)ものなのか」、「異世界設定なのか」が明確でないので、「どんな設定?」と模索しながら読みすすめることになった。 1話目で世界設定は把握したつもりになったが、作がすすむと状況設定がかわってきて、結局、最後まで模索しながら読むことになってしまった。 (たとえば、1作目では「霊園に行こうとする者がいる」ことで話が始まるので、それが世界に入る入口だと思ったが、4作目では、その人が霊園に行こうとするとは思えないし、「自分が一番大切にしているものを差し出す」という設定は、4作目ではあいまいだったし) また、視点人物も一定でなく、感情移入しやすい人物がいない作もおおいので、すこし引いた視線で読むことにもなり、このため、感情移入できなくて、楽しめなかった。もちろん、全ての小説が「感情移入できないと楽しめない」訳では無いが、本作は間違いなく感情移入できたほうが楽しめる話だったと思う。 動物に関しての色々な話題はかなり面白かったので、残念。「あわなかった」ということなのでしょう。 1話目が、いちばんすっきりとまとまっていて、よかったかな。犬を飼っていることもあるかも。 |
|||
| No.170 | 7点 | 正義- P・D・ジェイムズ | 2023/03/09 01:11 |
|---|---|---|---|
| ジェイムズ作は、間違いなく、作を追うごとに読みやすくなっている。
1つ1つの描写は相変わらず濃厚だが、各章がそれほど長くなく(章ごとに視点人物は変わるけれど)視点人物が明確なため、全体をすっき見渡せるからだと思う。 全体を概観してみよう。 第1部は、被害者のまわりの人間関係が描かれ、動機があると想定される人物が複数描かれる。(被害者が誰かについては、作者が最初の数行で明かしているので、ネタバレではないかな) 第2部は、ほとんど捜査側の視点で、点景で関係者側が描かれるだけ。ここまで捜査側にふりきった視点は、ジェイムズの過去作にはなかったのではないか? これは、読みやすさに貢献していると思うし、この読み心地は、警察小説の面白さ、もしくは、私立探偵小説の面白さだと感じた。この辺は好み。 第3部で、かなり駆け足で事件が進行する。ここから警察小説/私立探偵小説というよりは、犯罪ドラマになっているかなぁ。ここからラストまで、犯罪ドラマとしてはよいが、謎解きミステリとしての面白さ(謎が解かれたときのカタルシス)はあまりない。ただ、第1部で描かれた殺意のうち”これがこう嵌まっていくのか!”というところて、犯罪ドラマとしては面白かったし、なにより「邪悪に生まれついた人」を説得力をもって描いていて、これはかなり印象深い。 個人的に好みだったのは、終盤の犯罪ドラマの部分の主体がミスキン警部がになっていること。最終版に明かされる”あるちょっとした事実”がミスキン警部に関わってきて、これはなかなか面白かった。その前にも、ミスキン警部が「死の味」のあるシーンを思い出すシーンがあり、ミスキン警部のドラマとしては、「死の味」「原罪」「正義」で3部作なんだなと感じた。いつか「死の味」を再読したら、ミスキン警部のドラマ部分は、圧倒的に初読時より楽しめる気がするなぁ。 また、まだ読んでいないが、この後の作品のあらずじ/ネット感想を参照すると、ミスキン警部のドラマとしてはここまでで一旦区切りで、この後のミスキン警部関連のドラマはトーンが変わっていくと予想している。(継続して読むつもりなので、違ったら今後の作の感想で訂正します) ミスキン警部関連では、本作の初登場シーンが、終盤のシーンの(ドラマとしての)伏線となっている点もいい。やはり作者は、ダルグリッシュと同じくらいミスキンにも思い入れがありそうで、ミスキン警部推しとしては、今後の作品も楽しみだ。 |
|||
| No.169 | 6点 | 父親たちにまつわる疑問- マイクル・Z・リューイン | 2023/03/09 01:04 |
|---|---|---|---|
| 久しぶりのサムスン物。もう新作は読めないと思っていたので嬉しいよ。
個々の話は、長さも短いので、きわめてシンプル。印象的なキャラクターと、どこかほのぼのしたユーモア。プロットは無駄なく引き締まっていて私立探偵小説の好短編といえる。 (ジャンル投票は「ハードボイルド」としました。サムスン物は「私立探偵小説」だけど、「ハードボイルド」ではないよなぁと思いながら) 全体を通すと、全ての話が大なり小なり「家族の話」で、かなり高齢となったリューインが、ここでこのテーマにフォーカスするのかと、意外なような、納得なような……。 なんにしても、感慨深いな。 久しぶりに、中期の傑作を読んでみようかな。記憶では「消えた女」「季節の終り」がツートップなんだけど、今読むとどう思うかな? |
|||
| No.168 | 6点 | あやし~怪~- 宮部みゆき | 2023/03/09 00:52 |
|---|---|---|---|
| このサイトで評価が高かったので読んでみた。
うん、語りはいい。情景描写も目に浮かぶし、会話も、口調だけでキャラクターがイメージできるように書き分けられていて、すっぽり世界に浸れる。所々でてくるゾクリとするシーンは、インパクトもある。 高得点の人は、きっとこの語りに魅せられているんだなと想像するし、それはよく分かる気がする。 でも、プロットは定型的に思えるし、予定調和と感じるものもあるので、私の採点はこの程度。やはり自分は、プロットを主に楽しむタイプなのだなと、あらためて実感した。 |
|||
| No.167 | 5点 | ひよこはなぜ道を渡る- エリザベス・フェラーズ | 2023/03/09 00:44 |
|---|---|---|---|
| 久しぶりのフェラーズ。トビー&ジョージものは、これで全作を読み終えた。
最後まで読めばもちろん事件は解決されるのだが、どこかすっきりしない。 これは、いろいろなことが発生して、事件が複雑になり過ぎているからに違いない。何人もの思惑が重なり、しかもそれが、同じ日に実行されていて、読者の整理がおいつかないからだ。(私のあたまが悪いせいかもしれませんが)。そこから派生して「ここまで同時に重なるか?」との違和感がもでてくるから、なにかすっきりしないんだよな。 トビー&ジョージものは、他も結構複雑だった記憶があるなぁ。(もう朧な記憶だが) ユーモラスな感じはいいんだけどね。 |
|||
| No.166 | 6点 | 国語教師- ユーディト・W・タシュラー | 2023/03/09 00:37 |
|---|---|---|---|
| 確かにある犯罪事件が中心にあるので、ミステリではあるが、かなり普通小説よりの作品。魅力的なのは、「語り」の形式でよませるところでしょう。メール、作中作、調書 etc。
過去の事件の真相は、それほど意外ではないが、終盤のある展開は意外だった。ラストは登場人物の心理が胸に迫る。ミステリのカタルシスはないが、小説としていい作品です。 |
|||
| No.165 | 5点 | 風の証言- 鮎川哲也 | 2023/01/19 23:09 |
|---|---|---|---|
| 元となった中編「城と塔」と読み比べのため、「風の証言 増補版」読んだ。採点は「風の証言」だけでの採点で、6点と迷った5点。
ちょっと前に「死のある風景」の読み比べを行ったが、「死のある風景」は75ページの話が450ページになっていたのに対して、「風の証言」は120ページの話が310ページになっていて、改稿量が少ない。しかも、「風の証言」の220ページくらいまでに「城と塔」の内容はすべて展開しおわり、その後に事件を1つ追加している形となっている。 「城と塔」から使用された部分の改稿状況は、「地の分で1,2ページだったものを1つのシーンにする」、「推理を明確にするための文章の書き加え」、「後半に追加された事件の前振り」などで、「城と塔」の文章は9割以上残っているのではないかな。 上記状況なので、長編化にあたってよくなったかといえば、そうでもない。密度が薄くなってしまったという感じがした。元となった中編「城と塔」は、十分に書き込まれていて力作と評価できる作品だと思うので、これはもっと工夫がほしかった。 ひとつ「風の証言」が良かった点は、”アリバイが偽造である決め手”を最後にもっていく演出かな。これはエピローグとしてきれいに決まっている。 追加された事件については、単独で特によいというわけではないが、前の事件と”ある点”を共通にしているので、並べて提示したかったのだと思う。この趣向は、なかなかよいと共感できた。 あと、追加された事件で、刑事コロンボの「二枚のドガの絵」を想起させる部分があったので、発表日比較してみたところ、同じ月だった。(日本語Wikipedia情報) 風の証言:1971年11月、毎日新聞社 二枚のドガの絵:アメリカ初回放送日「1971年11月17日」、日本初回放送日「1972年10月22日」 たまたま思いついて調べてみて、同じだと、「おぉ、なんと偶然!」と思うなあ。 さらに、「風の証言 増補版」の解説だが、(たまたま持っていた)青樹社文庫版の解説とほぼ同じ。”元となる中編がある”作品の解説は、”元となる解説がある”解説だったとは! 解説まで読み比べしてしまったよ。 |
|||
| No.164 | 7点 | 死のある風景- 鮎川哲也 | 2023/01/15 02:47 |
|---|---|---|---|
| 再読。
鮎川作品では、ページ数も多い方で、高い評価もきく作品だが、ページ数の割にはトリックは小粒と感じられるので、自分の中では評価の高いほうではなかった。鬼貫警部の登場も少ないし、謎解き興味の観点からは不要に感じるシーンもおおい。 ただ今回は、以前は不要と感じた謎解き部分以外の点が、意外に楽しめた。「進駐軍」や「夜行列車」、「金沢や東京の風景」など、当時の風俗の描写に「近過去」の趣をつよく感じて、ファンタジー感が増して感じられた。もっと年を経れば、ホームズ物のヴィクトリア時代のように、時代描写を楽しむ観点もつよまるのかもしれない。 けれど、恋愛観/結婚観については、今と違いすぎて違和感が大きく、作品に対する印象も下がってしまった。これも年を経れば、ホームズ物の恋愛観/結婚観が現代と違っても「そういうものだったんだろう」と思うように、受け入れられるようになるのかな? あと、今回は元となった中編が併録されている「死のある風景 増補版」で読んでみたので、比較について書いてみる。中編版を読むのは初めて。 まず、想像以上に中編版の文章がそのまま使用されていることに驚いた。中編版の文章の7割以上を、再使用しているのではないか? シーンをごっそり移植したものがおおく、そのようなシーンでは、数ページにわたって「数個の言葉の選択の変更」、「数行の文章追加」しかされていない。 被害者の家に捜査者が訪ねるシーンの描写では、中編版では訪問は1回で、文章は”ABC”となっているのに対し、長編版では、事件を追加したことで別々の人物がそれぞれ訪ねる2回になり、1回目には”B”、2回目には”AC”の文章を使用しているところがあった。「使える文章はできるだけ使用するぞ」という意志が感じられる気がして、おもしろい。 全体として、中編版はアリバイの調査/解決が駆け足すぎて、その部分をもっと書き込んでほしい気になるので、長編化の元になったのはよく分かる。 |
|||
| No.163 | 6点 | 逆転美人- 藤崎翔 | 2022/12/25 00:27 |
|---|---|---|---|
| うん、この趣向は、先行作がありますね。
先行作は、「こういう趣向があるのか!」というのが斬新だったが、本作は後続作なので、そこは評価できない。それをふまえると、本作は、「なにを新たに付け加えられたのか?」ということたが、なかなかがんばったと思う。 作品内で「この趣向が使われた必然性」を作り込んでいて、これはよく考えたなと思う。 残念なのは、説明がかなり口説く、先行作にあったラストの切れ味がなくなっているところ。 とはいえ、先行作を知らないで読んだら、すごくびっくりするだろうな。 プラスマイナスを考えて、採点はこんなところ。 |
|||
| No.162 | 6点 | さよなら僕らのスツールハウス - 岡崎琢磨 | 2022/12/25 00:25 |
|---|---|---|---|
| 連作短編集。作品をまたいで登場する人物があるので、最初から順番に読むべき作品集。
個々の作品は、どれも意外な事実が最後に明らかになる構成だが、謎や捜査などは多くなく、ミステリ成分は薄め。 全体の構成から入ったと思うが、少し無理がある部分も多い。けれど、青春小説の味わいは心地いいので、悪くない。 |
|||
| No.161 | 6点 | 猟犬探偵- 稲見一良 | 2022/12/25 00:16 |
|---|---|---|---|
| 「セント・メリーのリボン」の主人公が、独立した連作短編になって再登場。ほんの少しだが、「セント・メリーのリボン」の登場人物もででくる。
「セント・メリーのリボン」より、私立探偵小説風味が薄れ、ファンダジー成分が増えている。そのため、「セント・メリーのリボン」のほうが好み。 |
|||
| No.160 | 7点 | セント・メリーのリボン- 稲見一良 | 2022/12/25 00:13 |
|---|---|---|---|
| かなり前に稲見一良を読んだときは、そんなにピンとこなかったが、今回は滲みた。年をとってセンチメンタルになったのかもしれない。
「焚火」は、ハードボイルド・タッチの1シークエンスのもの。「花見川の要塞」、「麦畑のミッション」は、現実的舞台に少し不思議が混じりこむファンダジー。「終着駅」は軽い掌編。 最もよかったのが「セント・メリーのリボン」。語り、展開とも、しっかり作り込まれた私立探偵小説で、登場人物の心情も実によい。 本棚の片隅に置いておき、また年を重ねたら、読んでみようと思う。多分、今より滲みるんだろうな。 |
|||
| No.159 | 7点 | ホテル・ピーベリー- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:57 |
|---|---|---|---|
| 本作はミステリ観点から一言でいえば、ハワイを舞台にしたホワットダニット。
前半は、(明確に提示されない)悩みを抱えた語り手による、ハワイ観光案内つき、登場人物紹介。内省的な語りより、なにか起こりそうな不安感を醸し出す。 中盤、事件が起きてから、ホテルの滞在人物の怪しい点がいろいろ判明し、流れるように最後まで読めた。なかなか面白い。 いくつかの怪しい話を並列させていて、展開をよませなかったが、そのせいで、それぞれの話の書き込みが浅く、「最後がああなるのなら、もっとここを書き込んでほしい」とも思った。まあ、書き込みが少ないのは、読みやすさ優先の意図かもしれない。 語り手が、共感できないキャラなのも、きっと意図的で、王道的な巻き込まれ型サスペンスにならないよう、たとえば、フランスの犯罪小説風な味わいを目指したのだろうと思う。 印象的なシーンは、中盤、主人公が「他人の事情はよくわかる」と思いながら、ある諍いを目撃するところ。こういう心理戦の描写は、近藤さん、うまいよなあ。 |
|||
| No.158 | 5点 | シェルター- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:25 |
|---|---|---|---|
| 本作も、謎と解決が主軸の話なのに、冒頭の”謎”が弱い。シリーズ・キャラの姉の失踪と、姉に関わる不可解な少女で、”謎”としては残念ながら弱すぎる。
解決も「なあんだ」と思わせるものだし、偶然の繋がりも多々ある。過去のエピソードも、物語内の”今”と直結しない感じがする。これは、読みやすさ優先で、掘り下げが足りないせいだろう。 キャラクターが魅力的だから楽しく読めるのだが、高く評価はできないかな。 |
|||
| No.157 | 6点 | 茨姫はたたかう- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:24 |
|---|---|---|---|
| 前作同様、するすると読める。
シリーズ・キャラクターは、前作以上に魅力的で加点が高いが、謎と解決はやはりいまひとつ。するすると読めることと、でてくる重い設定や状況が、どうもアンバランスに感じられるのは、マイナス材料だ。 本シリーズより、ビストロ・パ・マルのような明るい話のほうが売れているのは(印象だけで数値情報はありませんが)、そういうところが大きい気がする。 |
|||
| No.156 | 5点 | カナリヤは眠れない- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:24 |
|---|---|---|---|
| 相変わらず近藤史恵は、するすると読める。
ただ、本作は(名探偵役もいるし)謎と解決が主軸の話なのに、解決がいまひとつ。 シリーズ・キャラクターとなりそうな人物が魅力的だったので、シリーズを読みすすめたが、本作は可もなし不可もなし。 |
|||
| No.155 | 6点 | アリアドネの糸- キャロル・クレモー | 2022/10/31 00:55 |
|---|---|---|---|
| 訳者あとがきに、作者の言葉として「わたしが書こうと思っているのは、(中略)パズル的要素でもって読者を惹きつけるタイプ(後略)」とあるが、その言葉から想像するミステリとは少し違った。1980年代のアメリカのミステリだから当然なのかもしれないが、古典的ミステリよりは、(主人公は探偵でなく大学の準教授だけれど)私立探偵小説の味わいのほうが強い。
(だからジャンルはハードボイルドにしました。本サイトのジャンル分けは、ネオ・ハードボイルドといわれる”文体がハードボイルドでない私立探偵小説(探偵が主人公でない捜査小説も含む)”の投票は迷いますね) 事件は捜査されて、徐々に全貌がみえていき、最後に解明する。そのプロセスが主体で、古典的ミステリ風の謎と解決ではない。それは、最初に発生する事件で明確だ。 主人公の勤める大学で発生した「エーゲ文明の展示品の盗難」と「女生徒の失踪」。古典的ミステリ風の謎としては地味だが、私立探偵小説としては普通の切り出しだ。 しかし、「だから、つまらない」ということはなく、ギリシャ神話を踏まえたキャラクターづくりとキャラクター配置で、事件の全貌が見えてくる手際はなかなか面白く、かなりの良作だった。ただ、ある1点、「それに気づかないとは思えない」ところがあり、そこはおおきなマイナス。 作者の言葉から想像するような古典的ミステリとしての味わいも、すこしはある。中盤の「てがかり発見」のときの、「主人公はなにを見つけた?」と読者に思わせる溜めはワクワクするし、解明に至る手がかりがxxxxxxxxxxなのは、ご愛嬌かな。 次作も読みたいと思わせる作だったが、これ以外は短編が1作の模様で残念。英語Wikiでも同じなので、翻訳されていないのでなく、原作の出版状況がそうなのだろう。 |
|||
| No.154 | 6点 | 黄泉の国へまっしぐら- サラ・コードウェル | 2022/10/24 00:30 |
|---|---|---|---|
| おもっていたよりユーモア成分が多かった。
若手弁護士グループが、素人探偵団として活動するという基本設定にはじまり、多くのシーンで、ほとんどシチュエーション・コメディのような状況設定になっていて、いかにもイギリスのユーモア小説と感じた。 ラストは、いくつかの情報が伏線として立ち現れ、なかなかミステリ的興趣がある。とくに、衒学のひとつと思わせるある要素が、伏線となるのは楽しい。 他作も、機会があれば読んでみたいと思っている。 |
|||
| No.153 | 7点 | ダークルーム- 近藤史恵 | 2022/10/24 00:28 |
|---|---|---|---|
| 近藤史恵の語り口はいいなぁ。どれもするすると読めてしまう。しかも、簡潔で映像的。
例えば、写真の現像についての説明では、こう。「現像されたフィルムを通して、光を印画紙に数秒あて、そのあと印画紙を現像液に浸けるだけで、鮮明な画像が浮き上がってくる」 作業をしている人の動きもイメージできないだろうか。 それに、少し気の利いた警句も交える。例えば、こう。「なにもわからなくなったとき、人が選ぶのはいちばん簡単なやり方だ。つまり、現状を維持すること」 ただし、プロットについては、多くは中盤でラストまでの展開が読めてしまう。あくまで「語り」を楽しむ作品と感じた。 個々の作品について、簡単にふれよう。 「マリアージュ」 解説でも触れているが、ラストの締め具合がよい。登場人物も、ほぼふたりしか出さず、焦点を絞っている。 「コワス」 これは完全にホラー。足音の使い方にセンスがある。 「SWEET BOYS」 短い描写で4人の登場人物がくっきりと浮かび上がっている。そのためプロットもすっきりとはいってくる。 「過去の絵」 これは失敗作だろう。日常の謎をメインに据えてしまったせいで、解決の魅力の無さが浮き彫りになっている。登場人物はとても魅力的で、前半、彼らが会話している部分はめっぽう楽しいだけに残念。 「水仙の季節」 これも双子が魅力的。ラストがみえてしまうのがもったいない。 「窓の下には」 子供の頃の心象風景が印象的な小編。 「ダークルーム」 主人公ふたりが魅力的。このふたりから、もっといろいろ話を展開できそうに思える。 「北緯六十度の恋」 これだけは、中盤で展開がよめなかった。これも主人公ふたりが魅力的。ラストシーンも印象的。1作選ぶなら本作。 |
|||
| No.152 | 6点 | レアンダの英雄- アンドリュウ・ガーヴ | 2022/10/15 14:58 |
|---|---|---|---|
| 読んでいて、初期の007(映画の方)を思い出した。
(本作の主人公の行動は、ほぼスパイといっていいのだが)スパイといっても、リアルなものではなくて、物語の中にしかいないような、のんびりした感じのスパイ。舞台は、現実にはなかなか行けないアフリカの島で、読者に観光気分を感じさせてくれる。相棒になるのは、(作中に細かな描写は少ないけど)美貌の女性。こう書いてみると、うん、やっぱり007ですね。 物語は、へんな寄り道なく、まっすぐ、すべるようにすすんでいく。するする読めて、一気読み。面白い。 とはいっても、展開は予想がつくし、心理描写には筆は割かれていないので、感動するほどではない。ポケミスで170ページと薄いので、2、3時間で読めて、「あぁ、面白かった」と読み終われる、佳作というところ。 ガーヴらしさとしては、ヨットの操船/行程に関してのデティールが細かいところ。多分、ここが一番書きたかったのだなと思う。あと、ラストのあっさりさは、やはりガーヴ。でも、このあと、主人公はどうするの? |
|||