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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 824件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.184 5点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2019/03/26 14:14
やっぱり読みやすいなあ、東野圭吾。ほぼ「いっきヨみ」しちまった。
プロット以前にタイトルからして「設定どんでん返しネタ」だろなあって読んでて、殺人「トリック」の方は予想通りだったが、肝心のメインのフーダニットの方はずしちまった。考えたら、いかにも「あのネタ」だよなあ、これ。

No.183 6点 ブラック・ダリア- ジェイムズ・エルロイ 2019/03/25 12:26
「ハードボイルド=かたゆで」には遥かに程遠い、温泉玉子ぐらいにグチャグチャな脆い心を持った男女の、歪んだ「コンプレクス=こだわり」の物語。
女優を幻想した娼婦の様な女「ブラックダリア」の惨殺と、その凄惨な死に取り付かれてしまった男達と女達、フー・ホワイダニットのミステリの骨格は維持しながらも、ユーモラスなまでのグロテスクと過剰なまでのセンチメンタルが疾走して・・不思議なことに・・ある種の「爽やかさ」さえ吹かせたあげく、最後はハッピーエンドの予感さえ抱かせて物語が終わる。

No.182 7点 哲学者の密室- 笠井潔 2019/03/23 00:36
「存在と時間」の中で最も魅力的な場面である「死への実存」という「個人的な虚無主義」が、「民族の命運」と言う名の「全体主義」に繋げられてしまっている以上、ハイデガーのナチス加担を、ギュンター・グラスやカラヤンのそれのような単なるエピソードとして扱う訳にはいかない。

「個人的確信・共同幻想」と「客観」のおぞましい捻じれについては、京極の「姑獲鳥の夏」や「陰摩羅鬼の瑕」の方が見事に描いている。そういえば京極「陰摩羅鬼」に横溝正史を登場させて、ハイデガーのウンチク語らせてたな。まさか横溝が「存在と時間」読んでたはずもないだろが。

「虚無への供物」の中で、ミステリ愛好家に向けて投げられた批判・・・「退屈な日常」を紛らわすための「犯罪読物愛好」・・・この「アンチミステリ」的批判に対して、あえて批判を返す場合には、その作品自体を一つのミステリとして「採点」することが最も効果が大きい。

この密室殺人小説には本来6点が妥当だろうが、いろいろな思いをさせてくれたので1点のおまけ。

No.181 7点 ジェゼベルの死- クリスチアナ・ブランド 2019/03/16 11:42
いいなあ。やっぱり本格ミステリには「密室」と「生首」が出てこなきゃなあ。
これ絶対、麻耶雄嵩「翼ある闇」や三津田信三「山魔の如き嗤うもの」のアイデア元ネタだろう。
にしても、ダミー解決の怒涛の波状が、ちとサービス過剰よ、クリスチアナさん。

No.180 6点 緑は危険- クリスチアナ・ブランド 2019/03/13 22:27
ボンベの気体の中身入替えトリックよりも、偽悪的な四十がらみ看護師のラストシーンが素晴らしい。「醜い顔」なのにモテる医者やマザコンの看護師娘、マヌケに一本取られる名探偵なんか出てきて、凄いミステリではないが、良い小説だ。

No.179 5点 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー 2019/03/11 11:29
なるほど、毒殺の本質は虚栄心か。虚栄心から、ケレンミたっぷりの心理実験劇を演じる虚をつかれて、毒殺されちまう男ってのが、またエスプリ効いてて。
そういえばわが国でも「ヒ素カレー事件」って毒殺事件あったな。確かにアレもいろいろ「虚栄心」の臭いがした。

No.178 7点 宿命と真実の炎- 貫井徳郎 2019/03/08 17:00
連続警官殺しのフーダニットホワイダニット。偽の連続と真の連続、連続と不連続、思い込みと操り、「レクター博士とクラリス捜査官」・・・。
「後悔と真実の色」の続編で相変わらず面白いが、前作では それぞれ一癖あって「犯人」の可能性さえ匂わせていた刑事達も すっかり「善玉」にキャラ付けされて、その分だけ緊張感がなくなってしまった。またタイトルのダサさは前作を一回り上回った。
が、ヒロイン女刑事の設定が良い。「容姿が平均に満たなく」て、「陰でブス呼ばわりされて」いて、「可愛げのない三十路女」ってのが良い。普通、ヒロインには、とびきりの「いい女」をキャラ立てして来るだろうに。

No.177 5点 慟哭- 貫井徳郎 2019/03/05 07:15
某有名作と真反対のトリック。あっちは✕✕人物を〇〇人物として、〇〇時間を✕✕時間と誤認させるトリックだったが、これはその全く反対のトリック。ひょっとするとあの作品、これにヒントを得たのかな、こっちの方が先だし。残念ながらあっち先に読んじまったから、どうしてもインパクトは薄れる。もっともいくらでも前例あるんだろうな。こういうのって。
トリックは それとして別に評価したいが、小説自体としては「後悔と真実の色」の「習作」みたいなもんだ。それに この事件て半分しか解決されてないじゃん。

No.176 4点 黄色い部屋の謎- ガストン・ルルー 2019/03/03 01:06
前半の密室トリックよりも、後半の人物消失トリックの方が面白い。それにしても・・・話がたるすぎ。

No.175 6点 ビッグ・ボウの殺人- イズレイル・ザングウィル 2019/03/03 00:48
「心理的」密室トリックの元祖とのことなので、その世評信じて2点オマケ付き。特許権は大事だから。
※ところで「物理的」密室トリックの元祖って何て小説なんだろう。

No.174 5点 有限と微小のパン- 森博嗣 2019/03/03 00:22
標準的な密室トリックで1ポイント、バーチャルトリックで1ポイント、あと あの「女ルパン」てか「女モリアーティ」の人物トリックで1ポイント。以上3ポイント×2点が評価点だが、長くて物語性の燃費が悪いのでマイナス1ポイント。
※ヤク中ホームズ以降、名探偵ってのは奇人変人あるいは異形と相場が決まってて、なかにはもっと「普通の人」いてもいいじゃんとも思ってたが、こういう探偵てのも実につまらん。

No.173 6点 妖奇切断譜- 貫井徳郎 2019/03/02 21:05
明治初期を舞台にした連続バラバラ殺人事件。全ての屍体の一部、それもそれぞれ別の一部が持ち去られていたとくれば、どうしたって「あの名作」連想する。しかもホワイダニットも結果「アレ」だし。「アレ」ほどトリッキーじゃないが、そのかわり「妖異金瓶梅:赤い靴」「魍魎の匣」の味付けもあって、「グロ」越えて「ヘド」に至るほどのスパイス効いてて好きな人にはたまらんだろう。

No.172 8点 後悔と真実の色- 貫井徳郎 2019/02/27 20:49
存在するだけで嫉妬や悪意を買う男、自分自身の憎悪や嫉妬に苦しむ男、自分の痛みには過敏だが加害者であることには無自覚な男達、失ってみて初めて思い知る価値ある事柄・・・ 
警官ヒーローものかと思いきや、主役のどん底転落とわずかな再生兆しの物語。「指切断猟奇連続殺人」テーマにも関わらず、江戸川乱歩賞でも鮎川哲也賞でもなく、また直木賞でもなく山本周五郎賞にこそふさわしい作品。なんというか「読んでよかったな」としみじみ思える話で、それがフー・ホワイダニットミステリと自然に同居してるってのが凄い。・・・ただ、タイトルがダサい。

No.171 5点 ブルー・ベル- アンドリュー・ヴァクス 2019/02/23 17:10
ローレンス・ブロックの痛いアル中探偵よりは、グッと楽しい生活を持った主人公にホッとする。彼の仲間達と巨大雌犬ペットがまた実によい。これシリーズ物のアニメかドラマにできるんじゃないか。
ところでこの作家、妙に「小児性愛」への憎悪にこだわっているね。なんかあったのかな。

No.170 5点 八百万の死にざま- ローレンス・ブロック 2019/02/23 16:51
レイモンド・チャンドラーが、クリスティやクィーンのミステリを「リアリティがない」とか否定して「ハードボイルド」ジャンルを作ったみたいな話を聞いた。チャンドラーが本当にそんなことを書いたか言ったのかは知らない。ありがちな「伝聞神話」かもしれん。ただ言えることは、この作品のアル中探偵には、マーロウなんかより遥かに「リアリティ」を感じるし、何より魅力的だ。
「それから、最高に下らないことが起きた」・・・最高だ。

No.169 7点 夢果つる街- トレヴェニアン 2019/02/23 16:25
「カラマーゾフの兄弟」やフォークナーを、純然たるミステリの尺度で測ったところで・・4~5点位なものだろう・・測ったところで意味がないように、これもミステリとしてのみ評価するのはもったいない。が、連続殺人フーダニットの骨格もユニークな解決ロジックも備えている立派なミステリでもあり、このサイトではミステリとして評価したい。ただ、この主人公は、マーロウ、アーチャー等とは一線を画した、見事な「文学上」のキャラである故、どうしても点数にオマケが付いてしまうのはやむを得ない。

No.168 1点 殺人鬼2- 綾辻行人 2019/02/22 16:18
ここまで行くと、むしろ、すがすがしい。大いに評価したい。

No.167 7点 さよなら神様- 麻耶雄嵩 2019/02/17 15:55
鈴木太郎が本当の神様であるならば、彼の託宣する真理が「事実的に不可能」(AはBであり得ない)であっても、その不可能性を突き崩すためには「ロジック」(AはBであり得る)を紡ぎあげるだけでよい。
が、鈴木太郎がただの少年だった場合、せっかくのロジックも「真理の必要条件」(AはBであり得る)を満たすだけで、「十分条件」(A以外はBであり得ない)は満足させられない。
ミステリとして完結させるには、名探偵=神への信仰か、作者=神視点の「確固たる事実」の提示が必要となるが、ここでは曖昧さを残したまま余韻をもって終わらせている。予想もしなかった叙述トリックと自殺トリック、それから仰天「因果転倒」ネタにプラス1点のオマケ付けちゃう。
※にしてもさあ、麻耶にこんなこと言うの野暮だけど、あんな「ロジカルな」小学生達、いるわけないじゃん。

No.166 4点 ロートレック荘事件- 筒井康隆 2019/02/14 22:59
ついロートレックの絵画自体を考察してしまった。あの描写って何だったんだ?ミスリードだったのか?それともヴァンスや黒死館の衒学趣味をちょびっと真似たものだったのか?
真相解明部での「作者注」みたいな伏線自慢がウザい。ああいうのは読者に「ああ、ここで既に伏線が張られてたんだ。すごいなあ」って見つけてもらって感心してもらうべきもんで、その方が奥ゆかしくないか?

No.165 5点 リア王密室に死す- 梶龍雄 2019/02/14 22:16
西村京太郎や笹沢佐保の類の「旧世代」感覚の作家だろうが、変に「胸キュン」郷愁感を醸し出してくれる人だな「海を見ないで陸を見よう」といいこれといい。「正統派」密室トリックもどんでん返しオチもよいな。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
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