海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 822件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.242 7点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2019/08/23 14:06
喉を切り裂かれた女の死体に残された指紋は、登場人物の誰とも適合しなかった・・ 航海中の船上という舞台が連続殺人の緊張感を煽る。しかも戦時中の航海ときてはなおさらに。指紋トリックの方は「へえ、そうなんだ」って感じだが、人物入れ代りトリックは読み返してみると「ああ、本当だあ」とただただ感心。
※いまさらだけれども、フェル博士とヘンリ・メリヴェール卿のキャラの違いって「えっへん、おっほん」するかしないかだけだよね?それとも両方ともしたっけ?

※2021/5追記。メリヴェールも咳払いの「えへん」位はしてた。あと、メリヴェールの方が、爆笑度が高い。

No.241 7点 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー 2019/08/20 06:21
富豪一族の遺産相続をめぐる連続殺人のごとき展開にも関わらず、もっと何か「奥のありそな」ひんやりとしたホラー風味。「どいつもこいつも『怪しげ』に描かれてるなあ」「逆に、犯人この中にいないんじゃね?」「でもどうやって話まとめるんだ?」ときて「え? 犯人それえ?」となる。回り道一捻りされた「意外な真犯人」だった。
※「・・女はあまり親切ではありません・・」女流作家が書くと変に説得力があり・・

No.240 4点 毒猿 新宿鮫II- 大沢在昌 2019/08/18 14:59
このサイトで知り、興味を持って読んだ一冊。素直な感想は「面白かった」。「ハードボイルド」とか「クライム」なんてジャンルでの評価ならば7点8点とか遠慮なく付けちゃうと思うが、やっぱりジャンルにはこだわりたい。だからこのサイトでは「ミステリ」として評価して、おまけ付けてこの点数。
風俗店バイト店員が、自身を「ドゥ・・ユアン(毒猿)」と正体を明かす場面がカッコイイ。 ただ我が国のヤクザをゴミみたいに扱う戦闘描写は何とも・・・彼らだって人間だろうに・・・。
※ところで空手やってる奴に「脳天かかと落とし」なんて技は無意味だと聞いた。(真相は知らん)

No.239 6点 連続殺人事件- ジョン・ディクスン・カー 2019/08/17 17:59
鬱然たる塔つきの古城に三つの密室事件。もっとゴシックでオカルト風味な話になってもよいのに、展開は抱腹絶倒コメディ。フェル博士はじめ登場人物ことごとくが面白い。「他殺に見せかけた自殺」「自殺に見せかけた他殺」をめぐる解釈の行く末は、二つの密室「機械」トリックの解明で、そこだけ評価しても「まあまあ」といった感想になってしまうが、フェルの犯人に対するこの決着の仕方が大好きだ。

No.238 6点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2019/08/12 08:28
(採点とコメントは表題作に対してのみ)
最初から何か「腑に落ち」なかった。てことはこの「ロジック」のどこかに瑕疵があるにちがいないと念入りに精査したが、特に瑕疵は見つけられなかった。

(訂正及び追記)
「ロジック」に「瑕疵」は見当たらないがイチャモンは付けたい。端折って最後の3人に容疑者を絞ったところから。
「犯人はABC以外にはあり得ない」「もしAが犯人ならばAはXをしない」「もしBが犯人ならばBはXをしない」「犯人はXを行った」「ゆえにA及びBは犯人ではなく残ったCが犯人である」・・・・
だが、現実の人間とは「もしAが犯人ならばAはXをする必要はないのに、無意味にXをしてしまう可能性もある」存在である・・・。
したがって採点も6点に変更。

No.237 5点 白昼の悪魔- アガサ・クリスティー 2019/08/11 17:34
人物設定から「こいつが殺されるんだろなあ」と予測したのが殺されて、「犯人こいつしかいないだろう」ってのが犯人だった。また「こういうトリックなんだろうな」ってのは半分だけ当たった。
※登場人物の一人のオカルト狂い娘の蔵書の一冊が「火刑法廷」ってネタに思わずニヤリ。

No.236 6点 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン 2019/08/09 21:49
絶対に銃弾ではありえない死体の額の穴。だが状況的に刺殺もありえない不可能殺人。まるで見えないユニコーンの角に突き刺されたような・・。 人間と人間、人間と死体のすり替わりという大技手品。魔術師カー(「カーターディクスン」名義だが)の面目躍如たる一篇。

No.235 6点 五匹の子豚- アガサ・クリスティー 2019/08/04 10:52
16年前に完結している殺人事件の再検証。タイトル通り容疑者は5人。プロットと人物設定から犯人これしかないだろうってのはダミーで、キャラ的にこれだと一番つまらんなってのが真犯人だった。
ところで容疑者は5人だが、新本格以降の作家ならば、登場人物の3人をさらに「容疑者」に加えられるかな。自分としては依頼者=真犯人ての期待する。

No.234 5点 帽子収集狂事件- ジョン・ディクスン・カー 2019/07/30 18:58
原タイトルは「マッドハッターミステリー」。マッドハッター!おお あの「きちがい帽子屋」か! で、「アリス」「あわてんぼうウサギ」「セイウチ親爺(当然フィル博士)」と、いかにもあの登場人物達になぞらえたキャラが出てきて、これに「首をお刎ね!」の「ハートの女王」なんかがそろってたら、まんま「不思議の国のアリス殺人事件」だった。
自作自演犯罪や過失の隠蔽、不倫、思いつめた金銭欲求といった複数者のちっちゃな行為の偶然の重なりが「霧の倫敦の不可能殺人」を演出してしまう。
ところで乱歩、なぜこれ「世界推理小説ベスト10」だかに入れたんだろう。これに、被害者が最後に目撃された場所と死体が発見された場所の「移動不可能性」でも描かれてて、あの場所移動トリックが絡めてあったとかならばともかく、これではカーの代表作というには、ちともの足りない。
想像するに、「ポーの世界最初のミステリー原稿」ネタが、乱歩の心の琴線に触れたのではないかと・・・。

No.233 4点 中途の家- エラリイ・クイーン 2019/07/26 08:43
「もしAが女ならばAは口紅を持ってる」「もしAが女ならばAはパイプを吸わない」・・こんなのロジックとして「あり」か? 最初から一番くさい奴が犯人で終わったが、一歩前のダミー犯人の方が面白かった。
「・・僕らは推理小説の中の登場人物ではないし・・」には笑った。明らかに「三つの棺」の「わしらは皆、推理小説の中の登場人物なんだから・・」への返しネタ。
ところで、あの凶器の指紋だが、あんなもん残ってたら我が日本の裁判では、間違いなく有罪の「疑い得ない」証拠とされてしまうだろう。弁護士が必死に由来の「ロジック」で反証してみても。

No.232 5点 ナイルに死す- アガサ・クリスティー 2019/07/14 10:16
この原作小説よりも、映画「ナイル殺人事件」の方が面白い。
「人間関係トリック」によるアリバイトリックは見事。だがこれのヴァリエーションであること明らかな「不連続殺人事件」の方がもっと面白い。

No.231 4点 闇からの声- イーデン・フィルポッツ 2019/07/14 09:29
探偵が「怪物像」に気付き、犯人が気付かれたことに気付いたかも知れない、ってあたり実にサスペンスしていた。
そういえば「ミステリー」と「サスペンス」の違いについて、テレビかなんかでやってたなあ。「犯罪を廻る謎があって解いて行くのがミステリー」「最初から明白に犯罪に沿って顛末を描いて行くのがサスペンス」・・。でもこれミステリでもあるよなあ。両方の要素ともに良く出来てたら、それは凄い作品なんだろな。
※こんな殺人トリックを考案した。壁に掛かってる普通の風景画の上下をひっくり返すと恐ろしい幽霊の絵に見えるっていう騙し絵の仕掛けを作り、それを心臓病持ちのターゲットに遠隔操作で見せてショック死させ、その後、絵の上下を元に戻しておく・・・

No.230 5点 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ 2019/07/14 09:12
いかにも英国通俗小説に出て来そうなヒロイン。こんなの出しちゃったらミステリでは当然に・・・。
乱歩がこれを「探偵小説NO.1」みたいに推したってのは分からんではない。彼、これのトリックとか以上に小説自体に嵌ってしまったんだろうな。当時の日本人にとって、あんな欧州風景や西洋美女への憧憬たるやさぞかし強かったことだろう。

No.229 6点 夜長姫と耳男- 坂口安吾 2019/07/13 22:58
(採点と評は「都会の中の孤島」に対してのみ)
坂口安吾晩年の暗い短編小説。不器用で直情型の男が、陰惨な殺人事件の犯人に間違えられてしまい、冤罪のまま死刑判決を受けてしまう。他の登場人物には真犯人が分かっているのに助けようとはしない。そして読者も、この冤罪の男にやがて死刑が執行されてしまう事を疑わない。暗く恐ろしく、でもどうしようもないなという思いを残して。

No.228 7点 不連続殺人事件- 坂口安吾 2019/07/13 22:28
「葉を隠すなら森の中」 ある一つの殺人の目的を隠すためには、不要な連続殺人を起こして、そこに紛らわせてしまえばよい。その目的に4人の死体が必要ならば、さらに多くの死体を作って、もっと多くの役者を集めて何の目的かワケわからぬ様にしてしまえばよい。だが限られた舞台の中で多くの連続殺人が起これば、全ての犯行が可能だった人物が絞られて来てしまう。しかし犯行が単独者でなく複数者で行われたとしたら・・・。目的の「不連続」と犯人の「不連続」。共犯者の「人間関係トリック」が、不慮の事故によってあからさまに演じざるを得なくなり、逆にあぶり出される結果に・・・。犯人が自分を摘発した探偵にラストに贈る言葉「汝、賞賛あるべし」が最高にカッコイイ。

(以下、ロコツにネタバレ)
40年前のATG映画「不連続殺人事件」を池袋の名画座で見た。故:内田裕也追悼特集の一本で、映画の出来自体はいかにも貧乏くさい昭和日本映画だが、「ピカ一」を演じた若き内田裕也と「あやか」の夏純子が見事に役に嵌ってて、以来、坂口安吾の小説読んでも、「ピカ一」の偽悪的かつ詩的なセリフことごとくが内田裕也の口調に脳内変換され「あやか」の顔が全て夏純子にイメージされてしまう。そしてそれが実にいいのだ。

No.227 3点 最悪- 奥田英朗 2019/07/11 17:02
これも面白かった。でも後味悪くて、何よりミステリではないのでオマケしてもこの点数だけれど。

No.226 4点 邪魔- 奥田英朗 2019/07/11 17:00
「奪取」のこと書いてて、主婦が自転車を懸命にこいで行くこの作品のラストを思い出した。後味が良くなくミステリの要素は薄いけれど面白かったんで2点ほどオマケ付けちゃう。

No.225 4点 奪取- 真保裕一 2019/07/11 16:19
「文句なく面白い!」という世評通り、文句なく面白い。苦い味のエンドも含めて傑作映画「大脱走」並みに面白いので、ミステリではないけれども4点おまけにあげちゃう。
追記:そっか!奪取ってdashにかけてんのか、今気づいた。

No.224 5点 悪意- 東野圭吾 2019/07/06 20:29
全てが一人称叙述か手記で、当然に読む者を誘導するためのもの。殺人のアリバイトリックと見せかけて、探偵によるトリック見破り自体を逆手に取り、自己の目的のための物語作りへと巻き込んで行く。物語をほのめかされると疑いたくなるが、自力で解読した物語は信じてやまない探偵のサガ。犯人の意図通りに誘導された物語の破壊と再構築。この探偵刑事ってあの「卒業」の学生だった奴だね。なんかやな奴にひねたなあ。

No.223 4点 死にいたる火星人の扉- フレドリック・ブラウン 2019/06/29 17:13
これ日本語タイトルの勝利だね。原タイトルだったら読まなかったし。最初のトリック、探偵と同様に「闇からの声」の変形を予想していた。
※こんな殺人トリックを考案した。壁に掛かってる普通の風景画の上下をひっくり返すと恐ろしい幽霊の絵に見えるっていう騙し絵の仕掛けを作り、それを心臓病持ちのターゲットに遠隔操作で見せてショック死させ、その後、絵の上下を元に戻しておくという・・・

キーワードから探す
レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 822件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(33)
二階堂黎人(27)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
アーサー・コナン・ドイル(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(19)