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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 815件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.255 6点 フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン 2019/10/13 16:31
「殺人が行われた。」「Aには犯行が可能だった。」「A以外には犯行は不可能だった。」「したがって犯人はAである。」・・・完璧な密室のごとく組み立てられた完璧なロジック。
だが探偵には「密室のトリック」を破る様に「ロジックのトリック」を破ることを要求される。よくできた「密室」が、結局は作者が読者を騙す「叙述トリック」であるように、この作品の「ロジック」も巧妙に読者を欺く「叙述トリック」により構成されている。
そして「本格ミステリ作家」エラリイ・クイーンには、そうした「欺き」でさえも「フェア」であることが要求される。ここでの叙述は「フェア」か?自分は「OK」だった。

No.254 4点 ねじれた家- アガサ・クリスティー 2019/10/07 21:54
これまたマザーグース物の一つ。クイーンが「靴に棲む老婆」で描いた家族や、それ以上にカーの描くフリークな群像とは違い、クリスティーは英国女流小説風の人間描写から筆をすべらせない。それがひんやりとした、いかにもなミステリな雰囲気を醸し出して、それはそれでとても良いのだが、「マザーグース童謡」とはいまいちそぐわない。

No.253 4点 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン 2019/10/07 01:21
マザーグース見立て殺人ものの一つだが、登場人物達の「フリーク」具合が、カーに比べてイマイチ。カーならば、もっともっとホラーでドタバタでグロテスクかつファンタスティックな童話的キャラで楽しませてくれたろう。
「全く同じサインというのは偽造である。」てなロジックは目からウロコだった。

No.252 6点 孤島パズル- 有栖川有栖 2019/10/01 17:31
「密室殺人」に「宝探し」に「ロジック」と豪華3点セットで8点付けたいが、
➀「完全な密室」だがカラクリがチャチなのでマイナス1点。 ➁0次元1次元2次元と進化する「宝探しパズル」も3次元に至って尻つぼみとなりマイナス1点。 ➂犯人特定のロジックは見事・・・もちろん「あの日記に虚偽記載がないとは言い切れない」「拾った紙は最初に見過ごした紙とは別物で、誰かが自転車で踏んでたことに気付かなかった」「実はライフルは二丁あった」などのイチャモン付けは可能で犯人確定の「十分条件」とは言えない・・・見事だが、「分り安すぎる犯人」のキャラ描写が「純粋なロジック」の判断を阻害しており、ここはプラマイ0。で、計6点。

(いろいろネタバレ)
あの女が一人ボートで湾を漕いで行く場面が、「獄門島」で住職が夜の寺の石段を提灯灯りで登っていく場面や「ゼロの焦点」で女が一人で海に舟を漕ぎ出す場面に重なり、ロジック以前こいつが犯人だと直感できてしまう。

No.251 6点 死時計- ジョン・ディクスン・カー 2019/09/28 07:43
古い時計の、狂い、よじれ、ねじけて噛み合わない歯車の様な登場人物達。誰もかれもが怪しく描かれる中で、「うさん臭さ過ぎる」キャラの一群が物語早々に容疑者リストから「お払い箱」になった後に、「いかにも容疑者らしい」キャラ群が残されるが、最後にカラクリ時計の「カラクリ返し」が待っていた。
これもカーのトリックとしては「スカ」な部類(〇〇道だの隠し〇〇〇だの、それ自体ペケだろう)の作品だが、面白かったんで点数はオマケ付き。

No.250 3点 赤後家の殺人- カーター・ディクスン 2019/09/20 12:29
魅惑的なオカルト冒頭から十八番の密室殺人展開に広がり、フランス革命にまで辿る歴史浪漫溢るる物語を経て、竜頭蛇尾な尻つぼみ感たっぷりな結末で終わる。まあ、あんだけ毎度毎度「密室」「不可能」やってんだから、たまにはこんな「脱力感」あふれる「スカ」なトリックもあるだろう。

No.249 8点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2019/09/15 18:36
「最近のあたしが取り澄ましたお上品なミステリしか書かないと思ったら大間違いよ。えげつない血生臭いのも書けるのよ・・」ってな自慢気な前書きだが、本当は「あたしだってジョンのような『密室もの』くらい書こうと思えばいくらでもこしらえられるのよ・・」を示した傑作。十八番の「人間関係トリック」をダミーに使い捨てるところがGood。

No.248 4点 鏡は横にひび割れて- アガサ・クリスティー 2019/09/12 19:47
ほぼ一気読みできる位に読みやすいアガサ・クリスティのミステリの中にあって、珍しく「退屈さ」を感じてしまう作品。このネタは短編でまとめてほしかった。

No.247 5点 杉の柩- アガサ・クリスティー 2019/09/05 11:00
ハヤカワ文庫の表紙画、なんで薔薇の絵?と思ったが、ちゃんと理由があった。冷静な判断力を保ちながらも、強くひたむきに異性への情念を抱き続けるのは男とは限らないってことね。クイーンはおろかカーでもこんな女は描けない。

No.246 8点 囁く影- ジョン・ディクスン・カー 2019/09/03 09:22
オカルトとドタバタを両翼に、不可能犯罪トリック解明をエンジンにして飛翔するカーのミステリの中で、この作品はオカルトのみドタバタ抜きの片翼飛行で疾走する。そして切なく歪んだ心情とサスペンスが、ハウ・フーを超えて「いったい何が起こっているのだろう」のホワットダニットを噴き上げて行く。
ところでこの作のフェル博士にはいつもの魅力がないが、なんせ片翼のドタバタ自体がないのだからやむを得ず、ヒロインの魔力がそれを補ってあまりある。「あなたは彼女を愛してなどいないのよ・・幻想の女・・あなたの頭が創り出した夢の女よ・・ねえ、聞いて・・」「あの人が、どんな女だってかまわない。僕は、あの人のところに行く。」
嗚呼、「幻の女」「愚かなる男」

No.245 4点 地獄の奇術師- 二階堂黎人 2019/09/02 09:58
これが江戸川乱歩の作品だったら、敬意を表して「名誉9点」位は付けちゃってたかもなあ。
それにしても、あの女子高生探偵のキャラ、もちっと何とかならんのか。

No.244 4点 スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー 2019/08/29 22:42
アガサ・クリスティーの記念すべき処女作。1920年発表てことは1915年の「恐怖の谷」とほぼ同時代なのか。キャラ的にもプロット的にも「こいつが不幸に消えないと話が収まらない」=「ミステリ的には犯人のわけがない」て位に分かりやすいヒールを出しちゃいながら見事に一捻りして終結。十八番の「人間関係トリック」も既にきめてる。

No.243 6点 魔女の隠れ家- ジョン・ディクスン・カー 2019/08/25 06:13
旧家継承のオカルト風秘儀に絡めた連続殺人。キャラ的に一番怪しい人物には鉄壁のアリバイが・・・。アリバイトリックは見事だが、「密室」「不可能犯罪」ではないのが残念。自決し損ねた犯人の情けなさがよい。
※ところでフェル博士って妻帯者だったのね。忘れてた。

No.242 7点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2019/08/23 14:06
喉を切り裂かれた女の死体に残された指紋は、登場人物の誰とも適合しなかった・・ 航海中の船上という舞台が連続殺人の緊張感を煽る。しかも戦時中の航海ときてはなおさらに。指紋トリックの方は「へえ、そうなんだ」って感じだが、人物入れ代りトリックは読み返してみると「ああ、本当だあ」とただただ感心。
※いまさらだけれども、フェル博士とヘンリ・メリヴェール卿のキャラの違いって「えっへん、おっほん」するかしないかだけだよね?それとも両方ともしたっけ?

※2021/5追記。メリヴェールも咳払いの「えへん」位はしてた。あと、メリヴェールの方が、爆笑度が高い。

No.241 7点 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー 2019/08/20 06:21
富豪一族の遺産相続をめぐる連続殺人のごとき展開にも関わらず、もっと何か「奥のありそな」ひんやりとしたホラー風味。「どいつもこいつも『怪しげ』に描かれてるなあ」「逆に、犯人この中にいないんじゃね?」「でもどうやって話まとめるんだ?」ときて「え? 犯人それえ?」となる。回り道一捻りされた「意外な真犯人」だった。
※「・・女はあまり親切ではありません・・」女流作家が書くと変に説得力があり・・

No.240 4点 毒猿 新宿鮫II- 大沢在昌 2019/08/18 14:59
このサイトで知り、興味を持って読んだ一冊。素直な感想は「面白かった」。「ハードボイルド」とか「クライム」なんてジャンルでの評価ならば7点8点とか遠慮なく付けちゃうと思うが、やっぱりジャンルにはこだわりたい。だからこのサイトでは「ミステリ」として評価して、おまけ付けてこの点数。
風俗店バイト店員が、自身を「ドゥ・・ユアン(毒猿)」と正体を明かす場面がカッコイイ。 ただ我が国のヤクザをゴミみたいに扱う戦闘描写は何とも・・・彼らだって人間だろうに・・・。
※ところで空手やってる奴に「脳天かかと落とし」なんて技は無意味だと聞いた。(真相は知らん)

No.239 6点 連続殺人事件- ジョン・ディクスン・カー 2019/08/17 17:59
鬱然たる塔つきの古城に三つの密室事件。もっとゴシックでオカルト風味な話になってもよいのに、展開は抱腹絶倒コメディ。フェル博士はじめ登場人物ことごとくが面白い。「他殺に見せかけた自殺」「自殺に見せかけた他殺」をめぐる解釈の行く末は、二つの密室「機械」トリックの解明で、そこだけ評価しても「まあまあ」といった感想になってしまうが、フェルの犯人に対するこの決着の仕方が大好きだ。

No.238 6点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2019/08/12 08:28
(採点とコメントは表題作に対してのみ)
最初から何か「腑に落ち」なかった。てことはこの「ロジック」のどこかに瑕疵があるにちがいないと念入りに精査したが、特に瑕疵は見つけられなかった。

(訂正及び追記)
「ロジック」に「瑕疵」は見当たらないがイチャモンは付けたい。端折って最後の3人に容疑者を絞ったところから。
「犯人はABC以外にはあり得ない」「もしAが犯人ならばAはXをしない」「もしBが犯人ならばBはXをしない」「犯人はXを行った」「ゆえにA及びBは犯人ではなく残ったCが犯人である」・・・・
だが、現実の人間とは「もしAが犯人ならばAはXをする必要はないのに、無意味にXをしてしまう可能性もある」存在である・・・。
したがって採点も6点に変更。

No.237 5点 白昼の悪魔- アガサ・クリスティー 2019/08/11 17:34
人物設定から「こいつが殺されるんだろなあ」と予測したのが殺されて、「犯人こいつしかいないだろう」ってのが犯人だった。また「こういうトリックなんだろうな」ってのは半分だけ当たった。
※登場人物の一人のオカルト狂い娘の蔵書の一冊が「火刑法廷」ってネタに思わずニヤリ。

No.236 6点 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン 2019/08/09 21:49
絶対に銃弾ではありえない死体の額の穴。だが状況的に刺殺もありえない不可能殺人。まるで見えないユニコーンの角に突き刺されたような・・。 人間と人間、人間と死体のすり替わりという大技手品。魔術師カー(「カーターディクスン」名義だが)の面目躍如たる一篇。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 815件
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アガサ・クリスティー(88)
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