皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.27点 | 書評数: 888件 |
No.348 | 6点 | 多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー- アンソロジー(出版社編) | 2020/06/22 17:26 |
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「タタラじま!」「怪獣無法地帯!」 その二単語あるだけで満足 |
No.347 | 6点 | ホロー荘の殺人- アガサ・クリスティー | 2020/06/19 21:56 |
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ハンサムで仕事もできる開業医。不器用で地味な妻と、魅力的な二人の・・才能ある美術家と有名女優の・・二人の「愛人」。読者の誰もが予想する通りに医者が射殺され、傍らには拳銃を手にして茫然自失の妻。人間関係トリックでなければ、キャラ一捻りトリック・・プロット上、一番疑わしい立場の人物を一旦裏に隠すアガサ・クリスティー常套のトリック・・だが、今回は他の容疑者達もそれぞれのキャラが奥深く反転される。
「絶望とは、冷たい孤独の中に自分を閉じ込めること・・」 「私、何処へ行けばいいんでしょう? 何をすればいいんでしょう?」「さあ、お帰りなさい。あなたは生きている人の所へ行くのです・・」 不覚にも「感動」してしまった。 |
No.346 | 4点 | 死が最後にやってくる- アガサ・クリスティー | 2020/06/16 21:06 |
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なんと四千年(400年でなく)昔の古代エジプトが舞台。そこまで昔むかし大昔なら、もうSFレベルの異次元コード設定もありだろうに、そこはアガサ・クリスティー、遺産相続も絡んだ家族連続殺人ミステリに仕上げてる。「被害者候補=憎まれ役」濃度の高い順に家族が殺されて行き、犯人は現代「古典」ミステリの極めて分かりやすい王道だった。 |
No.345 | 5点 | ロートケプシェン、こっちにおいで- 相沢沙呼 | 2020/06/14 01:04 |
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女子高生マジシャンシリーズ第二弾。前作同様に「日常の謎」短編集が、最終話で長編ミステリに収束する。今回は各短編の頭に別人物の一人称叙述が連なり、当然、叙述トリックに備えたが、主語トリックに見事引っ掛かった。
読むに耐えないセンチメンタリズムの過剰さは、前作を大きく上回っているが・・・ |
No.344 | 5点 | 午前零時のサンドリヨン- 相沢沙呼 | 2020/06/14 01:04 |
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女子高生マジシャンが探偵役の「日常の謎」短編集。第二話で「ん?青春説教もの?」と若干危惧させるが、第三話で苦い味わいに盛り返し、最終話で一本の長編ミステリへ収束する。ただ、あのワトスン役男子高校生のキャラは・・ま、目をつぶろうかな・・いくら未熟な少年とは言え、あんな感傷垂れ流しはちと耐えがたいのだが。 |
No.343 | 6点 | 愛と悔恨のカーニバル- 打海文三 | 2020/06/10 06:15 |
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「アーバンリサーチ社」シリーズ第五弾。ヒロインの少女探偵が11歳の時に出会った初恋の美少年。再会は二人が19歳の時だった。極度に凄惨な猟奇殺人のハードボイルドバイオレンスにして、13歳違いの美しい姉弟の秘密を巡るホワイダニットミステリ。
「女は不安にかられて女になる・・赤いランドセル、スカート、可愛らしい下着。男も不安から男になる・・会議室で居酒屋でフットボール場で、男達は「肛門性交やりまくってる」、だが男が本当に望んでいるのは、お袋とやること、イヤ、お袋に犯されること・・・」 姉弟相姦の果てにあった究極のエロチシズムは、破滅的にして美味なる死への陶酔だった。 |
No.342 | 6点 | ロビンソンの家- 打海文三 | 2020/06/10 06:11 |
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17歳の若者が、幼少期に自分を捨て自殺した母親を追想する青春ロマンにして、母親:「順子さん」の謎を巡るホワットダニットミステリ。かつて、若者の祖母が己の夢を満たすために建てた不思議の家「ロビンソン」。そこで出会った脱俗的な叔父と従姉との奇妙なひと夏の甘い生活。そして、一年後に明らかになる「事件」の真相。
羨ましいぐらいに脱俗的なのは良いが、登場人物全員の話す言葉の悉くが「詩的」「哲学的」かつ「ロジカル」で、ここまで会話レベルの抽象性を首尾一貫させてしまうと、小説的リアリティが犠牲を被らざるを得ない。 |
No.341 | 6点 | 虐殺器官- 伊藤計劃 | 2020/06/06 15:47 |
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近未来SFにして、世界各地に凄惨な虐殺戦争を巻き起こす謎の人物ジョン・ポールのホワイダニットミステリ。自分の手は汚すことなく、地域一帯に殺戮を生じさせる人物へのフーダニット興味は早々と解消してしまい、一番肝心なハウダニットは信じられないような「大言壮語」で終わる。ミステリとしては致命的、SFとしても大いに物足りない。※本来3点・・・ただ、ジョン・ポールの「WHY」、大いに身に染みたので、大いに点数おまけ加算。 |
No.340 | 5点 | ハンニバル- トマス・ハリス | 2020/06/01 18:42 |
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ドクターレクター・・・深夜の古城で、瞳に赤い妖光を光らせ、バッハ変奏曲を古楽器で演奏する、優雅で高貴で超俗の食人鬼。愛するものは高級酒と豪華な珍味、かぐわしき香りにFBI捜査官クラリス・スターリング・・・人間離れした悪魔レクターを主人公にしたサスペンスロマン。だが、その悪魔もまた、痛ましき幼少期トラウマを引きずった、文学=精神分析上の対象・・すなわちホワイダニットミステリの対象である「人間」だった。殴り殺したくなる位の憎まれ役のFBI幹部に対する、レクターとクラリスの「処刑」場面がすばら・・もとい、すさまじい。 |
No.339 | 7点 | しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 | 2020/05/24 20:44 |
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「イニシエーションラブ」も、「え? おおお!」だったが、これも話が終わって・・それ自体では3~4点かな・・頁を戻して、「え?・・うわあ!」だった。
こんな驚嘆すべき作業にも、これぽっちのオマケ点数加算で済まされてしまう作家に心底敬意を捧げたい。 |
No.338 | 6点 | フロスト気質- R・D・ウィングフィールド | 2020/05/24 08:06 |
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勘と見込み捜査の警部フロストシリーズ第四弾。回を重ねるごとに頁数が増え、少年誘拐事件に連続幼児刺傷事件、少女誘拐強盗事件や連続窃盗事件も重なり、さらに余計な腐乱殺害死体まで出て来る多重エピソード並列が実に手際よく展開する。最後には冷静狡猾なボスキャラ・・小モリアーティの様な・・ボスキャラも出てきて、ただただ勘の人フロストとの虚々実々対決がサスペンスレベルに盛り上がる。憎まれ役の上司マレット・・責任は部下に押付け功績は自分で頂戴する・・署長マレットとの掛合い漫才はそろそろパターンが見えて来たかな、相変わらず面白いんだけどね。 |
No.337 | 5点 | 夜のフロスト- R・D・ウィングフィールド | 2020/05/14 18:28 |
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フロスト警部シリーズ第三弾。証拠など二の次、勘と見込み捜査の汚れ警部。単に風体言動が汚いだけでなく、容疑者への証拠偽造まで行う汚れよう。なのに的は大きく外さない。出世欲と見栄に凝り固まった上司や部下(シリーズ三代目相棒)とのやり取りが何より面白く・・もはや吉本新喜劇超えてドリフ大爆笑の世界・・メインストーリーの連続老婆切り裂き殺人事件や15歳少女殺害事件等の解決より魅力的なくらいだ。証拠を捏造して容疑者に口を割らせる公僕とか少女殺害犯人とか・・普通は完全に悪玉だろうに・・を奥行きある人物として描く手腕に脱帽。ミステリとしてのレベル考えると、おまけしてもこの点数だが、警察小説としてはディーヴァー、エルロイよりも面白い。 |
No.336 | 6点 | 宵待草夜情- 連城三紀彦 | 2020/05/08 17:20 |
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・「能師の妻」 加被虐性愛とバラバラ殺人の斬新なホワイダニット。ハウ・フーの謎もほしかった。5点
・「野辺の露」 哀しくも慎ましい慕情譚から陰惨で恐ろしい復讐譚への反転。4点 ・「宵待草夜情」 カフェ女給・病身画家・「宵待草」・・大正浪漫溢れる叙情画から犯罪暗黒画への反転か・・と思わせて、別の哀しい情景画への騙し絵的変換。7点 ・「花虐の賦」 支配被支配の倒錯愛絵巻が真逆の物語絵巻へ反転・・と見せかけてさらに別の陰画へ再反転。7点 ・「未完の盛装」 殺人の時効サスペンス劇がトリッキーな逆転劇へと収束・・と思わせて、全舞台の女の情念劇へのどんでん返し。8点 で、平均して、(5+4+7+7+8)÷5=6.2点 |
No.335 | 6点 | 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 | 2020/05/04 11:25 |
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・「二つの顔」 自宅で妻を殺して庭に埋めた男、警察から「奥さんがホテルで殺されている」と電話が・・5点
・「過去からの声」 玉突き(ひき)二重誘拐事件。4点 ・「化石の鍵」 男女と娘のメルヘンのホワイダニットと、鍵のトリックを巡るハウ(ちとせせこましいが)フーダニットの錯綜。7点 ・「奇妙な依頼」 夫婦双方から浮気調査依頼を受ける羽目になる二重探偵の顛末。「赤毛連盟」発展型てとこか。7点 ・「夜よ鼠たちのために」 名作ハードボイルドの様な実にカッコいい標題。が、中身はイマイチ叙述トリック。4点 ・「二重生活」 妻と夫と愛人、愛人と男と妻、夫と妻と男、男と愛人と夫・・4人の男女の四重三角関係の叙述トリックかつ転倒犯罪。8点 で、平均とって、(5+4+7+7+4+8)÷6=5.83333・・・四捨五入して、6点 |
No.334 | 6点 | フロスト日和- R・D・ウィングフィールド | 2020/04/27 07:00 |
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小便排水溝を塞ぐヤク中浮浪者の死体、汚水の溜まった半地下の公衆便所。スラックスと靴で汚水に踏み込む我らがヒーロー、ジャック・フロスト。手を汚す仕事に相応しく、下品でうす汚いフロスト警部シリーズ第二弾。「証拠と科学分析」のジェフリー・ディーヴァーのライムとは対極にいる、「勘と見込み」の前近代的な探偵警部の物語。多重エピソード展開が前作以上に広がり、相変わらず爆笑を誘うが、物語が膨らんだ分、緊張感は薄れたかな。 |
No.333 | 7点 | クリスマスのフロスト- R・D・ウィングフィールド | 2020/04/26 08:14 |
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薄汚くかつ下品・・それも署長秘書に浣腸くらわしたり、たん壺の中味を飲んだ奴のエピソードを食事中に披露する程の半端ないレベルの・・下品な中年警部が主人公。警察長の甥の青年巡査を引き連れて、若き娼婦の8歳になる娘の行方不明事件を追ううちに、数十年前の銀行強殺事件に行き当たり、森に棲む魔女の様な霊媒師や怪しげな聖公会司祭もからみ、ホワイトクリスマスに向かってドタバタと事件が収束して行く。シナリオライター上がりの作者による、巧みな多重エピソード展開で、数頁に一度の割合で爆笑させられ、たまにシンミリさせられ、それでいてわざとらしい偽善に陥ることなく、シビアな人間性現実から目をそむけない、実に見事なる「警察小説」。ミステリとしての要素はたいしたことないけれども、大いにオマケ付けちゃいたくなる。 |
No.332 | 7点 | 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 | 2020/04/21 00:44 |
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・「DL2号機事件」 奇妙奇天烈にして不思議と説得力あるホワイダニット。5点
・「右腕山上空」 自殺偽装の殺人を見破るロジック。読み返すとフー・ハウ伏線叙述もさり気なくあった。「スネーク菓子」「ヒップ大石」いい商品いい芸人と思うがなあ。7点 ・「曲がった部屋」 左右のロジックからの犯人特定。「死出虫」なんてグロテスクな虫いるのか・・見たくねえ。7点 ・「掌上の黄金仮面」 前後のロジックからの不可能犯罪解決。昔「欽ちゃんの仮装大賞」で、女子大生がこのトリックで「ゾンビ」演じてた。6~7点 ・「G線上の鼬」 車を利用した場所錯視トリックによる犯人消失トリック。6点 ・「掘出された童話」 解読されても感心させられるだけで、とても共感感銘できない暗号解読物。あれ理解できる人、極めて限られるじゃないか。こしらえた作者の労力に賛辞は惜しまないけれど。7点 ・「ホロボの神」 太平洋戦争中の未開民族の小屋で起きた「不可能殺人」の時を経た解決。7~8点 ・「黒い霧」 ユニークな殺人アリバイトリックにパイ(もっと恐ろしい物も・・)投げドタバタ喜劇付き。5~6点 ※眉目秀麗長身で文武両道秀でながらズッコケ気味の名探偵と、三角顔(△、▽どっちだ?)の謎の老婆がレギュラーの短編集。駄作なく文字通り「粒ぞろい」全体で7点 |
No.331 | 7点 | 捕虜収容所の死- マイケル・ギルバート | 2020/04/18 10:22 |
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第二次大戦イタリア軍捕虜収容所。脱走計画の地下トンネルを掘り進める連合国軍捕虜達の前に、突然、殺されて間もない死体が現れる。死体が地下トンネル先端に存在することは、状況的に不可能なはず・・・。大脱走を巡る虚々実々サスペンスと、「この死体どこから」の不可能トリックミステリが併存する設定が素晴らしい。 |
No.330 | 6点 | ヴィーナスの心臓- 鮎川哲也 | 2020/04/16 20:06 |
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・「達也が嗤う」 ダブル叙述トリック・・それらしき詐術は何もないのに簡潔な文体それ自体がトリックさせるところがよい・・「背に腹を代え~」の方はちといただけないが・・叙述トリックに8点。だが最後の二人の容疑者のうちどちらが犯人かを示す決定的なロジックはないのでマイナス1点で7点。
・「ファラオの壺」 「小学5年生:探偵クイズ」とかでも当てられそうなネタなので、2点。 ・「ヴィーナスの心臓」 盗難時間による犯人特定のロジックに、6点。 ・「実験室の悲劇」 あとうかぎり最少の容疑者と証拠のロジック。見事! 8点。 ・「薔薇荘殺人事件」 犯人が己の特徴を隠蔽するための行為をあばくことで、犯人を特定するロジック。殺害道具=犯行場所ネタの方は見事だが、被害者のケープの方はイマイチ決まり方が悪い。これ「気のまわし過ぎ」てことにならないか(そもそもあの症状って「神話」だとも聞いているが)。それよりも冒頭が叙述トリックになっている事の方を評価して、7点。 ・「山荘の死」 ただの一言で、こんなに見事に犯人を特定したロジックは見たことない。9点。 ・「悪魔はここに」 実につまらん。2点 で、平均とって・・(7+2+6+8+7+9+2)÷7=5.857142・・四捨五入で6点。 |
No.329 | 5点 | ヒッコリー・ロードの殺人- アガサ・クリスティー | 2020/04/15 17:12 |
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下宿館を舞台にした男女青春群像ミステリ・・と思わせて、アガサ・クリスティーにも「旧体制社会」以降を舞台にしたの書けるんだ・・と思わせて、ホワイダニット、ちとずっこける。最後になって、結局は「旧世界」ミステリの匂いが・・。まーた、あの手の犯人キャラトリックなのが、いかにもアガサ・クリスティーらしい。でも、あの婆さん、新世代の、60年代以降の若者文化にさえも、きっと「寛容」(ちと皮肉を含めながらも)な人だったんだろうな。ドロシー・セイヤーズみたいな気持ち悪い通俗的保守派臭がないのがいい。ので、点数オマケ付き。
※こういうマザーグース童謡の使い方はよいな。 |