皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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レッドキングさん |
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| 平均点: 5.29点 | 書評数: 999件 |
| No.459 | 5点 | スリーピング・ドール- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/05/13 17:45 |
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| キャサリン・ダンスシリーズ第一弾。脱獄したカルトファミリーのカリスマと手助けする信者の女。対するは、仕草や表情から相手の本性を見抜く「人間噓発見器」のヒロイン捜査官。手に汗握る追いつ追われつのサスペンスで、奥のある人間ドラマもなかなか。でも、ライム物期待しちゃうとねえ。目的‐手段‐主体‐対象の全体性としての物語それ自体を、多重に捻って楽しませてくれるライム「物証分析」推理に比べて、ダンスの「キネシクス」推理、せいぜい、Who(犯人誰?でなく、この人の本性は?)ネタとWhyネタにこじんまり纏まってしまうかな。一つ二つ、模範的古典的な人物トリックあるんだけどね。 | |||
| No.458 | 4点 | 複数の時計- アガサ・クリスティー | 2021/05/09 07:34 |
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| 仕事の依頼を受けて、盲婦人の家を訪れた派遣秘書が発見したものは、刺殺死体とあるはずのない複数の時計だった。婦人の家と両隣り・向い及び斜め両向い、都合六家の位置関係と人物描写から、「赤毛連盟」発展系期待したが、中途半端に・・ポアロの言う「極めて」て程ではない・・単純な真相だった。 | |||
| No.457 | 5点 | 鳩のなかの猫- アガサ・クリスティー | 2021/05/07 05:21 |
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| 卓越した知性感性意志を持ち、冷静な判断力と強かな営業力政治力までも兼ね備えた、スーパーウーマン校長が運営する超高級女子校。女教師連続殺人が、遠いアラブでの宝石紛失事件と絡めて語られる。連続殺人は、犯人が○○となると推理難しいなあ。まして舞台が、屋敷の一族でなく学園にまで広がっちゃうとねえ。
※オリヴァて女作家が作者の「自虐自画像」ならば、あのバルストロードていう女校長、「理想自画像」てとこかな。 てことで、アガサ・クリスティー50年代の長編ミステリ全12作の採点修了したので 私的「50年代アガサ・クリスティー」ベスト3 第一位:「予告殺人」 第二位:「葬儀を終えて」 第三位:「マギンティ夫人は死んだ」 |
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| No.456 | 6点 | 死者のあやまち- アガサ・クリスティー | 2021/05/02 23:40 |
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| 地方の古豪邸で催された「殺人事件ゲーム」の最中、被害者役の少女が絞殺死体で発見され、館主の妻の幼女の如き女が失踪する。何故に誰に少女は殺されたのか。真相の多重入れ替りネタ、なかなかに良い。トリックのリュック使用方法がカー「妖魔の森の家」方向だったらなお良く。※女作家オリヴァの「アガサ自虐ネタ」風味、相変わらずGood。 | |||
| No.455 | 4点 | 死への旅- アガサ・クリスティー | 2021/05/01 12:09 |
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| 今は昔、まだ共産主義が、楽園幻想と恐怖対象の相半ばの存在だった50年代。失踪する科学者達の謎解明の駒として、西側スパイに仕立てられた自殺志願女。流れ着いた先は砂漠の巨大医療施設・・怪しげな組織とキャラ達・・起と承のミステリアス感は良い。が、転と結が・・・。美味しいがオードブルとスープで終りのフルコースてとこかな。 | |||
| No.454 | 6点 | エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件- ジョン・ディクスン・カー | 2021/04/26 17:18 |
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| 英国にとって「プロテスタントvsカトリック」てのが、信仰の問題ではなく、権力闘争の問題だと言うのは分かるが、この小説でミステリなのは「何故に、単なる一判事の死が政治利用され得る程に、民衆レベルの熱狂を得られたのか」ダニットにとどめを刺す。(英国は、ナチスドイツのユダヤアレルギー程は極端なカトリックアレルギー発作に至らず、幸運だった。) 歴史事件に正面から立ち向かったアイデアに敬意を表し2~3点加点。
でもやはり、英国歴史ミステリ言うんなら、「Who was Jack the Ripper?」の方に興味が行く。 ※法的手続きと証拠証人の「論証」で進められる近代西洋法廷。一見、理性的客観的に見える有罪無罪審判も、こういう(クイーン「フォックス家」「ガラスの村」等含め)の読まされた後では、わが江戸奉行「カンと見込み」捕物と比べ、さして良い物とは思えず、それどころか、「大岡裁き」「遠山金さん裁き」の方がまだマシにさえ見え・・・ |
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| No.453 | 4点 | 魔術の殺人- アガサ・クリスティー | 2021/04/25 17:27 |
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| 少年院を運営する富豪一族に起きる連続殺人。またも出ました、アガサ・クリスティー必殺技「人間関係トリック」!「十八番」超えて、もはや「伝家の宝刀」と言うべきにあらずや? ちと抜き過ぎだが・・ | |||
| No.452 | 5点 | バグダッドの秘密- アガサ・クリスティー | 2021/04/23 19:29 |
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| 操りとラスボスWho(見え見えだが)、およびWhatダニットのミステリが、まるでジェフリー・ディーヴァーツイストの源流の様な明るいオプチミズムで泳着する。本来3~4点だろうが、奔放にして聡明なヒロインのエネルギッシュな魅力と、見事なる異邦イラク描写に加点したく。 | |||
| No.451 | 4点 | 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン | 2021/04/21 21:29 |
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| 莫大な資産価値ある名画を飾った屋敷。忍び込み瀕死の重症を負った怪盗の正体は、屋敷の主人だった。当然に保険金目当ての狂言盗難疑惑呼ぶが、絵画に保険は掛けられておらず、主人の経済状態も悪くなかった。Why自分の絵画狙った? Who主人に暴行働いた? いったいWhat起きた?
※ギデオン・フェル博士とヘンリー・メリヴェール卿の違い。クスりとさせるのフェル、爆笑させるのメリヴェール。 |
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| No.450 | 4点 | 震えない男- ジョン・ディクスン・カー | 2021/04/18 16:19 |
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| 「幽霊屋敷」を購入した裕福な男が催す幽霊パーティー。「見えない手」がシャンデリアを揺らし、女の足首を掴み、壁に掛かった銃を宙に浮かして殺人を起こす。「それをやっちゃあ、おしめえよ(これ使っちゃあ、どんな「密室殺人」もありだ)」て位のスーパー機械トリック出しちゃって、本来3点だが、操りネタも面白いんで1点加点。 | |||
| No.449 | 3点 | N・Aの扉- 飛鳥部勝則 | 2021/04/16 15:00 |
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| フェデリコ・フェリーニ「8 1/2」や三島由紀夫「鏡子の家:創作日記」みたいに、「芸術する芸術家(要するにこの俺様)」テーマに半フィクション拵えちゃうと、どんな「手厳しい」自己批判・自己嫌悪も、所詮、自己陶酔・自虐的感傷の垂れ流しになる。ましてや、新人賞後翌年にこんなもん書いちゃあねえ。
数年・・十年になるか・・待ってはみたが、もう「電撃復活」ないと見限って、 私的、飛鳥部勝則ベスト3(4) 第一位:「殉教カテリナ車輪」 第二位:「誰のための綾織」 第三位:「ヴェロニカの鍵」 同三位:「レオナルドの沈黙」 2025/7/13 追記。えぇ!復活? それは愉しみ(^^♪ |
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| No.448 | 7点 | 予告殺人- アガサ・クリスティー | 2021/04/14 20:43 |
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| 悪ふざけとしか思えない「殺人お知らせ」に興味津々釣られ集まる近隣者達。お知らせ時間通りに現前で生じてしまった殺人劇は、事故か自殺で処理されるべきところ、遺産相続をめぐる第二第三の連続殺人へと発展して・・・。
第一殺人のトリック解明や第三殺人のサスペンス展開もなかなかだが、読ませどころは第二殺人の「愛憎悲劇」。 「自分の過去を覚えていてくれる最後の人間がいなくなると、人はひとりっきりになるんです。・・・私の少女時代を覚えている人は、もう誰もいません・・もう、誰も・・・」 ※1950年発表作品なので、時代的に、明確には書かれてないが、ヒンチクリフとマーガトロイドって、間違いなくレズビアンのパートナーだよね。この主題、第二殺人にも無意識的に働いていて、クイーン「最後の女」でのこの手のテーマの扱い方よりも遥かに素晴らしい。 |
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| No.447 | 7点 | 忘られぬ死- アガサ・クリスティー | 2021/04/06 22:14 |
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| 場所と「見えない男」の毒殺不可能トリックを機軸に、異性への情念と金銭への渇望を燃料に、様々な・・姉と妹、夫と妻、主人と秘書、母と息子・・様々な人間関係を意匠に、ロマンミステリ幻燈が鮮やかに儚く回転する。
てことで、アガサ・クリスティー40年代の長編ミステリ全13作の採点修了したので 私的「40年代アガサ・クリスティー」ベスト5 第一位:「ゼロ時間へ」 第二位:「書斎の死体」 第三位:「忘られぬ死」 第四位:「ホロー荘の殺人」 第五位:「五匹の子豚」 |
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| No.446 | 6点 | 弓弦城殺人事件- カーター・ディクスン | 2021/04/03 18:43 |
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| ゴシックな旧館どころか、おどろおどろしき古城舞台の連続殺人もの。「密室」状態の部屋で見つかった奇怪な姿態の絞殺死体。被害者以外ただ一人室内にいた人物には実行不可能な犯行手口だった・・フーハウ?
「カーター・ディクスン」名義第一弾。まだヘンリー・メリヴェール卿は登場せず、ゴーントていう一発屋探偵・・いまいち魅力ない・・が事件を仕切り、解明ロジック実に鮮やかで、密室トリックもなかなか。城内見取図ほしかった。 |
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| No.445 | 6点 | 毒のたわむれ- ジョン・ディクスン・カー | 2021/03/31 12:36 |
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| ゴシックの亡霊の様な館。「古き良き」価値信仰者の老いたる元判事と彼に支配される一族。連続する毒薬毒殺事件。「好きなミステリ作家は?」と聞かれれば「ジョン・ディクスン・カー!」と反射的に答えてしまうが、残念なことに彼の「毒殺好き」だけには共感できない。が、この作品の毒の差異による犯人特定ロジックは目からウロコだった。
※バンコランとフェル・メリヴェールをワンポイントで繋ぐこれ一作のみ登場の探偵、奇人青年:ロシター・・おそらく、金田一耕助御手洗潔の祖先筋なんだろな。 |
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| No.444 | 7点 | 書斎の死体- アガサ・クリスティー | 2021/03/28 14:30 |
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| 残酷な独裁者には反抗することができるが、慈悲深い独裁者に対してはそれも難しく、「奴隷」は真綿で首を締められるように、独裁者の慈愛に窒息させられて行く。孤独な帝王が、己の夢想の国から住民達が逃亡しようとしていることに気づき、縋りついた夢の少女は・・死体となって他家の書斎で見つかった。いかにもな遺産相続をめぐる殺人と匂わせて、動機ある容疑者にはアリバイがあり、犯行可能な人物には動機がなかった。疑う気にもなれない程の偽悪な男二人と怪しげなワキ役達、筋骨隆々の身障者爺さん、「自宅で死体が発見されたんなら、その状況を楽しまなくっちゃ」婆さん、そして、二組の人間関係トリック・・見事なる煙幕。「爪」と「ドレス」のロジックがGood! | |||
| No.443 | 4点 | 動く指- アガサ・クリスティー | 2021/03/25 16:54 |
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| 療養のために田舎の旧館を借りた若者と付添いの妹。都会風な裕福兄妹を待っていた村中巻き込む醜聞怪文書騒ぎ。騒ぎはやがて自殺・殺人事件へと発展し・・。本来は一番に怪しまれる立場の人物に煙幕をはる為の「いかにも~が行いそうな」偽装行為。加えて一人称叙述・・「アクロイド」以降、読者にとっては拭い切れない疑惑・・の二重煙幕。
※「女はたいがい、自分の子供のことを、あまり好きではありません」・・嗚呼、何という「残酷な真理のテーゼ」 |
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| No.442 | 2点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2021/03/23 14:08 |
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| 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「冬の巻」 偶然手にした大金を巡り、双生児兄弟を殺めてしまった男の倒叙サスペンス。殺したはずの兄弟が現前するミステリの真相は・・双生児ネタのひねり損ねだった。
てことで、このお題シリーズ。秋:麻耶雄嵩>春:倉知淳>>夏:我孫子武丸>冬:有栖川有栖、て、とこかな。 |
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| No.441 | 6点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2021/03/23 14:05 |
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| 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「秋の巻」 屍体の左耳を焼く連続殺人鬼に対するは、妻:耿(秋ならず)子の「あなた優しくない」冷眼に憂える刑事。どぎつい赤の様な女流作家探偵とのドタバタ道中と「普通の殺人」に目を眩まされたあげく、いかにも麻耶らしいトンデモな(だが変に説得力ある)動機のミステリが待っていた。殺人鬼が己の「作品」たる屍体に記す「署名」のイカれ具合は、「神様ゲーム」の猫文字と並ぶ麻耶の二大(何と言うべきか)・・。 | |||
| No.440 | 3点 | まほろ市の殺人 夏- 我孫子武丸 | 2021/03/23 14:04 |
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| 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「夏の巻」 双子ネタを半ひねりしたミステリアスホラーファンタジー。犯人が出所して、主人公に再会し・・もう一ひねりしていれば・・ホラーファンタジックミステリになれた(かな)。 | |||