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レッドキングさん
平均点: 5.27点 書評数: 888件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.388 4点 青ひげの花嫁- カーター・ディクスン 2020/10/23 21:54
ホラー童話「青ひげ」の如く、結婚した女が次々と行方不明となり、殺人鬼の疑いのかかる謎のモテ男。その殺人鬼から送られてきた台本を、実人生で実験的に演じようと興じる俳優といぶかる女演出家。俳優自身にも当の殺人鬼である疑いが掛かり、読者もその疑いを捨てきれない。はたして殺人鬼青ひげの正体は誰か。花嫁達の死体が埋められているはずのゴルフ場は、掘り返せば痕跡が一目瞭然となる地形で、隠ぺいは不可能のはず。しかし、唯一例外の場所があった・・・そこはかとなくホラー感はあるが「青ひげ」タイトルから期待されるほどの怖さはない。H・M卿登場の場面は相変わらずドタバタ笑かしてくれるが。

No.387 5点 カブト虫殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/19 20:24
あまりにも明確すぎる数々の証拠。だが、殺人容疑者Aを指し示す証拠群が、Aに冤罪を擦り付けるために、真犯人Bがバラまいたニセ手掛かりであったとしたら・・しかし、その展開それ自体が「真犯人B」を陥れるために、真・真犯人Cによる筋書きだったとしたら・・。「僕は知ったのだよ・・5分もたたないうちに・・○○が犯人だと・・」なんと超探偵なファイロ・ヴァンス。
※あの不在殺人トリック(ダミーだが)、「グリーン家」のやつより好きだ。

No.386 6点 ケンネル殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/15 19:30
「ベンスン殺人事件」新訳を読んで、「現象学的直観」探偵ファイロ・ヴァンスを再発見し、これも再読。面白かった。ただ、ここのファイロ・ヴァンス、現象学を飛び越して「超越論的独断」の超探偵=作者のネタ明かし役 にまで存在が後退しちゃってるけどね。だが、面白いことは面白い。愚直なまでに古色蒼然とした密室トリックの何と香り高い「骨董感」。もしも殺害場所と死体発見場所の移動不可能性に焦点を当てて、もっと作り込んでくれていたら、カーや「翼ある闇」の「バカミストリック」にまで飛翔してたかも。

No.385 3点 カナリヤ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/12 19:44
「ベンスン殺人事件」に続いて、新訳文庫本にて再読。やはり、昔、記憶にあった通りのファイロ・ヴァンスだった。デビュー作のシンプルにして鮮やかな「現象学的解釈」推理が、ここでは単なる「心理学的」・・類型的行動学、~型人間学・・の独断のレベルにまで薄まってしまっていて残念。
「ポーカーは人生の縮図だ!」「碁を打てば相手の人間がわかる!」「車の運転は男の人生の象徴!」etc 今でもいろいろウンチクあるけどねえ・・。それにつけても、この二つの機械トリック、ショボすぎ(でもキライじゃない)

No.384 7点 ベンスン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/08 20:46
新訳・・といっても何年も前の出版だが・・文庫本にて再読。
そっか!ファイロ・ヴァンスって、1926年にして「現象学的解釈」「本質的直観」推理をやってたんだ! 笠井潔の矢吹駆より、ずっと根源的にシンプルに。ただ「グリーン」「僧正」のみならず、このデビュー作以降は、そうした「オーラ」は失せてしまってたような・・よくてロジック、多くはただの「心理主義的」独断に堕してたような記憶が・・でも、念のため読み返してみよう。

No.383 3点 かくして殺人へ- カーター・ディクスン 2020/10/05 20:40
撮影所のシナリオライターに採用された牧師の娘。通話管からの硫酸浴びせ掛け、窓越しの銃弾、毒入りタバコ混入と様々な手段で命を狙われる羽目に。フー・ホワイというより、いわばフーム・ダニットのミステリ。フー自体のひねりも効いてはいるが、別にカーがこんなの書かんでもなあ。

No.382 5点 九つの答- ジョン・ディクスン・カー 2020/10/03 19:49
フェル博士は出演せず、長い・・でも結構サクサク読めるミステリ。オカルトホラーではないがソフトにグロテスクで、爆笑ドタバタて程ではないが微笑くらいはさせてくれる。メインのなりすましトリックには騙された。読み返したら・・まあ確かに「ふぇあ」かな、あの叙述。すさまじくチープな不可能トリックも付いてる。で、タイトルの「九つの誤ったカイシャク」だが・・ほぼ、そんな疑い持たんかったわ。

No.381 5点 第八の日- エラリイ・クイーン 2020/09/25 19:33
米国アーミッシュに中国桃源郷を加えたような共同体に偶然迷い込んだエラリィ・クイーン。半世紀間、犯罪一つなかった外界に閉ざされたコミュニティに起きた殺人事件に関わる羽目に・・。事件解決より失われた旧約聖典「MKh(ミカ書)」を巡る謎(オチがマインカンプ!て)の方に興味がわく。事件そのものはたわいないが、有栖川有栖ともかく何で麻耶雄嵩までがクイーンに拘るのか、この作品で分かった気がした。

No.380 3点 盤面の敵- エラリイ・クイーン 2020/09/24 20:44
奇怪な遺書により4つの同型の五角形屋敷に住む、4人のイトコ達に降りかかる連続殺人。その都度、屋敷同様の五角形カードが送られ、それぞれに「J」「H」「W」「H」の文字。 4文字の謎の解明は・・ダイイングメッセージ「face」や「ホー〇」なみに脱力・ズッコケ「つ、つまらん」オチ。んなもん分るわけないし、分かったところで正直どうでもよい、われら非聖書民族としては。  で、肝心な、操り・多重人格ネタは・・まあ、ミエミエだった。

No.379 5点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2020/09/18 22:00
「黄色い毒蜂」とか「二匹のハチ」てなタイトルの方が良いのでは。
「家ついて行ってイイですか」に出てきそうな、半ばゴミ部屋に住んでる、あのエキセントリックなミステリ作家が実にいい。事件推理の「とんでもトリック」には大爆笑。ミステリはこうありたい。フェル博士メリヴェール卿ではよくある事だが、ポアロはあまり笑かしてはくれんな。
「人殺しは・・たいてい女性にもてる・・」って、そうなのか?

No.378 6点 復讐の女神- アガサ・クリスティー 2020/09/16 18:25
この犯人を「愛しすぎたが故の悲劇」の主役として、もっともっと美的劇的に描くことができたかもしれない。だが、クリスティは老女探偵を、「美」を「悪」として冷眼視するネメシスとして描き、主役の座を犯人に明け渡させることを拒否した。

No.377 5点 カリブ海の秘密- アガサ・クリスティー 2020/09/13 20:58
二人の女を殺した男の噂を喋る老人が、ふと前方の「何か」に眼を留め、驚愕の表情で口を閉ざす。老人の視線の先には、曰くありげな二組の夫婦が。そして老人はその翌日急死する・・。カリブ海西インド諸島のリゾートホテルを舞台にした連続殺人事件。義眼をキーにした左右のロジックが事件を解き明かす。

No.376 4点 緋文字- エラリイ・クイーン 2020/09/10 22:57
売れない小説家の夫と富豪で演出家の妻、そして名うてのジゴロ。夫の異常な嫉妬心と妻の不貞疑惑が、恐るべき結末を迎えるのを防ごうと奮闘する探偵にしてミステリ作家のクイーンと女秘書。目次で、ん?「ABC・・Z事件」?て振っといて、結局、クリスティ十八番の人間関係トリックものだったが、半ひねりツイストのオマケつけて終結する。

No.375 5点 スリーピング・マーダー- アガサ・クリスティー 2020/09/08 21:35
理想の新居を求めた新婚の女が心惹かれた家は、はるか幼少期に家族と暮らしたことのある海沿いの屋敷だった。追想の断片に閃くおぞましい殺人の情景。行方不明になったはずの継母は、実は殺されていたのか。BGMなしホラー映画にしたら、かなり怖いサスペンスミステリになりそう。筆跡鑑定のロジックからのフーダニットもストンと決まり・・あとは、あの「猿の前肢」ネタが、も少しホラーなオチだったらなおよく。

No.374 4点 ハロウィーン・パーティ- アガサ・クリスティー 2020/09/07 22:45
パーティーで、「むかし人殺しを見た」と自慢して殺された虚言癖の少女。容疑者はパーティー参加者数十人プラスα。「○○に○○ていた唯一の人物が犯人」てなロジックが、クイーン並みに極まっていれば見事に本格してたかもしれない。終盤までは「鏡は横に~」並みに退屈だが、真相解明ラストの味わいと犯人造形は悪くない。
※クリスティ自身のパロディの様な女流作家の他、さり気なく出てくるワキ役の若者二人・・「一人は肩まで髪を長く伸ばしフクロウのような眼鏡をかけ」「一人は頬ヒゲをはやしスペイン人風に」・・これ、69年のジョン・レノンとポール・マッカートニーのパロディではないか。

No.373 4点 ゴースト・スナイパー- ジェフリー・ディーヴァー 2020/09/01 21:36
ライムシリーズ第十弾。証拠と科学分析の四肢(実際は三肢)麻痺探偵と膝関節症の元モデル女刑事コンビが、曰くありげな地方検事の女と組み、挑むのは国家諜報組織とスナイパー。
反米主義活動家、メンヘラ右翼風組織ボス、猟奇的にしてグルメな暗殺者、怪しげな兵器産業経営者などが複雑に絡み合い、当初の見え透いたフー・ホワイダニットテーマが、別のフー・ホワイダニットのハウ=手段にツイストして、おまけに当初のテーマ自体が半ひねりして終わる。
※シリーズ読み慣れちゃうと、「ああ!○○がピンチ!」てな倒述描写も、どうせカットバックで「大丈夫だったんだよーん」になるの見え透いてしまい・・さすがにチビっと飽きてきた。

No.372 3点 蒼ざめた馬- アガサ・クリスティー 2020/08/25 21:45
歴史学者が偶然に耳にした「殺し屋プロ集団」の噂話。にわか素人探偵コンビが挑むのは、怪しげな三人の「魔女」、怪しげな富豪、怪しげな元弁護士・・そこにクレイジーな薬剤師やクリスティ自身のパロディのようなミステリ作家が絡み、最後にフーダニット一捻りのオマケが付いて決着。

No.371 5点 テニスコートの謎- ジョン・ディクスン・カー 2020/08/22 21:56
テニスコートの中央に横たわる絞殺死体。現場は被害者以外の侵入痕跡なき「密室」状態だった。衝動的に死体に接近して足跡を残してしまった女。女の窮地を助けるために偽装工作を練る男。恒例のフェル博士と警視庁警視、怪しげな杖男や軽業師などを交えて、ブラックなシュールギャグのようなサスペンスドタバタ劇が展開する。不可能トリック解明のダミー解釈・・「ロングジャンプ」「手に靴はいての倒立接近」「ネット綱渡り」・・が実にファンキーで、真相解明など、もうどうでもいいような気にさえなった。

No.370 7点 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 2020/08/19 21:40
① フーダニットのロジック:何故に室内は荒らされていたのか? 室内にあった物品aが破損されたことを隠すため。 何故に物品aは破損されたのか? 物品aの現況が犯人Aを指し示す充分条件証拠であったため・・・クイーン有栖川有栖に劣らない見事なるロジック:9.5点。
② ユニークなホワイダニット:乱歩「幽鬼の塔」横溝「獄門島」(後者はチトずれるが)思わせるユニーク世界設定の動機:5点。
③ トリック:室内外二種の足跡トリック:4点・・で、(9.5+5+4)÷3=6.166…今後の期待込めておまけして、7点。
※この人、小説文体チト頂けないが、ミステリ根幹は「ホンモノ」だな。「クイーンばりロジック」よいが、麻耶雄嵩みたいな「とんでもロジック」には走らないでほしいなあ。

No.369 4点 三角形の第四辺- エラリイ・クイーン 2020/08/18 22:19
あれ?今クイーン読んでんだよな?ってな位に、こじゃれたフランスミステリ風味サスペンスで話が進み、お!クイーンで久しぶりの7・いや8点?て期待させといて、終盤で、おい!ミステリ十戒の「爺やはイカン」に触れるだろが!3点まで急降下か・・と思わせて、アガサの二大十八番の一つにダミー返しして、結果4点。
アガサの「女の恨みって怖いわよ」に、クイーンは「いやあ、実際に手を出しちゃうのは圧倒的に男だし」と返歌。ま、女は心の底にため込んじゃうってことね。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.27点   採点数: 888件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(21)