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レッドキングさん
平均点: 5.28点 書評数: 935件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.435 6点 スキン・コレクター- ジェフリー・ディーヴァー 2021/03/13 20:04
ライムシリーズ第11弾。今回の敵は、骨執着「ボーン・コレクター」ならぬ、皮への執着「スキン・コレクター」。
被害者に猛毒タトゥー施して惨殺する連続殺人鬼。猟奇行為それ自体のホワイ展開が、他の目的のハウへとツイストするのはいつものパターンたが、そのハウが別のハウへと横ずれし、最後は鮮やかにフーダニットへと収束する。
たーだ、「あいつ」による操りってオマケは、さすがにもうクドくて・・・
※ところでディーヴァー、親「リベラル」ての分かるが、こんな露骨に「宗教右翼」おちょくって、身辺大丈夫か?

No.434 5点 フロスト始末- R・D・ウィングフィールド 2021/03/07 20:31
シリーズ第六弾にして最終話は、フロスト追放を目論む「フロスト殺し」の話。第一作よりの憎まれ役マレット署長は、めっきり精彩を失い、新たなる敵役は他署より上司として転勤してきた主任警部スキナー・・汗はかかず手柄だけ狙う露骨にヤナ奴。物語は相変わらず、軽重の多重犯罪が、立て続けに手に汗握る平行展開で進み、決して本格物のごとく一つ焦点に綺麗に収まる訳でないが、複数事件が微妙に重なり、最後には見事な全解決を見る。で、圧倒的に追い込まれたフロストの対敵役戦果は・・最後の一頁での驚くべき土俵際うっちゃり痛快勝利。
※あーあ、これでシリーズ終わっちゃった。

No.433 5点 五つの箱の死- カーター・ディクスン 2021/03/01 23:01
飲料毒混入の不可能トリック。①大容器に入った酒に毒は混入してなかった。②各グラスにも混入しておらず、③グラスに注がれる際にも混入は無かった。にも拘らず、酒を口にした全員に毒がまわった・・どうして?
昨日、4点採点したものの、書評に、このトリックはカーのオリジナルとあり、それ信じて、特許権の1点を加点。
※仲間由紀恵「トリック」に、同じ物を口にした一族の一人だけが毒死するって話あったなあ。

No.432 3点 パンチとジュディ- カーター・ディクスン 2021/02/25 21:11
「パンチとジュディ」ってドタバタ人形劇のことなのね。ドリフ大爆笑みたいなんかな。結婚前夜にH・M卿から怪しげな任務を命じられた元諜報員。殺人死体二体と偽札事件に出くわし、警官隊に追われて、女連れで逃げ惑うドタバタ劇を演じる羽目に。フー・ハウよりも、そもそも一体何が起こってたの?ホワットダニットだった。劇のカラクリ解体は鮮やかだが、早川文庫の二階堂黎人解説「カー初心者向け作品」てのには・・・大いに異議あり。

No.431 5点 もの言えぬ証人- アガサ・クリスティー 2021/02/21 21:28
ヴィクトリア朝の生き残りの様な狷介だが情誼あふれる大富豪老女。莫大な遺産を巡る遺族達・・小賢しい甥、傲慢な姪、いじけた姪、温柔な外国人医師の婿、無垢で鈍重なメイド・・。事故死と判断された老女の怪死と書き換えられた遺言。配達の遅れたポアロへの事件解明依頼の手紙。最小限の容疑者で老女殺害フーダニットを引っ張るが、ちとズッコケるハウダニット小粒ネタ・・ヒモと燐光って・・のオマケが付く。ポワロのポロリ「スタイルズ荘」「アクロイド」等ネタバレおまけも付く。老女の友人の毒舌老婆の諧謔が実にいい。「当たり前の事でしょ。誰か死んだら必ずゴタゴタがあるに決まってますよ。死人が棺桶の中で冷え切らないうちに、生き残った連中はお互いに爪を立てて財産争いさ」 ※ところで、あの犬、ヘイスティングスに貰われるんだね。

てことで、アガサ・クリスティー30年代の長編ミステリ全17作の採点修了したので
私的「30年代アガサ・クリスティー」ベスト5(6)

  第一位:「ポワロのクリスマス」
  第二位:「シタフォードの秘密」
  第三位:「メソポタミヤの殺人」
  第四位:「そして誰もいなくなった」
  第五位:「死との約束」
  同五位:「ABC殺人事件」

No.430 7点 メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー 2021/02/17 23:37
舞台はイラク(首都名バグダッドの方が雰囲気出る)だが、建物の見取り図と容疑者達の行動時刻表がしっかりした「本格館もの」。犯人のアリバイトリックを構成する殺人トリックが単純明晰に決まり、「アクロイド殺し」等より、これとか「ポアロのクリスマス」「シタフォードの秘密」等の方が素晴らしいと思っている。
プライドとマゾヒズム、支配欲と異性愛、憎悪と挺身・・男女間の情念錯綜の物語が、ミステリの型式を粉砕してしまうことなく、むしろ構成しているところも見事。

No.429 4点 なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?- アガサ・クリスティー 2021/02/13 17:07
ラスボスわかり安すぎ。にしても、植民地経営を約束された貴族令嬢と退役軍人青年なんて・・こっちこそ悪役設定にせんとねえ。

No.428 7点 シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー 2021/02/11 06:07
雪の山荘での招霊会遊びと同時刻の遠隔地での殺人。遠隔超能力殺人トリックがGood。ただ、この手のトリックとしては飛鳥部勝則「レオナルドの沈黙」の方が面白い・・とか書こうとして、ふと気付いたら早川文庫の解説、その飛鳥部勝則が書いてて驚いた。そっか!まんまこれに影響受けてあのトリック拵えたのか。

坂口安吾がこれ称賛したのは、あのトリックではなく、ヒロインの最後の男の選択・・「できすぎ君」でなく「のび太」を選ぶ「シズカちゃん」・・が、安吾の心の琴線に触れたからだと睨んでる。
「あの人は一人で立派にやっていける人」「でも、もう一人の方は、あたしが世話焼かなければ、どうなるか分からない・・」無頼派にとって、こんな涙が出そうなセリフはなかろう。

No.427 4点 アラビアンナイトの殺人- ジョン・ディクスン・カー 2021/02/08 18:10
三章とエピローグから成る長いミステリ。一、二章で別視点からの殺人事件の丁寧な証言が語られ、三章で仮探偵による実に詳細な解明がなされ、エピローグ・・それも文庫本わずか十数頁ほどで、真探偵フェルによるドンデン返し真相が明かされる。実に十一人の容疑者・・実際は九人・・の5~15分刻みの行動時間表の丁寧なアリバイロジック展開と幾つかの物証が良い。たーだ、最後の最後に殺害場所の出入口が一個増えちゃうってのはまあ良いとして、元々、出入り口が複数あるってのがねえ。毎度、書いちゃうが「密室」こしらえてほしかった。

No.426 4点 剣の八- ジョン・ディクスン・カー 2021/02/06 12:40
これも複数者の犯行企図の重なりが引き起こす「?」の話で、こんがらがった「現」況から、「元」況を解き分けるフェル博士の解釈が見事。「何故に諸料理の中から大好物のスープだけ食べ残したのか?」てなロジック展開よいなあ。残念なことに、この現象、フェル以外の一般人には別に「不思議」には見えないんだよな。あの部屋が密室だったら、人間消失していたら・・さらにポルターガイスト現象やタロット「剣の八」カードと有機的に結び付いていたら・・「三つの棺」に近づいていたかも。※探偵マニア聖職者やミステリ作家とフェルの推理マウント合戦が笑える。

No.425 5点 七つの時計- アガサ・クリスティー 2021/02/04 21:03
題名からして本格もの?と期待させといて、読み始めたら「続チムニーズ館」で、まーたスパイ・秘密結社ものか、と辟易させながら、結局は、叙述・人間関係トリックものだった。多重に騙され、その分面白かったので点数1点オマケ。

※これで、アガサ・クリスティーの1920年代の全長編9作の採点修了したんで、
 私的「20年代アガサ・クリスティ」ベスト3(4)

   第一位:「ゴルフ場殺人事件」  
   第二位:「アクロイド殺し」 
   第三位:「七つの時計」
   同三位:「スタイルズ荘の怪事件」 

No.424 3点 チムニーズ館の秘密- アガサ・クリスティー 2021/02/03 20:58
架空のバルカン小国の政権争いと失われた宝石を巡り、冒険家、凄腕政商、大物外交官、怪盗、豪邸貴族、いい女、元気娘、謎の女、探偵、英仏刑事etc入り乱れてのクリスティー「スパイ冒険活劇もの」の集大成。幾つかの人物入代りネタの他、ほんのちょびっと宝探し暗号物のオマケも付く。

No.423 3点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2021/01/28 18:32
列車内で顔を潰され殺された大富豪の娘。容疑者は二人の色男・・娘の愛人と婿。そこに婿の愛人の超絶いい女や富豪の秘書や娘のメイドや、さらに加えてもう一人の莫大遺産相続ラッキー女やら古物商父娘やら名探偵ポワロが絡み、伝説的なルビー盗難事件を巻き込んだ国際ミステリが・・・なんか20年代のクリスティー小説って、「秘密機関」だの「スパイ組織」だのが跋扈して鼻白むのだが、これも最後に「怪盗」「謎の怪女」みたいなの出しちゃったなあ。

No.422 7点 medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 2021/01/24 20:08
殺人事件の短編三篇プラス真探偵による仮探偵の操りどんでん返し。
   第一話(+最終話):座位置とガラス片のロジックに、5点
   第二話(+最終話):指紋と本と血文字のロジックに、7点
   第三話(+最終話):カメラとスカーフのロジックに、5点
   最終話(+全編)の、探偵及びシリアルキラーフー?の仕掛けに、9.5点・・で、全体で7点。
「メディウム」って「メディア」の単数形なのね。ミステリとしては「マツリカ・マトリョシカ」に一歩譲るかなあ。あっちは殺人出てこないのに。※感情露出の表現は相変わらずクドい。

No.421 3点 茶色の服の男- アガサ・クリスティー 2021/01/22 17:29
アガサ・クリスティー第四作。1924年てことは日本で言えば大正時代か。わが国では「明治風厳めしさ」と「昭和軍国」の狭間の、儚い明るさのあった「浪漫ちっく」な時代(「孤島の鬼」もこの時代を舞台にしてた)。英国でも「禁欲ヴィクトリア朝」と「第二次欧戦」の間の、多分ロマンチックな時代だったんだろう。しかも舞台は南アフリカ・・労働争議こそあれ「アパルトヘイト」の概念すらなかった、白人植民地支配が当然だった世界で・・「美しい白人」男女が浪漫サスペンスを展開する。ミステリとしては・・被害者フー?、ラスボス「大佐」フー?、あと幾つかの人物入代りネタってとこか。※ 1/4~1/3アクロイド先行ネタのオマケも付く。

No.420 3点 四つの兇器- ジョン・ディクスン・カー 2021/01/17 23:14
バンコランシリーズ第五弾(にして最終弾) 。クリスティー「ゴルフ場殺人事件」とかと同じく、複数者の別の犯罪企図と偶然が、「不思議」を現象させるってやつだが、その「不思議」が「凶器が多すぎる」なんてレベルでは・・・
不思議のカラクリ公開は実に見事だが、カーには「密室」「不可能」レベルの不思議を期待しちゃうからねえ。

No.419 2点 ビッグ4- アガサ・クリスティー 2021/01/14 15:00
世界征服を企む秘密結社の四大幹部:ビッグ4・・米国大富豪のナンバー2、恐怖の女科学者のナンバー3、ナンバー4の「怪人二十面相」、そしてナンバー1の謎の中国人。対するは、変装、アクション、果ては飛び道具プレイまで行うアグレッシブ・ポワロ。ビッグ4フー?ネタを連載少年漫画の様につなぎ、ハラハラドキドキ感なかなかに良い。たーだ、ナンバー4、それ以上にナンバー1のラストが肩透かしで残念。ラスボスフー?に期待したのに・・・

No.418 5点 心地よく秘密めいた場所- エラリイ・クイーン 2021/01/10 23:14
エラリイ・クイーン最後のミステリ。見どころは二点。
一、殴打跡の証拠とニセ証拠を巡る左右のロジック。
二、犯人による探偵の操り。「葉を隠すには林の中」、犯行目的の象徴Xを隠すためには、多くの象徴Xを拵えてそこに紛らわせてしまえば良い。林を与えられれば、葉を探し出す衝動に駆られる探偵本能を操り、容疑者Aを指示させようとする真犯人。
元題、A fine and private place、「大変にプライベイトな場所」とでも訳すのかな。
で、クイーン全長編39作の採点修了したので、「大変にぷらいべいと」な我がクイーン長編ベスト10(11)

  第一位:「シャム 双生児の秘密」
  第二位:「Xの悲劇」
  第三位:「十日間の不思議」
  第四位:「Yの悲劇」
  第五位:「エジプト十字架の秘密」
  第六位:「ギリシャ棺の秘密」
  第七位:「フォックス家の殺人 」
  第八位:「ドルリイ・レーン最後の事件」
  第九位:「日本庭園の秘密」
  第十位:「災厄の町」
  同十位:「九尾の猫」

No.417 3点 恐怖の研究- エラリイ・クイーン 2021/01/07 22:06
切り裂きジャックとシャーロック・ホームズは、19世紀末倫敦の永遠の霧の神話だから、どんな現代的解釈も色褪せてしまう。島田荘司の合理的ホワイ解決小説はそれなりに面白く、「漱石と倫敦ミイラ~」も悪くはなかったが・・・
※「エラリイ・クイーン」、ミステリ史上の大作家であり、名探偵の一人でもあるが、「エドガー・アラン・ポー」「シャーロック・ホームズ」みたいな神話的名詞って程ではないんだよな。

No.416 7点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2021/01/06 23:32
アガサ・クリスティー第三作にしてポワロ第二弾。探偵も巻き込んだ「顔無し死体殺人」事件企図が、もう一つ別の殺人企図と、更に別の偶然および誤解との複合によって、「変な」二重殺人を現象させてしまう。ポワロが現象を解き明かす丁寧な解釈が実に見事。この現象が「密室」「不可能現象」だったら、クリスティー最高作として、8~9点つけていた。女容疑者にのぼせてしまったワトソン役とのドタバタも大変に面白い。ただ、タイトルが頂けない。
※この人物トリック(顔無しなり損ねだが)、横溝「悪魔の手毬唄」の源流筋なんだろな。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.28点   採点数: 935件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
ジェフリー・ディーヴァー(22)
麻耶雄嵩(21)