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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 818件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.338 6点 フロスト気質- R・D・ウィングフィールド 2020/05/24 08:06
勘と見込み捜査の警部フロストシリーズ第四弾。回を重ねるごとに頁数が増え、少年誘拐事件に連続幼児刺傷事件、少女誘拐強盗事件や連続窃盗事件も重なり、さらに余計な腐乱殺害死体まで出て来る多重エピソード並列が実に手際よく展開する。最後には冷静狡猾なボスキャラ・・小モリアーティの様な・・ボスキャラも出てきて、ただただ勘の人フロストとの虚々実々対決がサスペンスレベルに盛り上がる。憎まれ役の上司マレット・・責任は部下に押付け功績は自分で頂戴する・・署長マレットとの掛合い漫才はそろそろパターンが見えて来たかな、相変わらず面白いんだけどね。

No.337 5点 夜のフロスト- R・D・ウィングフィールド 2020/05/14 18:28
フロスト警部シリーズ第三弾。証拠など二の次、勘と見込み捜査の汚れ警部。単に風体言動が汚いだけでなく、容疑者への証拠偽造まで行う汚れよう。なのに的は大きく外さない。出世欲と見栄に凝り固まった上司や部下(シリーズ三代目相棒)とのやり取りが何より面白く・・もはや吉本新喜劇超えてドリフ大爆笑の世界・・メインストーリーの連続老婆切り裂き殺人事件や15歳少女殺害事件等の解決より魅力的なくらいだ。証拠を捏造して容疑者に口を割らせる公僕とか少女殺害犯人とか・・普通は完全に悪玉だろうに・・を奥行きある人物として描く手腕に脱帽。ミステリとしてのレベル考えると、おまけしてもこの点数だが、警察小説としてはディーヴァー、エルロイよりも面白い。

No.336 6点 宵待草夜情- 連城三紀彦 2020/05/08 17:20
・「能師の妻」 加被虐性愛とバラバラ殺人の斬新なホワイダニット。ハウ・フーの謎もほしかった。5点 
・「野辺の露」 哀しくも慎ましい慕情譚から陰惨で恐ろしい復讐譚への反転。4点 
・「宵待草夜情」 カフェ女給・病身画家・「宵待草」・・大正浪漫溢れる叙情画から犯罪暗黒画への反転か・・と思わせて、別の哀しい情景画への騙し絵的変換。7点
・「花虐の賦」 支配被支配の倒錯愛絵巻が真逆の物語絵巻へ反転・・と見せかけてさらに別の陰画へ再反転。7点
・「未完の盛装」 殺人の時効サスペンス劇がトリッキーな逆転劇へと収束・・と思わせて、全舞台の女の情念劇へのどんでん返し。8点
で、平均して、(5+4+7+7+8)÷5=6.2点

No.335 6点 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 2020/05/04 11:25
・「二つの顔」 自宅で妻を殺して庭に埋めた男、警察から「奥さんがホテルで殺されている」と電話が・・5点 
・「過去からの声」 玉突き(ひき)二重誘拐事件。4点 
・「化石の鍵」 男女と娘のメルヘンのホワイダニットと、鍵のトリックを巡るハウ(ちとせせこましいが)フーダニットの錯綜。7点 
・「奇妙な依頼」 夫婦双方から浮気調査依頼を受ける羽目になる二重探偵の顛末。「赤毛連盟」発展型てとこか。7点 
・「夜よ鼠たちのために」 名作ハードボイルドの様な実にカッコいい標題。が、中身はイマイチ叙述トリック。4点 
・「二重生活」 妻と夫と愛人、愛人と男と妻、夫と妻と男、男と愛人と夫・・4人の男女の四重三角関係の叙述トリックかつ転倒犯罪。8点
  で、平均とって、(5+4+7+7+4+8)÷6=5.83333・・・四捨五入して、6点

No.334 6点 フロスト日和- R・D・ウィングフィールド 2020/04/27 07:00
小便排水溝を塞ぐヤク中浮浪者の死体、汚水の溜まった半地下の公衆便所。スラックスと靴で汚水に踏み込む我らがヒーロー、ジャック・フロスト。手を汚す仕事に相応しく、下品でうす汚いフロスト警部シリーズ第二弾。「証拠と科学分析」のジェフリー・ディーヴァーのライムとは対極にいる、「勘と見込み」の前近代的な探偵警部の物語。多重エピソード展開が前作以上に広がり、相変わらず爆笑を誘うが、物語が膨らんだ分、緊張感は薄れたかな。

No.333 7点 クリスマスのフロスト- R・D・ウィングフィールド 2020/04/26 08:14
薄汚くかつ下品・・それも署長秘書に浣腸くらわしたり、たん壺の中味を飲んだ奴のエピソードを食事中に披露する程の半端ないレベルの・・下品な中年警部が主人公。警察長の甥の青年巡査を引き連れて、若き娼婦の8歳になる娘の行方不明事件を追ううちに、数十年前の銀行強殺事件に行き当たり、森に棲む魔女の様な霊媒師や怪しげな聖公会司祭もからみ、ホワイトクリスマスに向かってドタバタと事件が収束して行く。シナリオライター上がりの作者による、巧みな多重エピソード展開で、数頁に一度の割合で爆笑させられ、たまにシンミリさせられ、それでいてわざとらしい偽善に陥ることなく、シビアな人間性現実から目をそむけない、実に見事なる「警察小説」。ミステリとしての要素はたいしたことないけれども、大いにオマケ付けちゃいたくなる。

No.332 7点 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 2020/04/21 00:44
・「DL2号機事件」 奇妙奇天烈にして不思議と説得力あるホワイダニット。5点
・「右腕山上空」 自殺偽装の殺人を見破るロジック。読み返すとフー・ハウ伏線叙述もさり気なくあった。「スネーク菓子」「ヒップ大石」いい商品いい芸人と思うがなあ。7点
・「曲がった部屋」 左右のロジックからの犯人特定。「死出虫」なんてグロテスクな虫いるのか・・見たくねえ。7点
・「掌上の黄金仮面」 前後のロジックからの不可能犯罪解決。昔「欽ちゃんの仮装大賞」で、女子大生がこのトリックで「ゾンビ」演じてた。6~7点
・「G線上の鼬」 車を利用した場所錯視トリックによる犯人消失トリック。6点
・「掘出された童話」 解読されても感心させられるだけで、とても共感感銘できない暗号解読物。あれ理解できる人、極めて限られるじゃないか。こしらえた作者の労力に賛辞は惜しまないけれど。7点
・「ホロボの神」 太平洋戦争中の未開民族の小屋で起きた「不可能殺人」の時を経た解決。7~8点
・「黒い霧」 ユニークな殺人アリバイトリックにパイ(もっと恐ろしい物も・・)投げドタバタ喜劇付き。5~6点

※眉目秀麗長身で文武両道秀でながらズッコケ気味の名探偵と、三角顔(△、▽どっちだ?)の謎の老婆がレギュラーの短編集。駄作なく文字通り「粒ぞろい」全体で7点

No.331 7点 捕虜収容所の死- マイケル・ギルバート 2020/04/18 10:22
第二次大戦イタリア軍捕虜収容所。脱走計画の地下トンネルを掘り進める連合国軍捕虜達の前に、突然、殺されて間もない死体が現れる。死体が地下トンネル先端に存在することは、状況的に不可能なはず・・・。大脱走を巡る虚々実々サスペンスと、「この死体どこから」の不可能トリックミステリが併存する設定が素晴らしい。

No.330 6点 ヴィーナスの心臓- 鮎川哲也 2020/04/16 20:06
・「達也が嗤う」 ダブル叙述トリック・・それらしき詐術は何もないのに簡潔な文体それ自体がトリックさせるところがよい・・「背に腹を代え~」の方はちといただけないが・・叙述トリックに8点。だが最後の二人の容疑者のうちどちらが犯人かを示す決定的なロジックはないのでマイナス1点で7点。 
・「ファラオの壺」 「小学5年生:探偵クイズ」とかでも当てられそうなネタなので、2点。 
・「ヴィーナスの心臓」 盗難時間による犯人特定のロジックに、6点。
・「実験室の悲劇」 あとうかぎり最少の容疑者と証拠のロジック。見事! 8点。 
・「薔薇荘殺人事件」 犯人が己の特徴を隠蔽するための行為をあばくことで、犯人を特定するロジック。殺害道具=犯行場所ネタの方は見事だが、被害者のケープの方はイマイチ決まり方が悪い。これ「気のまわし過ぎ」てことにならないか(そもそもあの症状って「神話」だとも聞いているが)。それよりも冒頭が叙述トリックになっている事の方を評価して、7点。  
・「山荘の死」 ただの一言で、こんなに見事に犯人を特定したロジックは見たことない。9点。 
・「悪魔はここに」 実につまらん。2点 

で、平均とって・・(7+2+6+8+7+9+2)÷7=5.857142・・四捨五入で6点。

No.329 5点 ヒッコリー・ロードの殺人- アガサ・クリスティー 2020/04/15 17:12
下宿館を舞台にした男女青春群像ミステリ・・と思わせて、アガサ・クリスティーにも「旧体制社会」以降を舞台にしたの書けるんだ・・と思わせて、ホワイダニット、ちとずっこける。最後になって、結局は「旧世界」ミステリの匂いが・・。まーた、あの手の犯人キャラトリックなのが、いかにもアガサ・クリスティーらしい。でも、あの婆さん、新世代の、60年代以降の若者文化にさえも、きっと「寛容」(ちと皮肉を含めながらも)な人だったんだろうな。ドロシー・セイヤーズみたいな気持ち悪い通俗的保守派臭がないのがいい。ので、点数オマケ付き。
※こういうマザーグース童謡の使い方はよいな。

No.328 5点 鎮魂歌 不夜城Ⅱ- 馳星周 2020/04/13 08:37
「不夜城」の続編。主人公:劉健一(料理の鉄人:陳健一でなく)は深海に潜み、第一作では脇にいた北京マフィアのドン:崔虎・・残忍にして狡猾、ぱっと見「とうがたった大学院生」にしか見えない狂虎・・が前面に出てきて、対立する上海マフィアに台湾勢力、警官崩れ等が絡み、血で血を洗う殺し合い騙し合いを繰り広げる。主人公の「操り」位置をミステリ要素と評価したい。
それにしても、北京語・上海語・台湾語・日本語が飛び交うと、中国人同士でさえ、どれが日本語でどれが中国語か判別できない、てのは目からウロコだった(ホントかどうか知らん)。

No.327 4点 不夜城- 馳星周 2020/04/13 08:12
日台ハーフの若者を主人公に、歌舞伎町を舞台に、上海マフィア台湾マフィア北京マフィアetcがダマし合い凌ぎ合い殺し合うハードボイルドなクライム小説。「ゴッドファーザー」のスケールや「犬の力」の迫力には到底及ばないにしても、手に汗握るほどワクワクドキドキ面白い。
吉川英治賞てのは納得するが、「このミステリーがすごい」一位とかは・・それはちと違うんじゃね。「大誘拐」「新宿鮫」とかもそうだが、「講談」に「落語」賞出す程の違和感が。「テツandトモ」大好きだが、あれ「漫才」って言われてもなあ。
じゃあ、お前もこのサイトで採点するなよってことになるので、あまり心の狭いことは言わず、でも「ミステリ」サイトなんで点数は抑え込んで・・・

No.326 3点 さよならの代わりに- 貫井徳郎 2020/04/12 18:55
好きなんだけどなあ、この手の。ここがミステリサイトでさえなければ・・・

No.325 6点 黒いトランク- 鮎川哲也 2020/04/11 16:05
思い出す。 なんとか「読者挑戦状」みたいに見破ってやろうと、ノートに克明メモしながら読み進めたことを。
いいセン行ってたと思う・・85点(?)位までは追いつめたんだけどなあ・・・

No.324 5点 - F・W・クロフツ 2020/04/11 15:55
十代初読で「おお、深い!」 時を経て再読し「つ、つまらん。」 更なる再読で「樽はそんなにタルくない・・」 

No.323 4点 愛国殺人- アガサ・クリスティー 2020/04/11 00:36
「従僕に英雄なし」ならぬ「歯医者の前に英雄なし」の話。顔無し死体トリックの一捻り発展形。これも「マザーグース物」って言えるのかな、でも見立て殺人でない所が良い。マザーグース見立ての始まりってヴァンダイン「僧正殺人事件」なんだろうか。「誰が殺したコックロビン」「小さな兵隊さん10人」始め、見立て殺人を面白いと感じたことがない。我が横溝の手毬唄見立て(あれは怖かった)を除いて。

No.322 6点 バーニング・ワイヤー- ジェフリー・ディーヴァー 2020/04/07 16:22
ライムシリーズ第九弾。今回の敵は、電力を自由に操り惨劇を繰り返す「電気男」。骨格は〇〇殺人と見せかけた✕✕殺人・・と見せかけた△△殺人、そうDMディヴァイン「五番目のコード」と同じで、ここまでなら4~5点。と見せかけておいて、ボスキャラ「ウォッチメーカー」・・ライムのモリアーティたる・・ウォッチメーカー登場で加点。

No.321 6点 そこに薔薇があった- 打海文三 2020/04/05 19:34
脱俗的で洒落た会話で進む少しエロい話が、信じられないほど唐突な惨劇で幕となる六つの短編。全く無関係に見えた諸短編は、最後の第七篇で一挙にホワット及びフーダニットミステリへと展開して、一つに収束する。
「薔薇を求めていたわけではないのに、そこに薔薇があった・・」

No.320 7点 弁護側の証人- 小泉喜美子 2020/04/03 00:26
初読時の感想は忘れた。あの叙述トリックに驚いたのか、え?って訝しく読み返したのか覚えてない。「殺人交叉点」もそうだったが、その後読んだ「殺戮にいたる病」の目の覚めるような衝撃感はなかったんだろう。叙述、特に冒頭の鉄格子越しの会話を注意深く読み直したが、「◯◯に死刑が宣告され・・」の伏字叙述が気になった。「殺戮に~」ではフルネーム明記されていた。そこらへんかな。
高木彬光に推奨されて世に出ながら、さほど脚光をあびることもなく、51歳で信じられない様な終わりを遂げた作者の生涯に哀悼の意を込めて、点数はオマケ加算。

No.319 3点 ポケットにライ麦を- アガサ・クリスティー 2020/04/02 23:58
「まざあぐうす見立て」にはお腹いっぱい。これ、探偵が犯人を名指した後日に、その証拠たる写真と手紙が発見されて終るより、名指しせずに犯人の条件を絞っておいて、ラストの一行で、「写真に写っていたのは・・◯◯だった」とかの方が効果的でない?
「最後は精神病院に逃げ込んで死刑を逃れるつもりでしょう」「かまいません、死刑にしてしまいなさい!」・・・いいなあ、ミス・マープル。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 818件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(32)
カーター・ディクスン(25)
二階堂黎人(25)
アーサー・コナン・ドイル(23)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(19)