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人並由真さん
平均点: 6.33点 書評数: 2035件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.775 6点 小笛事件- 山本禾太郎 2020/03/20 03:45
(ネタバレなし)
 大正15年(1926年)6月28日の京都。はやらない下宿屋の屋内で、47歳の女主人・平松小笛を筆頭に4人の女性の死体が発見される。ほかの3人のひとりは、小笛の17歳の養女・千歳。そして残る2人は、小笛の近所の知人である大月夫妻、その娘である5歳の喜美代と3歳の田鶴子という幼い姉妹であった。屋内で縊死状態で見つかった小笛は自殺か他殺か不明だが、ほかの3人は完全に他殺。小笛の無理心中か? それとも4人とも誰かに殺されたのか? 双方の可能性が取りざたされるなか、捜査線上には、かつての下宿人で小笛と肉体関係のあった京都大学卒の27歳の青年・広川条太郎の存在が容疑者として浮かび上がってくる。

 昭和7年(1932年)7月から12月にかけて「神戸新聞」「京都日日新聞」に『頸の索溝』の題名で連載されたドキュメント形式のミステリ小説。甲賀三郎の『支倉事件』(1927年)と並ぶ戦前・国内のこの系列の作品の代表編であり、特に本作は現実の事件に材をとりながら、事件発生の日時も関係者の名前などもほぼ~あるいはかなりの部分を現実そのままに記述(叙述)。まさに押しも押されもしない小説形式の犯罪・裁判ドキュメントである。

 そういう方向で名高い一作ということはかねてより知っていたし、その上で一編の長編ミステリとして何はともあれ評価が高いので、いつか読もうと思いながらこのたび読了。
 しかしキーパーソンとなった広川の結審の行方など、とりあえず何も知らないまま読んだので、最終的に彼は有罪認定されるのか無罪になるのか、また後者の場合、やはり犯人は小笛なのか、あるいは他に真犯人が……? などの興味は終盤まで堅持。その上で、喚問される証人たちの証言、さらには警察の捜査や鑑識で明らかになる事実でドラマチックに進展する審理の流れはおおむねテンション豊かに読むことができた。

 ……が、そんな現実の裁判の推移(最終的に2年近くに及ぶ)が、いくつかの段階的なプロセスを踏みながらかなり劇的に語られる一方、文章がとにかくマジメでシリアスなのでひたすら疲れる。そのくせ、なるべく情報を精緻に盛り込もうという作者の意気込みの方はほぼ全編にわたって感じられるものだから、そうそう読み流すわけにもいかず、大部(400字詰め原稿用紙で550枚だそうな)の小説の量感に、えらく体力を奪われた。例によって作中に登場する人物たちの名前をひとりひとりメモしながら読んだが、この作業をしていなければ、正直、疲労を感じて何回か寝落ちしていたかもしれない。

 いや、審理の進展に何度も何度も翻弄される広川の境遇の切実さや、弁護側と検察側の攻防の白熱ぶりなど、ドキュメント小説の作り方はきちんとしてるんだけど、作者がそれだけを真っ当に綴れば良いかというとうーん、うーん、であった。
 たまたま少し前に読んだ『ベラミ裁判』(1927年)も本作や『支倉事件』とほぼ同時代の作品で、同じように裁判部分の比重が並々ならぬ作品だが、いろんな意味でずっとエンタテインメント小説としての結構度は高い。
(まあ向こうは、直接ベースとなる実話をもとにしていない完全フィクションという大きなアドバンテージが厳然とあるのだが。)
 
 オールタイムの国産ミステリに雑食的に興味がある人なら、生涯に一度くらいは読んでおいてもいいかとは思う。評者の場合、時間を置いてまたいつかもう一度読んでみようかという思いをいだかないでもないが、特に必要もなければたぶん10年くらいは間を置くだろうな(汗)。

No.774 5点 逢えるかも知れない- ジェームス三木 2020/03/19 05:29
(ネタバレなし)
 丹沢山中で、麻袋につめられた全裸の青年が、生きたまま発見される。彼は頭部に大怪我を負い、記憶を失っていた。発見された現場にちなんで「丹沢一郎」の仮の名をもらった彼は、事件を捜査する47歳の温情派の平刑事・江田、そして江田の娘で高校を出たばかりの信用金庫職員・ミズエの世話になるが、そんな彼の命を何者かが狙う。ミズエの発案で、失った記憶を探るきっかけにと全国の名所絵葉書を見まくった一郎は、なにかひっかかりを覚えた情景のある九州にむかう。だが途中で路銀を使い果たした一郎は、たまたまであった篤志家の青年実業家・若林英之介の世話になるが……。

 1980年代半ばに、脚本家である著者のメインシナリオで放映された連続テレビドラマの小説版。原作とかノベライズとかいうより、メディアミックスの連動企画として当時刊行された小説だろう。
 テレビは本放送時、母が好きで観ていてなんとなく付き合っていたが、その母が途中のある展開に立腹。視聴を中断したので自分もそのまま観なくなった(今にして思えば、あれこれ感じるところもある当時の視聴状況だが)。

 そんな自分だが、先日ブックオフでこの小説(集英社文庫版)にたまたま再会。ちょっと懐かしくなって購入し、あっと言う間に読み終えた。ミステリなのかと問われるのなら、一応裏表紙には「長編サスペンス・ロマン」とあるし、内容もまあ、和製『黒いカーテン』ではある。ほかにも思いつく記憶喪失ネタの類似作はあれこれと、いくつか。

 とはいえ犯罪や事件性は十分の物語だが、なんらかの謎を提示して読者の興味をわずかなりとも刺激するような作りではなく、一郎の本名もすでにプロローグから半ば明かされ、犯罪者の立場も隠された? 動機もいきなり語られる実にゆるい内容。ハイテンポで話が転がっていくのは良いが、謳い文句ほどサスペンスもない。もともとそんなに期待値の高い作品でもなかったが、うーん、こんなものかな、という感じではある(苦笑)。
 そもそも事件の一端は主人公の無思慮な行動が遠因の一端となっている気もするが、まあ、その辺はギリギり怒らないで許せるかなあ……というところ。

 主要キャラの人間的な偏差値が総じて高く、このへんの作劇も見方によっては御都合主義ではあるんだけど、一方でメロドラマというかオトナ向けのラノベとしてはそういうまとめかたが品の良い面もあるので、一概に悪いとはいえない。
 結局、ひとことで言えば他愛ない、ということなんだろうけど、通常のミステリとはリーグの違うハナマル作品としては、これでいいかもね。
 ということで評点は0.5点ほどオマケして。

No.773 6点 男の塩- 田中光二 2020/03/19 04:39
(ネタバレなし)
 カーアクション作品をふくめて、広義の冒険小説の中短編6本を集成した作品集。
 角川文庫版で読んだが、章立ては最初の三編
『男の塩』
『真夜中へ三百キロ』
『傷ついた海』
がセクションⅠ

 後半の三編
『蒼ざめた珊瑚礁』
『マイ・ホット・ロード』
『暴走軍団を阻止せよ』
がセクションⅡ
 ……というくくりになっている。

 今回ちょっとびっくりしたのは、セクションⅠの三本が同じ世界観の連作編だったことで、しかも大昔に読んだ田中作品の長編冒険小説『失われたものの伝説』と作品世界を共有。<一見ルーザーだが、本当はまだ燃え尽きていない各分野のスペシャリスト>を立ち直させる物好きな資産家<人間サルベージ屋・日高律>のシリーズだったこと!
 評者は、くだんの『失われた~』はもう細部も大筋もほとんど覚えていないが、その日高のアシスタント格の美女で主人公と恋人関係になるヒロイン、島有愛(うい)がイイ女で大好きであった。その有愛も日高とともにこちらの三本の連作に登場する。なんか昔の彼女に思いがけず再会した気分。
 当然ながら各編の紙幅はそれぞれ短いため、冒険・活劇譚としてのスケールにそれぞれさほどの広がりはないが、『ブラック・ジャック』のカルテ的に各編の主人公を立ち直させる日高の連作ドラマというノルマを消化しながら、一定の満腹感を与える作りはさすが。たださすがに三本続けて読むと、同工異曲の作劇でゲスト主人公のモチーフだけ変えているようなところもあるが、まあ、そのへんはギリギリ。

 単発編の『~珊瑚礁』はアマチュアダイバーのグループが、なぜかいきなり沖縄の海で異常繁殖しはじめたオニヒトデの大規模な駆除に向かう話だが、そこからのストーリーの広がり、最後に明かされる真相とあわせて、本書中ではこれが一番楽しめた。
 とはいえ作者の地を最もバーバリックにさらけ出したという感覚では、その次の『マイ・ホット・ロード』の方が胸に響く。田中作品の長編『白熱』に求めたのは間違いなくこっちの感覚であり、そのコンデンス作品として腹応えは大きい。
 最後の『暴走軍団』は、突如破滅に向かうレミングのごとく、街中で暴虐込みの暴走を始めた四輪車の集団を内閣直轄の超法規組織が鎮圧する劇画ノベル風の荒っぽい作品だが、妙に原石的な魅力を感じないでもない。昔だったら(若い頃の評者だったら)こういうのは、あっというまに読み終わったあと、長編にしてほしかったとかほざいたんだろうが、今はなんとなくこれはこれで良いような思いもある。

 基本的に(たぶん大方の読者と同様に)活劇・冒険小説は長編でこそと思ってはいるのだが、個人的に田中光二くらいまで信頼するというか作風に通じてくる、気心が知れてくると、たまには中短編メニューでも良いという気にもなってくる。まあその辺は他の人とは共有できない、かなりごく私的な感覚だろうけど。
 そういう意味で、これはこれで味のある一冊であった。

No.772 7点 ベラミ裁判- フランセス・N・ハート 2020/03/18 21:14
(ネタバレなし)
 1926年6月19日の夜。ニューヨークに近いローズモントの町で、碧眼金髪の超美人の若妻マドリン(ミミ)・ベラミが心臓を短剣で刺されて殺害された。 ミミは元彼氏で32歳の銀行の重役パトリック(パット)・アイヴズと密通が噂されていた。捜査が進むうちに、事件当夜にパットの妻スウザン(スウ)が、ミミの夫スティヴンと会っていたという目撃情報が寄せられる。そこから、夫のパットに捨てられるのではとおそれを抱いたスウ、あるいは浮気する妻ミミへの嫉妬が憎悪に変わった夫スティヴン、そのどちらかがミミを殺し、さらに一方が他方の犯行を支援したのでは? との疑惑がもたれる。スウとスティヴンの双方は、ミミ殺害の嫌疑で法廷に立つが……。

 女流作家フランセス・N・ハートによって書かれた、1927年のアメリカ作品。物語はのべ8日間の二人の被告の殺人容疑を問う法廷、そのワンステージにほぼ固定されて進行。
 ちなみにお話の狂言回しとなるのは、最後まで名前が出ないフィラデルフィアの「プラネット新聞」の特派員となる赤毛の女流作家で、おそらく作者の分身的なキャラクターであろう。この女流作家の記者が法廷で初めて出会った他紙の青年記者と審議が進むにつれて親しくなっていくという、ラブコメっぽい糠味噌サービスも用意されている。

 とはいえ本筋となる、二人の被告を巡っての検察側と弁護側の論戦の積み重ねは確かに圧巻。
 実は弁護側の主力となるベテラン弁護士ダドリ・ランパートは、スウの亡き父カーティス・ソーンの旧友で、ランバートはスウのもうひとりの父親というくらいの親しい存在なのだが、これを受けて立つ辣腕の検事ダニエル・ファアからの陪審員への物言い(「わたしはひとりの人間として、自分の娘のようなアイヴズ夫人の無実を信じ、その潔白を晴らそうとするランバート氏の思いに最大級の敬意と共感を感じる。だがしかし陪審員のみなさん、そんな情の前に、法律に照らした真実の目が曇ることがあっては許されないのです!(大意)」)も、この手の法廷作品の王道ながら、ゾクゾクさせられる。
 くわえて、少しずつ明らかにされていく証拠と証言、さらにそれらそれぞれの解釈によってゆりうごくシーソーゲームの緊張感も十分に堪能。

 なお本作の読後、井上良夫の名著『探偵小説のプロフィル』内の関連記事(同書内では「ベラミ事件」と仮表記)を読むと、同氏はこの裁判部分がいささか冗長だった旨を述懐しているんだけど、個人的にはそんなこともなかった。
 まあ邦訳は編集がかなり丁寧で、わかりやすい目次を一瞥しただけでも読み進むペース配分に有益。そういう面で、助かったこともあるだろうけれど。

 ラストの意外性についてはもちろんここでは書けないが、裁判ミステリからパズラーへの転調はなかなか効果的にいった印象はある。ただし(中略)という流れなので、かなり抜本的な部分で不満を覚える人もいるかもしれないが。
(トリックとかギミックとかではなく、ミステリ小説としての全体の構造において、クリスティーの某作品に影響を与えた可能性をここでは簡単に指摘しておきたい。ネタバレになってないはずだけど。)

 いずれにしろ、期待以上におもしろかった。原書の辻褄があわないところを気にしながらも、あえてそのまま翻訳し、巻末の訳者あとがきでそれらについて言及する延原謙の仕事も(それが当たり前のこととはいえ)誠実で丁寧。

 前述の『探偵小説のプロフィル』によると、作者ハートの未訳作のなかには本作品に匹敵するくらい母国で評判の良かったものもあるらしい。ぜひとも発掘翻訳してほしいものですな。

No.771 6点 崩壊の夜- 笹沢左保 2020/03/16 13:28
(ネタバレなし)
 中堅広告会社「関東広告」で調査部に勤める31歳の倍償郁夫は、閑職に飽きて社内の有力な面々を引き抜き、大手のお得意先・大同電機との縁を奪いながら、新興会社の旗揚げを企む。倍償は24歳の同僚・中曾根冴子と不倫関係にあり、彼女から起業のための金策を求めるが、さらに共働きの妻・紅子の預金を借りる必要があった。倍償は、自分の21歳の美人の妹・弘代を大同電機の宣伝課長・鶴田錬次郎に抱かせるなどの根回しと前後して、夫の独立に反対な紅子の、予想外に高額の預金をものにすることを考えるが、その紅子が、ある日、何者かに殺害された。

 1962年4~9月にかけて「週刊アサヒ芸能」に連載された、笹沢の比較的初期の作品。
 あらすじ内に名前を出していない登場人物をふくめて人間関係が明快に配置された長編で、主人公・倍償の独立にかける野心のほどが、紅子殺しのフーダニット、さらには彼女自身をとりまくある謎とあわせて物語の興味となる。
 三時間で読めてしまう小品ながら、良い意味で二時間ドラマ的なまとまりを持った作品。ストーリーの顛末も大筋の流れは読める一方、そこに持って行くまでの筋運びはちょっとした意外性もあり、その意味でも楽しめた。

 読後に少しだけwebで感想を探ると、本業がまともなサラリーマンの読者らしい方など、主人公に共感と憧れ、そして物語全体にある種の恐怖を覚えた人もいるようで、さもありなんであった。
 ちなみに後半のストーリーでは、主要人物が物語に沿った作者の駒的な動きになる面もあるが、ドラマとしての使い方、その上での書き手の言いたいことがくっきりしているので、特に不満はない。

 当時の広告業界ものとしても、デティルの叙述について相応のリサーチはしているようであるし(新聞の広告面への契約の仕方など)、笹沢作品のベストクラスではないにせよ、それなりに面白いといえる佳作~秀作。
(ただしミステリ要素とサラリーマン小説の部分の総和としての評価で。)

No.770 6点 暁のデッドライン- 中田耕治 2020/03/15 04:20
(ネタバレなし)
「おれ」こと、現在は週刊誌編集部の資料係を務める川崎隆は、女優の恋人・和泉燎子と交際中。燎子は夫と数年前に別れた三十代の美女で、高校三年生の娘のまゆみがいたが、そのまゆみを誘拐したので三百万の身代金を用意しろと電話が入る。犯人は当然のごとく警察への連絡を禁じたが、身代金が安すぎること、また燎子に聞いた情報から状況に不審を覚えた川崎は、まゆみが本当に誘拐されたのか確認しようと独自の調査を開始。まゆみの友人の女子高校生で資産家の娘・片桐藍子に接触する。その藍子からの情報をもとにさらに関係者を訪ねて回る川崎だが、彼の前には惨殺された死体が転がっていた。

 スピレインやマッギヴァーン、ロス・マク、さらには『死の接吻』や『虎よ、虎よ!』まで多数の海外ミステリ、SFほかの翻訳を担当し、一方で海外史研究家や舞台演出家の顔も持つ著者・中田耕治のオリジナル国産ミステリ。

 例によって長年自宅の一角に眠っていた蔵書を思い立って読んでみるまでは、表紙折り返し・袖口のあらすじ紹介とこの題名から、タイムサスペンスの誘拐もの&ノンシリーズの単発編だろうと思っていたが、実際にはジャーナリストの川崎隆を主人公にした長編シリーズものの第二弾であった(シリーズ第一弾は1961年に刊行の『危険な女』らしい)。内容もサスペンス編というよりは、一人称のハードボイルド作品という方がふさわしい。
 物語も予想外の方向に転がっていき、その辺はさすがに詳しくはいえないが、作品の仕上がりは、よく考えられた部分と雑な叙述が一冊のなかに同居。一流半の国産ハードボイルドミステリにあと一歩という印象なのだが、思っていたよりずっと、骨っぽさは感じた。
 ただし女性連中はそれなりにキャラクターが描き込まれている反面、主人公の川崎以外の男キャラ連中はまるで精細がない。この辺は書きたくなかったものには熱量を傾けなかった作者の正直さがモロに出た、そんな雰囲気である。

 事件の黒幕も大筋の流れでわかってしまうのはまあ仕方がないが、手がかりというか伏線に関して妙な気の配り方をしているのは感じられ、その辺はちょっと面白い。ただし刊行当時の日常文化ならもっとわかりやすかったかも知れないギミックが、21世紀の今となってはいまひとつ理解しにくくなってしまっているきらいはある。

 あと終盤でメインヒロインの燎子(高校生の娘がいるのだから、いくら女優で若く見える美人といっても三十代後半のはず)と別の23歳の女優が、かつで同期のニューフェイスだったという記述があるが、これはどう見てもヘンでしょう。その昔、二十代半ばの遅咲きニューフェイスと新人の子役の少女が同期だったとでもいうのか? 
 ほかにも細部で、あ~雑だなと思える箇所がいくつか目に付いた一方、うん、なかなか……と思わせる部分も散在し、その辺のカオスぶりは確かに本書の味ではある。文章もところどころ、ポケミスや創元でおなじみの中田節が目について、くすぐったい気分で快い。

 リアルの皮をかぶったファンタジー的な和製ハードボイルドだし(物語は川崎視点で、事件開幕から収束まで一日半もかかっていない)、国産ハードボイルドの傑作を十本なり二十本なり選んだとして、その中に入るような一冊でも決してないけれど、これはこれでまあ悪くはないね。

No.769 5点 愛の囚人- ユベール・モンテイエ 2020/03/13 05:44
(ネタバレなし)
 1963年9月のイスタンブール。ヒルトンホテルに滞在していた「わたし」こと弁護士ジャン・カルパンは、電報でパリに急遽呼び戻される。パリでは15年来の旧友で名家の息子、そして現在は国務次官のオレスト・レアンデルが新妻クレール・アルヌーを毒殺した嫌疑で逮捕されていた。カルパンとオレストの交際は密接な時期もあればほぼ疎遠な期間もあったが、彼の最初の妻デュボン・ド・ヴリクールが事故で死亡、そして先の妻だった美女クロードもまた62年6月に一人旅の最中に交通事故で死んだことはもちろん聞き及んでいた。自身の潔白を訴えるオレストだが、やがてカルパンの前に、意外な隠されていた事実が。

 1965年のフランス作品。モンティエの長編第四作目で、紙幅は約130ページとかなり薄く二時間もかからずに読めてしまう。
 独特の恋愛観、結婚観、女性観を持つ主人公オレスト(といっても別段そんなにイカれたものでもないが)と、さる劇中ヒロインとの奇妙な? 関係性が主題の作品(まあギリギリ、ここまでは言っていいだろう)。
 限りなく普通小説に近い手応えであり、読んでる内はくだんのメインヒロインに対して「こういう女も現実にいるのかなあ、いないだろうなあ、しかしまあいるかもしれないし、いたらある意味面白いなあ」的な、けったいな感興を覚えた(笑)。

 妙なキャラクターの登場人物たちが織りなす人生喜劇? という言い方をするなら、前に読んだ同じ作者の『悪魔の舗道』と同じだが、今回は少なくとも、話に乗れた分だけ、そっちよりはマシ。最後、いかにもという手際でミステリのフィールドに転調するのもなんか微笑ましくってよい。まあ文芸味がそこそこ活きた、佳作というところで。

※追記:少し前に送られてきた「SRマンスリー」によると、作者は昨年5月12日に亡くなられたそうである。享年90~91歳。邦訳は7冊。今回のレビューは特に追悼を意図したものではないけれど、ご冥福をお祈りします。

No.768 5点 現金を捜せ!- フレドリック・ブラウン 2020/03/12 22:08
(ネタバレなし)
 アメリカのどこか。地方のそれなりの規模のカーニバルの呼び込み役のマック・アービーは、同じカーニバルに勤めるチャーリー・フラックに誘われて、銀行強盗を行った。計画は成功し、身元もばれていない。しかしふたりが4万2千ドルの獲物を山分け寸前、フラックが交通事故で死亡。同じ車に乗っていたアービーは足を骨折しながらも一命を取り留めた。だが退院したアービーが隠しておいた金を回収にカーニバルの周辺に来た時、銀行強盗の正体がこの二人だと推察していた「殺人犯人」がアービーを殺す。「殺人犯人」は金を奪おうとするが、その在処は分からないままだった。さらに一人二人と、金の匂いを嗅ぎつけた周囲の人間たちが……。

 1953年のアメリカ作品。ブラウンのノンシリーズ作品の一本で、薄口のノワール風クライムストーリーと、サスペンススリラーをない交ぜにしたような内容。
 ちなみに邦訳の創元文庫版のあらすじを読むと、アービーを殺し、さらに金のために人死にを生じさせていく「殺人犯人」(「男」とも叙述)の正体を謎の主題にした、一応のフーダニット作品のようにも思える。
 だが実際には地の文でそのキャラを「殺人犯人」と叙述しておきながら、一方で、早々と別の人物から当の殺人犯に向けて本名を呼ばせて、読者にその正体を割ってしまう(でもそのあともまた「殺人犯人」と延々と叙述)。なんなのだ、これは。評者は一度は、これは何かの××トリック的なミスディレクションかとさえ思ったりしてしまった。
 さすがブラウン、『やさしい死神』もそうだったが、ミステリを書く際には意外に天然っぽい。まあもしかすると、折り目正しい謎解きミステリなんか、自分にとっては二の次なんだよという、創作者としてのアピールかもしれんが。

 そういう訳で中盤まではちょっと、気の抜けたビールみたいなダレた感じも覚えてたりしたが、後半3分の1くらいになって何人かの主要キャラがそれぞれの欲望や動機にもとづいて積極的に動き出してくると、それなりに面白くなってくる。ラストは、良い意味で、ああ、こんな感じになるよね、という思いでいっぱい。最後まで読むとキャラクターたちの書き込みも、思っていた以上の膨らみを実感した。

 あとこの作品を読むと、ミステリに限らず物語のなかで描かれる、カーニバルの華やかさと裏表にある、刹那的な寂寞感といかがわしさというのは、いつだって文芸上の普遍的な主題なんだよなと改めて感慨。たぶん星の数ほどの作家がそれを詩情豊かに語ることに心血を注いできたと思うが、ブラウンはそれを相応にしっかりやった作家だったという印象がいまいちど強まる。そのうちエド・ハンターものの『三人のこびと』も読み返してみよう。

No.767 5点 ナッシュヴィルの殺し屋- ジェイムズ・パタースン 2020/03/11 23:55
(ネタバレなし)
 1974年。「わたし」こと、31歳の田舎学者で地方新聞「ナッシュヴィル・シチズン・リポーター」の記者でもあるオックス・ジョーンズは、先日の黒人の市長ジミー・リー・ホーンの射殺事件に際して、29歳の殺し屋トマス・ジョン・ベリーマン周辺の情報を追う。ベリーマンの相棒で今は精神病院に収監されるベン・トイを初めとして、関係者を訪ねて回るジョーンズだが……。

 1976年のアメリカ作品で、1977年度のMWA新人賞受賞作品。

 作者ジェイムズ・パタースンは共著を含めてすでに著作が百冊以上に及び、日本でも20冊以上の邦訳が出ている。評者も、作者のシリーズものの主人公で看板キャラらしい、心理学者兼政府のコンサルタント、アレックス・クロスの名前くらいは聞いたことがあるが、とにかくシリーズものもノンシリーズものも一冊も読んだことはなかった(と思う)。とはいえWikipediaを見ると世界的にも大人気らしく、相当、成功した作家らしいが。
 しかしながら本サイトにはまだ登録もないのが気になって、しばらく前にこの本を取り寄せたものの、例によってなんとなく放置。それから半年ほど経った昨日、ついに思い立って読んでみた。ちなみにもちろん本作は、新人賞受賞ということで明らかなように、そんな現在の大家の処女長編である。 

 物語の構造は、キーパーソンというかタイトルロールの人物「ナッシュヴィルの殺し屋」ことベリーマンが現在どのような状況なのか未詳なまま、主人公のジョーンズがあちこちを飛び回り、その一人称の叙述に混ざるように、ある程度自由なカメラワークの三人称の描写が挟み込まれる。
 大昔に観たボガートの晩年の映画『裸足の伯爵夫人』がこんな感じだったような……と思いながら読み進めていくが、お話そのものはそんなに起伏はないものの、小説的な語り口は悪くない、というか脇役の配置、ひとつひとつの場面の見せ方など全体的に器用なので、それなりに読ませる。どちらかというと、犯罪実話を素材にしたドキュメントノヴェルを読んでいるような感じもあるが、たぶんその辺は正に作者が狙った方向だったのではないかという印象。
 全体の紙幅がそんなに厚くないことも含めて、どういう形で物語がまとまっていくのかという興味でよくも悪くも淡々と読み進め、そうしたら最後まで淡々と終ってしまった感触であった。ラストの仕掛け(?)は……うーん。

 大半のエンターテインメントというのは、多かれ少なかれどっか読み手を刺激してハジける部分があると思うのだが、この作品はそういう要素がかなり希薄な感じ。かといってすごく地味で色味も薄いつまらない一冊かというと、決してそんなこともなく、それなりの腹ごたえもあった気もする。
 ちょっと狐につままれたような感触もあるが、まあ、たまにはこういう作品もあるでしょう、最後はそんな思いを抱かせた、そういったミステリ。

No.766 6点 枯れゆく孤島の殺意- 神郷智也 2020/03/09 03:01
(ネタバレなし)
 26歳の植物生態学の研究家・相川優真は、引退した富裕な実業家・田中平蔵からある依頼を受ける。それは本土からかなり離れた、田中家の邸宅がある孤島で、草木が異常な枯れ方をしているので調査を願うというものだった。案件に関心を抱き、さらに数日間で30万円という高額の報酬に背中を押された相川は、アパートの大家で同年齢の若者・美堂棟未人(むどうむねみと)を伴って島に向かうが、そこで二人が遭遇したのは密室ともいえる状況での殺人事件、そして予想を超えた草木の異常な枯れぶりであった。

 講談社が2008年から2011年にかけて新人作家、新人作画アーティストの登竜門として門戸を開いていた「講談社Birth」レーベルの一冊。お恥ずかしながら数年前までこんな企画&叢書があること自体知らなかった。

 本書はミステリファンサークル「SRの会」の正会誌「SRマンスリー」の誌上で数年前に「新本格誕生から現在まで約30年のうちに書かれた、あまり評判にならなかったちょっと面白い? 一冊」という趣旨の特集をした際に、紹介されたものの一冊。その特集のお題目からわかるように基本的にやや~相応にマイナー系の作品が語られたが、本書の作者も少なくともこれ一冊しか著作がないようである?

 内容は120%完全なクローズドサークルもので館もの、広義の密室といえる不可能犯罪っぽい殺人事件を扱うが、その一方で本作の特色として急激に枯れゆく草木の謎という興味が加わる。まあ評者は後者の方は、どうせ専門外の知識から正解が出てくるのだろうと思い、当初から思考放棄したが(そうしたら半分その読みは当たって、半分は意外によく耳にする話題にからんできたような……これ以上はもちろんナイショ)。

 一方、パズラーとして本願となる殺人事件の展開は、登場人物の絶対数もギリギリまで絞られ(物語に出てくるまともな人物だけでひとけたしかいない)、これでどうやってミステリ的なサプライズを見せるつもりだ、少なくとも犯人の意外性だけは(どんな人物を犯人にしたところで頭数が少ない分、疑惑の濃度は高くなるだろという意味で)犠牲になるだろうと考えた。そうしたら……おや、結構、面白いところを突いてきた。小ぶりな仕掛けといえば小ぶりだが、私見ではけっこうセンスのいいアイデアで作者が勝負を仕掛けてきている。
 まあそれこそどこかの新本格作品とかのなかに類似の手が絶対にないとは言えないが、少なくとも自分は今回のギミックとまんま同じものは知らない。ちょっと海外作家(中略)のような感触もある。

 かたや小説の弱点としては文章が全般的に大味なことで、クライマックスの真犯人判明のくだりなど作者がそれっぽく書こうとしている感じだけはわかるものの、効果が上がっていない。いや、なんかかえって、不器用な叙述ゆえの迫力みたいなものは醸し出されたかもしれないが。
 いずれにしろ凡百の館もの、クローズドサークルもののパターンに倣ったとしても、もうちょっとゾクゾク感は出たのではないか、とさえ思った。

 総体としては、まだまだ書き慣れてない(熟成までに至らずに終った)新人作家の習作感は強く抱くが、それでも奇妙な魅力と味わいは認められる一冊。大きな期待をかけない程度に、機会と興味があれば読まれてみてもいいかもしれない……? とも思う。

No.765 5点 ヤオと七つの時空の謎- アンソロジー(国内編集者) 2020/03/07 05:24
(ネタバレなし)
 本好きで剣道の心得がある女子高校生・ヤオが、ある日、世界の崩壊に遭遇。謎の声の主との接触を経たのち、日本のさまざまな過去の時代にある目的のたびに飛ばされる……という導入部を、本書の編著者の立場の芦辺拓がまず担当(執筆)。
 続いて、獅子宮敏彦、山田彩人、秋梨惟喬、高井忍、安萬純一、柄刀一の6人が、各時代でのヤオが遭遇、あるいはに連する事件や騒乱を語り、最後にエピローグをまた芦辺がまとめる、オムニバス形式? の連作ミステリアンソロジー。特に書下ろしとは謳ってないが、雑誌初出データの記載がないから、たぶんそうなのであろう?
 
 なかなか面白そうな趣向で、さらにこの題名ゆえに、評者は当初、ヤオ本人または彼女が出会った歴史上の有名な人物たちがそれぞれの時代の不可思議な事件で探偵役となる、シオドー・マシスンの『名探偵群像』の変種みたいな内容の連作アンソロジーを予期した。
 そうしたら、期待を下回って正統派の謎解きミステリは少なく、かなり拍子抜けした。日本史に強いというか、一定の見識がある人なら楽しめそうな作品もいくつかあるようだが、残念ながら評者はその対象ではない。
 個人的には高井忍の『天狗火起請』(江戸時代の吉原周辺が舞台。密室殺人が生じて、意外な凶器とハウダニットがフーダニットに繋がる)みたいなので大半が埋まるかと楽しみにしていたのだが、そういうマトモなパズラーはこの一つだけであった。他の作家はみな、フツーのミステリというより、ヤオが向かった先の歴史についての側面の方に話作りの興味を傾注した感が強い(まあその上で、広義のミステリ味が皆無というわけでは決してないのだが……)。
 あと、中にはほとんどヤオをチラリと見せるだけで本筋にからまないような作品も一、二あったり……。
 ちなみに主人公であるヤオそのもののキャラクターは、作家によってかなり印象が異なるのだが、これ自体はこういう趣向の本なのだから、まあよしとは思っている。あ、元ネタはもしかして2019年の深夜アニメ版『江古田ちゃん』か?(笑)
 
 なお最後のエピローグは芦辺先生、キレイに決めたつもりであろうが、筆に勢いがなくもうひとつ効果が上がらなかった印象なのも残念。
 もっと面白くなりそうな趣向の一冊ではあったんだけどな。読むこっちも(日本史に詳しくないという意味で)よくなかったか。

No.764 6点 パスカル夫人の秘密- ウィリアムズ・スティーヴンス・ヘイワード 2020/03/04 13:53
(ネタバレなし)
 19世紀半ばの英国。「わたし」こと、突然未亡人になった30歳代末のパスカル夫人は、ロンドン警視庁の刑事課長ワーナー大佐の請願を受けて女性刑事になった。まだ婦人警官が珍しい時代。パスカル夫人はときにメイドなどの下働きを装いながら事件の関係者に接近し、最後には刑事としての権能をふるい、多様な犯罪に挑んでいく。

 1864年(1861年説もあり)の英国作品。海外ミステリ史における重要な短編集を歴史順に解題した研究「(エラリー・)クイーンの定員」。その順列5番目の短編集で、当時の元版は作者未詳で刊行されたらしい。日本国内のweb上のミステリ研究サイトではこの作者の名前を「チャールズ・H・クラーク」と標記し、刊行年を1861年としているものもあるが、本作を2019年に同人叢書「ヒラヤマ探偵文庫」の一冊として翻訳刊行した平山雄一は、最近の文学的研究にもとづき作者名をウィリアム・スティーヴンス・ヘイワードと特定。刊行年も1864年としている。このレビューも、その書誌観にもとづいて執筆する。ちなみに翻訳書の刊行時期は、奥付記載で2019年5月。

 内容は、長め短め全10編の連作短編が収録された一冊で、基本パターンはパスカル夫人がワーナー大佐に呼び出されて捜査の指示を受けるところから始まるが、一部のエピソードは三人称の叙述でパスカル夫人の視野の外から始まるものもあり、作劇の自由度は高い。その分、バラエティ感も豊かな連作が楽しめる。

 1864年といえば『ルルージュ事件』(1866年)の二年前(!)、『緋色の研究』(1887年)のふた昔以上前で、事実上、本書が史上初のプロの女性捜査官のミステリであったらしい。作中でパスカル夫人の詳細な前身は明らかにされず、第一話『謎の伯爵夫人』の序盤で夫を失った40歳近い女性が、ロンドン警視庁の刑事課長から声をかけられて女性刑事になったという簡単な経緯が語られるだけ。たぶん亡き夫が警察関係者か何かだったのだろかと想像できる。
 ミステリ的な内容は浅めで、明らかに意外な犯人の効果を狙いながら伏線や手がかりなどもなくいきなり読者をびっくりさせてよしとするものもあれば、本来は法律で裁くべきであろう悪人と妙な手打ちをして幕を閉じてしまう話もあり、これはこれで刊行当時のミステリの形質を実感する意味で、なかなか新鮮で面白い。150年以上前のクラシックだからこその味わいだ。
 最後の事件『匿名の女』などは、公式の捜査の枠外を外れたパスカル夫人の事件簿だが、敵役? の美女ファニー・ウィリアムズのしたたかなキャラクターと渡り合う図なども含めて、のちのちの東西ミステリ界で事件屋稼業ものの先駆的な趣もある。
 
 もちろん同じクラシックの連作女探偵ものでも、のちのヒュームの『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』(1898年)あたりに比べると、ミステリとしても読みものとしてもまだまだ洗練も研鑽もされていない未成熟な面もあるが、黎明期のミステリ史的な関心もふくめて、これはこれで楽しめた一冊。

 期待された旧作発掘叢書「奇想天外の本棚」(原書房)が事実上の死に態の今、平山氏には今後もこの手のクラシックの発掘をお願いしたい。

No.763 6点 家族パズル- 黒田研二 2020/03/03 12:43
(ネタバレなし)
「家族」を主題にした、ヒューマンミステリの連作集(とはいえ設定も登場人物も全部バラバラだが)。「ジャーロ」に掲載の3編、「メフィスト」に掲載の1編、書下ろしの1本の編成で、全部で5本の短編が収められている。

 黒田作品はまだ長編を3冊読んでいるのみで大きなことは何も言えないが、処女作『ウェディング・ドレス』から随分と遠くにきたものだという感慨の一端を覚えたりする。
 言い換えれば黒田作品らしさ? はあまり感じず、21世紀国内の筆の立つ現役作家ならよくも悪くもかなりの面々が書けそうな手応えもあるが。

 それでも全5編の内容は、おおむね佳作~秀作以上。こういう傾向の作品はたまに補充したくなるので、その意味では快く読めた。
(ただし巻頭の『はだしの親父』はミステリとしては、ここで提示された謎の答えを気づかない人間は100人の読者がいて100人ともいないだろという印象だが。その点では、ある意味でスゴイ作品であった。)
 ベスト編は『神様の思惑』と『家族の序列』がツートップ。それに最後の『言霊の亡霊』が続く。

 黒田研二に今後もこういう路線のヒューマンミステリをお願いします、と書くのは、O・ヘンリーベースの作風に傾倒していった時期の赤塚不二夫に「これからも悲しい悲しいおそ松くんを描いてくださいね」とファンレターを送り、赤塚当人に爆笑された女子高校生(実際にそういう人がいたそうである)のような感じだが、まあ、これはこれでいいのだ。 

No.762 6点 名探偵の密室- クリス・マクジョージ 2020/03/03 03:03
(ネタバレなし)「少年探偵」として世間の注目を集めたモーガン・シェパード。36歳になった現在の彼は通俗的なテレビのショー番組で売れっ子の「名探偵」タレントとなっていたが、陰では酒と薬物に耽溺する毎日だった。シェパードはパリで行きずりの女性と一夜をともにするが、気がつくと高級ホテル風のベッドに手錠で繋がれ、その周囲には5人の男女が横たわっていた。ついで彼らは現在いる場が脱出不能の密室と認め、しかも屋内には何者かに殺されたシェパードの知人の死体があった。やがて馬のマスクをかぶった謎の人物がテレビモニターを通じて、3時間以内に屋内の誰が殺人犯人かを当てろ、期限の時刻を過ぎた場合はホテルをほかの宿泊客もろとも爆破すると通告してきた。

 2018年の英国作品。
 いかにもそれっぽい題名だが、密室ネタの不可能犯罪ものではないことは予めネットの噂で聞かされていた。密室とは主人公たちが監禁された脱出不可の空間のこと。
 それでも一応はフーダニットで、目的の見えない事件というか物語そのものにも仕掛けがある。これは、まんまイギリスの新世代作家(1992年生まれ)によって書かれた、海の向こうの「新本格作品」。
 中盤から語られるシェパードの11歳の時の事件の経緯と真相も、良い感じでストーリー上の立体感を築いている。
 一方で、真相が判明したのちに明かされる真犯人の設定とその作中での扱いについては、正直あれこれ言いたいことばかり。その辺は若さの勢いで書いた作品という印象も大だが、それでも破天荒なパワフルさは確かに全編にみなぎっており、個人的には結構楽しめた。
(とはいえ読者を選ぶ作品という感触も強いね。引っかかる人は本編の描写のあちこちで、何かしら嫌ってしまうかもしれない。)

 ああそうそう、大事な事として、本作はもともと大学の小説創作学科のスリラー分野の実作論文として、原型が完成。それを商業出版用にまとめ直したものらしい。そんな異色の経緯の一冊ではあるが、訳者あとがきによると、本国ではまさかのシリーズ化? もされるそうな。ちょっと楽しみな感じで、また翻訳されたらたぶん読むでしょう。

No.761 6点 まほり- 高田大介 2020/03/01 04:11
(ネタバレなし)
 喘息の妹の療養のため、家族ぐるみで埼玉県から上州に引っ越してきた中学生・長谷川淳。彼はある日、川辺で奇矯な行動をとる謎の美少女に出会う。それからしばらくしたのち、社会学を専攻する大学四年生・勝山裕(ゆう)は学友たちと各地の都市伝説を話題にしていたが、仲間の一人から上州のある寒村での奇妙な風習? を聞かされる。その村が自分の出身地と近いこともあって、関心を抱いた裕は現地でのフィールドワークを開始。故郷の図書館で司書の卵として働く中学時代のガールフレンド・「メシヤマ」こと飯山香織を相棒に迎えて調査を続けるが、やがて現地の異常な秘密が……。

 話題になっている昨年の新刊の一冊として、読んでみた。
 評者は、作者の人気作品で本サイトでもtider-tigerさんの熱いレビューがある『図書館の魔女』の方は未読。本作が作者との初めての出会いである。

 それで内容だが「(著者の)初の民俗学ミステリ」を謳うだけあって、何かただならぬ事態を予感しつつ、それに関連するかもしれない史料や伝承を読解・考察・受容していく主人公コンビ(ここでは裕と香織)の探求ぶりはボリューム感たっぷりに語られる。
 その道筋は、事件性のある謎(ミステリ)を探るための手段というより、正に<学究の徒はいかに古来からの文献や情報に接するべきかという方法論や立ち位置の再確認>。そんな叙述をエンタテインメント小説としてぐいぐい読ませるパワフルな筆力は十分に感じた。この部分だけ切り離して愉しむなら、民俗学ミステリ、あるいは歴史ミステリというよりも『舟を編む』みたいな、専門分野への実践的な取り組みドラマとかの触感に近いような気がする(と言いつつ評者は、くだんの『舟を~』は、深夜アニメ版しか観てないんだけど~汗~)。

 それでその辺の学究部分はともあれ、肝心の事件の実体はどうなの? と改めて思い始めた頃合いに、物語は本筋に回帰。裕たちがもう一人の主人公・淳と合流して、絶妙なタイミングでクライマックスに向けてストーリーが動き出す。このあたりのお話作りの呼吸もよく出来ている。

 とはいえ本作のキーワード「まほり」の真実に関しては意外といえば意外だが、仰々しくドラマを盛り上げた割に、謀(はかりごと)の実体としては大山鳴動して鼠一匹という感も……。というか、それ以前に真相を先読みできる人も多そう。
 評者もたしか昭和40年代の秋田書店の少年漫画誌の増刊号か何かの読み切り作品で、まったく同じネタのものを読んだ記憶が甦ってきた(あまりにマイナーすぎる漫画ゆえ、こう書いてもぜ~ったいにネタバレにならないと思うが)。

 あと、事件終結後のエピローグは鮮やかにドラマを決めてくれた……という感じに受け取るべきなんだろうけれど、一方でこういうクロージングに持って行かれると、そこにいくまでの登場人物の内面描写に、やや不自然な印象も抱いてしまう。<あのタイミング>で<そっち>への連想は生じていなかったのであろうかな、とか(あるいはあえてその辺りは、叙述の上でぼかされていた……という解釈でもいい……のか?)。

 読み応えはたしかにあったが、優秀作と褒めきるには、ちょっと引っかかるところがなくもない一冊。でもトータルとしてはなかなかの出来ではある。普通の作家には絶対に書けないタイプの作品だとは思うし。

No.760 7点 完訳版 秘中の秘- ウィリアム・ル・キュー 2020/02/29 18:44
(ネタバレなし)
 その年の6月末、「わたし」こと32歳の代診医師ポール・ピッカリングは、短期契約の診療所の応援仕事を終えて、友人である老船長ジョブ・シールの中型船舶「スラッシュ号」に乗り込む。船は老朽船だが、船医ではなくあくまで客人として乗船したピッカリングは10人弱の船員とともにのんびりした船旅を過ごすが、ある日、ノアの箱舟を思わせる古式騒然とした大型船に遭遇した。同船「タツノオトシゴ号」は16世紀のイタリアの船で、一度海中に沈没したものが何らかの浮力によって洋上に浮かび上がってきたらしかった。しかも驚いたことに船内には、無数の白骨とともに記憶を失ったひとりの老人が残留。さらに金貨を詰め込んだ箱が見つかるが、その周囲からはさらに莫大な価値の隠し財宝が地上のどこかにあると暗示した文書が発見される。ジョブ船長とピッカリングは法的に正式な手続きを経た金貨の管理を考え、さらにその財宝の捜索を試みるが、航海中、そして陸に上がってから、不審な男たちの怪しい動きが……。

 1903年の英国作品。もともとは明治時代から菊池幽芳の筆で翻案作品『秘中の秘』として紹介され、少年時代の江戸川乱歩の心に(広義の)ミステリ熱を呼び起こした作品であった(というかこの作品が翻案作品『秘中の秘』の原書であったことは近年になって判明したようだが)。
 その原書をミステリ研究家、翻訳家として精力的に近年活躍中の平山雄一が、自費出版(同人書籍)の形で完訳して出版したのが本書である。2020年2月現在、まだ通販でも買えるようだが、評者は昨年秋の同人イベントの初売りの場に出向いて購入した。奥付は2019年11月の刊行。
(ちなみに『完訳版 秘中の秘』というのは、本サイトへの登録上、評者が独断で便宜的につけた書名ではない。表紙にも背表紙にも奥付にも書かれている、この翻訳ミステリの正式な作品名である。)

 評者は浅学にして、作者ウィリアム・ル・キューはヘイクラフトの著作やほかの海外ミステリ研究家の評論署などでのみこれまで名前を見た覚えがある程度で、ジョン・バカンあたりによって現代英国冒険小説の礎が築かれる前の世代のスリラー作家というくらいの認識しかない(実はそんなレベルの知見すら、本当に正確か心許ないくらいだが)。

 とはいえ、ある時代の欧米ミステリ史を探求するとよく出てくる名前なのは確かであり、一度くらいは実作を読んでみたいとは思っていた。その意味では、乱歩の少年時代のエピソードなどを抜きにしても、今回の全訳の刊行は、結構、有り難い、長年の(それなりの)念願に応えた一冊という趣もある。
 
 16世紀の古文書が手がかりになり、暗号の謎解きや悪人たちとの相克を交え、さらには主人公ピカッリングのどこかきな臭い感じのロマンスも散りばめて語られるストーリーは古式ゆかしいが、一方で時代を超えたハイテンポな筋運びではあり、少なくとも最後まで退屈はしない。都合良く物語が進みすぎる部分もないではないが、かたや随所の描写には意外性に富んで印象的なものも散見する。
 宝探しの興味を主題にしたクラシックスリラーで、アマチュア主人公とその仲間の冒険譚として読むならば、それなりに楽しめる出来ではあった。
(まあ正直、純粋に一冊の作品として愉しむというよりは、オレやあなたみたいなミステリファンの好事家が探求的に読む、歴史的な価値のある本、という感じも強いけれど。)

 しかし(乱歩のエピソードにまた頭を戻して)こういう日本のミステリファンにとって、ちょっとややこしい? あるいはドラマチックな? 意味で意義のある作品を21世紀の世の中にきちんとした形で発掘し、誰もが読みやすい日本語にして出してくれた平山氏の心意気は改めてすごく嬉しい。その熱意と実働に対し、ミステリファンの末席の一人として、厚くお礼申し上げます。その意味で評点は1点加算。

No.759 5点 逢魔が刻 腕貫探偵リブート- 西澤保彦 2020/02/29 02:03
(ネタバレなし)
 全4編の中編を収録。本シリーズはこれで7冊目だと思うが、評者が読んだのはつまみ食いでこれが二冊目(前回読んだのは、このひとつ前の『帰ってきた腕貫探偵』)。
 本書の巻末の既刊紹介のところに「どこから読んでも面白い!」とあり、あくまでこのシリーズの本質はキャラクターミステリではなく、毎回毎回の謎解き事件だと謳ってるようである。
 とはいえなんか今回はヒロインのお嬢様・ユリエとその周囲の関係者の距離感が掴みにくく、いかにも一見さんお断りという感じであった。おまけにタイトルロールの腕貫さんがマトモに登場するのは全4話の最後だけ。これでいいの?
 
 しかしながら第2話は久々にヘンな作品を読んだ思いで、なかなか楽しかった。アンフェアとか伏線が薄いとかどうとかいう感慨を越えて、こーゆーものをしれっと出されると結構じわじわ来る。なんだこれは(笑)。
 ほかの3編はまあボチボチ。

 Amazonのレビューで余計な情報を先に見てしまったのは良くなかった。
 未読でこれから読むつもりの人は注意のほどを。

No.758 5点 今昔百鬼拾遺 天狗- 京極夏彦 2020/02/28 05:33
(ネタバレなし)
 失踪した女性の服をまとった別人の死体が発見された? という発端の謎は魅力的だが、作品全体としては悪い意味でごく普通のミステリっぽい。登場人物が少ないため、真犯人の察しもすぐつくのも難。
 あと京極堂シリーズとその派生作品は、昭和二十年代の法医学がまだ未熟という世界観を底流に書かれていてそれ自体はもちろん良いのだが、この作品ではあまりよろしくない形でそういう形質に寄り掛かってしまった印象。
 
 さらに今回の物語の主題は、作品世界内の時代設定的には、たしかに物議を呼ぶような種類のものであろうが、一方で京極堂シリーズの正編と派生編が多く書かれ過ぎた結果、ネタ切れでこういうものを出してきたようにも思える。
(それでも作品全体を、極力いつものシリーズの質感に近づけようという作者の奮闘ぶりは感じたが。)

 ちなみに評者は、先行作の『鳴釜』はまだ未読なので、世間でファンが騒いでいる本作の第三のヒロイン・篠村美弥子の復活祭りに乗れないのは残念(とはいえ本作で初対面ながら、彼女の豪胆な魅力の一端は理解できたつもり)。
 あとクライマックスに爆発する美由紀の怒りの正論は今回もしごく真っ当だが、シリーズ三冊を間を空けずに読んだためか、おなじみのパターンが水戸黄門の印籠かドリフのコントのように思えてしまう。というより元ネタはもしかしたら昭和のバラエティ番組での初代・桂小金治か?

 それなりに面白かったが、京極堂シリーズの派生作品という前提から考えると、コレジャナイ感が横溢。
 昭和三十年代の「探偵倶楽部」か「探偵実話」に連載されて、そのまま一度も本にならず埋もれていた作品を発掘したのがこれだったとしたら、たぶん諸手を挙げて絶賛していただろうけど。

No.757 7点 金時計- ポール・アルテ 2020/02/27 04:28
(ネタバレなし)
 本筋の1910年代パートと、現代の1990年代パート。
 一方は正統派パズラー、一方は(中略)の作りでぐいぐい読ませはするものの、結局はしょぼい接点でリンクするだけじゃないかと舐めていたが……。最後は「こう来たか!?」という快い驚きが待っていた。
 例によって人物メモを作りながら読んだが、その作業に意味があったのにもほくそ笑む。
 ホックの短編パズラーの感覚を思わせる不可能犯罪の真相にもニヤリ。モダンパズラーの作法なら、これで良いのだと思うぞ。
(※ちなみにAmazonのレビューは事前に読まないように。盛大にネタバレされています。評者はまったく知らずに楽しめて、ラッキーだった。)

 前作も面白かったけど、今回はそれ以上に満足度が高い。本シリーズの未訳5本がどんなレベルかは当然まだ分からないんだけど、少なくとも本作はたぶん上位の方だろうね? 少なくともこんな(中略)的な大技が、そうそう使えるわけはない(とはいえそんな予感が裏切られるのなら、それはそれでもちろん幸福)。
 あえて不満を言うなら、過去設定の日常描写に1910年代という時代色がいまひとつ感じられないことかな。この作品ならもう少しその演出が濃厚な方が、さらに終盤に向けての効果があがったように思える。
 
 何はともあれ、今後もシリーズの邦訳が順調に続くことを切に願います。

【一箇所だけ重箱の隅】
P87の6行目
ダリル(×)
ダレン(○)
……電子書籍版は、直ってるのであろうか?

No.756 8点 探偵小説の黄金時代- 伝記・評伝 2020/02/25 14:00
 自宅内の周囲にずっと置きながら、その重量感に怖じてなかなかページを開かないでいた。
 そうしたらある夜、家人が具合が悪くて早めに寝込み、中途半端に深夜にひとりだけ手持ち無沙汰になったので読み始めた。そうしたら(そうなる予感もあった(笑)のが)、正に止められない、止まらない!

 1930~49年までの英国「ディテクション・クラブ」初期。その前夜から始まって、組織そのものと関係者、さらには参加していた作家たちに関わった現実の事態や事件が語られる(特に現実に特異な殺人事件が起きて、それがどう作家たちに影響を与えたかの記述部分はかなり多い)。

 巻頭には角版で42人の作家の顔が並べられているが、中心人物はセイヤーズとバークリーの2人。クリスティーの扱いも大きく、後半になって登場するカーなどもドラマチックに語られるが、先の2人の記述には及ばない。個人的に評者はこの2人はどちらもまだまだ読むものが残っているので、先にその創作の軌跡にざっとでも触れたことは良かったかどうか(ネタバレの類は皆無ではないにせよ、意外に少なかったが)。

 なおゴシップやスキャンダルの類には筆を控えた一冊、という主旨の文言が、巻末の森英俊氏の解説などにある。たしかに扇情的な記述などは少ないのだが、それでもセイヤーズの性遍歴などは相応に赤裸々に綴られ、ところどころそこまで踏み込まないのではいいのではないかとも思わされた(一方で名前のみ出てくる程度の作家も何人かいるし)。とはいえこの辺もセイヤーズの実作に通じた人なら、また違うものが見えてくるかもしれない。
 個人的にはディテクション・クラブの創設に後を託す? ようなタイミングで逝去するドイルの逸話、大先輩であるオースティン・フリーマンの老体を息子か孫かのように気づかう若き日のカーの話題などが読めたのは、とても楽しかった(もしかしたらカーとフリーマンの逸話は『ジョン・ディクスン・カー―「奇蹟を解く男」』に書かれていたかもしれないが、だとしたら評者は読んでいて忘れている)。途中の写真で紹介される、同じ母校(オックスフォード)出身の、ともに若き日のマイケル・イネスとニコラス・ブレイクが笑い合う図なんか見ていて涙が出てくる。そしてここでもクリスチアナ・ブランドはやっぱり、意地悪婆さんであった(まあまだ当時は若いけど)。

 ちなみにディテクション・クラブは、基本的に謎解き作家、あるいはサスペンス犯罪小説作家のみが参加を許され、冒険小説作家やスリラー作家は、たとえジョン・バカンのようにその業績が偉大だと万人に認められていても加入を許されなかったという。この規約はのちにギャビン・ライアルの入会によって破られるというが、そこに行くまでには英国のミステリ文壇にいろいろあったんだろうなあとも思わされる。できたら本書の続刊、ディテクション・クラブの50年代編以降も読みたい。
 
 英国の作家勢が米国に隆盛してくる作家たちの動向をうかがう図なども興味深く、さらに当然のことながら本書で話題にされながらまだ日本に未訳の作品群などで面白そうなものもいくつもある。
 一読しただけではとてもすべての情報量を吸収できるわけもないし、ヘイクラフトのかの著作同様に何度も繰り返し読む必要も価値もあると思う。

 ただし(それ自体は誠に仕方がないと思うが)とにかく記述される作家の焦点に偏りがあるきらいがいささか残念。
 あまり総花的になっても問題だが、結局のところはこういう本は、同じ主題に関して別の史家がまた別の視点からいつかまた何度も書き直し、大局的な見識を高めていくものかもしれないとも思う。

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