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風桜青紫さん
平均点: 5.62点 書評数: 290件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.150 6点 山ん中の獅見朋成雄 - 舞城王太郎 2016/01/17 21:28
人肉食をなんともいきいきと描いてしまうノリはあっぱれ。なんだか食の論争(?)を投げやりにやらせてさっさと終わらせてしまうノリは釈然としなかったが、楽しめて読めたので6点。ところでこの作品のウサギちゃんは可愛い顔ということになってるけど、『煙か土か食い物』ではちょいブサだったような……? しかしまあ、ルンババが何度も死んでは蘇るようなこの世界にそんな細かい突っ込みは野暮だろう。同一人物しゃないのか、四郎がすごく面食いかのどっちかなんでしょう。

No.149 7点 九十九十九- 舞城王太郎 2016/01/17 21:15
ふざけたトリックと、流水大説のパロディの数々に笑いが止まらなかった。とにかく流水の扱いがひどい。「もう殺してこの清涼院流水!」ってwwww。と思ったら流水本人が元気に登場するし、JDCがトンチキ集団だし、人がどんどん死んでいくし、ていうか流水死んだwww。わちゃわちゃやってるけれども、流水大説の本質をよく捕らえていて、さらにそれを作品の面白さにつなげている過程が見事。まさしく「流水が死んだ!」。

No.148 5点 阿修羅ガール- 舞城王太郎 2016/01/16 02:27
桂のキャラクター性と暴走っぷりで十分楽しめるけれども、後半の幻想仕立て(?)なシーンかが鼻についた。どうも投げやりで、舞城が自分の描写技術を知らしめるために挟んだように思える。果たして何の意味があったのだろう。ここがややに興ざめだったのだが、まあ、三島賞をとったあたり、選考委員へのアピールとしては成功したのかもしれない(TELLが怒ってたけども)。しかしもう少し話として面白く落としてほしかったところ。

No.147 7点 熊の場所- 舞城王太郎 2016/01/16 02:19
インパクトのある語りやエピソードで読者をひきつけるのは優れた小説に必要不可欠な要素だろうが、舞城は短編においてもそのことをよく心得ている。この文体にしてもそれを違和感なく演出するための工夫のひとつだといえるし、短編においてもそのあたりのディシプリンが遺憾なく発揮されている。特に『バットマン』はユーモラスな出だしが興味をひきつけると同時に、その馬鹿馬鹿しさがバットマン自身の悲壮っぷりを際立たせる構成になっている。『熊の場所』における猫の尻尾だとか、『ビコーン!』の経血ベッドインも同様。笑いと恐怖というのは紙一重なのです。良くできた短編集。

No.146 7点 世界は密室でできている。- 舞城王太郎 2016/01/16 01:57
乱れうちのように放たれた伏線が次から次へ流れるようにさっさと回収されていく有り様は圧巻。作品のバランスは『煙か土か食い物』より上じゃないだろうか。プロットはハチャメチャに見せかけながらも、しっかりと裏打ちされた計算が垣間見える。印象的なエピソードひとつひとつをしっかりルンババとゆきおの関係(友情?)に結びつかせる手腕は見事。ゆきおがルンババ親父をぶん殴るころには、すっかり読むほうもルンババの味方になってしまっていることに気づかされる。舞城っていえばルンババのイメージだけど、主役なのはこの作品ぐらいなのがね……。もう他に書きようがないだろうけど。

No.145 7点 煙か土か食い物- 舞城王太郎 2016/01/16 01:43
破天荒な見た目とは裏腹に、なんとも作者の苦労が見えてくる作品。この筆致で話を通すためには当然ミステリーとしては必要不可欠の情景描写を省略しなくてはならないし、さらに言えば会話の歯切れをよくするため、いかにもわざとらしい台詞をはさむわけにもいかない。とうぜん本格ミステリ的な伏線は張れないため、謎解きに関してもこのような壁当てキャッチボール的構成になってしまう。しかし、本格的な構造を捨ててまで、演出される筆致と細部描写の面白さは作品ひとつを成立させるに足るもの。二郎がパパンに殴られるシーンひとつとってもわかるが、なんとも痛みが鮮明で、その場の人物の悲壮感が伝わってくる。ありふれた光景でもここまで鮮烈に描写できれば、作中の出来事がなんとも読者の肌にせまってくる。情景描写をしないことが逆に説明過多の作品よりインパクトを残し、かつリーダビリティを上げるわけである。全体を通して見ればハチャメチャメチャな話運びであってもきちんと作品が成立するあたり、舞城自身が小説の面白さに自覚的である印だろう。

No.144 5点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2016/01/15 03:45
『ゼロの焦点』と『砂の器』をごちゃ混ぜにした感じ。いいちこさんのおっしゃる通り、既読感が強かったので、どうも作品に乗れなかった。父と娘のやりとりについてもそう上手いとは思えないんだよなあ。『赤い指』は、犯人親子と加賀さん親子にいい対比が生まれてて、味のある結末が印象に残ったんだけど、今回の犯人親子の人生ってそんな加賀さん自身の人生とだぶってるてわけでもないのよね。たぶん加賀さんママンの人物像が作品の焦点になっているんだろうし、長ったらしい犯人の逃避行(?)も、ラストシーンでの加賀さんママンを印象づけるための手法だったんだろうけど……、うーん、うまく決まらなかったように思える。ババアの凶悪なキャラクターといい、パパンの理不尽な不幸ぶりといいストーリーの道具はそんなに悪くなかったと思うけど、なんか、まあ、鋭さが足りなかったように思えた。まあ、なにはともあれ、加賀さんはお疲れさまでした。

No.143 5点 麒麟の翼- 東野圭吾 2016/01/15 03:33
親と子の葛藤とその解決。東野圭吾がシリーズ最高傑作と太鼓判を押したくなる気持ちはわからないでもないが、そこまで上手く決まった作品だとは思えない。だって事件の解決がなんだか投げやりなんですもの。やっぱ東野圭吾の本領は本格チックなプロットの構成であって、こういう人間模様に焦点を当てた作品を書くとなれば宮部先生とかもっと上手いのがたくさんいるんだよね。まあつまらなくはないんだけど、あまりカタルシスを得られない作品だった。それにしても、加賀さんは水泳の先生を堂々と叱れる身分じゃないよなあ……。

No.142 7点 新参者- 東野圭吾 2016/01/15 03:16
うーむ、上手い。このような日常ミステリの形式でも下町情緒を演出できるのは、東野圭吾の筆力と取材力の高さがあってこそだろう。しかし何よりも目を引くのはストーリーの構成。章が進むごとに、少しずつ被害者の動きを追うことができ、それが各章に妙なリーダビリティを生み出している。それを追う加賀さんのキャラクター性(飄々としたかっこいいおっさん)もまた絶妙で、それが本作をただの「下町を舞台にした短編集」にとどまらない面白さの作品として成立させている。おそらく現時点では東野圭吾のアイデアと技術が惜しみなく発揮された最後の作品。

No.141 6点 赤い指- 東野圭吾 2016/01/15 03:00
ストーリーテラーとしての実力はもはや疑いようもないだろう。社会派ミステリとしては宮部桐野に比べれば随分と踏み込みが浅いようにも思えるが、東野圭吾にとって家庭問題なんていうのはプロットを盛り上げる一部分にしかすぎないのである。それにしてもダメな親子だことで……。しかしまあ、加賀さんの熱いキャラクターが定着したという点で重要な一作。露骨なお涙頂戴なんだが、余韻を残すラストシーンもなかなかいい。やっぱこのシリーズは加賀さんの成長物語なのよ。

No.140 6点 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 2016/01/15 02:53
トリックは小粒ではあるものの、なかなか楽しめる短編集。ワンアイデアの短編書かせれば、演出力もあって、島田荘司や有栖川有栖より質がいいんじゃないだろうかと思えてくる。その代わり島田や有栖川のようなインパクトのある仕掛けの短編はなく、適度にうまい作品が固まっていた印象。話し運びの上手さと妙にデカダンな後味が余韻を残す『冷たい灼熱』が印象に残った。それにしても『友の助言』に限らずどうも東野圭吾の書く人妻には悪どいのが多い(笑)。東野圭吾にとって別れた奥さんは雪穂のようにでも見えていたのだろうか。加賀さんを結婚させないのもそんなところにあるんじゃないかと妄想してみる……。

No.139 6点 私が彼を殺した- 東野圭吾 2016/01/15 02:41
二番煎じであるから『どちらかが彼女を殺した』のようなインパクトはなかったものの、なかなか充実した内容だった。容疑者三人の妙な後ろ暗さがなんだか面白い。「せまいベットでひとつになった――」というのは東野圭吾の新たな趣味なのかと思ったが、後の作品を見る限りそうでもないようだ。

No.138 7点 悪意- 東野圭吾 2016/01/15 02:35
「アイデアは豊富だがぎこちない」というのが東野圭吾の初期作品に通じる感想だったが、初期のアイデアと『秘密』以後の演出力の高さが組み合われば、このような強力な作品が出来上がるわけである。構造としては単純であるにも関わらず、絶妙な構成によって、トリックがかなりの切れ味になっている。さらにそのトリックによって犯人の顔が見えてくるという仕掛けが見事。加賀さんの過去にも絡んでかなり燃えるラストシーンとなっている。東野圭吾の技術がふんだんに用いられた充実した一冊。

No.137 7点 どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 2016/01/15 02:23
なかなかスリリングな展開で一気に展開していくストーリーに引き付けられた。倒叙ミステリとしてもなかなかよくできており、加賀さんの恐ろしさには舌を巻くばかり。このあたりになると文章もずいぶん平易で、話し運びも上手いので、リーダビリティも高い。しかしなんといってもあのとんでもないオチである。ネタバレ(?)をされている人も多いようだが、あのように落としてくるとは予想外だった。犯人当てについてはなんだかしょうもないんだけども、初見のインパクトはなかなかのものだ。東野圭吾の技術の鍛練が色濃くでた作品といえるだろう。

No.136 6点 眠りの森- 東野圭吾 2016/01/15 02:12
『悪意』や『新参者』での加賀さんの名探偵ぶりを目にしている人は、気のいい兄ちゃんである『眠りの森』の加賀くんに違和感覚えてしまうだろうが、いやいや、加賀恭一郎は成長していくタイプの探偵なのだ。本作での試練的な何かを乗り越えてこそ加賀恭一郎は東野圭吾を代表する名探偵となりえたのである。トリックもまだまだがぎこちなさが残っているが、なかなか野心的な仕掛けで、どこか余韻を残すラストとうまくからみあっている。ストーリー作りに関しても『卒業』のころから少しずつ進歩していっているのではないかと思えた。加賀恭一郎及び東野圭吾の成長物語として評価。

No.135 8点 ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 2016/01/15 01:56
かなり衝撃的な作品だった。クイーンの『十日間の不思議』を読んだ頃から、神の視点による描写には神経質になっていたし、(後の作品だけど)『白夜行』で桐原が偽名をなのるときの記述にも不満を持っていたので、こんな落とし方をしてくるとは完全に予想外だったわけである。『十字屋敷のピエロ』ではうまく決まってないように見えたメタトリックがこんなところで鋭い切れ味を持つとは。作品自体はなんともぎこちない出来だが、アイデアの鋭さがそれを埋め合わせた結果といえるだろう。『仮面山荘殺人事件』に続き、クローズドサークルがトリックを支える構成がよく出来ている。しつこい生理ネタや貴子の乳など、せこいスケベ描写も初期の名残として楽しめた。東野圭吾の本格ミステリではこれがベスト。

No.134 6点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2016/01/15 01:42
このあたりから東野圭吾はなかなかお話が上手くなっていったように思える。似たような例が多く見られるトリックではあるものの、それを行う必然性がクローズドサークルの成立にからんでいるという構成が見事。このクローズドサークルがまた変化球でなかなかスリルがあり、エンタメ小説としての面白さに付与している。東野圭吾のなかではマイナー作品であるが、なかなかの掘り出し物といえるでしょう。

No.133 5点 回廊亭の殺人- 東野圭吾 2016/01/15 01:35
メイントリックは悪くないとは思うものの見せかたがぎこちなく、小粒な感じが否めない。叙述トリックに関してもやや切れ味がにぶい。くどいような肩透かし感をかかえたまま読み終える。ブスがばあさんに化けるという妙なスリルがあるシュールテイストを楽しむ作品だろう。美人にさりげなくおもらしさせるあたり、東野のなんともチープなスケベぶりがうかがえる。

No.132 5点 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 2016/01/15 01:27
人形の視点というメタ要素を持ち込んだなかなかの野心作。しかしそれを生かすにはやや技術力不足だったというところか。人形の超然とした視点は不気味な雰囲気を生み出すのに十分だったと思うが、キャラクターのテンプレぶりを見るに、東野圭吾はあまりに誠実に本格ものを書こうとしていたのだと思う。これが綾辻だったら、もっといかにもな飾り立てを用意してごまかしていただろうけど。ともあれ、後の某東野作品や麻耶雄嵩の作品群に代表されるようなメタトリックものの先駆けになった作品としては注目に値するだろう。それにしても、これを大真面目に「特筆すべき点がない平凡な作品」と書いてしまうような質の低い読者がいるのは悲しい限りだが、まあ、きっと不幸な読者なのだろう。

No.131 5点 白馬山荘殺人事件- 東野圭吾 2016/01/15 01:16
東野圭吾が百合好きなのはよくわかった。道具仕立ては悪くないし、トリックもアイデアにあふれてるけど、やっぱりまだまだチープな感じ。東野圭吾のこの手の本格作品でもインパクト不足な感じでした。

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