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りゅうぐうのつかいさん
平均点: 6.29点 書評数: 84件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.19 8点 邪悪の家- アガサ・クリスティー 2017/10/28 12:16
ここの書評を読んで、コウゲツさんの書評に一番共感しました。
皆さん、犯人がわかりやすいと書かれているけど、その背景にある動機までちゃんと見抜いたうえで、犯人がわかったと書いているのだろうかと疑問に感じました。何となくこの人が犯人くさい、なんてわかったことにはなりませんよ。ちゃんと、ポアロのように説明できなければ。私も犯人を疑いはしましたが、最初の殺人の動機に全く思い至りませんでした。
動機に直結している犯人が偽装したある事柄は、青い車さんが書かれているように予想しにくく、特に日本人読者には予想しにくいものです。この犯人の偽装に納得しにくいことが、この作品が高く評価されない理由になっていると思います。
また、数々の伏線が盛り込まれていて、それが真相に活かされている点も高く評価できます。ちゃんとチェックしなければわからないような細かすぎる伏線が多いですが。
クリスティ再読さんが書かれているカードの機会に関する指摘は卓見だと思いますが、ポアロがカードを出したことを知っている人物は他にもいるし、やはり、最初の殺人事件の動機が示せないことには犯人を特定するわけにはいかないのではないでしょうか。

No.18 6点 バートラム・ホテルにて- アガサ・クリスティー 2017/01/02 15:00
古き良きエドワード王朝の面影を残すバートラム・ホテル。そのホテルでの偶然の再会が契機となって起きる殺人事件。殺人事件が起きるのは、小説の3分の2以上が過ぎてからであり、それまでは周辺で頻発する強盗事件、牧師の失踪事件、列車強盗事件の調査が中心となって、物語は展開される。
本事件でのマープルの役割は探偵ではなく、事件の重要な証言者。強盗事件の謎を追うデイビー主任警部らの警察の調査が中心の話。最後まで読むと、マープルの役割が何とも皮肉なのが印象的。
バートラム・ホテルという舞台やセジウィックという冒険好きの女性の人物造形は良くできているし、エルヴァイラが一時姿を隠して自分に関する謎を調査しようとした理由にも説得力がある。
殺人事件の真相には二重のひねりがあるが、強盗事件の背景にある真相は大掛かりすぎて、リアリティーに欠け、全体の印象を損なっている。

No.17 6点 クリスマス・プディングの冒険- アガサ・クリスティー 2016/12/19 17:48
傑出した出来の作品はなく、すべて平均点程度の出来で、一番良かったのは「クリスマス・プディングの冒険」。

「クリスマス・プディングの冒険」
ある国の王子の高価なルビー盗難事件を秘密裏に解決してほしいとの依頼を受けるポアロ。推理物ではなく、ポアロが巧みな策略で事件を解決する話。奇妙な手紙が置かれていたり、子供たちが殺人事件の芝居でポアロをかつごうとしたリと、楽しめる筋書き。

「スペイン櫃の秘密」
スペイン櫃の中で殺された男の妻が容疑者の無実を信じ、その無実の証明をポアロに依頼する話。偽装された手紙の謎や衝立が動かされた謎など、シェークスピアの「オセロ」になぞらえて、ポアロは意外な真相を暴き出すが、証拠は不十分。

「負け犬」
殺人事件の容疑者の無実を直観で信じた女性より、無実の証明を依頼されるポアロ。アフリカでの鉱山の出来事、医者による催眠術の聞き取り調査など、色々と話を膨らませてはいるが、真相は腰砕け。推理ではなく、ポアロの策略によって、解決する話。

「二十四羽の黒つぐみ」
料理店に毎週火曜日と木曜日に現れる男が一度月曜日に現れ、その2週間後から姿を見せなくなった謎にポアロが興味を持ち、解決する。

「夢」
3時28分にピストル自殺するという、同じ夢をずっと見続ける男から相談を受け、事件に関わるようになるポアロ。実際に、その男が3時28分にピストルで死ぬ。ポアロが間違えて渡した手紙が事件解決に結びつくところが面白い。

「グリーンショウ氏の阿房宮」
奇妙な建築物「阿房宮」の所有者、ミス・グリーンショウが弓矢で撃たれて殺される事件。容疑者3人には鉄壁のアリバイがあるが、事件の背景にあるカラクリをミスマープルが暴く話。既視感ありありのトリックだし、このように巧く騙せるのか、疑問に感じる。

No.16 6点 蒼ざめた馬- アガサ・クリスティー 2016/12/06 13:53
本格物ではなく、冒険的要素を兼ね備えたサスペンス小説という感じだ。カトリック神父殺人の背後にある大きな謎を、主人公の学者と友人女性が調査して暴く物語。クリスティーの作品でおなじみのオリヴァ夫人が登場するが、ポアロは登場しない。ポアロが登場しないのは、推理よりも調査過程がメインの話であり、素人探偵の視点で物語を描きたかったためであろうか。
殺された神父が残したメモの謎、3人の魔女による呪法の儀式と遠隔殺人の謎、「車椅子の男」が歩いて牧師を尾行していたという目撃者の証言の謎、主人公たちによる偽装潜伏調査など、ミステリーとしての読みどころは十分。事件の背景にある謎は、ドイルの「赤毛組合」を彷彿させる。
オリヴァ夫人は、主人公に対して、「青ざめた馬」という事件につながる符号を与えたり、真相につながる重要な手掛かりを示すなど、脇役として、存在感を示している。
最後にひねりがあるのだが、このひねりはあまり効果的ではないと感じた。その人物が黒幕である必然性に乏しいし、面白味がない。私は、別の人物を黒幕だと思っていた。

No.15 7点 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー 2016/11/21 20:13
マープル物の最初の長編作品であり、マープルの住んでいるセント・メアリ・ミード村の様子が詳しく書かれているのが興味を引いた。
殺人事件はプロズロウ大佐の銃殺事件1件だけだが、人物を巧みに配置し、置き手紙、偽の電話、銃声、殺人の時刻、アリバイ、証言内容、過去のつながり等、様々な謎が盛り込まれていて、ミステリーの物語としては、十分に読み応えのある作品。
マープルの些細な事象に対する気付きや、状況をうまく説明する解釈はなかなかと感じるが、真相はポアロ物の某作品と非常に類似しているし、ややごちゃごちゃとしている印象を受けた。

No.14 5点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2016/11/08 17:29
離婚寸前のケッタリング夫妻に関する物語と、相当な遺産を相続したグレイの物語の2つの物語が青列車でつながる導入部分や、複雑な男女関係や伝説のルビー盗難を描いた展開部分は高く評価できるが、伏線や探偵の推理という点では物足りなさを感じる作品。ちょっとしたトリックが盛り込まれていて、ポアロの真相説明は一見複雑に見える事件の状況をうまく説明してはいるが、仮説にすぎず、決定的な証拠を示しているわけではない。登場人物も拡散しすぎで、うまく活かせていない印象。

No.13 5点 おしどり探偵- アガサ・クリスティー 2016/08/20 13:22
退屈な日常に飽きて、刺激を求めるタペンス。トミーの上司のカーターの依頼を受けて、二人は探偵業を引き受けることに。
二人の軽妙なやり取りと架空の名探偵気取りで物語は進展してゆき、二人が時には相手を騙したり、協力しながら事件を解決していく。
14の事件からなる短編集だが、際立った出来ばえの作品はなく、何の変哲もないオチだったり、ノックスの十戒に反していたりと、拍子抜けする作品が多い。敢えて挙げると、「怪しい来訪者事件」、「婦人失踪事件」、「大使の靴」が面白い。
ハードボイルド的な場面も多く、とぼけたイメージのトミーが窮地に追い込まれても泰然自若としているのが印象的。

「お茶でも一杯」
失踪した女性を探してほしいという依頼に対して、24時間以内に解決すると大見得を切るタペンス。
「桃色の真珠事件」
真珠の意外な隠し場所。ある事柄に不信感を持ち、犯人に気づいたトミー。読者が推理するのは難しい。
「怪しい来訪者事件」
冒頭のシガレットケースに関するエピソードがうまく活かされている。トミーの機知、タペンスの気づきによって、窮地を逃れる。
「キングに気をつけること」
冒頭の新聞紙に関するエピソードがうまく活かされている。同じ○○を作るよりも、そのまま入れ替えた方が簡単では?
「婦人失踪事件」
探検家から夫人が行方不明になったので、探してほしいとの依頼を受ける二人。失踪の意外な理由が面白い。
「眼隠し遊び」
盲人探偵を気取り、危機一髪の状況に。ちょっとした細工のおかげで命拾いする。暗号は意味不明。
「霧の中の男」
『証拠とは、感覚によって頭に伝えられた印象にすぎない』
トミーは3つの勘違いに気づき、犯人を突きとめる。
「ぱしぱし屋」
警視庁のマリオット警部の要請を受けて、にせ札製造の潜伏調査をすることに。ギャングとの駆け引きの話だが、何の変哲もないオチ。
「サニングデールの謎の事件」
事件を取り巻く状況はなかなか魅力的だが、真相は予測の範囲内。真相通りに推理できない理由は、警察がエヴァンズに被害者の写真を見せていないなんて、ありえないことだと思うからだ。
「死のひそむ家」
タペンスの昔の経験が活きる。推理には、専門的知識が必要。
「鉄壁のアリバイ」
同時に2つの違った場所に居たという女性の謎。そのアリバイを崩す話だが、ひょっとしたら、アレかなと思っていたら、その通りだった。
「牧師の娘」
幽霊騒ぎの調査依頼から、文字謎遊びの問題を解いて、事件解決。日本人読者には推理不可能。
「大使の靴」
税関で間違えて持っていかれて、すぐに戻ってきたカバンの謎。すり替えの理由は予想通りだった。
「16号だった男」
本作品の締め括りの話で、カーター主任から探偵業依頼の際に話のあった、16号の男との対決。
ホテルに入ったタペンスと16号の男が消えてしまうが、意外な二人の居場所をトミーは突きとめる。

No.12 6点 鏡は横にひび割れて- アガサ・クリスティー 2016/07/22 17:52
パーティーの席上で起こった毒殺事件。被害者が飲んだのは、自分のグラスを落として割ったため、女優からもらったグラスの酒であり、それに毒が入れられていた。犯人が狙ったのは被害者なのか、女優なのか。当時現場に居合わせた関係者の目撃証言、2人を取り巻く人間関係を中心に捜査は進められていくが、やがて、第2、第3、第4の事件が起こる。
マープルものには、論理性を期待してはいけない。その推理は、過去の経験や人間観察による知恵に基づいて組み立てられた仮説であって、本事件もそう。ある人物の性格が事件の引き金になっている点が、クリスティーらしい。
捜査の課程で、女優を取り巻く過去の人間関係や様々な謎が明らかになっていくが、中でも大きな謎は、女優が被害者の話を聞いていた時の"鏡が横にひび割れた"ような茫然自失の表情。この謎に関しては、女優が黙して語らないままなので、真相はなかなか見えてこない。さらに、目撃者の証言などに2つの勘違いがあって、真相をより見えにくくしている。このような隠し方がクリスティーの巧妙なところなのだろう。
マープルの最後の説明だが、第2、第3の事件には触れられていない。この2つの事件で殺された2人がどの程度のことを知っていたのかは謎のまま。第2の事件の被害者を殺す必要があったのだろうか。

No.11 6点 死者のあやまち- アガサ・クリスティー 2016/07/05 06:07
田舎屋敷の園遊会で、おなじみの女性作家オリヴァが企画した犯人探しゲームで実際に起きる殺人事件。冒頭の事件のエピソードから興味深く、いかにも怪しげな人物配置、捜査の課程で判明していく様々な謎や人物間の心理的な関係など、とても引き込まれる内容の作品。
ポアロが事件を防止することができず、真相もなかなか見通せずに、ジグソーパズルに興じながら、焦燥に駆られる場面が印象的だ。
複雑でひねりのある真相。オリヴァの企画した犯人探しゲームの中に真相が暗示されているのが何とも面白い。数々の「なぜ?」に答える真相だが、素直には納得しがたい。真相説明で過去のある出来事が明らかになるのだが、そんなことが実際に起こりうるのかと疑問に感じてしまう。また、ハティの失踪に関する真相だが、読者のための演出にすぎず、こんな面倒くさいことをわざわざする必要があるとは到底思えない。
物語としては8点、真相は4点というところか。

No.10 6点 ねじれた家- アガサ・クリスティー 2016/06/12 11:55
ねじれた家族に発生する、ねじれた殺人事件。
2件の殺人と1件の殺人未遂が発生するが、いずれも特別なトリックが使われているわけではないし、事件関係者の全員が犯行を行いうる状況であったため、アリバイに関する論議は一切なく、動機が主な議論の対象。犯人を特定する十分な手掛かりが与えられてはいないので、本格ミステリーとは言えない。伏線らしきものがいくつか見受けられるが、それも犯人を特定するようなものではない。
ポアロもマープルも登場しないのは、推理や捜査過程を中心に据えた物語ではないためだろうか。クリスティーが描きたかったのは、このねじれた家族関係そのものなのだろうか。
クリスティーの十八番、お金持ちの遺産相続をめぐる殺人事件で、シンプルな設定の人物配置、お互いの心理的関係の描写など、わかりやすく、読みやすい作品だが、あまり印象には残らない作品。
ちなみに、犯人は予想通り(予想以外の何物でもない)。

No.9 6点 死の猟犬- アガサ・クリスティー 2016/05/15 11:59
「検察側の証人」、「ラジオ」、「青い壺の謎」以外は、超常現象を扱った話。
超常現象を扱った話は、ストーリー自体に面白みがなく、すぐに忘れてしまいそうな作品ばかり(実際、既にほとんどの作品が思い出せない)。
唯一、「翼の呼ぶ声」は、お金持ちが持つ悲哀をうまく描けていると感じた。
「死の猟犬」は、意味不明な作品。"第六のみしるしの秘密"とは何だろうか。"円を閉ざさないように気をつけて"とは、どういう意味なのだろうか。なぜ、こんな意味不明の作品が表題作なのだろうか。
「ジプシー」と「S.O.S」は、ややこしい話で、一読では理解できずに読み返したが、たいした話ではなかった。
「検察側の証人」は、結末で読者をあっと言わせる短編小説の傑作。以前に戯曲版を読んだことがあるが、戯曲版では続きがあって、さらに驚くべき内容になっている。
「ラジオ」は、皮肉な結末が面白い。
「青い壺の謎」は、意外な真相ではあるが、こんな、確率が低くて、面倒くさいことをわざわざするとは思えない。

No.8 6点 象は忘れない- アガサ・クリスティー 2016/05/02 19:22
ポアロとオリヴァが、過去の出来事を忘れない"象"を探し出して聴き取り調査を行い、過去の事件の真相を追求する話。
私は普段、ミステリーを読んでいて、ほとんど真相がわからないのだが、この作品に関しては、マーガレットとドロシアの関係がわかった時点である疑いを持ち、それ以降、それを補強してくれる事実が次々と出てきたので、最終章の手前では真相の大部分を予想できていた。
ヒントがわかりやすく、真相が予想しやすい作品ではないだろうか。
事件の背景にあるもの、時間的拡がり、人物配置、真相のまとまりなど、よくできた作品だと思う。

No.7 6点 復讐の女神- アガサ・クリスティー 2016/03/28 17:55
本作品では、マープルと犯人が直接対決する危機一髪の場面があり、興味深い(しかし、あの場面で登場する二人も真相に気づいていたのではないだろうか)。
マープルの推理は、ロジックではなく、人間観察と直観に基づくものであり、本格的な妙味は薄い。
人間の持つ複雑な感情に根差した犯行動機や、殺人偽装とそれを行った理由は面白い。
しかし、なぜ、依頼者のラフィール氏は、マープルに依頼目的を具体的に示さなかったのだろうか。バス旅行に参加し、旧領主邸に宿泊するように指示したのはなぜか。ラフィール氏は真相がどこまでわかっていたのだろうか。最後まで読んでもわからなかった。

No.6 7点 メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー 2016/03/01 17:44
発掘調査の宿泊施設で起こる殺人事件。
「悲劇的な魔力」を持つ被害者、被害者に嫉妬する女性関係者、被害者の魔力にひかれる男性関係者。ポアロが関係者全員に被害者の人となりを聴き取り調査し、被害者の人物像を浮き彫りにしていく過程は面白いし、脅迫状の差出人、窓から覗いていた人物の正体、音が届く範囲の違いの謎など、様々な謎が盛り込まれている点も高く評価ができる。
人物の造形、謎の盛り込み方、探偵の調査内容など、本格ミステリーとしての作り込みに関しては、ハイレベルな作品であると感じた。真相はかなりの無理筋だが、それでも楽しめる作品であった。


(ネタバレ)
①チェスタトンが考えそうなトリックだが、被害者が窓から首を出す保証がなく、確実性に欠ける。
②犯行の様子を南側の建物にいた人物に目撃される危険性がある。
③犯人は、列車事故で顔が損傷した考古学者に成りすましているが、職場で考古学者の顔は知られているはずであり、成りすますことには無理がある。
④年月が経っているとはいえ、元夫を別人と見間違えて再婚するという設定には無理がある。

No.5 7点 ヘラクレスの冒険- アガサ・クリスティー 2016/02/15 19:29
多少こじつけとも感じられるが、ヘラクレスの12の難行になぞらえた12の事件。
ポアロの頭脳的な策略や、ヒューマニズムを感じさせる心にくい解決手法が味わえる作品集。
人生相談や身の上相談、教訓話といった、ポアロよりもパーカー・パインが登場した方がふさわしいと感じる話が多いが、楽しめた。
特に、予想外の真相に驚かされる「ステュムパロスの鳥」と「クレタ島の雄牛」、ポアロがトリックを仕掛ける「アウゲイアス王の大牛舎」が面白い。

「ネメアの谷のライオン」
人間の認知機能の限界をうまく扱っている。
「レルネーのヒドラ」
事件関係者の聴き取り調査でポアロは違和感を感じ、犯人に気付く。
「アルカディアの鹿」
愛する人を探してほしいという、雲をつかむような青年の依頼をかなえるために奮闘するポアロ。愛する人は意外なところに。
「エルマントスのイノシシ 」
凶悪な殺人犯と一緒に雪の山頂ホテルに閉じ込められたポアロ。
誰がその凶悪犯か?
「アウゲイアス王の大牛舎」
ポアロの策略が鮮やかに決まり、政界のスキャンダルを見事解決。
「ステュムパロスの鳥」
ステュムパロスの鳥とは誰のことか?
予想外の真相に驚いた。
「クレタ島の雄牛」
狂人の血統とは、そのことだったのか。
「ディオメーデスの馬」
麻薬を扱っている影の人物とは?
「ヒッポリュトスの帯」
名画盗難事件と女学生の失踪事件とのつながりの謎。
絵がどのように処理されたのか、良くわからなかった。
「ゲリュオンの牛たち」
ミス・カーナビが再び登場し、新興宗教の教祖を相手に活躍。
「ヘスペリスたちのリンゴ」
酒盃を取り戻したポアロが、依頼者に要求したこととは?
「ケルベロスの捕獲」
麻薬の意外な隠し場所。

No.4 5点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2016/01/19 19:31
飛行機の客席見取り図を付け、11人の乗客と2人の乗務員の全員について、犯行の可能性と動機をつぶさに検討する、本格志向の作品だが……。
終盤までは楽しめたが、真相はいただけない。
他の方も書かれているが、このような殺人トリックで騙せるとは思えないし、うまくいかなかった場合のリスクが大きすぎる。
また、事件の背景にある人間関係だが、警察の捜査で明らかとなることであり、計画に無理を感じる。
終盤になって、ようやく明らかとなる「あの人物」の存在も、普通は警察がとっくに訊問していて、その正体がばれているはず。
また、事件に関係する人物がこんなにもうまくつながっているというのは、ちょっと出来過ぎ。

(ネタバレ)
空さんの指摘ですが、白衣が入っていたアタッシュケースは、荷物置き場に置かずに、座席近くで保管していたと考えれば、矛盾はないと思います。

No.3 9点 終りなき夜に生れつく- アガサ・クリスティー 2015/11/23 13:24
クリスティーの著作を読むのはこれで30作品目だが、物語としての出来栄えに関してはこれまでで一番と言える。
事件はなかなか起こらないし、真相はクリスティー作品にありがちなもので、身構えて読んだ読者には予想しやすい真相と言えるだろう(私もこの真相通りに予想していたわけではないが、そのうちの一部の真相に関してはずっと疑いを持っていた)。
しかしながら、作品全体が醸し出す雰囲気や、人物配置の妙が素晴らしく、結末にも独特の味わいが残る。
人物では、マイケルの母親、建築家といった脇役の存在が光っている。
エリーの歌う「幸せとよろこびに生れつく人あり 終わりなき夜に生れつく人あり」という歌詞がもの悲しい。
結局、主人公は「終わりなき夜に生れつく人」であったということだ。

No.2 5点 ハロウィーン・パーティ- アガサ・クリスティー 2015/10/25 10:17
クリスティーがこの作品で描きたかったのは、独特な犯行動機を持つ犯人像であったのだろうか。
ハロウィーンパーティーで起こった殺人事件と、被害者が目撃したという過去の殺人事件に関する関係者の取り調べが中心の話。本筋と関係のない事件が含まれていたり、不必要と思われる登場人物が出てきて、拡散しすぎ、未整理、冗長と感じる部分があった。
特にこれといったトリックが使われているわけではなく、ポアロの推理も根拠薄弱で、最後まで読んでも成る程と思うようなところはない。パーティーの主催者が花瓶を落とした理由も推測どおりであった。
ミステリ作家オリヴァ―は、作者自身なのだろうか。自作の登場人物に関して言及する箇所があり、興味を引いた。

No.1 5点 ポケットにライ麦を- アガサ・クリスティー 2015/10/04 11:36
社会でよく見受けられるタイプの人物をうまく取り込んで人間関係を構築し、連続殺人事件を発生させるクリスティー女史の手腕は、この作品でも冴えわたっており、物語としては、楽しめる内容であった。
しかしながら、ミステリー作品として見ると、この作品には決定的なキズがある。
1つの殺人事件に関して、犯人のアリバイ、犯人がその時にどうしていたかに関する取り調べの内容に全く触れられていない。こんな重要な事項を内緒にしたままでは、本格ミステリーとは言えない。
また、マープルの推理には必然性、論理性が全くなく、単なる憶測にすぎない。それを自信満々に、「仮説ではありません。事実なのです」と言うのには、あきれてしまった。
犯人の計画も、ある人物の性格に依存したものであり、それがうまくいかなければ露見してしまう、極めて危険なものだ。

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りゅうぐうのつかいさん
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