皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
斎藤警部さん |
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平均点: 6.68点 | 書評数: 1243件 |
No.54 | 6点 | カッコウの卵は誰のもの- 東野圭吾 | 2024/01/31 18:43 |
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ウィンタースポーツ(板系)周辺に巻き起こる、ビジネスへの野望と親子の苦悩、そして脅迫および傷害事件。 慌ただしい一連の流れの中で、元冬季オリンピアンである主人公の抱える葛藤と謎は大いに膨れ上がる。 期待の若手アルペンスキーヤーであるわが娘が、自分と血が繋がっていないとは ・・ ← この裏事情が全く一筋縄で行かないのが、本作の大きな魅力、というか太い幹。
"もし天罰が下るとしても――。 ( 中 略 ) その時には、自分が命を賭けて阻止するのだ。" 物語の分水嶺らしきものが早い段階から次々に上書き更新され、揺さぶりを掛け続ける、こりゃぁ東野らしい強い展開だ。 終盤もいい所に差し掛かって急展開の圧縮率が尋常でないミステリ期待値を噴出して来る。 そしてこの、黒幕の創意と悲しさたるや・・・・・ 読前の予断を裏切り社会派/科学派要素は薄め。 ちょっと気恥ずかしいが人間派は言えるかも知れない。 だが何より、複数のトリッキーな親子関係の謎で押し通した、プチ数学的とさえ言える論理(?)サスペンス・ミステリでありましょう。 そのくせしっかり感動もさせてくれちゃってよ。 参ったな。 「あるもの/こと」を託された人物の葛藤が、もっと直接的に描写されても良かったという思いは残ります。 ノルディックの未来を託された青年の、スキーそっちのけでエレキギターに傾倒する描写が光っていました。 |
No.53 | 5点 | 禁断の魔術- 東野圭吾 | 2022/09/30 06:24 |
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【長篇の方です】 オープニングから多方面へ散らばるカットバックで興味津々。ところが呆気なくストーリーは収束し、犯人捜しミステリとチラリズム犯罪小説?の併走めいた体で結末まで真っしぐら。このさり気ない構造の持つ読者牽引力はなかなかだが、うむ、全体的に、謎も人間ドラマもプチ社会派要素も浅く見えて、ズブとはハマれなかったな。それでも最後の見せ場、湯川の取った大胆な行動は爪痕残した。最高に泣かせる野球ジョークも光った。エピローグ、その大胆な行動について意見が分かれるくだり、ここの内容がいちばん分厚いかな。或る人物のとあるホワイダニット(犯罪にあらず)、最高に熱いタイミングで明かされた。 |
No.52 | 6点 | 麒麟の翼- 東野圭吾 | 2021/12/15 06:42 |
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妙に微妙に早すぎるタイミングでネタバラシ、またはそれがとんだダミーであることのほのめかし。 靴下の伏線も瞬殺で潰されるし。。 だが折り鶴の色が毎回変わった理由、シンプル且つミステリ的には浅いのに、どこかハッとした。。。。 人間ドラマとしても社会派としてもさほど踏み込んでないのはわざとで、てことは、さぞかしミステリとして、こう見えて腰抜かすようなゴン攻め真相が蠢いているのかと少し期待しなくもなかったっすが。。 この真犯人提示含め、ううーーむ。 序盤~中盤~終盤までかなーり面白かったが、暴露される結末の意外性が、東野基準にしてはちょっと、うねってないやね。 それでも余裕の6点ですよ。 |
No.51 | 7点 | 疾風ロンド- 東野圭吾 | 2021/08/31 19:30 |
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やっぱ夏は雪だな! 全力で書き飛ばした様な一筆書きハイクオリティには参った! このツイストだらけの豪速リーダビリティは、ターンを交えて高速直滑降(スノボ群と共存しつつ)の隠喩そのものではないか?! 物語の幹は、或る超危険物質の争奪戦、舞台はスキー場、やわらかい人達が軽い会話と行動を繰り返すくせにやたらサスペンスは熱い!! Tetchyさんもご指摘の、スタート間もないトコでいきなり大型ツイストが捻じ込まれる展開はシビれます。 こんだけヤバいブツを相手にお気楽過ぎねえかと思う場面もたくさんありますが、それはもういいです。 斬新で滑稽で絵になる雪上のアクションシーン、忘れるものか! ホワイトなんだかブラックなんだかターコイズなんだか、誰が狡くて誰が哀れか、誰がしっかりしてんだか無用心なんだか、心と頭が空中に迷う凄いエンド!! こんだけエンタメに振っといて、ダークなしこりもそれなりに残す。やっぱビールは苦くないとな。フウー。
(コロナ禍で罹患等被害に遭われた方には、辛い側面のある小説かも知れません) |
No.50 | 7点 | 流星の絆- 東野圭吾 | 2021/05/28 20:01 |
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“そのタイトルを見て、◯◯は胸が熱くなった。”
主舞台は横須賀/横浜。 クライム、サスペンス、ダメ押しに◯◯ダニット! 一気呵成、豪速球がホップする味わい! 出だしの悲劇性もあっという間に吸収されて。。ちょっと見よりずっとサイケな話かも。。との予感に震える。 幼少の頃、ペルセウス座流星群が流れた雨の夜に両親を惨殺された3兄妹が、養護施設を出所後、司令塔と2トップで役割分担し殺害犯人断罪と復讐のゴールへと向かう物語。 バイタルエリアでは時効成立と言う悪魔との競争があり、証拠●●と、恋愛抑圧と、いくつものすれ違いに、隠し玉。。 そこへ絶妙のタイミングで多方向からの違和感がボディバランスを崩しに掛かる。 儚いチャンス、一発で仕留めるんだ。。 「有明さん、もう一度やってみる気はありませんか」 「えっ?」 ○○系叙述トリックの逆を張ったような”重要ポイント(アレの違いの事)”がドラマチックな転換場面でもどかしく(??… いやその逆だ!!)活きてきたシーンでは眼を見開いた!! タイトルのナニが情緒や精神的なものだけじゃなかった(ちょっとした決め手にもなる)、ってのが渋いね。 テクニカルな小技も本当にそこかしこ。「傘の指紋」のロジックは小技ながら、、行き着く先がドラマチック! 犯人そのものへの驚愕は(「あ、そうつながったんだ~~」って感慨はあったが)薄かったけど、「告白書」(新しく書いたほう)には泣けました。。犯人に気付いたアレの伏線の小説的なセコさも(その大胆な置き場所には感心!)、笑い泣きでした.. 残りページもわずかなゴール前のごたつきもありながら、最後は見事なオーバーヘッドを決めてくれました。 「それ以上、こっちへ来るな。誤解を招く」 真相を知って振り返ると、真犯人のさり気ない行動がすごく沁みるシーンがあったんですね。。 やっぱ、洋食屋におけるハヤシライスの存在ってのは格別なものです。(あ、だけどよく考えたらこの「ハヤシライス」こそ最強の●●●●●になってたんだよなあ。。!) しかし、クサナギと加賀って..w 最後にアレのカタを付ける所、トンチが効いてて最高です。終わりのほうで意外といい味出した再登場チョイ役もいたな(隠れファンいそう)。 ちょっと、唐突に道尾秀介みたいな真っ白エンディング感もありましたが(&ラストセンテンスの洒落た落とし!)、最後に気持ちの整理ってやつがどうなってんだか見えない重要人物(複数人!)もいるのですが、偶然力が発揮され過ぎな所も目に付くのですが、、この際まあ良がっぺっよ! 惜しいな、あと一歩で8点だった。 「大丈夫、まだ若いからさ」 |
No.49 | 6点 | 超・殺人事件―推理作家の苦悩- 東野圭吾 | 2021/04/05 18:03 |
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各作、面白いし手堅くまとまっている。 何度か笑ったし感心もした。 KS.54と来るか。。(笑)
「超税金対策殺人事件」⇒ クスクス笑い、弱から強へ。題名、そういう意味でしたか~~、いきなり攻めるなあ。ひょっとして、風刺の本当の対象は小説家ではなく。。? 「超理系殺人事件」⇒ ほぼ笑い抜きの面白小説。風太郎風。作中作ミステリに始まり、悪ノリでミステリから外れて行って、最後ミステリで締める。 「超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)」⇒ オチ、というか真相はちょっと見え透いてますが、、ミステリ短篇のクセに何故かそこには力点置いてないから問題無し。安易な叙述トリックをおちょくったりとか、色々。 「超高齢化社会殺人事件」⇒ 本気で笑ってはいけないという意見もありましょうが、、私はこれが一番大笑いでした。何度も噴き出しました。ちょっとした叙述(なんとか●●)トリックのセコいダメ押しも、よく計算されてる。 「超予告小説殺人事件」⇒ 唯一、純粋なミステリじゃないのかな(本格じゃなく、サスペンス)。 面白かった。 「超長編小説殺人事件」⇒ 業界への風刺がいちばん純粋に凝縮されてるのは本作か。嘲笑の花吹雪。 「魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)」⇒ リドルストーリーと解釈すればちょっとした趣。そんなニクい箸休め。 「超読書機械殺人事件」⇒ メインのアイディアに拡張性と現実性が高い故、最もスキャンダラスな一篇と言えましょう。”ショヒョックス”って、どんな商品名にしたらいかにもテキトーに付けた感じになるものか、よくよく検討に検討を重ねたんでしょうなあ。惜しむらくは、他の評価モードでも少し書き分けて欲しかった。 しかし、黄泉よみ太ww 『名探偵の掟』とは似て非なるコンセプトの一冊だが、敢えて比較すれば、向こうさんの勢いある統一感、完成度に軍配かな。 |
No.48 | 8点 | 片想い- 東野圭吾 | 2021/03/18 11:50 |
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「事情をはっきりさせるわけにはいかないから、オレたちみんな、死ぬほど悩んだんじゃないか」
話が早くて何よりだ、東野。 導入部に無駄口無し。 アメフト引退して久しい登場人物たちの体はナマっているが、物語は機敏で筋肉質。 分かり易く整理された上で枝分かれする重厚なストーリーがエキサイティング過ぎて、頼もし過ぎて、結末よ、頼んだぞ、裏切るなよ。。。。と何度も祈りました。 「ただ、見せるのはあなたにだけです」 「あの人も仲間?」 トランスジェンダー、トランスセクシャルに半陰陽をぶつけて来た。(ってそんな単純なもんじゃなかった。。) そこに犯罪と逃走の灼熱が伴走し、鈍痛のように付き纏う疑惑も睨みを利かせる。割り切れない恋愛と友情、親子関係が立ちはだかる。チームスポーツと個人競技。ハードな犯罪サスペンスであることを忘れかけた頃に目の醒めるリマインダー急襲。。 「そういうことをするのは正常な人間だよ。(中略) 異常者は、他人のとびきりの秘密を嗅ぎつけた時でも、常人には理解できないような行動を起こす」 北の湖とか森進一とか堂本剛とか。。(笑) 会話の中の強めのユーモアが、後から振り返ると泣ける、熱いシーンもあったな。。 「あいつは今どこにいる? おまえたちと一緒か」 めちゃめちゃリーダビリティ高いんだけど、終盤前の際どい所、貴重なスリルを温存したくて、辛いけどわざと一気読みを止めました。。。と決めた筈が、やっぱり強い誘惑に負け結局、スリルよりサスペンスが一歩先行する地点まで読書続行し、やっと一旦ブックマーク。 「・・・・・・一緒だよ」 とにかく最後まで続いた展開の大圧力。そこへ来て予想外の犯罪までいくつも出て来やがる。。■■■■の理由はそこだけじゃなかった、と。。 「フェイクか」 「そういうことだ」 深い層まで喰い込む伏線も煩くなくリアリティをサポートした。(少しアケスケ過ぎるのもあったが..) エピローグ前のエンド部分、様々な機転の利いた目まぐるしい展開でダメ押し、参ったな。 しかし前世紀末に、この主題でここまで複雑なフーガを完成させていたとは。。 そして、これほどの完全犯罪。。。 酒盛りに始まって酒盛りに終わるこの小説だが、その中で何気にしっかりと完全犯罪を。。。。 グッと来る要素のタペストリーみたいな本作だが、中でも神髄は実はそこじゃないのか。。。。。。。。何故なら。。 「十数年越しの片想いが実ったんなら幸せなことだ。今じゃ一心同体って感じらしい。奴らが幸せになってくれたら、俺たちのボール遊びにも意味があったってことになる」 |
No.47 | 6点 | マスカレード・ホテル- 東野圭吾 | 2020/12/17 22:03 |
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「だからあたしは髪を切ったの」
『⚫️⚫️⚫️⚫️連作』と『連続殺人捜査長篇』がお互いにバックパスを繰り出しながら併走する魅力的構造。青春サスペンス展開もあり。(とばかり思っていると。。流石は俺の東野、必ず何かヤラシイ事を仕掛けて来るねえ。)昭和には無かった小味なアリバイ偽装も良し。毎度おなじみ●●ネタも、背景の人間ドラマ(ってほどでもないか..)と親和性があるから、まず納得。○○さん、疑ってすまなかった。まあ、最後のドッカーンは小さかったけどね。エンディングも爽やか過ぎるだろ。。もちょっと苦味ってやつを道連れにしないのか。。って思わなくはないですけどね、おかげで準主に近い脇役1の存在感が盤石となり、物語がふくらみましたかね。 しかしこの読みやすさは尋常でないな。 “ホテルの中で仮面を被っているのは客たちだけではないーー” |
No.46 | 7点 | ダイイング・アイ- 東野圭吾 | 2020/02/27 18:30 |
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糸屋の娘じゃあるまいし。。。。 主人公の記憶の失わせ方が絶妙。。おかげで読者にとって謎に被さる謎が次々と奔出! 一方で、すぐにカタが付いたり解明出来たよな気にさせられたりする案件も続々。 筋立てはどんどん曲がりくねるのに混乱無く、頼もしき剛速球感、面白いです!! それにしてもホラーだか何だかにしか思えない事象がいつまで経ってもおさまらないのだが、はて。。。。 そう来るのか。。。。。。 だけど終結のドタバタで違和感が急襲。ここさえピシと決めてたら8点級だよなー 惜しいー んで交通問題から派生した社会派ミステリ(?)とも見えるし、それはダミーの騙し絵とも見える。 某登場人物(名脇役)がまさかの被害者になってたのは違和感じたんだけど、、やっぱ交通事故で殺されるより意志ある殺人者に殺されるほうが怖い、って事を匂わせたかったのかも?? でも結局、ホラーとは謂わずともサイコ的なもやもやの切れ端が微妙に残ったかなあ、、本格ミステリ/本格サスペンスだと思って読んじゃうと。
発刊当時 『今度の東野圭吾は、悪いぞ!』 ってキャッチコピーが意味ありげに踊ってた本ですよね。 悪い、のか。。。。。 |
No.45 | 8点 | 名探偵の掟- 東野圭吾 | 2019/03/23 08:34 |
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『電気グルーヴのメロン牧場』並みに、電車で読むと危険な本(ブッと噴き出しちゃうから)。メタパロディの領域掠める大パロディ大会の体だが、一作ごとそれなりにちゃんとした推理小説的ヒネリの落とし前を付けているのが素晴らしい!チェンジオヴペースの置き所も絶妙。王道を踏む事にこだわる著者ならではの新変化球アイデア素描(本作に登場するトリックそのものではない)の様相もあり興味津々(このへん文庫解説の方が詳説)。一作、一部で知られる某ディープ論理パズルを彷彿とさせる大笑い結末のブツがあり、その結末を剛腕センタリングでアシストするパロディ大車輪の噴出部分も含めて流石は俺の東野、魂は理系ミステリの鬼だぜと、膝を叩いたものでした。一番気を持たせるタイトルの某作、アンフェアの中にも、読み返せば、しっかりフェアであることの伏線(言い訳?)が張ってあるのにはシビレます。著者代表作の一つに数えられてしかるべきでしょう。氏の最高傑作と称する人がいても不思議ではありません(私は違うけど)。本当に、よくぞ書いてくれました、こういうの。珍妙な登場人物名でいちばんヤバかったのはアリバイ工作に勤しむ「蟻場耕作(ありば・こうさく)」かな。こりゃ噴き出しましたよ。 |
No.44 | 8点 | プラチナデータ- 東野圭吾 | 2019/03/19 00:43 |
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「……、 煙草とか数学とか」
この物語には二人のヒロインがいる。 いや、片方はヒロインになり損ねた。国民(最終的には地球人?)全てのDNAを一元管理して犯罪捜査と犯罪抑制に役立て、薔薇色の未来を築き上げる一助にせんとする巨大計画がある。だがそこでは”プラチナデータ”なる極秘のナニモノかに関する最後の仕上げが肝腎らしい。。。。そこへ来て、巨大計画の技術側キーパースンが、長期入院中の精神科病棟内で殺害されるという重大事件が勃発。 一方でずっと下世話な背景が覗える殺人事件も連発しており。。 主人公は二人(?)。それぞれの周辺人物を含めてぶつかり合うこと組み合うこと、実に玩味に堪える。 登場人物名に何気な鮎川哲也オマージュ?(地名繋げ)を感じるのが嬉しい。個人特定と多重人格、幻影に叙述欺瞞の疑い、、と機敏に平然と畳み掛けて来るのが熱い。物語要素としてシンプルな提示やら対比やら、さり気ない取捨選択やら端の見えないレベル違いか何んかやらがタイミング良く重なり合いテンポよく立体的変貌を続けてくれる。じっくり攻めるなあ、余裕あるなあ。我が妄想よ、突き抜けておしまいな。。 3分の2ほど行ったとこで、 オー、仮にアガサならこいつで決め打ちアーハー? ってなシビれるプレシャス容疑者(その地点までは露ほども疑わなかった)と面会させれたんだけどね、いつしかウォッチリストから消えてそれが誰だったかもわからんくなりましたよ。 某シーン、誰それ?!?! 。。。 と思わせるタイミング無双、と思えば既にもう、そこに加速のしたり顔。浅草橋。。単に幻覚と言うには見え見えの線で引っ張り過ぎだなと思ったら、、そういう事か。。。。 ってまだそこでも終わるわけないんだよな、、やられた ーーー そこで “ちらりと見た” だと!! しかもだな、その直後の地の文に息づく、妙に幸せめいた余韻。。。 え、何その、唐突な人称の、、迷い?! 惑わせ?!? 読者妄想を前提とする卓袱台ブーメラン丸返しをサリッと刻む一瞬の閃光を、無風地帯の俺は見せてもらった、そんな数行もあった。 ラストシークエンス、いくらなんでもホンヮヵし過ぎでね? と思いましたが最後の一文できっちり落とし前、泣かせてくれました。”米国側”意図の重さが全く無視されて終わったのはおかしいけれど、まあエエ、社会派ミステリじゃないんだし。何故某人物が犯人に?! という一つのメインテーマが有耶無耶の濁流に押しやられたのもヘンだが、まあエエ、社会派サスペンスじゃないし。ただね、あの奇蹟のミスタッチ解決シーンだけはちょっと都合良過ぎでリアリティを部分撃墜。にしても妙にブライト過ぎる終わり方がまさかの東野流ブラックジョークだったりしてな。文系に優しい理系ミステリ、最高だな。 ”モーグル”の命名由来が堂々明言されないのはちょっと残念。 先読みし易く興醒めとの評が多いのは納得。でもわたしは本作が放つ独特のワクワクヒューヒューにどっぷり浸りたいのです。 |
No.43 | 7点 | 真夏の方程式- 東野圭吾 | 2018/09/05 12:31 |
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方程式だけでは実際の自然環境に対応できない、加えて根気強い実験を経ての実証が必要だ、人生に於いてまた然り、わかったか、坊主。 そんな意味がこの表題に込められているのでしょうか。 過去を席捲するダークな真相を、爽やかな夏風を浴びて叙述し切った、綺麗な作品です。 “誰かの人生が○○○しまうかも知れない”なる変則フーズダン(誰が被害者)の趣向が、表立っての殺人事件とはまた別の謎と感動を紡ぎ合わせる素敵な物語でした。 地味ながら着実な、本気の泣ける物理トリックを暴くために、読者側に放たれた抉りの深い心理トリックの戦慄と、そして。。。。
本作、東野らしく仕掛けて来る気概は感じるものの、振り返ればそれなりにありがちなミステリ真相の組み合わせではある。。(どちらかと言うと、前述の変則フーズダンの訴求力を加算しても、結末より展開の方により強い仕掛け感があった)のですが、真夏に真夏の話でキメたせいか頭がぼんやり痺れて読中そのへんよく分からなかった。。 が、公平を期すにあたり0.8点減。 ケータイが壊れた件はツッコミどころ真正面の大笑いだったが、ここが事件”直結”の伏線を兼ねていれば、もっと泣ける話だったろうなあ。。。 |
No.42 | 7点 | 白銀ジャック- 東野圭吾 | 2018/03/07 17:41 |
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「逆意外な犯人」の目眩しで本命の逆意外な真犯を隠匿かよ。。 てか、要は逆意外なのかよ。。 かと、思いきや。。 浅はかな考えと行動の経緯こそがミステリの深みに達する、逆々意外な真相?? 逆実行犯、 逆なりすまし。。 まるで森ミステリの様な逆趣向ハンド・イン・ハンドの雪崩打ち。。。。。。 ウォームエンドに過ぎる要素もピンポイントで在ったが、拙者やはり雪の話に弱い。 |
No.41 | 7点 | ブルータスの心臓−完全犯罪殺人リレー- 東野圭吾 | 2018/01/13 17:16 |
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まるで初期京太郎を思わせる(社会派交じりの)派手で複雑な設定と展開、を更に捻り倒したような、攻めに攻めた倒叙本格こりゃ面白い! 決して、屍体をリレー形式で運んでアリバイ偽造ってだけのクライムノヴェルじゃないんですよ! 初期東野で光文社文庫ってワケで何となくペラめの話を想像させがちかも知れませんが。。読者も、主役も、警察も謎の全容が分からない、果たして全て分かっている黒幕は誰だ。。という中心興味に次々と予想外の太い枝葉が絡まり続けるうち大きな謎を抱えたままとうとう最終コーナーへ突入!! こりゃ初期京太郎的とは言え、その悪癖である緩いアンチクライマックスとは無縁の作品だな、、と思ってたら最後の数ページで急角度に墜ちた。。確かに人間ドラマとしては最高の沸騰シーンを迎えるんですけどね、えっ!?犯人!?何!?あの人やあの人の役割は!?主人公の。。!? ってなもんでいきなりのミステリ的尻すぼみには驚きました(結末だけ警察小説風かよ、みたいな?)。でも意味ありげな出だしから分厚い中盤、ラストシーン直前ギリギリまで本当に充実してて面白い。最後の最後だけがなあ。。タイトルの意味が中途半端に明かされるインパクトの弱さも含めて、実に惜しい! それでも7点キープ!(7.2くらい) |
No.40 | 8点 | 赤い指- 東野圭吾 | 2017/09/20 01:21 |
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加賀刑事、斬れること。偽装工作の諸要素を瞬殺で打ちのめし続ける様子はほどんどユーモラスな域の容赦無さ。それにしても気になる、嗚呼タイトル気になる気になる,, 現物(赤い指)が最初に顔出して直後からは長い潜伏の恫喝が突き上げた。。。その言葉の意味は最後に大化けを果たす。サブプロットいちばんの泣かせ所をも大いに巻き込む立体交差で。
心に残るラストシークエンス、最高のラストシーン。このラストは加賀刑事が「昔から優秀で(正確には’勉強もよく出来て’だったか)」ってのが(シリーズモノとは言え)伏線になってたのか? と思えばちょっとクスッと来る。それすら愛おしい。 終結近くまでは、書き込みは緩いけど構成の巧みさが光る準社会派ミステリ7点相当(6.6くらい)と憶測を働かせたが、最終コーナー一気に本格の本性を現した所で、その熱気にやられて8点(7.8超)にジャンプアップ。その本格魂こそ人間ドラマ感動構築の中心に位置するというのが素晴らしい。 本作、複数の大きな社会問題を、巧みに倒叙パズラーの枠組みで弾けさせた、倒叙応用篇の成功作と思います。 |
No.39 | 6点 | 聖女の救済- 東野圭吾 | 2017/02/07 18:56 |
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俺の東野とは思えないほど、つかみが弱い、引き込み緩い、落としは、、 最後までなんだか出涸らし番茶味のガムを噛まされてるみたいなもどかしさ。逆トリックならぬ逆犯行てが? 大胆企画を消化しきれなかった試作品ってんじゃ。。森博嗣の失敗作っぽくないか?(って氏の作品はまだ数えるほどしか読んでませんが。)
でもまあ湯川教授はいいこと時々言うよ。「たとえ虚数解であっても。。」その虚数解の正体に魅惑されそこなったのが残念なんですけどね。 少なくとも例の(そうは言ってもなかなか凄い)トリックの方はね。。 微妙にネタバレ交じりの褒め言葉でフォローさせてもらうと、本作はフーよりハゥよりホヮイよりホヮットより「ホェンダニット」の’大きさ’で魅せる、というなかなか画期的な作品なのかも知れませんね。それともう一つ、何ダニットと呼んでいいのか全くわからない、真犯人の”その間”の気持ちね。「別な意味のハゥダニット」とでも言ったらいいのか。 うん、中盤はイマイチでも、最後に明かされる真相はやっぱなかなかだよな。そうそう『最後の物証』を巡るちょっと切ない背景物語もね。。本格推理(というか犯罪捜査)として全く無駄になってなかったってのが分かるあたり、振り返れば泣けますよ。 「存在の有無を確認するという作業は曲者でね。。」 そんなわけで読後じわじわ来て、4点⇒5点⇒6点とぐいぐい上がっちゃいましたね。 川崎フロンターレの人気サブマスコットを連想させるキャラクターが登場したのは萌えた。 それと、湯川教授と福山雅治が同一人物ではない設定だったのには笑いました(笑)。 |
No.38 | 8点 | ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 | 2016/12/29 01:39 |
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ある山荘に、特別な目的(練習)のため閉じ込められた劇団員七人(クローズドの必然性有り)。
殺人劇(本作)中殺人劇(劇団員達が演じる)が連続。ところが、殺人劇なのか本当の殺人なのか判別出来ない事件が発生。なお七人を手紙で呼び出した筈の演出家は最初から不在。。。。 私の大好きな高級推理クイズ集『新・トリックゲーム』に似たようなシチュエーションのクイズがあった筈だが。。まさかそこからインスパイアされてたりして。。 とにもかくにも面白さ爆発の一冊。●されたとか○されたとか怒っちゃ詰まらん。愉しもう。 |
No.37 | 7点 | パラレルワールド・ラブストーリー- 東野圭吾 | 2016/06/23 19:42 |
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これぞ謎。。。 もし清張が延々と長らえていたら、この話の核心あたりでサブジャンルを越え東野に玉座を渡す契機を自覚したのでは? などと妄想。
通常現実と現実科学と空想科学が4D空間でトリプル交錯するような、バリンジャーの「消された時間」を本気の科学者スピリットで綺麗に建て直し彩り直したかのような機軸感満載。しかし科学の子の良心に殉じ過ぎたか、、こんなスウィートなタイトル付けてからに何たるビターでスクェアなストーリー展開。いっそ甘ったるい現実感無きファンタジーで良かったのに、この題名を割り振るなら。幻想遊泳の世界に拡散させず最後きっちり全ての謎にミステリ流儀の落とし前を付けたのは剛腕天晴れだが、そんな強面の作品ならしっかり強面の表題を冠して欲しかった。『邂逅』とか(?)。 しかし泣けなかったなぁ。。最後に不意打ちのエピローグで奥歯を噛み締めさせて欲しかった。期待は外れた。それでも相当に面白い。この圧倒的底力は何なんだ?? |
No.36 | 7点 | 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 | 2016/06/08 14:45 |
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わくわくさせる如何にもの新本格設定は肩透かしか。。と思えば最後にギャンと言わされました。ギャフンとまではならないがギャンくらいは行ったw しかしその企図は堂々たるもので、氏の後年の諸作を考えればこの設定なら更にもう二段深い所まで侵攻出来たのではとも思えてしまうが、本作は本作で充分立派。6.5でギリギリの7点。 |
No.35 | 10点 | 白夜行- 東野圭吾 | 2016/04/12 05:50 |
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こないにオモロい小説、無いで。。。。。。。。 ジョーが燃え尽き飛雄馬は去るも清張新作まだまだ出る、既に第四次の中東戦争、ジャイアンツ九連覇も長嶋不振、そないな時代、皆の心に何かが起こる予感ですって。。準主役級、重要脇役群多数登場し丁寧に印象深く書き分けられるが、主役の二人だけ一切の直接心理描写を棄てた徹底ハードボイルド文体で描かれる為まるで奥行きある切り絵細工の様に明らかに他から浮かび上がって(時に奥まって)見える、彼らが何を話し合い、お互いをどう思っているのか、一切触れられず。。 苦笑を噛み殺す、か。。泣き声を受け「0から9に変更」やて。。! 桐原はなかなか面白い奴だ、圭吾さんはこういうのが好きなんだろうね、なんて序盤は呑気に構えていたもの。。 主要登場人物(のベアまたは三人以上)が次々に入れ替わるエピソード繋ぎのタペストリーはよく出来たDJセットにも通じる小気味良さだ(元々は連作短篇集だってんだから!)。気付かないうちミステリの毒素にじわじわやられて行く仕組みだナ。 悪知恵実行はピカイチでもいざと言う対人振る舞いは最低のバカが登場、まさかそれすらも故意なのか。。 読後、いや読了ちょぃ前から目に入るもの九割方がこの物語のアナロジーと映って仕方無かった。大阪の刑事が東京風煮込みのうまさを認めるシーン、沁みたねえ。お次は納豆の天ぷらと来た!山手線田町駅近くの大阪風串揚げ屋でも納豆包み串揚げやっとったな。ぐいっと来た台詞「私は誰の敵でもありませんよ。」
セブンイレブン日本上陸一号店、ゲームプログラムにも著作権が必要や、聖子ちゃんカット似おぅとるよ、阪神優勝の年の大阪の物語、バブルか。。 終盤に至るにつれ 時の流れが等比級数ばりに加速しやがる(この長さの小説でやられるとエネルギーの大きさも甚大だ、クソ!)。昔の事件捜査経緯をつらつら語るセミ半七捕物趣向の部分もまた良し。。そして終結部(と言っても全体が長いだけに長い!)で濃縮あらわに本格推理海域へと舵を切る。サムシングってやつがキラキラだ。。これは東野圭吾が松本清張の域に突入した作品ではないのか。「砂のなんとか」を彷彿とさせられずにいらりょうか?だが清張の裏を張って(いや、これは書かないでおこう)。残りページがか細くなっても結末予想が全く落ち着かないこの泡立ち感こそ清張マナーへのオマージュそのものか?そのくせ行方知れずの嫌な予感ドミノ倒しは一部の隙も無いんだぜ?最終ラウンドで初めて顔を見せたまさかのチョイ役がやっぱり、まさかの鍵を握る動きを見せるのか!?あまりにも意外な人物って誰や誰や!!これぁもはや、体感的に大河ドラマやないかーーー(墜落) 悲劇ながらもあっさり済ませたラストはね、いかにも「小説は終わっても登場人物の生活は終わらない(死んだ者を除いて)」という大事なことに意識を向かせるかの様でね、良いと思いますよ。推理クイズもどきの消失トリックを挿んで来るのさえ、哀しい結末と相俟って絶妙な道具遣いになっているしね。 雪穂さん、これからが本番やね。 |