皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
斎藤警部さん |
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平均点: 6.69点 | 書評数: 1357件 |
No.137 | 7点 | 猫は知っていた- 仁木悦子 | 2015/06/22 16:20 |
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非常に若い頃、佐野洋にはまった勢いでどういうわけか手が当たって読んでみた作品。
構造のしっかりした、そしてやさしい手触りの本格推理です。 「点と線」と並び、昭和30年代推理小説ブームの火付け役と目される人気作(「黒いトランク」は違うのか..)。 物語の詳細はすっかり忘れてしまっただけに、いつかきっと再読したい。 たしか、明るくて、そこはかと無い寂しさのある小説だった。 |
No.136 | 8点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2015/06/22 16:11 |
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雰囲気いいっすね。街中のざわざわした活気にいい具合に目くらましされ、例の犯人が見えづらくなりました。 |
No.135 | 8点 | 腐蝕の構造- 森村誠一 | 2015/06/22 16:08 |
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社会派と言うより、社会悪を最高のスパイスに(恋愛を下地のサワークリームに)使った本格推理。
離れ離れになった一組の夫婦(夫は原子力研究者)を中心に、山を背景にした人間ドラマあり、ホテルでの密室殺人あり、巨悪への研ぎ澄まされた憤り(といつもの左翼演説)あり、様々なレベルで森村氏、キャリア最初期の集大成トライアルと言った趣がある。 物語の途中で主人公が切り替わり、誰が「腐食」しているのか、の見え方も変わる。 ずっしり重いエンタテインメント巨篇。 義父から借りて読みました。 |
No.134 | 7点 | ビッグ・ボウの殺人- イズレイル・ザングウィル | 2015/06/22 15:54 |
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このユーモア原理主義は大いに有りでしょう。地の文からしてフィリップ・マーロウの台詞に匹敵する含蓄をいちいち感じます。
例の歴史的密室トリック及びそれと密接に関わる意外な犯人像も、短くも怖ろしく密度の高い物語を経た後に見せ付けられるとあらためましての衝撃。今となっては貴重な歴史証言と言える社会派要素も丁寧に織り込まれ、当時かなりの先取りだったであろうミステリ要素の濃厚な文芸作品として玩味に堪えます。 余談ながら「人種のるつぼ」なる表現は彼の戯曲が発祥と言われているそうですな。 *ところでこの密室トリック、実生活でもけっこう応用効きますね |
No.133 | 8点 | 手紙- 東野圭吾 | 2015/06/19 11:28 |
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○○はいい奴だなァ、チクショウ!!(涙)
(以降ネタバレ的) 会話や地の文から「この人は裏切らないんじゃないか」と予想した登場人物が、主人公の兄の事が露見(わか)る度にあっけなく離れて行く。「まさかこいつは」と思った奴もいつか壁を作ってよそよそしくなる。「まさか」感の分だけ主人公と同じショックを味わい、辛い気持ちがよく伝わる。 そこで『最後まで主人公を裏切らないのは誰か』という、一種の「犯人捜し」的趣向の読み方(パット・マガーじゃないけど「友達を捜せ!」みたいな)をしてみたら、これが見事に的中。○○だけは本当に裏表の無い奴なんだな! 信じて良かったよ!! もちろん、○○だけでなく▽▽も最後まで主人公を支えるんだけど、▽▽の場合はまたちょっと違う関係だからね。もちろん「あの人」だって最後まで見捨てない。見捨てるわけが無い。「あの人」ってのは主人公の兄の事。 (そうだ、あの社長だって自分の有り様で味方じゃないか!) さて主人公が読みもせず破り捨てた幾通かの手紙、この読まれなかった手紙が伏線となって、何か最後に大化けするのでは、と予想もしましたが。。 ほとんど終わりの方、いきなりハッピーエンド風な場面に変わり、このまま最後のドンデン返し(?)まではずっとハッピーなままで行くのかと思ったらまたしてもまさかの裏切りの急展開、という本当に予断を許さない物語のあり方こそ、一定の根拠ある差別、或いは単に差別というものの厳しさを暗示しているようにも感じました。 意外な所から登場する最後の「手紙」では泣けなかった。(その意外性にはミステリ的に感動) 私が泣けたのは、終結近く○○が再登場するシーン。この物語には兄弟愛も親子愛も夫婦愛もあるが、主人公と○○の友情こそ最高の救いだと思う。 一番最後のシーン、主人公は実に困った状態に立たされてしまう。だがすぐそばには○○がいる。機転の利く○○は絶対に笑顔で切り抜けてくれる。 そんな眩しい希望を放って、物語は終わりました。 |
No.132 | 6点 | 殺意の絆- 島田一男 | 2015/06/19 11:04 |
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やっぱり夏は島田一男だナ! シマイチは短篇が一番と思ってたけどさ、長い中篇みたいな長篇のこれも悪くないぜ。 東野圭吾「新参者」と同じ人形町を舞台とした、老舗の人形屋一族を急襲する人形に因んだ”見立て”連続殺人だ。弁護士と刑事、そこに弁護士助手も絡んで粋なやり取りは変わらずの味。ビートルズ解散から間もない頃の(軟派な不良の)若者風俗が痛ましくも郷愁を誘う。真犯人は最初の方で睨んだ奴だったけど、途中で結構迷った。熟達のミスディレクションは本当に狡猾(ズル)いね。 一見チャラいが、脂の乗った手堅い本格推理だよ。 |
No.131 | 9点 | すべてがFになる- 森博嗣 | 2015/06/19 06:54 |
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この怖るべき作品は。。。。。。。。。。。。。。。。「三つの棺」を超えてしまったのではなかろうか。それも外から跳び越えるのでなく、内側から突き破ってしまったような。
この小説の核心にある前代未聞の密室トリックを理解した時「えっ? 逆じゃないの!?」と思ってしまった。事をよく考えると「逆」という事は有り得ないというかリアリティが無さ過ぎるというか、それではメタ・アンリアリスティックになってしまうのだな。。。。 問題作ですよね。 英題'THE PERFECT INSIDER'が本当に秀逸。 |
No.130 | 7点 | 二人の妻をもつ男- パトリック・クェンティン | 2015/06/18 20:12 |
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真犯人というか真相、冒頭部で分かってしまいました。。そこから先は(作者に黙って自分だけ)倒叙サスペンスのつもりで一気に終結まで駆け抜けました。 いやー、熱いね! 名作とされるも納得。 |
No.129 | 5点 | 医者よ自分を癒せ- イーデン・フィルポッツ | 2015/06/18 19:52 |
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英国田園地帯に住む医師の独白で構成される謎の文書、の様な小説。 この医師、最初は比較的まともな人物の様ですが、徐々にどうもおかしい所が見え隠れ。これは、何かあるぞ。。
古式ゆかしい面を差し引いてもなお読みづらい文章ではあります。が、物語の風格に圧されてまず退屈無しに最後まで読み切りました。これはやはり、ミステリの薫り漂う文芸作品。 現代の作家だったら、まして東野圭吾だったら、この物語の最後にまさかの劇的極まりないオチを付けて全てをブチ壊し、「おォ、本格推理小説だったんだ!!」と読者を唖然とさせる方に行くのではないかな。(このお話の最後だってドンデン返しっちゃそうなんですが) |
No.128 | 7点 | 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ | 2015/06/18 19:17 |
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割とスレちゃった後に読んだせいもありましょうが、冒頭部で真犯人というか真相にピンと来てしまいました。。 しかし流石に文豪フィルポッツ、物語の魅力でぐいぐい引き込んで離しません! 構築美も相当なもの。 乱歩先生が絶賛したのも納得ですね。 先生の仰る『万華鏡』効果は、真相にすぐ気付いてしまったせいなのか、自分には起こりませんでしたが、他の作品ではその様な大地と空ごと幻惑されるような感覚は何度か味わっております。幸せな事です。 |
No.127 | 7点 | 蒼ざめた告発- 夏樹静子 | 2015/06/18 17:14 |
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例によって不安定だったり不幸だったりする男女に纏わる犯罪事件簿。が、何度そういうので来られても飽きないんだなこれが。手を替え品を替え、視点も落としどころもずらして来る夏樹さん。ちょっと怖い作品が多いのも魅力。 「冷やかな情死」のラストは酷いなあ。。 表題作のアイディアは長篇でも映えそうだ(叙述トリックを絡めても行けそう)。 適度に小味の品もはさんで、そこはかとなくフェミニンな本格短篇の饗宴。 |
No.126 | 7点 | 殺人方程式- 綾辻行人 | 2015/06/17 23:51 |
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最後まで愉しく読んだ事と、頭部切断の切実な事情だけ憶えています。 あと、ちょっと島荘さんぽいトリックを使ってたような。。 |
No.125 | 8点 | 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 | 2015/06/17 23:42 |
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「8」と同じ作者と思えないくらい、これは良かったぜ。 前評判(ネタバレ無し)も何のその、上がりに上がったハードルをシラッとクリア。 事の真相は半分くらい進んだ所でピン!と来ましたが、では最後はどう終わらすのよ、といった興味でスリル満点のまま終結まで一直線。残虐描写はさして印象に残りませんでしたが。。 今思うとあのしつこいエログロこそ目くらましだったのか! |
No.124 | 2点 | 8の殺人- 我孫子武丸 | 2015/06/17 23:33 |
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こりゃ詰まらなかった! 何もかもカサッカサでパサッパサで、感じるところ無し。 その昔ミステリ本に限っては「売る」という習慣を持たなかった頃、この本だけは初めて売っちまおうと思ったくらい、どうにも本格的にダメだった。 アレンジし直して、ちょっと上級篇の推理クイズに仕立てればいいのに、なんて思ったなあ。 でも実際こんな形の建造物があって中に入ったら萌えるだろなあ、なんて考えたりもしたものでした。 好きな人、ごめん。 |
No.123 | 3点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2015/06/17 23:03 |
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異色作と呼ばれる「マジックミラー」にいたく感動した余韻で数年後に「月光ゲーム」を手にしてイマイチ没入出来ず、数ヵ月後に本作でリトライ、しかしやはりどうも、私の好みでありませんでしたねえ。 文章がどうにも青臭いのと、ロジックばかり強行突破で来る感じがさっぱりねえ。 でも作者の意欲は伝わります。 この人嫌いじゃないんです。 |
No.122 | 3点 | 月光ゲーム- 有栖川有栖 | 2015/06/17 22:59 |
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異色作と呼ばれる「マジックミラー」にいたく感動した余韻で数年後にやっと読んでみたものですが。。
ご免なさい、私には合いませんでした。 でも作者の頑張りは伝わります。 |
No.121 | 9点 | 刺青殺人事件- 高木彬光 | 2015/06/17 12:02 |
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昭和30年代フェティッシュの私も、この昭和20年代濃厚ムードには骨の髄までやられます。
処女作で密室と○○の二大トリックを惜しげも無く見せ付ける意気は流石。○○トリックの方がより物語の根幹に関わる大トリックですが、密室の方もなかなかどうして。物理的密室トリックと心理的密室トリックと二つ並べておいて、一見心理的なほうが上等と単純に思いがちだけど実は物理的なほうがあってこその心理の罠、という見えない補完性が唸らせます。その密室トリックもまた、もうひとつの○○トリックを見破る伏線であり目くらましでもあり。実に重層構造。 それにしてもですね、言わずもがなですが、高木さんの頑強無比な推理小説構築力に較べて、筆の滑りの詰めが甘いこと甘いこと! 水をも漏らさぬ天才の筈の神津探偵が何かというと間の抜けた言行を晒すのは本当に滑稽。だけどそんなアンバランスが不快でなくむしろ心地よく感じられてしまうのはやはり、高木さんの人徳こそ為せる業なのでありましょうか。。 |
No.120 | 7点 | ポンスン事件- F・W・クロフツ | 2015/06/17 10:56 |
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「ペトロフ」で鮎川哲也がもう一ひねりしたくなった気持ちもよく分かる、既に一ひねり施された、最後何とも不思議な気持ちになるアリバイトリック巧篇。
(「三つの棺」を敢えて密室物と呼ぶ流儀で「ポンスン」は単純にアリバイ物と呼んでおく) 「樽」に尻込み中の方も、こっちは読んでおくといいですよ。 |
No.119 | 7点 | 狂った信号- 佐野洋 | 2015/06/17 10:50 |
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ミッシング・リンクこそ肝の筈が題名でいきなりほぼネタバレ(?)、 かと言って告発一本槍の社会派とは明らかに触感が違う不思議なサスペンスに終始包まれた、際どい所で本格推理と呼びたい良作。 |
No.118 | 6点 | 通り魔- エド・マクベイン | 2015/06/17 05:10 |
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カート・キャノンは少し読んだけど、エドさんの87分署は初体験。
以前同じ勤め先にいた、敬服しちまう程エンタメ通の奴が「ハチヒチは面白い!」と言ってたんで(いえ本当はそんな言い方してませんが)ちょいと気になって50円の古本で買ったのがかれこれ15年近くも前。ずいぶん長らくお待たせしちまって恐縮もいい所だ。50円で売ってたその店はもう無い。 んで、だいたい予想通りに良かったです。もう何冊も読んでみたい、出来ればシリーズ全巻読破してやりてえ(再読はしまいが?)、って気にちょっとさせられたねえ。 で良い所もいっぱいだが粗もなかなか目立つ。文体も島田一男っぽくサバケてみたかと思うと次の瞬間そこにフィリップ・マーロウが来たのかと思うほど気取ってみたり。だけど大都会、特にその荒っぽい地域の情景がありありと浮かんで来る文章は流石ですね。 数年前に空さんも指摘されてた通り、事件性のあるサブストーリーが本筋と絡まずさようなら、という構図は気になります。まさかそのサブ事件が数年先の作品にメインとしてひょいと再登場したりしてないだろうな?(そういや昔のTubeに「10年先のラブストーリー」ってカラオケ映えするナンバーがあった) まシリーズでいっぱい続くわけだから、こんくらいの緩さがジャストフィットなのかも知れません。とにかく、また読みたくなりました。 今度はキャレラって奴が主役のをちょいと見てみたい。本作で奴が最後に新婚旅行から帰ってきたシーンは何故だか涙が出るほど感動しちまった。。 そんな所だ。 |