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斎藤警部さん
平均点: 6.70点 書評数: 1341件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.421 6点 製材所の秘密- F・W・クロフツ 2015/12/03 07:06
むかし実家の近所に製材所があって、この題名には萌えたもんだ。
後年のフレンチもの「紫の鎌」にも通ずる”何をしているんでしょうか?”の謎を追うストーリー。やってる悪事の内容とトリックは蓋を開けてみると(文字通り?なんちゃって)単純至極だがなかなか強力なワンパンチ。しかし安易に推理クイズ市場に流れそうな超シンプルさ加減ではある。 探偵役が死んで次の人にバトンタッチしたり、なかなか命を賭けた展開。 みんな、ナンバープレートはむやみに付け替えないようにしようぜ! 

No.420 4点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/12/02 15:36
「Y」をジュブナイル版で読んだばかりの小学生がたまたま親が持ってた角川文庫の「Z」に手を出し、「Y」とはうって変わった退屈と難解の壁に何度も払い落とされつつ辛くも読破(大人の文章が難しかったってのも大きい)。ただ、あの死刑囚の悲惨な有り様だけは子供心に強く残ったなあ。。 さて高校あたりで再読しましたが興味の薄さはさほど変わらず。 「X」「Y」同様”犯人が意外”と言われるらしいけど”はァ?”ってなもんです。でも物語の重厚さには一定の威厳と魅力を感じるわけで、点数付けるなら4くらいキープかなと。

No.419 8点 赤毛の男の妻- ビル・S・バリンジャー 2015/12/02 11:25
アメリカも先の大戦では大変だったんだ そういや、かの国は大昔からマイナンバーあったんだよな 探偵役の刑事が「ぼく」かよ まさか・・ 二州に跨(またが)った二つのカンサスシティがまさか何かの隠喩、またはトリックに使われたりしやしないか・・ 終結に近づくほど章カットのタイミングが絶妙に際どくなって行くじゃないか、いいぞ .. おい、ローハンがだんだんおかしくなって来た! マーシーも時々奇妙なことを言い始めた .. 何かの前振りか? 待てよ あのアクの強いターナーが本当にあれっきりでストーリーから消えてしまうのか? クリスマスが近づく。。その後はニュー・イヤーズ・デイだ。。 おっと、これほど意味深く玄妙な「結婚していなくて良かった」という台詞があるだろうか。。 テュペロと言えば、初めて聴いたジョン・リー・フッカーの曲だ。そしてエルヴィスの生まれた街じゃないか。。 「ぼく」がだんだん認められて、現場を仕切り始めたぞ! 徐々に 題名の暗示する重さがきりきりと 肩にのしかかってくる。 ローハンとマーシーは 結構 離れている時間も 長いんだよな いや 確かに そこに 最終反転の鍵の一つはあった 。。 エンディングを温かく感じてしうまうのは、どこかで 主人公が切り替わったからか。。 いやはや、良い物語でした。 ところでこの作品、原作に忠実に映像化する事は果たして可能だろうか?

No.418 6点 遠きに目ありて- 天藤真 2015/12/02 06:50
脳性麻痺の少年が探偵役を務める、設定自体にちょっと社会派の風が吹く連作短篇集。。と来れば期待も高まったわけですが(何も「或る『小倉日記』伝」の重厚さを求めちゃいませんが)、最初の二話「多すぎる証人」「宙を飛ぶ死」の穏やかで誠実なムードに不似合いな、予想の斜め上から真下に沈む感じの、バカっぽい大味トリックばかりアンバランスに目立つのは何とも味気ない。。まさかの肩透かし。。。 と思いきや‘信ちゃん’が車椅子で現場訪問するようになる第三話から急に良くなった! 「出口のない街」の、熱い心理トリックに異様な裏切りの真犯人像! 「見えない白い手」ではフレンチ流儀のトリッキーな心理攻勢劇!心理面での意外性が黒光りする暗黒反転には掴まれた。。。 最後の第五話「完全な不在」、不可能興味ならぬ不可思議興味が横溢、そこへ来ておなじみの「××の××(と××)」トリックにまんまとやられるとは。。。!! ちょっと意味の通りにくい文が散見されるのは気になったが、許せます。

No.417 6点 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 2015/12/01 12:28
列車でも船でもなく自動車で動くトラベルミステリー。所謂アリバイ物とは違う。
良い意味でちょィと小味な、中篇の味がするサスペンス長篇。
重厚濃密な作品の間に、贅沢な息抜きが愉しめます。
運転するのは一人のハクいスケ。。

No.416 6点 秘密- 東野圭吾 2015/12/01 06:08
過程を愉しむか、結末に泣くか。

最後の反転は。。 悔しさを感謝の涙がもっと覆い包むように終わらせて欲しかった、個人的に。

いつも思うんだけど、氏は近親相姦(或いはそれめいた事)を実にきれいにサラッと描くね。

No.415 7点 人質の朗読会- 小川洋子 2015/11/30 13:06
思わず’日常のxx’とミステリめいた呼び名を付けたくなる雰囲気でいっぱい、だけどやっぱりそんな名付けはどこか無理があると感じさせてしまう。。 本作はミステリーと謳われておりませんし、実際ミステリーではありませんし、しかれども題名に含まれる「人質」なる語句に不穏な事件性を感じ、一種の犯罪小説として(本当は犯罪小説ですらありません、犯罪は発生しますが)何らかのミステリー要素をうっすら期待しながら(同時にやっぱりミステリーじゃなかったと軽く失望しながら)読むのがより趣き深いと思われる、読者によってじゅうぶん涙を誘うであろう絶妙にデリケートな文芸小説です。

南米某所で日本人観光客七名とツアーコンダクタ一名、計八名の乗ったバスが現地反政府ゲリラの人質に取られます(現地人の運転手は当局連絡のため解放)。八人みな見知らぬどうし。ツアコンを含む日本人八名で”未来がどうあろうと変わらない過去を確認し、今を生きるため”各々の半生に起きた忘れ得ぬ物語を文章に書き起こし、朗読し合うという企画が持ち上がります。この設定だけで泣く人はもう泣くでしょう。
【ここよりネタバレとします】
各人の物語が語られ、合間にゲリラ側や政府軍、日本政府の様子(時折ゲリラ達と心の交流も)が挟まれながら結末への緊張は静かに高まり。。。という構成かと思いきや! 八人は政府軍踏み込み時にゲリラの仕掛けていた爆弾で全員即死との顛末が物語冒頭でいきなり明かされます。 残酷な前提の上で始まる、それぞれの静かな物語の朗読。。

さて物語を朗読するのは八名のはずですが、目次を見ると何故か物語は九つあります。一つ多い物語の書き手、読み手はいったい誰か。。それは決して大それたどんでん返しでも意外な結末でもなく、物語の冒頭部に普通に登場する、九人目として容易に想像のつく人物に過ぎませんが、その人物の物語の存在が小説全体に深み、というより、もう一歩踏み込んだ彩りと救いを与えています。また、その人物の存在と行為こそがこの小説の設定の大前提のひとつである「或る事」をも可能としています。

こうして見ると、随分とまた、ミステリ小説として(又より派手に感動させるエンタメ作品として)成立させ得るチャンスを惜しげもなく逃し尽くしたものだなと感動すらおぼえます。それは小川さんがミステリ作家ではないから出来なかったのではなく、本作を淡い感動、あくまで前向きな感慨で包み込むため(或いは別の理由で)敢えてしなかったのでしょう。そんな心理の痕跡がいくつか見え隠れ。まあ清張さんの様に何を書いてもサスペンス、ミステリの影に覆われてしまう純文学作家、というタイプではないようですし。


【ネタバレはここまでとしましょう】
折角ですから細かなミステリ興味の要素をあげつらうと、それぞれの語り手の年齢や素性が、物語の終わる瞬間に明かされるという構成は結構なスリルと同時にしみじみとした哀感をも孕んでいます。ああ、こんな経験を持つ女性は今(思ったより年配の)こんな年齢で、こんな用件で南米の地に渡る事情があったんだ(そういえば文中に伏線があったなぁ)。。の様な。
それとやはり(上記ネタバレ部分でも触れましたが)朗読者は八人のはずなのに、目次には何故か九つの朗読が並んでいる、という不思議の点ですかね。(気付かない人もいるかも知れませんが)
そしてやはり、どの朗読物語にも何らかの死の匂いが漂っている事もミステリとの親和性という意味で見逃せません。
最後に余計な事を言いますが「B談話室」での催し物がいちいちタモリ倶楽部っぽくて笑えます(そのうち空耳アワーが出て来やせんかと心配になった)。本朗読だけはちょっとピュア・ファンタジィ(作り話)っぽいな。。

いや、やはり最後の最後は「各朗読」で心に残ったものを。
「やまびこビスケット」の、うらわびしさと仄明るい心の交流。「コンソメスープ名人」の、原初ミステリを彷彿とさせる”日常のサプライズ・エンディング”。「槍投げの青年」の、心の中の不思議な開放感。そしてとある作品で描かれる草の根國際交流の温かさ。いや、どれも良いストーリーばかりです。とても’素人が非常時に書いた文章’に見えないのが難点っちゃ玉に瑕ですが。。いや、これはやはり例のダイイング・メッセージ理論と同じく、特別な神々しい時間に書かれた文章だから、というわけでしょうか。

No.414 7点 フレンチ警部最大の事件- F・W・クロフツ 2015/11/30 10:56
存外ヒューモーミスタリィの手触り。フレンチ初登場シーンもそんな所。でもコンスタントにオモロなわけじゃなくて、時折思い出したようにくクスクス笑いを誘うほどの奥ゆかしさが心地よい。中盤に至り 読者としてもフレンチ警部としてもワクワクする展開大滑空。X夫人と来ますか。。冒険の果て、物語の思慮ある終わらせ方は心に残る。趣深く色褪せた古典名作だ。 【さてここからネタバレ】この小説、アリバイトリックめいたものはあくまでダミーなんですよね、それでも旅情たっぷりのアリバイ捜査劇が物語興味の重要な根幹を成しているという軽い騙し絵構造がニクいですよ。二人七役(という数え方でいいのか?)トリックもちょっとバタバタですが悪くありません。奇妙な帳簿に見せ掛けた暗号とその解読過程も興味津々です。

No.413 5点 血とバラ- 赤川次郎 2015/11/26 12:30
忘れじの面影/血とバラ/自由を我等に/花嫁の父/冬のライオン
(角川文庫)

「セーラー服と機関銃」に物足りなさを感じ、映画つながりと言うわけでもないが何となく選んでみた二冊目の赤川本。
おお、こっちはなかなかだぞ! と当時ほくそえんだものです。「花嫁の父」の暖かなサスペンス感が記憶に残ります。

No.412 3点 セーラー服と機関銃- 赤川次郎 2015/11/26 11:15
ズブン(自分)が大昔に薬師丸ひろ子のファンだったという事実がどうヌもスンズ(信じ)難い。ひょっとして、どこかの時点でもう一人のズブン役と入れ替わっているのではねえが? 遺産相続か保険金詐取に絡んで火災事故に巻き込まれた過去は無(ね)がったが? たずうズンかぐ(多重人格)で無えど言う保証はあるが? スカス(しかし)、ズブンがまづがい(間違い)なく彼女のファンだった証拠に、この小説は確かにあの頃リアルタイムで読んでいる。夢の中で蝶たちが舞うエーテルの空のように、儚くも薄く仄かな内容の本だった。おまけにミステリではなかった(気がするんだが、記憶違いだべが?)。まぁーでもそれなりに読めまスたがらね。

No.411 6点 証明- 松本清張 2015/11/24 14:24
本格系3篇に異質の歴史エロ1篇。

谷山さん書かれたと同じく私も「密宗律仙教」のグダグダには音を上げました。本作があるせいでこんな薄い本を読破するのに二週間くらい掛かった(その間に別な本何冊か読んじゃった)。重厚且つ機敏な筆致が魅力の清張歴史諸作にはまず無い愚図な退屈ばかり目立つ困った怪作です。ミステリ要素は事実上皆無。本全体のバランスも大きく崩してますね。清張作品でここまでボロクソに思ったのは今んとこ他に無いんじゃないかな。
でもね、あとの3篇はどれも悪くない清張本格ですよ。

証明/新開地の事件/密宗律仙教/留守宅の事件
(文春文庫)

No.410 7点 憎悪の依頼- 松本清張 2015/11/24 12:41
憎悪の依頼/美の虚像/すずらん/女囚/文字のない初登攀/絵はがきの少女/大臣の恋/金環食/流れの中に/壁の青草
(新潮文庫)

本格推理、犯罪小説、歴史証言から恋愛小説めいたものまで、ヴァラエティに富んだ興味津々の短篇集です。柔らかなセンチメンタリズムが底に流れていそうな作品がちょっと目立つ。

あまり話題にならない様ですが「絵はがきの少女」の抒情とも旅情とも割り切れない微かな哀感は心の映像と共に永く残ります。“水曜どうでしょう”の”絵ハガキの旅”再放送を観るたびこの話を思い出します。 「女囚」の虚を突かれる反転、考えてみれば尤もな事ですが、、これは教訓にしたい一篇ですね。。「美の虚像」や「文字のない初登攀」で展開される丁々発止の人間攻守劇は緊張感抜群でこれぞクラシック清張節。題名力の強い表題作は。。清張にしちゃチャンチャン終わりかな。でも面白い。うん、この表題作だけは文学的物思いに耽らずともストレートに楽しめる通俗の味わいで、中でも一番の異色かも。しかし、とある作品で男色心情をつらつらと書き連ねているのには(乱歩じゃあるまいし)驚いた。意外とリアリティあるのが何とも言えねえ!

No.409 4点 完全殺人事件- クリストファー・ブッシュ 2015/11/24 11:56
印象に残る挑戦的プロローグのハッタリかまし具合は愉快だが、そのハッタリを知的興奮とかハラハラドキドキで回収し切れてないですよね。ただ、アリバイ古典と謳われながら●●●●トリックという落ちだけではずっこけそうになる所をギリギリの伏線勝負で救ってはいる、そのハッタリプロローグの使い方は「なるほどね」てなもんです。まあそこまでです。格好付けた割には魅力に乏しい、狩野英孝みたいな小説ですね!

No.408 4点 四つの署名- アーサー・コナン・ドイル 2015/11/22 09:53
個人的には退屈極まりない「緋色の研究」に較べると物語の時間的・空間的拡がりにある種の明るさ、爽やかさが強く入り込んでいる所為か、こちらの方が俄然好感度は高い。が、面白い!とまでは行かないな。やはりホゥムズは短篇が。。

No.407 2点 緋色の研究- アーサー・コナン・ドイル 2015/11/22 09:14
小学生の頃、ホームズには普通より長いのがあるとどこかで知り、「深夜の恐怖」なる作品を読んでみたらこれが普段のホームズとは微妙にちがう間延びした退屈感。中学か高校の頃あらためて創元推理文庫の「緋色の研究」で仕切り直しましたが、やはり全くのめり込めずダメでした。やっぱホームズは短篇に限る、サンマは目黒に限る、と思ったものです今もまぁ思います。構成の妙は特筆すべきと思います。

でも思い出してみればルパン物は逆に長篇(ジュブナイル版)ばかり読んでたなあ、小学生ん時。

No.406 7点 美の犯罪- 土屋隆夫 2015/11/21 17:35
表題作は切先鋭いホヮイダニット(娘による母殺し)の名品。
全ての収録作が、表題作の様に寂寥感漂う文芸色で統一されているのでもなく、意外とデコボコしたバラエティに富む短篇集ですが、どれを取っても相当に楽しめる作品であるのは間違いありません。
それにしても、ずしりと重い表題作の次、この不謹慎なタイトル付けは何たる事(笑)?

美の犯罪/殺人ラッキー賞/外道の言葉/三通の遺書/心の影/天国問答/女の穴/肌の告白
(角川文庫)

No.405 6点 半落ち- 横山秀夫 2015/11/20 18:36
私は刑事コロンボ「高層の死角」ラストシーンの鍵となる「何故第一の殺人だけ自白したか」という応用篇ホヮィダニットが心の琴線に触れて大好きなのですが、本作の場合は「何故ずっと自白を拒んでいた容疑者が、ある時を境に急に自白を始めたか」なる更に複雑でトリッキィな一種のホヮィダニット、それを大きな人間ドラマが覆い包むという構造で、大変チャレンジングな作品と思います。良い文芸小説で、愉しく読ませていただきました。結末の「ホヮィ」は確かに予想を超えたものでした。しかし。。。。唐突感は否定出来ません。

【これよりネタバレの風向きへ】
おいおいそんな伏線どこにあったよ!?って思いましたよ。バランスってもんがあるでしょう。あれほど夫婦愛の細やかな事情(そこに何事か秘密が潜んでいるに違いない。。。。)を前面に立て、謳い上げておきながら。。でも6点。

No.404 7点 虹を操る少年- 東野圭吾 2015/11/20 17:22
夜を統率・・ マスクド バンダリズム・・ 魅力的キーワード群が夜空に眩しい。そして、その向こう側にいた人物は?
同氏「天空の蜂」を社会派現実科学小説とすれば、こちらは社会派空想/現実科学小説(空想寄りだが空想みたいな現実が混入)の様な味わい。但し空想/現実の線引きは日本プロレスに於けるガチ/やらせの如く微妙で味わい深い。

これだけ派手で具体的なストーリー展開ながら妙に一歩一歩着実な筆運びだね、特に半分過ぎたあたりから。。と思ったがいや違う、これは怖い怖いクライマックスへ続く分厚い階(きざはし)の一枚一枚だ、想定外の生活社会派リフレクションを噛み砕きながら。。そしてスクランブル展開を見せ始める物語の根幹に寄り添う枝葉たちは、見守られるのか、棄てられるのか?
主人公が二人となる構図だが、光瑠君のほう、東野作品の中でもスペシャルに好きな人物だ。底知れずな懐の深さでもってとびっきり頭の冴えた奴、間違い無くいい。 あとチョイ役だけど麻雀の話で盛り上げ上手の高校教師ってのも最高だなあ。


【以下、ネタバレの機微有り】

裏切りと対立の構図はとうとう最終ラウンドへ持ち越し。しかし主人公(光瑠君のほう)の台詞が暗示した様に、通常のミステリ的な割り切り解決は無い。黒幕のトップやら怪しい組織の正体さえ最後まで明かされず。だが、主人公の口が語る通り「具体的に誰が仕切ってるかってのは意味が無い、たまたま今はそいつがやってるってだけ」という洞察の延長で最後は押し切られるという趣向なのでしょう。 でもある人物とある人物が実はイコール、というベタな推理小説的タネ明かしはちょっとあったね。読者サービスってやつかも知れん。

【ネタバレの機微、ここまで】


光楽、嗜む程度に体験してみたいねえ。 そういや、そこに「穴が開いている」様にしか見えないと言う「本当の黒の印刷」ってどこかの会社で開発されたねえ。
ところで文庫巻末解説の井上夢人氏が本人から聞いたという話に拠れば、東野氏はまるでパルプフィクション作家の如く、後先考えず書き飛ばす方式でいつもやってるそうなんだが、本当かしら??

p.s.
いい言葉だ「我が同胞へ」。 これには泣けた。

No.403 8点 針の誘い- 土屋隆夫 2015/11/20 01:12
子供の誘拐事件が起き、身代金を持参した母親がその場で殺されるという残酷な構図は、一方で義憤を煽りつつ事件の見えない奥行きをも匂わせる。これぞ黄金の土屋隆夫と感じ入ってしまう、質実剛健の一冊でした。

No.402 8点 天国は遠すぎる- 土屋隆夫 2015/11/20 01:01
謎の中心に暗い流行歌の歌詞。時代の薫りにやられる。遺書と共に逝った十代の娘は果たして自殺だったのか?アリバイ崩しに密室トリックが絡んだ、濃密な空気感の文芸本格。社会派要素も割と有り。評者好みのど真ん中に剛速球です。

ところで詰まらない事が気になるのですが「アルプス建設工業」というのはあの鬼瓦権造さんがお勤めの会社(アルプス工業)と関係があるのでしょうか?だとしたら、たとえ文中には登場しなくとも、彼も警察の取調べを受けて、最後に「冗談じゃないよ?」の捨て台詞を吐いて帰って来たりしなかったのでしょうか?あるいはその取調べ以来「冗談じゃないよ?」が口癖になったとか?

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.70点   採点数: 1341件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
松本清張(54)
鮎川哲也(51)
佐野洋(39)
島田荘司(36)
西村京太郎(35)
アガサ・クリスティー(35)
島田一男(27)
エラリイ・クイーン(26)
F・W・クロフツ(24)