皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
斎藤警部さん |
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平均点: 6.69点 | 書評数: 1408件 |
No.708 | 6点 | 溺れ谷- 松本清張 | 2017/06/08 22:45 |
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往年の人気女優を、彼女のファンだったという製糖会社社長に雑誌インタビューで引き合わせ、それを足掛かりに甘い汁にありつこうと画策する下司な主人公、ところがそうは上手く事が運ばずイテテテ。。。 輸入自由化前の砂糖業界を巡る汚職絵図がなかなかエキサイティングに展開して、、読み応えはそれなりにある。面白い。ガツンとまでは来ないかも。 |
No.707 | 5点 | 高校殺人事件- 松本清張 | 2017/06/06 12:10 |
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やっぱ清張にラノベは無理かw
冒頭の重々しいモノローグの末、おいおいそれが「私」(男子高校生)かよ! と噴き出しそうになりました。 怪しい事象に対する主人公の疑いの持ち方の、特に人間関係の機微に関しての、立脚の浅さが高校生っぽさを何気にぎりぎり醸し出していますかね。ところが、よりミステリ文脈での明からさまな伏線攻撃にまでそんな柔っちい無反応を見せつけられると、重厚な文体との違和感が愈々。。賢い従姉妹ちゃんが登場してよかったね。 高校生向け学習雑誌(高校上級コース/高校コース)への連載らしくサスペンス度も社会派度も抑え目。若者たちが社会に出るのが嫌にならない程度にという配慮か(笑)? 本格ミステリとして見たら更に薄味だが、とは言え真犯人はギリ意外。某人物の敵味方属性は見え見えだけど、犯人側構造暴露のスリルはまずまず。それにしても「ノッポ」と「人夫のおじさん」は惜しまれる。。。 その昔NHK平日夕食時の「少年ドラマシリーズ」にて、原題の『赤い月』として放映されていました。 |
No.706 | 6点 | ミステリ国の人々- 評論・エッセイ | 2017/06/02 22:12 |
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連載で読んでました。終わった日は寂しかったなァ。。。ボンボンさん仰る 縦横斜め ってその通りの、アリスアリスの高いこころざしに裏打ちされた愉悦共有意図の素敵な行き渡りぶりには、すっかり癒されつつ魅了されたものです。やっぱり、好みと違うようでいて本当は好きなんだす、このひと。 |
No.705 | 6点 | ハマースミスのうじ虫- ウィリアム・モール | 2017/05/29 12:00 |
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冒頭一読、含蓄有る不思議な恐喝理論と実践は切れ味勝負の短篇を想わせたが、引っ張って膨らませて展開も見事にいつしか屈強なる体躯の謎めいた長篇がそこに。腰のある文体に無駄のないユーモアが最高。そして芳醇なる余韻を生成して歩み去る、最後の一文よ。。嗜好に果たして合うかはともかく、間違いなく名作オーラは放っています。機会があったら触れてみましょう。嗚呼、抱水クロラール。。 |
No.704 | 8点 | タイムマシン- ハーバート・ジョージ・ウェルズ | 2017/05/26 00:28 |
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有名過ぎて最早手に取らないようなジャンル草創期の超古典も、何かの機会にいざ読んでみたらガッツリ満足面白い、って事はままある。本作もその典型。やっぱ完成度も高い挑戦作ってのは輝きを失わない(ホームズやビートルズの様に)。 歴史に残るどころか歴史を作る奴はコアが違うね! 今は無い近所のディスカウント屋で買った50円の創元古本も想い出。 |
No.703 | 5点 | 絶叫城殺人事件- 有栖川有栖 | 2017/05/22 12:27 |
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黒鳥亭
ほのかーーなミスディレクションが幸せに覆される瞬間が好きよ。ところがそれで全てじゃないってのもほんのり苦くて良いよ。「二十の扉」が絶妙だね。 壺中庵 トリックも物語もつまらんが、、建物の雰囲気はちょっとだけ好み。でもやっぱ俺の好きな物理トリックってのはこういうんじゃなくてなあ、島荘の得意なそれの方なんだなあ、全然違うわ。でも最後の沁みる観念台詞はちょいと好き。やっぱ心理ですよ心理のナニ。 月宮城 このタイミングでの前提変化球はジャストザ立派!と思えば普通水流に素早く呑まれ込み過ぎ。しかし真相はともかく物語の締めは、ダメでしょ。 雪華楼 ミステリ的に深みのない真相にがっくり。物語の雰囲気、その心理劇っぷりはまァ悪くもないが。。どこまでも童貞くさい有栖川よ、いい意味で。 紅南荘 ミソであろうサブ事象の動機が(推理小説として)シケってる。。だがそれを含む事件全体の構図は興味深い。もう一捻り半して長篇にすりゃあ良いものを! そしてラストの本筋動機で一気におじゃん。この青くささは本当どうにかならんのか、いい意味で。 さて、プロローグだが。。。。 絶叫城 変化球は肩透かし。。おぞましい真相にはまずまずの機軸感と感慨有り。 スコット・ロス登場には萌えた! |
No.702 | 6点 | 夢野久作全集 4- 夢野久作 | 2017/05/20 00:22 |
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ちくま文庫の全集より。
福岡県福岡市生まれの作者にとって馴染みの深い九州北部地帯を舞台とした作品集。良い意味で統一感無し。 いなか、の、じけん 旧い時代の九州北部に起きた実在の事件に材を取った、何とも田舎風味のおからクッキーみたいな小品集廿篇(にじっぺん)。 言ってみりゃシーラッハの「犯罪」を思いっきりイナたいスリーコードのカントリーソングで唄い直したような。。冗談です。 「一ぷく三杯」のまさかの真相、笑える凄まじさ! 「蟻と蠅」の変なオチ。。アリバイって言葉がその意味って。。アリバイ破りとか(笑)? 個別コメントはわざと中途半端に上記二作と控えさせていただきますが、他にも掌編から短い短篇までたくさんよ。てか小説以前感満載のメモ書き風も結構ありますが。。昔の田舎の空気が吸えて良いです。 巡査辞職 良い意味でビットが粗い風太郎みてえな結末披瀝。探偵小説と犯罪実話のアイの子の様な。。 ラジオで三晩続けて探偵小説の講話ですって!!! ← 萌える ‘泣きの涙のまま永患いの床に。。’ ‘お蔭で青空が広くなった。。’ 笑う唖女 本格色の強い時代イヤミス(昭和初期)。 眼を開く 泣ける日常のサスペンス、時代篇(昭和初期)。 空(くう)を飛ぶパラソル なんザこれァ 前半本格、後半無惨実話?? ええっッ。。。 山羊髯編輯長(女箱師/両切煙草の謎/真実百%の与太) 二方の探偵役というか化かし役(?)のスッとぼけた関係性も愉しいショート連作。暗く小汚いムウドの第一作冒頭から徐々に明るく快活に推移、これがイイ。新聞見出しの趣向もスンバラシイ。まるで下品になった山田風太郎の様な味わい。 斜坑 旧い時代の炭鉱を舞台に、二人の男の、奇妙に緩い対立を巡る趣き深い物語。 最後の、幻想に支配された一連のシーンとその現実照射の結末は。。 骸骨の黒穂 フランク・ザッパの様に偽悪的な差別の拡大再現に勤しんだのか、それとも本気の差別意識発露なのか。。問題作として大の物議を醸した一品。田舎の居酒屋風景が愉しい導入から、意外にうねる展開と、激しく揺さぶる反転、そしてその後に。。。。。。。。。 女坑主 しようが無えなあ、凄いなあ 最後にもう一落とし無いのが却って怖い。 名君忠之 いいねえ、これぞ豪快。 エンディングが最高に沁み渡ります。 息子さんがあとがき書いてます(上記の「問題作」についても切々と)。 ファンは必読ってやつですか。 全体通すと、ミステリファンてよりは旧い小説好きな人向けですかね。 |
No.701 | 8点 | 五瓣の椿- 山本周五郎 | 2017/05/17 21:15 |
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「あたしに力を貸してください。。」
この小説は構成が上手いです。目くらましが仄めかしを僅差で凌駕する「序章」のエネルギーは磨耗を知りません、自ら勢いを落として着地する最終章まで。。 舞台は江戸の天保期。「両親と共に火事で死んだ筈の商家の娘」らしき若い女が繰り広げる「父の仇たち」への連続復讐劇です。 緊迫の序章、重く鮮烈な抒情に摑まれる第一章滑り出しを経て、第一のクライマックスをスピンアウト形成する数ページ、起伏の三段跳びには思い切り呑み込まれました。。この激しさはそのまま、物語の終結を容易に見透かさせない煙幕でもあり。。 中盤より、攻めまくりと追い詰められの折半予見も却っていじらしいほどの水際立ち。悍(おぞ)ましいようでいて凛々たるクライマックスには瞠目、探偵役のシャッキリした格好良さも印象に残ります。 読中、ジャプリゾ「殺意の夏」と東野「白夜行」を少しずつ思い浮かべるようなところもあり、、などと余計な仄めかしを最後にしておきます。 この如何にも渋そうな時代作品に、少しでも皆さまの興味を惹くことを期待し。 |
No.700 | 9点 | 招かれざる客たちのビュッフェ- クリスチアナ・ブランド | 2017/05/12 00:30 |
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事件のあとに
劇団員間の犯罪を、劇中劇応用篇の趣向を微かに混ぜこみ展開。最後は「反転の逆転」で一瞬わからない方角へぶん投げられる。こんな分厚い悲劇のミルフィーユをよくもここまであっさりと! そして後からじんわりどんわり。 8.5点 血兄弟 サイコ双生児のイヤミス小噺が何故、これほど心に響く! 7.6点 婚姻飛翔 しっかしコッキーのスッとぼけテクニシャン風情にはヤラレる。今季ガンバからフロンターレに来てくれたアベちゃんもコッキーの様ないやらしさ満開でいてくれん事を!! 大瀧詠一さんの最期をも思い出させてくれちゃって、少しだけしんみりも出来ましたよ。ありがとう。イヤーな感じの導入、動きの豊かな中盤から最後はきれいなドタバタ劇(?)へ。。 原題を見れば当然、HORNETさんを思い出さずにいられない、人気の一品。 8.8点 カップの中の毒 イヤミス的爽快復讐成功劇から、すれ違い証言のユーモラスな悲喜劇へ。シャーリー・ジャクスンがたまには本格でキメてみたかのような不思議な意欲作。最後の「一言」は、それ自体がオチってんでなく、それまで●●てた、てのがオチというか、キレだけでなく分厚さでも同時に勝負のツイストってヤツなんでしょうなあ。 9.2点 ジェミニー・クリケット事件 謎の密室殺人!! 閂がどうしたとか!! おまけに如何にもMO(ミステリオタク)受けしそうな構成の魅力じゃないか!!? 蹴球ワールドカップ絡みの重要エピソード、それも英国内の話、こりゃ萌える。 込み入った真相とシンプルな真相をこんな形で噛み合わせられたら最高の破壊力。参った。 10点! スケープゴート エモーションとロジックの対自核スピード有り気な鬩ぎ合い最高! フラーティな気まぐれと、一変して活字体のロジカルな言説、この二者間の間のエロティックにして精妙過ぎる推移マジック。。 マーゲリートの存在感が途中から増し増しソフト緊迫状態になるのも最高。 そして、、 少年よ。。。 「動機が欲しいんだろ?」 真相暴露で一瞬にしてイヤミス爆心地へ。。。 8.5点 もう山査子摘みもおしまい のどかな風景に癒されながらも暗黒地帯。証言たちの凭(もた)れ掛かり合いの構図は興味深し。この骨格でシャラい作者に書かれても5.5点行きゃいいとこかも知らんが、ブランドの魔手に包まれたが最後、、 8.2点 スコットランドの姪 時にはフレドリック・ブラウン風のダッパーな小品でも物したかと思えば。。 いえ、梗概だけ掠り取れば確かにそんな作りなんだが。。 8.3点 ジャケット こんな思慮も導線も投げ捨てたような屁みなたいなチャンチャン掌編が、何故、胸を。。。。 理由は分かってまシュけどねマシュケナーダ。 たしかにプチフールの幕開けに相応しかろ。 7.6点 メリーゴーラウンド ルイーザ? これも毒の染みたプチフール。嗚呼、底意よ。。。。 分かってくれますか、この煌びやかな澱の存在。 8.3点 目撃 美味しいパンの耳砂糖菓子のようなライトグレイッシュファンタジー どこか習作っぽい蒼い剃り跡が見えたかも。 7.2点 バルコニーからの眺め 破滅と救いと孤独が微妙なアンバランスで支え合い、微かに虹色の風が吹くエンディング。 ただのオチ見えサイコ話じャアないのヨ、ワかってヨ。。 7.5点 この家に祝福あれ 静かなる絶句。。。。。。。。 8.9点 ネタバラシに近い蛇足を言うと、○○○は決して●●を持っていなった、という、、「ドンデン返し」の寸前で微妙に減速した「ドンデ返し」みたいな趣向がアルからこそ、たまらナイのヨ。劇薬匙加減だね。。 ごくふつうの男 まさかのノン・ミステリ(犯罪絡み)登場。ごく短いが胸に残るものは大きい。 8.3点 囁き 心理の機微に軸足置いた論理演算漆黒絵巻。重ねてこの溢れ出る、構成の美ならざる、万感の、されど一触れのたくらみ。。。いろんな意味でファック野郎どもの跳躍する道幅の消失点は。。結局、俺の心は揺さぶられ潰され一気に再生させられた。。。。。。。 10点を大きく超えたのは嬉しき珍事だがここでリミッターが働き10点留りさ、ハハハ 嗚呼、俺はこの小説かJBのセクスマシンかどちらかと最期は爆死したい、なんて思っちまいそうだ。 こんだけ余韻周波数のリーチが遠大百年計画の短篇、来世の終わりまで響き続けるんでないか???????? 危なすぎて心の発禁本確定だぜ。久しぶりに生(キ)のボンベイサファイアでキメたくなる小説。君は読むな。。 神の御業 逆イヤミス(と呼ぶのは許されるのか!?)! 8.2点。 |
No.699 | 7点 | 妖婦の宿- 高木彬光 | 2017/05/09 01:05 |
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卑怯と思わせない圧倒の詐欺力!! それは名高い表題作!!
他はどれも、旧い昭和を偲ぶに良いノンビリ作品たち。 殺人シーン本番/紫の恐怖/鏡の部屋/妖婦の宿 (角川文庫) それにしても、日本探偵作家クラブの正月恒例「犯人当てゲーム」って、、そのテキスト朗読の風景を想像したらもうたまりません。タイムスリップ出来たら是非、居合わせてみたい場所、吸ってみたい空気と、煙草の煙。。 |
No.698 | 7点 | 人間動物園- 連城三紀彦 | 2017/05/05 21:31 |
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誘拐、とは何か。。。 所々凝った表現など在るが、大きく見れば連城ならではの文学深淵に遠く届かず。それでもこの複雑系イヤミス活劇は、道尾秀介っぽい展開混じりの磐石の面白さで問題無し! とか言っといて実は微妙に、やはり文学要素故のブレーキが掛かる所があんだよな、折角の娯楽活劇に。 とは言えあの衝撃の『構造反転』を浴びせられた後に振り返ればこの中途半端な文芸臭さも実は意味ある叙述装飾のうち、、と見えて来る。 誘拐、とは何か。。 そんな伏線、確かにあったよ堂々と。。と納得させられるまさかのインフレ高騰○○○真相! 表題の意味が明確に叩きつけられるラスト近くの一節がある種の反転含みで清々しい! 微妙にバランス欠いた危うさがチラつくのも魅力のうち。 誘拐、とは何か。。 |
No.697 | 8点 | 上を見るな- 島田一男 | 2017/04/30 18:12 |
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クリスティか、ディヴァインか、島田一男の「上を見るな」か。
親族会議の必要は無くなりました。。。 それでも何や彼やで主人公、南郷弁護士には留まって欲しいと言う”彼”。。 「そんなに沢山仕事かありそうですかね?」 さあ、その殺人に、動機と言う名の帰還点は?! 或る重要登場人物が死ぬタイミング。。シビレさせていただきました。 結末へにじり寄るに連れ、予想外の圧縮が八方から抱きすくめに掛かります。 すげえアリバイトリック(ブラウン神父のアレの思い切った応用篇だ)。。。。でありながら、その!?!? ソ連だかアメリカだか。。 この周到にして鉄壁な犯人隠匿魂は、、まさか数年あとのD.M.なんとかさんに影響与えてないか?? 或る事の動機には「レーン最後の事件」にも通ずる清冽さが。。 脆弱な憶測を爆砕する瞬間冷凍の迫撃ラストと、それを冷静に見下ろすかの様な表題の機微、あるいは意味、または発言権! 本作をアガサかD.M.の翻案だと騙されて読んだら真犯人当てたかも知れない、そんなハッタリふかしといて結局は騙されるに違いない、猛毒含んだ意欲作。本は薄いが中味は分厚い!! |
No.696 | 6点 | エッジウェア卿の死- アガサ・クリスティー | 2017/04/29 01:45 |
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エェイなんだえ、このメタ仄めかしの何やらギラつく技法! しかし終わってみればその真相は一抹の物足りなさを引き摺ったまま。。カッチリした企画に演出の肉付けが薄かったとでも申しましょうか。“やや雑に破かれていた手紙の一枚”に関わるトリックは小味演出ながら忘れ得ぬ。ここにロジック側からもいっそクイーン風にガッツリ重く対応してもらったら更に良かった。 執事の正体。。。 この中途半端げな物語にひと捻り半を加えて理想形に仕立てたのがディヴァインの諸作であったりアガサの名作群だったりするのではないかな? なんて思っちゃいます。しかし決して詰まらなくはない、離したくはない(T-BOLAN)。 最後に置かれた手記は良かった。これで1点上がった。 |
No.695 | 6点 | 休日の断崖- 黒岩重吾 | 2017/04/26 00:11 |
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上等な紙巻き烟草の如く味わい深い造形の探偵役川草。物語の根幹は、社会派より所謂「会社派」の匂いが強い本格ミステリだが、この川草の立体的に苦い存在感には鮮やかな社会派フラグが遠望出来る。
最後、物理的にはともかく心理的に唐突感有りの微妙にバカなアリバイトリック推測&自白暴露になだれ込んじゃって。。ミステリのスケール感が縮んで大きく減点だなあ、惜しくも7点に届かない6.43まで落ちました。なお余裕の合格点ですけどね。 |
No.694 | 10点 | ようこそ地球さん- 星新一 | 2017/04/25 01:47 |
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『ボッコちゃん』と双璧を成しちゃっている感がありますね。後年にも傑作がいっぱいありますが、短篇集の括りで見るとやはりこの二作こそ胸にずっしりです。言ってみりゃ『冒険』と『童心』が一緒になって盆と正月にやって来たみたいなもんでしょうか。(『ボッコちゃん』同様オリジナル短篇集じゃないんだけど、今やこの文庫版が定本でしょう)
デラックスな拳銃/雨/弱点/宇宙通信/桃源郷/証人/患者/たのしみ/天使考/不満/神々の作法/すばらしい天体/セキストラ/宇宙からの客/待機/西部に生きる男/空への門/思索販売業/霧の星で/水音/早春の土/友好使節/螢/ずれ/愛の鍵/小さな十字架/見失った表情/悪をのろおう/傲慢な客/探検隊/最高の作戦/通信販売/テレビ・ショー/開拓者たち/復讐/最後の事業/しぶといやつ/処刑/食事前の授業/信用ある製品/廃墟/殉教 (新潮文庫) 間違っても「日本のフレドリック・ブラウン」なんて喩えられない個性の突出は素晴らしいね。ここまで突き抜ければもう『個性派』なんたァ呼ばれない。ミフネや裕次郎と同じです。 |
No.693 | 10点 | ボッコちゃん- 星新一 | 2017/04/25 01:07 |
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そこにミステリファンがいたら、この本も当たり前の様に一読を薦めるでしょう。
あっさりしながらとてもカラフルな語り口で紡がれる物語は、時に楽しい気分を演出し、時にちゃっかり悪夢を提供し、豊かな残像と後味をその後何十年にも渡って残してくれることでしょう。 悪魔/ボッコちゃん/おーい でてこーい/殺し屋ですのよ/来訪者/変な薬/月の光/方位/ツキ計画/暑さ/約束/猫と鼠/不眠症/生活維持省/悲しむべきこと/年賀の客/ねらわれた星/冬の蝶/デラックスな金庫/鏡/誘拐/親善キッス/マネー・エイジ/雄大な計画/人類愛/ゆきとどいた生活/闇の目/気前のいい家/追い越し/妖精/波状攻撃/ある研究/プレゼント/肩の上の秘書/被害/なぞめいた女/キツツキ計画/診断/意気投合/程度の問題/愛用の時計/特許の品/おみやげ/欲望の城/盗んだ書類/よごれている本/白い記憶/冬きたりなば/なぞの青年/最後の地球人 (新潮文庫) |
No.692 | 4点 | モーツァルトの子守歌- 鮎川哲也 | 2017/04/23 12:12 |
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鮎川さん最後のオリジナル単行本作品。鮎川作品でも三番館シリーズだけはやはり私の好みを上滑り、まして世評も低かろう最終作は。。氏への哀悼を誘う特別な作である事は間違いありません。最後の力を傾けながらこの薄味こそが泣けます。今思えば「モーツァルトの子守歌」で作家人生を〆るなんて素晴らし過ぎ。どうぞ安らかに。 |
No.691 | 7点 | 悪魔の手毬唄- 横溝正史 | 2017/04/20 23:23 |
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現代(いま)となってはコージーに過ぎる序盤と中盤、ところが思いのほか深い穴に何段も落とされる終盤、ケロッと爽やかなエピローグ。まるで「長過ぎる、人物多過ぎるブラウン神父」のような疾風の結末は読み応え大いに有り。現在(いま)となっては「青池リカ」が「青酸カリ」に見えて仕方ない、老眼ヨキカナ。それにしたって何やら因縁有り気な人物群が矢継ぎ早の大盤振る舞い桜吹雪で、こりゃ登場人物一覧表を敢えて付けないのが叙述トリックの一部ではないかと疑いも挟まずにはいられませんですのう。どことなく往年のチョン・ジヒョンを思わせるグラマー・ガールさんの専門がシャンソン歌手ってのは。。不思議な時代性を感じますのう。。 このわた、からすみ、のりの佃煮、きゅうりの酢揉みと来ましたか。。ワシゃったらノレソレ、赤貝ひも、ギバサ、月見ってとこかい。 |
No.690 | 7点 | シャドウ- 道尾秀介 | 2017/04/20 04:13 |
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ふうううー ふうううー 遺書をめぐるくだり、唐突に現れた現代利器版クイーンみたいでとても面白い。 カットバックとオーバーラップの併用など割と普通だろけど、この小説でのそいつの活かし方はなかなか。。。。 いいよ、好きだよ、竹内。。 彼女絡みのまさかのダブルミーニングだかミスディレクション(瞬殺技!)には驚きと深みが籠もって忘れられないね。 ところで「犯人」ってあの人でいいの? 本当にハッピーエンドなの? 片耳イヤホンで聴くステレオ盤ビートルズのように、何気に釈然としないところが残るんだけど、面白いからいいノ。 本格なんでスかねエ? それにスても、スイスイ読め過ぎて困ったス。 表題の意味が、イメージ勝負だけでなくきっちり定義付けされているのも(本作の場合は)好印象。 the shadow knows… |
No.689 | 6点 | 寝台特急六分間の殺意- 西村京太郎 | 2017/04/12 00:52 |
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こういうキラキラした魅力をふりまく京太郎が好きだ。
「列車プラス・ワンの殺人」「死への週末列車」「マスカットの証言」「小さな駅の大きな事件」「寝台特急六分間の殺意」 (講談社文庫) 初期のガッツリしたのも素晴らしいが、量産期もまた良い。才能ってのは凄いね。 |