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ミステリーオタクさん
平均点: 6.97点 書評数: 171件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.91 8点 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 2020/08/29 17:51
5つの「旧家の屋敷や資産家の館」を舞台にした、お嬢様、家族、関わった者、そして何より《使用人》たちの5つの尋常ならざる物語。


『身内に不幸がありまして』
・・・コレは途中で見えちゃうよね。つーか作者自らネタバレしてるようなもんだ。(勿論故意にだろうが)

『北の館の罪人』
『山荘秘聞』
・・・ともに趣深い館モノだが、動機を受け入れられるかどうか。

『玉野五十鈴の誉れ』
・・・個人的にはコレがベストかな。
タイトルは本文中でも少し触れられているようにチェスタトンの作品へのオマージュでもあるだろうが、何といってもグイグイ引っ張られるストーリーフローと、その果ての最後の一行だね。

『儚い羊たちの晩餐』
・・・メインのネタの凄惨さにも関わらず一番薄味に感じた。まあアレは殆ど描写されてないわけだからしょうがないが、それならあのネタを日記の最後の一行で分かるような組み立てにしたら、かなりゾッとできたのではないだろうか。


全編作者らしい高いリーダビリティを纏い、ハイクオリティなテイストを醸し出す5粒のブラックダイヤモンドのような短編集。
連城作品を彷彿させる昭和初期の上流層の耽美的な情景描写、それに当たっての作者の教養ひけらかしまくりにも賛辞を送りたい。

No.90 5点 向日葵の咲かない夏- 道尾秀介 2020/08/09 16:17
読み物としてはそこそこ面白いが、何人かの方が指摘されているとおり明らかな矛盾点があるのは頂けない。


※ 今年は「何もない夏」になりそうだ。

No.89 5点 夏のレプリカ- 森博嗣 2020/08/09 14:11
内容の割りには長い気もするが悪くはない。

No.88 6点 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 2020/08/09 13:59
んなんで○○はゼッテーできねえって。
でも前半延々と続く認識観念論は流石に圧巻。

No.87 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2020/08/02 18:52
最終話だけわかった。
全部笑える。

No.86 6点 孤島パズル- 有栖川有栖 2020/08/02 18:09
ロジックが青春の甘酸っぱさをも容赦なく打ち砕く。

No.85 8点 疑惑- 折原一 2020/08/01 22:14
折原短編集の中では結構いい線いってる方だと思うんだけどな・・・


『偶然』 
いかにも折原短編らしいスパイシーなショートミステリ。

『放火魔』 
うーん、いつもの折原とはチョッとテイストが異なった意外性。
読後感は・・・言えない。

『危険な乗客』 
設定が面白いし、よくできていると思うが、途中ちょっとダラついた感も否めず。
少しフレドリック・ブラウン風かな?(知ったかぶりはやめた方がいいよね)

『交換殺人計画』 
これもグイグイ読ませてくれるし、ネタもまあまあ。
少しヒッチコック風?(だからさ・・・)

『津村泰造の優雅な生活』 
ツカミはイマイチだが途中からグングン面白くなり、「読めた」と思ったり、変転があったりするが、最後は・・・

〈ボーナストラック〉『黙の家』 
何で?と思ったがボートラを冠するだけのことはある内容。
折原らしいと言えばらしいし、らしくないと言ってもらしい。
滅多にないことだが再読したくなった。


本書自体文庫で250ページという薄さだし書評者数も少ないけど、自分的には掘り出し物と言ってもいい短編集だった。

No.84 8点 AX- 伊坂幸太郎 2020/07/22 17:43
殺し屋シリーズの連作短編集。
本サイトを始め、多くの書評サイトで高評価なので手に取ってみた。が・・・


『AX』 ミステリとして何が面白いのか全くわからない。

『BEE』ミステリとして何が面白いのか全くわからない。

『Crayon』 終盤になって・・気持ちのいい話ではないが・・初めて面白いと感じた。主人公にも初めて少しだけ共感できた。

『EXIT』 何という出口。

『FINE』 「彼」は真実を知っても、知ることができなくても苦悩することになりはしないか?・・・など少しモヤモヤも残るが、シビアの向こうにハートウォームを焙り出す作者らしいマトメ。


うーん、久々に伊坂作品を読んだが改めてその「計算精度の高さ」と「厚み」を実感。

伊坂さんからすれば、自分のようなセッカチな読者は、想定している対象読者の範疇外なのだろうが、このサイトでsophiaさんの書評を見ていなかったら恐らく1話か2話で本書を放り出していたことだろう。

No.83 6点 ロートレック荘事件- 筒井康隆 2020/07/19 17:39
後から見取り図に笑った。

No.82 5点 オレたちバブル入行組- 池井戸潤 2020/07/19 01:56
全く共感できない

No.81 8点 満願- 米澤穂信 2020/07/14 18:04
史上初のミステリーランキング三冠に輝いた故野村克也氏のような中短編集。


『夜警』 美談の真相がジワジワと・・・

『死人宿』 変わった趣向の「犯人探し」。途中でチョッとホームズの「三人の学生」を思い出したが、だんだんグダグダ感が鼻についてくる。そして終盤、「何それ...」と思ったが、しかし・・・

『柘榴』 うーん、そう行ったか・・・
何か今邑彩の短編集にでも出てきそうな話だ。いや、湊かなえかな。

『万灯』 本書の中で唯一100ページ超の中編だが、とても面白い読み物になっている。ただ最後は・・・助かる目はあると思うが。(出だしが「私は今、裁かれている」だからネタバレじゃないよ)

『関守』 これも中編に近いヴォリュームの作品でチョッとダラついてる感も否めなかったが、やはり面白かった。
本書の中で唯一「ある程度」ヨメた。

『満願』 イマイチすっきりしないが、これもよくできているし趣深い。


凡作なし。
実力派作家の真価が遺憾なく発揮されている好作品集。

No.80 6点 魍魎の匣- 京極夏彦 2020/07/04 06:49
休肝日の睡眠導入薬として利用させてもらった。
変な夢をたくさん見ることができた。

No.79 7点 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 - 折原一 2020/07/01 21:50
登場人物も場面も少なくて、(シビアな作品でない時の)折原らしい漫画チックな文体でとても読みやすいし、彼の作品に時々出てくるキャラ・・・腰が曲がって小汚くてシワクチャだけど実は頭はしっかりしているババア・・・もよかったが、それでもネタの割りにはチョッと長すぎる感は拭えなかった。

それに20年近く前の作品ではあるが、当時でもこのメイントリックはさほど斬新なものではなかったのではないだろうか。

でも、まあ読んでる間は楽しかった。

No.78 7点 お引っ越し- 真梨幸子 2020/06/17 17:45
作者の得意分野の一つ、「怖い系」の短編集。


[扉] 並みの(よりちょっと捻りの効いた)ホラーサス。

[棚] なかなかトリッキーなホラータッチミステリー。

[机] こういうのはあまり好きじゃない・・・が、さすがマリ先生、テクニシャン、凡作は書かない。

[箱] 凡作。
   陰湿なババアどもがいいねえ。

[壁] 怖いね。

[紐] 最終話らしいと言えば、らしいが、もう一押し欲しかったかな。


全編通してとにかく読みやすい。スナック菓子をポリポリつまんでる感じ(たっぷりマリ味つき!)で読め、気がついたら読了している。
ホラーダメじゃない人には一読オススメ。

No.77 8点 幸福荘の秘密―新・天井裏の散歩者- 折原一 2020/06/13 18:00
『天井裏の散歩者』の続編連作短編集。
「幸福荘」も少し現代的になり、携帯電話も普及する時代になる。


[密室の奇術師] 倉阪の三崎や四神みたいなアホバカトリックでも使ってくるのかと思ったが、一応合理的な・・

[後ろを見るな] フレドリックブラウンの短編とは殆ど関係なかった。

[最後の一人] 合間のリドル・・・

[作者の死] ・・・そして炸裂。

[ファンメール] まあまあ。

[実作者] またしても、やはりそうきたか。

[パラレルワールド] ???だが、またまたそうくる・・・よなあ。

[幸福荘の秘密] ???の答え。依井貴裕トリック。(おっとっと)


何はともあれ楽しかった。
「バカ笑いできる多重叙述ミステリ」を書けるのは一っちゃんぐらいじゃないか?

No.76 7点 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記- 折原一 2020/06/05 21:13
作者の初期の作品は殆ど読んだが、なぜか本短編集は抜けていたので今更ながらヒッサビサに折原作品を手に取る。

読み始めて、改めて折原さんの読みやすさを思い出し「合間合間に気楽に読み流すのに丁度いい」と嬉しくなったが、2話目を読んだところで「なんだ、紋切り型の水戸黄門パターンか」とゲンナリ、しかもこの話では「被害者の電話器」が無視されるという落ち度ぶり。(こういう話にロジカルなクレームをつけるのも野暮だとは思うが)
しかし3話目は少し毛色が変わったので気を取り直すが、4話目はまたまた・・・と思ったら5話目以降は・・・まあ読んでみてのお楽しみ。
最終話の「正体」は分かりやすかったけどね。
作者特有のバカっぽいキャラクターたちも息抜きにピッタシ。


何はともあれ流石折原さん、凡作家が書いて自己マンに陥るようなノリだけの連作短編集なんか書くわけないよな。

No.75 7点 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 2020/05/26 21:54
かなり以前に『戻り川心中』を始めとした代表的な連城作品を連続して5、6冊読んだが総じて「どーも自分には合わんな」というのが率直な感想だった。が、本短編集が未読だったことがずっと引っ掛かっていたのでこの御時節に読んでみることにした。


[二つの顔] よくできていると思うが、やはりストーリーテリングが自分に合わず、イマイチ乗れなかった。

[過去からの声] これもよくできているし、前作と違ってリーダビリティも非常に高かったが、最近読んだある短編の元ネタであるという偶然に驚いた。

[化石の鍵] ちょっと読みづらいけど・・・よかった・・

[奇妙な依頼] これはダラダラ感が否めず。それに作者の癖でもある「クドさ」も少し鼻につく。

[夜よ鼠たちのために] これはムチャクチャだ。そもそも白血病と脳腫瘍を同じ医者が診療するわけない。

[二重生活] この辺までくると、もう騙すために騙す感じで・・

[代役] 現実味が乏しいことこの上ないし、(毎度のことだが)ややこしいが、よくできていると思う。

[ベイ・シティに死す] 首を捻りたくなる凡作。

[ひらかれた闇] 40年前の暴走族ってこんなんだったのか?ショボすぎ。
暗闇のダンスは一体何だったのか?
「マッポは信用できねえ」って何?


デパートの屋上に遊園地があったり、キャバレーでレコードがかかってたり、和子と葡萄酒を飲んだり・・・・


作者の別の短編集『美女』では「スゴい」と感じた作品が2、3作あった記憶があるので、より評価の高い本書には相応の期待値で臨んだが・・・・・あるいは自分が擦れてしまったということだろうか。

No.74 8点 光と影の誘惑- 貫井徳郎 2020/05/04 19:19
作者の『崩れる』に続く第2非長編作品集。

・長く孤独な誘拐
 序盤を読みながら「普通ゼッテー警察に連絡するだろう」とソリャネー感満載になるが、もし当事者になったら常識的な思考などブっ飛んでしまうのかもしれない。
デビュー間もない頃の作品だと思うが読後感も『慟哭』に酷似・・・辛すぎる。

・二十四羽の目撃者
 なかなか魅力的な設定だがトリックは割りと、いやガチガチの正統派。だが実際にやったら成功率は極めて低いと思う。
事件の終わらせ方は(批判派も多そうだが)個人的には好き。

・光と影の誘惑
 最初の一行、いや一句で「これは性別誤認トリックに違いない」と確信したが、もちろん全くの的はずれ。
タイトルからはオシャレなミステリも期待したが貫井さんにそんなものを求めるバカさ加減を痛感させられる。
メイントリック自体は、後半に入ってから作者がバラまくクルー(及び作者がヌックであるということ)によって大体分かったが、なんか矛盾してるところがなくない?(読み返すのはメンドい)

・我が母の教えたまいし歌
 「陰鬱で読み止まらないストーリー」の中に仕掛けられたチェスタトン張りの企み・・・正にヌックの真骨頂。


四編とも貫井色がよく出ているハイレベルな中編集だと思う。
つーか、本音は「ヌックも飽きずによーやるよ」

No.73 7点 あの女- 真梨幸子 2020/04/15 17:23
エログロはさほど強くないが、現実と夢と妄想をモヤモヤグルグル行ったり来たりする展開は真梨ワールドの真骨頂の一つと言えるだろう。しかし主役級の一人のコメント「でも私はパス。ああいうの、・・・・・・・・頭がおかしくなりそう。現実と幻想がごっちゃになっていくあの感じ。薬漬けの人のたわ言を聞いているみたい。わけわかんない」には笑った。

ネットとかで本書の感想を見ると「辻褄が合ってない」とか「無理矢理」とか「尻切れ」とか酷評が多いけれど、そんなんどうでもいいんだよ、読みやすくて入れ込めれば。犯人が誰だろうと知ったこっちゃない。
まあ、全うな本格ファンは手を出さない方が無難でしょうね、マリちゃんには。

ところで主役の二人の女性作家は、もしかしてマリちゃん自身とカナエちゃんがモデルの思いっきり歪曲したデフォルメ?
カナエちゃんと珠美の人物像は全く違うけれど、二人の位置関係が何となくそう連想させるんだよね。

No.72 8点 女が死んでいる- 貫井徳郎 2020/04/01 19:10
かなり前に『崩れる』を読んで「もうヌックの短編を読むのはやめよう」と思っていたが、ふとしたキッカケで本書を読むことになり、「食わず嫌いしなくてよかった」と感じさせてくれた一冊。

『女が死んでいる』 無理があるが設定が香ばしいし、とにかくグイグイ読ませてくれる。
身に摘まされる話でもある・・・「酒」の方だよ。(暴力沙汰は起こさないけどね)

『殺意のかたち』 いかにもヌッキーなツイストが小気味よく効いている。

『二重露出』 これもちょっとムリがあり、また既視感もあるが30ページ強に纏められていて貫井ミステリのエッセンスの一面をサラっと味わえる。

『憎悪』 貫井作品の特徴の一つに「主要人物のそれまでの人生を叙情的に生々しく描き出す」というのがあるが、本編ではそれが少々食傷気味・・・と思っていたら・・

『殺人は難しい』 これはチョットねぇ~、まぁお遊びということで。
タイトルはクリスティ作品の捩りだろうね。

『病んだ水』 トリックだけ切り取って言及すれば「え~~~」って感じだが、一応それを納得させるところまで掘り下げて書かれているのは流石。身代金の安さの理由にも舌を巻いた。(だが当たった刑事が鋭敏だったら、「それでも」違和感を抱くのではないだろうか)

『母性という名の狂気』 今度はその手か。その手はあまり好きではないが、それ以外のヒネリもあるから許せる。
平成9年の作品だが、前半の描写はいやが応でも野田の事件を彷彿させる。

『レッツゴー』 貫井のライトタッチも好きではないし、終盤まで「これはホントにミステリーになるのか」という気分で読まされるが、そこはヌック、しっかり騙してくれる。しかし平成15年頃の女子高生ってこんな感じだったっけ? それに最後のページは今では絶対書けないよね。


先述したとおり、少しムリ目な話が多い(いつものことか)が、全編貫井らしい企みが仕掛けられているハズレのない好短編集。




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γーが3桁に突入してから週3日禁酒すると強く心に決めているが、なぜか週2日あるいは1日になってしまうことが多い。(仕事上週1で「泊まり」があるため0にはならない、ていうか休肝目的で泊まりを始めました。貴...
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