皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ミステリ初心者さん |
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平均点: 6.18点 | 書評数: 404件 |
No.164 | 6点 | 回廊亭の殺人- 東野圭吾 | 2019/05/04 18:35 |
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ネタバレをしています。
クローズドサークル風味(?)で、読み易く楽しめました。主人公が過去事件の被害者で復讐者であり、過去事件の犯人探しと現在の発生した事件を追うといった、割と王道系です。資産家の死と遺言、相続問題、隠し子と昔ながらの展開でした。 トリックも個性があって良かったです。性別を曖昧に書くことや、里中二郎が入れ替わっていた点、偽二郎・殺されていた人物の再登場自体はそれほど珍しくはないですが、主人公の"ジロー"がいわゆる里中二郎・鰺沢弘美でもない、恋人を演じていた鰺沢なところが面白いです(と、私が勝手に思っているだけかもしれないが)。小説上は矛盾していても、主観では矛盾していなくて面白いです(主人公は里中が偽者と気づいていないから、べつに矛盾していないが)。主観と客観でまるで違う事柄でも、感じ方などの差で矛盾でなくなる・・・といった作品が何作かありますね(叙述トリックと相性が良い気がします)。 以下、好みではなかった点 主人公が鰺沢と再会したときに、あまりリアクションがないのは不自然。そのため私は、主人公が里中の焼死した死体を見て偽里中の存在に気づいたのかとも思いましたが、その場合は過去事件の真相がバレバレであり、やはり里中鰺沢入れ替わりは知らなかったようですし(だよな・・・?)。 過去事件、現在事件共に、推理小説としてはいまいち面白みに欠けていた印象でした。動機さがしが主な印象です。ある程度、犯人当てかアリバイトリックの要素があればもっと高得点でした。 |
No.163 | 6点 | 硝子のハンマー- 貴志祐介 | 2019/05/01 00:35 |
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ネタバレをしています。
始まって100pぐらいは、猿・ロボットが出てきて、なにやらバカミスの香りがしましたが、杞憂でした(笑) 前半半分は、事件発生~探偵による検証と仮説→否定を繰り返す構成です。専門用語なども多かったですが、非常に読み易かったです。 後半半分は、倒叙形式のような感じでした。犯人の半生~殺人のシーンまで、かなりのページ数があるにもかかわらず、前半と同じく一気読みできるほど読み易いです。凝った構成でした。 以下、好みではなかった部分。 これまでにない密室のパターンで、はっとさせられました。しかし、それを推理小説として成立させるために、多くの難題があります。介護ロボット、頭部を手術した被害者の存在でそれをクリアしていますが・・・。 はめ込みの窓って、あんなに簡単にいじれるものなのでしょうか? 自分は窓ガラスに対する知識がまったくの無知なので、真相聞いたときはピンときませんでした。推理小説を問題としてみた場合、いまいちかもしれません。 自分は、実は、純子によるとんでも推理"監視カメラの前に廊下の写真を置いた"や"秘書三人が入れ替わり時間を稼いだ"は結構好きです(笑) 無理がありますが。 |
No.162 | 5点 | 幻想即興曲- 西澤保彦 | 2019/04/24 01:53 |
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ネタバレをしています。
凝った構成の作品でした。手記のような作中作がメインですが、その筆記者が推理小説を書こうとして出来た文章だったり、他人の手が加えられているところに個性を感じました。 とはいえ、真相自体はあまり驚愕するようなものでなく、犯人あてともアリバイトリック物でもありません。前に、"Aの手記を元にした推理小説(作者Bは真相を知らない)""途中で記述者がひそかに変わる"という、この作品とやや似ている作品を読みましたが、そちらの方がラストのどんでん返しにうまく使っていました。 後、好みの話で申し訳ありませんが、この作品のキャラクターはいまいち好みではありませんでした(笑) |
No.161 | 6点 | 本格推理③迷宮の殺人者たち- アンソロジー(国内編集者) | 2019/04/20 12:08 |
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ネタバレをしています
○葵荘事件・・・非常にフェアな作品ですが、少し地味かも。 ○落ちて死んだ男・・・文章が読みやすくていいですが、謎はバレバレだしいまいち。 ○狼どもの密室・・・珍しいパターンだし、変わっている凶器が良かったですが、確実に殺せるんでしょうか? ○イブ・ステップの殺人・・・犯人の行動が危ういかも。 ○嵐の後の山荘・・・犯人に殺意が無かったり、偶然が絡んでいますが、これまでに見たことの無いパターンが見られて満足。 ○嵐の山荘・・・これはいまいちはまりませんでした。 ○霧の館・・・本格度は低いですが、さすがのクオリティ。詩的な表現がミスリード?だったり、どんでん返しがあったり、満足しました。 ○密室の矢・・・被害者が犯人に協力するタイプの密室は嫌いです。 ○欠けたサークル・・・ダイイングメッセージが日本語で、外国人教師が勘違いしたのはすぐわかりましたが、あまり印象には残りませんでした。 ○酒亭『銀富士』の殺人・・・カニバっている話でグロいはずなのに、コミカル?で読みやすかったです。ただ、作者の言うように、トリック自体は簡単にばれます。 ○死人に口あり・・・いまいちでした(笑) ○マグリットの幻影・・・盲点があるのは知っていましたが、予想できませんでした。が、私がミステリに求めるものとは違いました(笑) ○時空館の殺人・・・なかなか面白かったですが、ややありきたりな発想で、すぐにわかりました。あと、他作品のネタバレはやめてほしいです。 |
No.160 | 6点 | 異邦の騎士- 島田荘司 | 2019/04/17 19:08 |
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改訂版です。御手洗潔シリーズは、この作品から読まないほうが楽しめます。
以下、ネタバレをしています。 犯人当てやアリバイ崩しを楽しむ類の小説ではありませんが、物語の結末をあれこれと予想し、どんでん返しがあり、読み返すもの楽しい良い作品でした。また、最後にわかる大きな仕掛けがすばらしいです。 この作者の作品で、"斜め屋敷"や"占星術"を持っていますが、斜めは個人的に好きではなく、占星術は文章の相性が悪いのか手記の段階で読むのを諦めました。しかし、この作品は読了まですぐでした。 好みでは無かった部分。 中盤ぐらいで、そこそこ物語の結末が読めてしまったため、驚きがありませんでした。鏡を見られない主人公。すぐに親しくなる怪しい良子。日記。そこまで来ると、免許証を頼りにたどり着いたアパートに住む中年女性の正体も読めてしまいます。本物の益子が兄だったのはわかりませんでしたが・・・。 真の益子側の計画が成功するかは微妙じゃないでしょうか? ひょんなことで主人公の本当の記憶が戻ったら終わりです。日記をみた主人公が、日記に書いてあることを確かめようとすればすぐに嘘だとバレれます。 主人公がベンチで起きるところから始まり、それ以前の記憶が一切無いのですが、たしか事故後は病室にいませんでした? ずっと昏睡状態なら、たか子が記憶障害と確かめるすべが無いのだし・・・。すると、病室での記憶はどうやって消したんでしょうか? (顔がメロンみたくなる描写があるので、薬物か?) この小説を成立するためには、主人公が自分の顔を確かめない→鏡を見ないことが必須で、ここが少々難しい点かもしれません。物語上では、主人公が鏡を見られないとわかってから、偽益子にすると計画修正したようですが。 と、いろいろ難癖をつけていますが、作者あとがきでも"ミステリーではない"的なことが書いてあったため、的外れな意見かもしれません。 |
No.159 | 6点 | 樽- F・W・クロフツ | 2019/04/11 15:34 |
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ネタバレをしています。
鮎川・横溝の例の作品を読んだ後に、この作品を読みました。突発的な犯行だし、一つ一つのトリック自体はそれほど大トリックというわけではないのですが、考えてみるとなかなか難しく全然あたりませんでした(笑) 中盤までやや退屈で、読了まで時間がかかりました。警察が主観の小説は、事件の全貌が徐々に明らかになっていく展開が多く、少しだけ苦手です。もう少し、登場人物に個性があると良かったです。 あと、証言が曖昧なことが多く、そこだけ気になりました。 |
No.158 | 8点 | 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 | 2019/03/31 03:35 |
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ネタバレをしています。
絶対に当たる予言という実際にはありえない超常現象?を組み込んでの作品です。しかし、その予言の性質を丁寧に説明されていたり、共犯者の存在を探偵が明かしていたり、変則的な要素が入っていても本質は端正な本格推理小説でした。私は、時間をかけて読み返して、そこそこ真相を推理する事が出来ました(細かい多数の部分ははずしており、胸を張って当てたとはいえないが)。私は、普段当てられないことが多いため、難易度はやさしいかもしれません。 サキミが、十色勤の日記のサキミとは別人だと予想していました(ねずみ関連で)。しかし、十色への復讐のための自殺とは予想できませんでした。話の流れ的に、女性であり、日記に登場する人物である、ダウジングのハルか誰かかと(笑)。岡町君がサキミとは思ってませんでした(笑)。思えば、十色勤の側近であり、女性の可能性がある岡町君以外にはありえないのですが、十色勤は鬼畜ですね・・・。十色勤の"サキミがこの子(久美)が死ぬ予言をしてしまったら・・・"という懸念ですが、結果的にサキミの孫に対して当たってしまったのが皮肉的で良い伏線でした。岡町=サキミが予想できたのなら、自殺未遂の意味やフェルト人形にも気づけたかもしれず、悔しいです。フェルト人形に関しては、論理的に当てられると解決編でわかり、より悔しいです。 以下難癖。 十色の絵を見た王寺は、葉村の部屋にねずみの屍骸をおき、より絵の状況に近づけ葉村を殺そうとした。絵は必ず当たる。しかし、このとき、ねずみの屍骸をすべての部屋から出してしまったらどうなのか? 矛盾してしまう。 どこからかねずみが現れて死ぬのか? ただ、小説内に十色の能力の前例は上げられていて、読者に説明がなされているため、フェアだと思います。 サキミ毒殺事件について。毒を入れるチャンスや、扉の前の赤いエリカなど、はじめから自殺→別の人間が花を撒いたにおいがぷんぷんしました。しかし、"十色の絵の状態を、現実側が近づけることで間接的に殺せる"考えが頭にはなかったため、最後まで撒かれた花の解釈に困りました(笑)。 ヒルコ自殺未遂により、朱鷺野は安全圏に入ったと思った。それにより、交換殺人を拒否し口論になったと思いますが、そのあとの王寺の行動がやや不可解。結局王寺は、朱鷺野が交換殺人に応じた形にしていますが、それだと朱鷺野のロッカーの鍵の件が嘘だとばれてしまい、交換殺人をやっていたこともバレると思います。また、朱鷺野が即死ではなく、気絶だったというこは、読者からしたら推測が難しいとは思います(私が鈍くさいだけ?)。 個人的には、前作よりもさらに不満点が少ないです。絶賛された前作からの2作目のため、難しい面もあったかもしれませんが、今作も上質な本格推理小説であり、いよいよ作者の力量が本物だと確信しました。 ※追記:う~ん、やはり素晴らしい作品なので、一点上げて8とします(笑) |
No.157 | 6点 | 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 | 2019/03/01 22:16 |
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ネタバレをしています。
クローズドサークルで非常に読みやすいです。登場人物が多いですが、苦になりません。ページがすいすい進みました。さらに、幽霊?や呪いが存在するのが個性的で(あんまりありませんよね?)、いい意味で推理小説離れしたストーリー性に貢献しています。物語中、多くの人が殺されますが、読了感は非常にいいです。 以下、好みでは無かった点。 本格推理小説としてみた場合、"誰が殺したのか"や"どうやって殺したのか"また"なぜ殺したのか"という推理をめぐらす要素が乏しかったです。絵李沙たちを殺した犯人がどうやって出たのか?は面白かったですが、長編としてはやや弱い印象でした。 後期の横溝作品のような趣があると思うのですがどうでしょう(詳しくありませんが) |
No.156 | 7点 | どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 | 2019/02/24 18:39 |
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ネタバレをしています。文庫版です。
これまでに読んだことのないタイプの推理小説で、個性があってよかったです。最後まで読んだとき、「??」でした(笑)。例えるなら、ラストページに読者への挑戦状があり、解決編がない感じでしょうか? 解決編がないものの、犯人断定の手がかりがあり、理不尽な感じもしないので、ありでした。 妹を殺された兄が、犯行現場の証拠を勝手に持ち出して独自に事件を捜査→復讐のために潤一と佳世子を追う。それを加賀が追うといった構図が、なんだがスリリング(?)で、ページがすいすい進みました。東野作品は物語の構成がうまいのか、文がうまいのか、毎回読みやすくて良いですね…。倒叙もののような趣で、なおかつフーダニットの楽しみも損なわれてないですね! 話の流れ的に、潤一と佳世子の利き手を解き明かせば犯人がわかるのは理解しましたが、読み返す作業が煩わしく感じ、袋とじ解説を読んでしまいました(笑)。 以下、難癖。 園子は、文を書くときや食事が右利きのやり方で、その他が左利きのやり方…というのは、兄である主人公の述懐なんでいいですが、その他の人たちもそうとは限らない気はします。左利きの人は右もうまく扱えることが多いから右利きの殺し方でも左利き犯人だ~といった作品も見たことがあり、推理小説にでてくる"利き手問題"は作品によって立場がころころ変わるのが苦手です。 |
No.155 | 7点 | 災厄の紳士- D・M・ディヴァイン | 2019/02/18 18:08 |
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ネタバレをしています。
意外な犯人であり、大きな驚きがありました。それにもかかわらず、とてもフェアに成立していて、とても好感があります。犯人の主観がある小説特有のアンフェアさ?がありませんでした(それも好きですが)。それでいて、ページが進むにつれて、読者が自然とアルマを犯人からはずしてしまうストーリーもよかったです(自分が鈍いだけかもしれませんが) サラによる犯人断定シーンもよかったです。私は、"ネヴィルの車のハンドルのみ指紋が拭かれているのはおかしい。どうやって乗ったのか?"ということしか気づけませんでした。一瞬アルマを疑ったんですがね(笑)。 以下、好みでは無かった部分。 殺人が起こるまでかなりページ数があり、自分にとってはやや退屈な展開でした。何が謎なのかわからず、思うようにページが進みませんでした。最初のほうに、誰が犯人か?あるいはどうやって殺したのか?が提示される小説は、それを考えながら読み進められるので、ページがすいすい進むんですよね(笑) ストーリーや意外な犯人という良い要素はありましたが、この小説ならではの大トリックや個性は少ない気がします。サラが論理的にアルマを疑ったのは良かったのですが、フーダニットとしては他の容疑者が犯人ではない理由が足りなかった印象です。つまり、推理小説としては薄味なイメージです。 |
No.154 | 7点 | 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 | 2019/02/10 12:30 |
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ネタバレをしています。
同作者のある作品が、この作品に近いトリックを使っていることを知っていたため、ある程度はネタが割れている状態で読みました。こちらの作品もなかなか面白く、甲乙つけがたい出来です。どちらも趣向はにていますが、別種のトリックが混ぜ込んであり、個性が立っています。 基本的な物語の流れは、王道クローズドサークル物のそれです。過去の事件の疑問から始まり、何かしらの問題があって館を抜けられない登場人物たち、そこで起きる新しい事件・・・といった感じですが、強盗団がおしいるのは新鮮でした。 この作品は、叙述トリック・・・?なのでしょうか? 主人公が朋美のピルケースに睡眠薬を入れたことを伏せられていて、その点では叙述トリック的なのですが、主人公は結局自分の行為とは直接関係が無かったと思っているのがミソで、罪の意識も殺したとも思っていませんでした。実際、朋美は睡眠薬を飲みませんでしたし。間接的には殺していますが。この点では、岡嶋二人のある作品を思い出しました。 以下、難癖。 タイトルに"殺人"とついているならば、これはアンフェア(笑)。"仮面山荘事件"とかにしたらよかったのに。細かい事を言うようですいませんが。※追記 事件でもねぇな(笑) |
No.153 | 7点 | ユダの窓- カーター・ディクスン | 2019/02/09 01:52 |
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ネタバレをしています。読んだのは新訳版です。
HM卿のキャラクターが好みです。そのため、苦労なく読むことが出来ました。180pくらいのHM卿が、キレかけて(?)「シッ、シッー!」と言っていたシーンが好きです。 作品の始まりから不可思議な状況で、一気に惹きこまれました。物語中盤らへんで、ジミーの災難はエイヴォリーの勘違いから発生したものと明かされますが、密室の謎は解けません。物語終盤で密室の謎が明かされますが、犯人はまだわかりません。何が起こったのか?どうやったのか?誰がやったのか?よくばり3点セットで満足度が高い本格推理小説でした。 私は、密室の謎はさっぱりわかりませんでした。ただ、犯人とその行動はだいたい見当がつきました(というか、犯人はややわかりきった感じか)。 途中、アメリアとスペンサーの共犯を疑っていました。動機は遺産ほしさに。アメリアが実行犯。ジャケットの下にゴルフ服を着ていて、犯行時にジャケットを脱ぎ、エイヴォリー視点では"ユダの窓"からは服しか見えず、エイヴォリーはスペンサーだと勘違いする・・・というとんでも推理をしていました(笑)。それだと、クロスボウで狙いがつけられないし、エイヴォリーがダイアーにアメリアの車を取りに行かせるのは矛盾してしまいますね。 以下、難癖ポイント。 密室ものとしては、あまり好みではありませんでした・・・。 エイヴォリーはなぜ書斎から矢を出すことを容認したんでしょうか? HM卿も言及していましたが、レジナルドに傷害偽装の罠を仕掛けるならば、矢は書斎になくては変です。これについて、私は結構悩んでいたんですが、結局なんやかんやで片付けられたのはガッカリです。 事件当時、霧が濃かったようです。ジミーは少し遅刻し、ダイアーも車を取りに行ったときは少々遅れてました。HM卿のメモでは、アメリアがスペンサーを迎えに行くのが"すごいスピードだ"とかいう記述がありましたが、結局関係なかったんですね。これ、いろいろ考えちゃいました(笑)。 |
No.152 | 4点 | 密室殺人ゲーム・マニアックス- 歌野晶午 | 2019/02/06 20:37 |
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ネタバレをしています。また、前作、前々作のネタバレも少ししています。
非常に読みやすく、すいすい読み進みました。シリーズ恒例の特殊な設定も踏襲されています。 このシリーズは結構好きなのですが、この作品は好みではありませんでした。前作までは、各キャラクターの出題が短編集のように楽しめる上に長編としてもなにか大仕掛けがあるような感じでしたが、今作はそのどちらも楽しめませんでした。 解説をみると、この作品は外伝的作品で、4作目が本編&最終作らしいです。それに期待しています。 |
No.151 | 5点 | 生存者ゼロ- 安生正 | 2019/01/29 01:37 |
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ネタバレをしています。
主要キャラクターの過去の出来事や葛藤がよく書かれていて、厚みがあります。ストーリーもドラマティック。無能政府も、主人公達を引き立たせる役としてよかったです。海外ドラマのような趣がありました。 難癖をつけるようで申し訳ないのですが、シロアリに食われた死体を感染での死と勘違いするような事があるのでしょうか? また、シロアリに食われても即死ではないのだがら、かなり抵抗するはずで、シロアリも相当数死ぬと思うのですが、シロアリの死体は残らないものなのでしょうか? |
No.150 | 6点 | 人それを情死と呼ぶ- 鮎川哲也 | 2019/01/22 22:24 |
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ネタバレをしています。
遼吉を殺す動機を持った容疑者にはアリバイがあり、捜査が難航する…実は…という犯人の狙いはこれまでに見たことがなく、新鮮でした。 また、森山殺しにおける、犯人達のアリバイトリックも楽しめました。 これは違うかもしれませんが、社会派や男女の愛憎の小説のように見せかけた本格は、何か作者からのメッセージなのかも…? 自分は、この本における仕掛けを、まるで見抜けませんでした。 ほんの妄想レベルですが、情死に見せかけた死体が白骨化していたことから、2体の死体の殺された時間が大分違うんではないか?ということ。本筋の情死は偽装であることから、タイトルの"情死"は誰か別の人物同士である→犯人男女ペア→共犯の可能性…この2点ぐらいでした;; 以下、好みでなかった部分。 やはり、共犯は好みではありません。また、森山殺しにおけるアリバイ工作も、ややリスキーだと思います。 |
No.149 | 6点 | 世界の終わり、あるいは始まり- 歌野晶午 | 2019/01/18 20:05 |
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ネタバレをしています。
これまでに読んだことのないタイプの小説でした。いろいろな展開や、意外な結末があり、濃い作品でした。はっきりとはしないラストだったのですが、主人公の想像によって色んな結末が見れたため、これもありかと思います。 同作者の、"密室殺人ゲーム"シリーズとは、ある意味真逆な作品でした(私の勝手な感想)。 以下、苦手だった部分。 主人公が想像をめぐらす前の部分が、やや長いと思いました。 中盤まで、読むのに苦労しました。いろいろなことを想ってしまい、読むのが苦痛でした。 |
No.148 | 6点 | 眼球堂の殺人~The Book~- 周木律 | 2019/01/16 18:27 |
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ネタバレをしています。
非常に奇妙な建造物の中で閉じ込められた男女。連続殺人。非常にわくわくしながら読みました。さらに、ラストには叙述トリックありのどんでん返し、意外な結末があり、満足しました。 ちなみに、自分は、眼球堂に水を入れて移動すること、盲点の柱的なものだけなんとな~く察しました。他のことは予想できませんでした…;; 善知鳥神は造道静香かと思ってたり(笑) 驫木は警戒されるので被害者をコントロールできない→協力者→回収していない善知鳥神の存在…まで予想しましたが、深浦は造道を疑っていたんでしたね…もうすこし考えるべきでした(叙述トリックの難易度が高いため、藍子=神までたどり着くのは、自分ではやはり無理か(笑)) "神"という名の人物を出すことで、神の視点や、普通のゴッドの意味と混同させている点もうまいと思いました。 以下、好みではなかった部分 驫木のはやにえまで、退屈でした。私が、頭パープリンのため、インテリっぽい難しい会話が理解できず、150pぐらいまで苦痛でした;; 各分野の天才達が集まった設定が、あまり活きてないような。好みの問題かもしれませんが。天才達が己の分野の知識を用いて、驫木のはやにえ問題をそれぞれの視点で推理していく…という展開を期待していました。(まあ、あまり難しい話になると、それはそれで私の頭が追いつきませんが) 叙述トリックとしては目新しいものではないとはいえ、もうすこし作中作を匂わせ(ヒントなど)ないと、難易度が高いように思えました。 奇妙な建物でのクローズドサークルはやはりワクワクするもので、作風も本格色が強い。シリーズ化されているとのことなので、次も楽しみです! |
No.147 | 6点 | そして名探偵は生まれた- 歌野晶午 | 2019/01/13 14:45 |
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ネタバレをしています。
"館という名の楽園で"は過去に書評した事があり、端折ります。 ・そして名探偵が生まれた。 密室物ですが、それ自体は面白くありませんでした(笑)。話として面白く、アンチミステリ?的なお約束を裏切った展開は、ある意味、麻耶作品みたいでした(あまり知りませんが)。 影浦のキャラが面白く、殺されてしまったのが残念でした。師匠を継いだ助手が名探偵となる熱い展開だったのですが、やったのが助手なのはさらに残念;; ・生存者、一名 孤島サバイバルのサスペンス要素のおかげで、一気に読み終えました。話としても面白かったです。 しかし、"生存者が一人で、男性"であることが、途中で明かされる→しかし、島にはどこにもいない→胎児だった・・・という発想の作品は、他の作者の作品でも使われており、ある点でそのトリックに気づいてしまいました。その使い方は、他作品のほうが良いと思います。 爆破テロをして罪悪感を感じないようなクズ共が悲惨な目にあうのは、後味が悪くならなくてよいのですが、永友の胎児が死んでしまうことだけ心が痛みますね。 ・夏の雪、冬のサンバ キノシタがショーグンでないことは、なんとなく察しました(笑) 日本史のことはあまりよく知らない私なのですが、木下といえば藤吉郎ですよね。たしか、将軍になれなかったような気がします。 百万が"円"でないのも、なんとなく察しました。 後のことはわかりませんでした! まさか、卵が伏線だったのですね。 |
No.146 | 7点 | 皇帝のかぎ煙草入れ- ジョン・ディクスン・カー | 2019/01/13 13:09 |
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ネタバレをしています。
ベンが犯人かと思っていました。今回も見事に外れました(笑) 意外な犯人が楽しめる作品でした。 書斎のドアと絨毯の様子から、トビイが嘘をついているという博士の推理は見事でした。 145pの、トビイに対しての博士の言葉は、論理と感情が合わさっていて、カッコイイですね。 以下、いちゃもん点。 意外な犯人を演出したいがために、犯人に有利な嘘や証言者、偶然の類が多すぎでした・・・。ネッドの"かぎ煙草が見えた"との発言は、鈍い私も流石におかしいと思いましたが、茶色い手袋の人物が犯人と思ってネッドを犯人候補からはずしてしまいました。 オルゴールの件がちょっとよくわかりませんでした。ベンジャミンの証言から、かなり長時間鳴ったはずでは? 警察が誤って鳴らしてしまった際の、駆けつけたトビイの様子から、トビイがどの辺にいたかの記載が無かったので、音の大きさがよくわかりませんでした。 イヴが起きている状態で犯行を行うのはリスキー→トビイは犯人ではないと推理したのですが(実際みられてるし)、結局窃盗はしたのね・・・。殺人よりはバレ辛いかもしれませんが。 ジャンル分けするとしたら、何でしょうかね? ワットダニット・・・? |
No.145 | 6点 | 扉は閉ざされたまま- 石持浅海 | 2018/12/30 22:32 |
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ネタバレをしています。
非常に論理的?ロジカル? 当てはまる言葉がわかりませんが、すごかったです。 探偵は天才ですね! どんなに些細な情報でも記憶し、その中から推理に役立つ情報を洞察し、犯人にたどり着く。人間に思えませんでしたw ホームズばりですね(よく知りませんが)。 倒叙形式の推理小説は、犯人が犯したミスを発見できるかが、読者が考える問題だと思います。しかし、私は全く分かりませんでした;; 被害者がド近眼ということを心にとどめておいたんですが…。唯一、動機だけ、なんとな~く察しました。 難癖をつけるようで申し訳ないのですが、200pぐらいまでドアストッパーがどうのこうののシーンが多くて、やや盛り上がりが遅かった気がします。犯人の犯行は最初のページからあり、考える要素やヒントは出ているのですが、物語的盛り上がりシーンも遅い気がしました。 探偵による犯人特定シーンは、非常に論理的で面白いのですが、帰納的な気がします。だからこそ、あの結末なんでしょうが。特に、安東を犯人から外すシーンは、動機が元になっているような? 碓氷優佳のキャラクターは、推理小説によく出そうな見た目と性格(?)で、嫌いでしたw 私は、最後、犯人が自殺すると予想したんですが、死ななかったですね。その意味での、探偵の「私を抱かなかったことを後悔する」発言だったと感じたんですが。犯人は、どうしても優佳とは付き合えないハズでは? |