皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 541件 |
No.21 | 5点 | 化石少女と七つの冒険- 麻耶雄嵩 | 2024/05/05 17:11 |
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いくつかの先行作と同様に、既存のミステリの枠組みに挑戦する野心的な作品。
その心意気は大いに買うのだが、それが作品の面白さにストレートにつながっていない。 本作の立ち位置を批判するつもりはなく、むしろ好感がもてるのだが、どの短編にしても、プロットの作りこみが緩いので、著者の匙加減一つで、いかようにでも着地できるという印象が強く、この評価 |
No.20 | 4点 | メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 | 2023/04/11 16:07 |
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著者の作品を散々読んできた者として、執筆意図は理解できるし、それに意味がないとも思わないが、作品として面白いかどうかは別の話。
同工異曲と比べれば、相当に、非常に強く、見劣りすると言わざるを得ない |
No.19 | 4点 | あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 | 2020/10/20 19:20 |
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そもそも本作を執筆した趣旨・意図が不明。
ミステリとしての本質・骨格を考えれば、高い評価を献上することはできない |
No.18 | 4点 | 友達以上探偵未満- 麻耶雄嵩 | 2019/07/28 14:23 |
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各短編にはややスムーズさを欠き、無理が感じられる部分もあるものの、本格ミステリとしてそんなにデキが悪い訳ではない。
ただ、それらを1個の作品として見た時に、「オーソドックスではあるが平凡」と映るのである。 悪いところはないのだが、尖った、エッジの効いたところもまたない。 著者への期待感が高すぎるが故に、この評価 |
No.17 | 4点 | 痾- 麻耶雄嵩 | 2019/04/02 08:45 |
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全体として著者の意図を掴みかねる作品。
本格ミステリとしては、アクロバティックな真相を成立させるだけの説得力に欠けており、この評価 |
No.16 | 5点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2016/07/11 20:31 |
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当代を代表する一流の作家を揃えながら、あまりにも冴えない作品ばかりの本シリーズ。
本作に関しては、著者特有のキレ味は感じさせるものの、未回収の事件や犯行の論理性等に瑕疵を感じ、水準には達していない印象 |
No.15 | 5点 | 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 | 2016/04/04 20:16 |
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作者としては珍しいオーソドックスなフーダニット。
当然一定の水準には達しているものの、他作と比べればパンチ力に欠け、凡庸な印象は拭えない。 ホームズ・ワトソンの関係に新たな地平を切り開く試みが味付けをしているものの、作品としての面白さにダイレクトにつながっているとは感じられなかった |
No.14 | 5点 | 化石少女- 麻耶雄嵩 | 2016/01/19 18:09 |
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推理の無謬性を保証するのは、推理そのものの合理性・論理性ではなく、探偵存在の絶対性であるとの認識に立ち、その探偵を「神様」→「赤点女子高生」→「あぶない叔父さん」と遷移させてきた昨今の試みの一環。
ミステリの本質的構造・脆弱性に斬り込む企みとしては面白い。 探偵が生徒会メンバーを犯人とする恣意的な前提に立ち、与えられた手掛かりからその前提を満たす解決を構築する手順は、受容性こそ全く相違しているものの、基本的には「さよなら神様」と同工異曲。 したがって、同作と同様に、蓋然性を無視した推理が乱発されるものの、推理の反証は存在しない。 この点は連作短編集としての仕掛けには不可欠であるものの、それ故に真相が予測しやすく、衝撃を大幅に減じている点は否めない。 著者ならではの先鋭的な問題認識が読物としての面白さにダイレクトにつながっておらず、昨今の軽量コンパクト路線は脱していない |
No.13 | 6点 | あぶない叔父さん- 麻耶雄嵩 | 2015/10/14 11:15 |
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メルカトルとシリーズは違えど、本格ミステリにおける探偵の存在意義を追求する、昨今の作品と軌を一にする連作短編集。
真相の趣向自体は類似の前例が複数存在するが、フォーカスしているポイントが違う。 推理の無謬性を保証するのは、推理そのものの合理性・論理性ではなく、探偵の存在の絶対性であり、その探偵を「神様」から「あぶない叔父さん」にまで昇華(?)させたとき、推理の無謬性は結局推理を受け入れる側に収斂するということなのか。 こうしたミステリの本質に対する深い問題認識といい、それを金田一耕助のパロディや、バカトリック塗れのバカミスにしてしまうあたりといい、余人の追随を許さない奇想であることは間違いない。 ただ一方で、本格ミステリとしての底の浅さ、狙いがストレートで重量感に乏しい点も事実。 毀誉褒貶の激しい作品 |
No.12 | 7点 | さよなら神様- 麻耶雄嵩 | 2015/09/02 13:36 |
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無謬の神様が冒頭に真犯人を明らかにするため、探偵たちは「当該人物がどのように犯行をなし得たか」を究明する、一風変わったハウダニットが並ぶ連作短編集。
各短編を思い切って荒唐無稽な真相とすることにより、神様が真実を保証していることを前提としなければ到底真相に到達できず、警察が特定した犯人が誤っているとしても、神様の存在を前提とできない故に、真犯人を告発できない。 神様の設定を存分に活かしきった挑戦的かつブラックな作品集であり、とりわけ「バレンタイン昔語り」の衝撃的な真相は本作の白眉。 例によってこの作者にしか書き得ない強烈な作品 |
No.11 | 9点 | 夏と冬の奏鳴曲- 麻耶雄嵩 | 2015/07/28 18:05 |
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(以下、ネタバレを含みます)
一般にミステリは、提示された謎が解決されることが暗黙の前提となっているところ、本作は「その長大な本編がまるごとダミーの謎と解決に充てられており、真の謎の解決は随所に伏線として散りばめられているだけで明示されない」という点において、他に類を見ない徹底的なアンチ・ミステリである。 主題は孤島の連続殺人であるが、これ自体が著者が仕掛けた罠(ダミーの謎)でしかない。 「犯行とその解明が遅々として進行しない」「犯行の全体像は異様な舞台設定とは裏腹に底が浅い」「荒唐無稽を極める雪上密室トリック」「地震の頻発や真夏の降雪といった異常現象に全く説明が付けられない」など、不可解な点が散見されるが、これもひとえにダミーの謎であることを示唆する一種のヒントではないかと思われる。 真の謎は最終盤に浮かび上がってくるが、本編が終了したあとに突如登場するメルカトル鮎の一言がすべてを解決する。 ただし、その解決はあくまでも主人公に対するもので、読者に対しては明示されないまま、一見するとさらに謎が拡散したような印象さえ残しつつ閉幕する。 しかし、随所に配された伏線を手掛かりに解釈すれば、人によってはある程度合理的な“真相”に到達することが可能となっている(はず)。 この異様とも言える奇想の徹底、巧緻極まるテクニック、絶妙なバランス感覚には、ただただ脱帽せざるを得ない。 毀誉褒貶が激しく、解説で巽昌章氏に「本格推理小説への許しがたい裏切りとみなされることのある問題作」と評されるのも当然であろう。 しかし、アンチ・ミステリとして1つの頂点を極めた金字塔的作品であることもまた間違いない |
No.10 | 5点 | 貴族探偵対女探偵- 麻耶雄嵩 | 2015/06/25 16:22 |
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本作は着想の時点で失敗だろう。
探偵同士の推理合戦が見所であるため、パズラーであるにもかかわらず、ダミー(女探偵)の推理には穴を空けておかざるを得ない。 そのうえ、女探偵に「必ず貴族探偵を犯人に指名する」という厳しいハードルを課しているため、その推理に不自然や無理が強く発生。 結果、各作品とも著者の実力を大きく下回る水準となっている。 その中で、「幣もとりあへず」は著者らしさを発揮した問題作で、インパクトは大きいのだが、ロジカルに真相に辿り着けない致命的な弱点が存在するように思われる。 短編集の締めくくりも美しい着地ではあるものの、予定調和的でインパクトには乏しい。 以上、作品のクオリティは4点相当だが、著者の個性とチャレンジ・スピリットを評価して1点加点 |
No.9 | 4点 | 木製の王子- 麻耶雄嵩 | 2015/04/06 18:32 |
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アリバイトリック自体は脱力モノで、なぜこのアリバイトリックを仕掛けることができたのかというホワイダニットが本作の核であり、読みどころ。
そのためにプロットが練りに練られているのだが、本作のプロットだとどのような不可解な謎でも説明がついてしまうため、カタルシスを感じるには至らなかった。 ディテールには作者らしい稚気あふれる仕掛けが随所に見られるものの、全体としては満足とは言えないデキ。 |
No.8 | 8点 | 螢- 麻耶雄嵩 | 2014/12/29 10:52 |
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ネタバレを避けるためには多くは語れないのだが。
1つ目のトリックを敢えて見え見えにさせることで、2つ目のトリックの存在を巧妙に隠蔽。 それでいて、随所でかなりの綱渡りを演じ切っており、誤認強化と伏線配置のバランスが実に巧妙。 2つ目のトリックは、ありふれた手口を単なるサプライズではなく、事件の真相を解明するために不可欠な手がかりとして使用している点、1つ目のトリックとの補完構造になっている点が画期的。 事件の謎自体に意外性が乏しい点が難点だが、焦点はそこではない。 一見すると中盤までは凡作に見えるが、それさえも作者の意図するところ。 敢えて凡庸なローキックを連発し、狙い澄ましたハイキックで一発KO。 作者らしからぬ地味な印象を与えるが、計算され尽くしたゲーム運びはさすがの一言で、再読して良さがわかる作品 |
No.7 | 7点 | メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 | 2014/09/19 19:55 |
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例によってミステリや名探偵のコードをことごとく打ち破る銘探偵のあり様が見事で、一筋縄ではいかない作品群。
白眉は「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」。 ●●オチという決して褒められない「信頼できない語り手」ネタを斬新な形で使用しつつ、説得力を持たせ、アクロバティックな解決に導く剛腕に脱帽。 |
No.6 | 9点 | 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 | 2014/08/01 17:23 |
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どんなに緻密に構成されたミステリでも、ロジックの不備は存在するし、提示された真相以上に蓋然性の高い真相は存在し得る。
それでも提示された真相を「真実」として扱うことができるのは、探偵が「真実」と断定するからである。 探偵は作品世界の中で「神様」として君臨する。 この探偵の無謬性の問題を徹底的に追求した作品が「メルカトルかく語りき」であり、それをベースにした変化球が本作であると理解している。 本作ではもはや「無謬の銘探偵」どころか、文字どおり「神様」が登場する。 本作では2つの仮説が提示されるが、いずれも合理的に成立する余地があり、いずれに立つかによって犯人が変わる。 ひとえに読者が「神様」を信じるか否かで「真実」が決定する。 ミステリにおける「真実」の相対性を抉り出すことで、現実社会においても所詮「真実」は相対的な概念でしかないことを突き付けてみせたのだと思う。 本作はこども向けとして相応しくないと評価する向きが多いようである。 その心情は一定程度理解できるものの、果たしてそうなのだろうか(こどもが本作を理解できるかどうかは別として)。 「真実」の危うさ・いかがわしさ、人生や社会の残酷さや不条理が、まぎれもない真実である以上、こどもに一本道の美談や、紋切り型の勧善懲悪ばかり読ませることが望ましいことなのだろうか。 こども向けという舞台設定を逆用し、敢えて放たれた悪辣な企み。 私はじめナメてかかった大人たちをも完膚なきまでに叩きのめす野心的試みを最大限評価 |
No.5 | 9点 | メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 | 2014/07/07 16:36 |
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あとがきによると「答えのない絵本」のプロットを最初に思い付いたらしい。
これ自体が奇想なのだが、この作品を発表するにあたり、中途半端に中長編に増量せず、かといって短編集に混ぜる遊びの変化球ともせず、手を変え品を変え魔球を投げ続ける短編集にしてしまう。 このあたりが余人の追随を許さない、著者ならではのド奇想と言える。 「答えのない絵本」の徹底した論理性もさることながら、本作の白眉は「収束」。 アイデアとしては思い付くのかもしれないが、ミステリとして昇華し切った巧みなプロットと、高い構成力には脱帽。 ミステリに対する相当な問題意識と深い洞察がなければこのような作品は出てこない。 本作はアンチミステリのある分野における極北というべき作品であり、同様の趣向のミステリで本作を超える余地はまずないのではないか。 評価がわかれる作品であるのは間違いないが、その存在価値に鑑みて9点を献上 |
No.4 | 8点 | 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 | 2014/04/28 14:34 |
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この著者、ミステリのあり方や限界に対して非常に自覚的で、その問題意識を作品の主題とすることが多い。
ただ決して声高に主義主張するのではなく、作品を提示し読者の評価に委ねてくる。 本作ではいわゆる「後期クイーン問題」がテーマ。 散りばめられた「偽の手がかり」と「本物の手がかり」を峻別するため、再三にわたってロジカルなアプローチが試みられる。 それでいて、犯人による誤導の後に示される、この問題に対する回答としての真相は、問題自体を無効にするような、皮肉極まりないもので実に秀逸。 確かに物語のクライマックスでは、荒唐無稽なトリックや無理筋と言わざるを得ない真相が明らかになるが、敢えて無難な落とし処を選ばなかった点を、作者ならではの稚気と解したい。 以上、他の作品とは異なる評価軸から採点してこの結果 |
No.3 | 8点 | 貴族探偵- 麻耶雄嵩 | 2014/03/22 10:13 |
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舞台設定や、トリックの奇抜さではなくロジックで勝負している点など、骨格は「謎解きはディナーのあとで」に非常に似ている印象。
ただ事件の真相や登場人物の性格付けには、この作者らしい稚気やエキセントリックさが発揮されている。 収録作品では「こうもり」が断然。 読者をあざ笑うようなアクロバティックな逆●●トリックは前代未聞で驚くべき奇想。 反則スレスレだが唯一無二のキレ味 |
No.2 | 5点 | 鴉- 麻耶雄嵩 | 2012/03/12 21:09 |
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大きな2つのメイントリックが見所。
1つめのトリックはある有名なトリックを極めて大胆に使用している点で作者ならではの奇想。 ただここまで突拍子もない設定とするからには、合理的に説明し得る、少なくとも蓋然性を予感させる程度の背景は必要で、それが皆無である点でファンタジーの域を脱しない。 もう1つのトリックも無理を感じるレベルで正直あまり感心できるデキとは言い難い。 本来ならもっと低い評価が妥当だが、最初に示される真相の完成度が高くこの評価とした。 ネタバレしないように書評するのが難しいが、一言で言って好き嫌いが分かれるとしか言い様がない。 |