皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 541件 |
No.31 | 4点 | プラチナデータ- 東野圭吾 | 2024/10/28 14:17 |
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まずもって、DNA捜査システムをはじめ、作中に登場するさまざまなガジェットの解説がきわめて粗雑であり、構想・考証があまりにも不十分であると感じる。
そのうえ、叙述・描写が全般に雑で粗いから、リーダビリティが高い反面、作品全体として非常に安っぽい、稚拙な印象が否めない。 明かされた真相は、確かにさまざまな謎を一刀両断にするものだが、意外性には乏しく、犯人は、特殊解析研究所のセキュリティを考えれば、半ば自明というべきもの。 代表作に見られる著者の構想力・筆力は見る影もなく、もはや何を書いてもベストセラーになる状況のなか、作品が粗製乱造されつつあり、本作もその1つのように感じられ、非常に残念。 それなりにボリュームはあっても、カンタンに読めてしまう、2時間サスペンスドラマのような読後感は、西村京太郎の晩年の作品に酷似している |
No.30 | 5点 | 人魚の眠る家- 東野圭吾 | 2021/09/16 10:40 |
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本作の主題は今日的であり、その課題認識の鋭さ・妥当性は認める。
ただ、他の作品にも強く見られる傾向であるが、読者に平易に伝えようと意識しすぎて、ストーリー、登場人物の造形・言動等を極端に紋切型に、ステレオタイプに描いている。 それが違和感となって読者の共感を削ぎ、作品の格調を毀損している点は減点せざるを得ない |
No.29 | 6点 | 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 | 2021/03/26 13:25 |
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毀誉褒貶がわかれるであろうが、野心的な取り組みが一定の効果を発揮しており、好意的に評価したい |
No.28 | 6点 | 私が彼を殺した- 東野圭吾 | 2019/01/04 15:09 |
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本格ミステリとしては毀誉褒貶もあろうが、3人の容疑者に等しく犯行動機と機会を与え、一般の読者が到達できるレベルの真相を用意し、という本作の制約を考えれば、出色のデキと評価してよいのではないか。
終盤に向けて徐々に各章の尺を縮めていくことで、サスペンスを盛り上げていく手際も見事。 ただ、このテの趣向の宿命として、作品の焦点を「犯人当て」のみに絞り込んだ結果、人物が描けていない、登場人物に魅力が感じられない点が大きな難点。 趣向そのものに歴然とした限界があり、著者の相当な苦労にもかかわらず、それが十全に報われたとは言えない作品 |
No.27 | 4点 | ナミヤ雑貨店の奇蹟- 東野圭吾 | 2018/09/19 15:08 |
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相談者が過去を生きる、しかも総じて将来有名人になる人物であるから、未来に生きる回答者は、相談者の将来や未来の社会を知ったうえで、妥当なアドバイスができる、という至ってイージーな設定。
このご都合主義の極致のような設定こそ「奇跡」だろうという想いは拭えないが、この点は著者もミステリのスコープで捉えず、ファンタジーに棚上げしているので追求しない。 問題は、上記設定が各エピソードを予定調和させる圧力として強く作用している点。 各登場人物を造形するにあたって、掘り下げが圧倒的に足りず、魅力に欠けている点。 各相談者の相談内容と回答が非常に陳腐である点。 本作に込められた著者のメッセージがいま一つ読み取れないのだが、それがもし仮に「結局人生は本人が決めるもの」というものだとしたら、あまりにも安っぽい印象が拭えない点などにある。 これだけの頻度で作品を発表しながらもなお、本作が娯楽小説として一定水準以上のクオリティを維持しているのは事実。 この著者の傑出した力量を評価するがゆえに、SFの世界における古典的な題材を適当に料理したジャンクフード的な本作に対し、批判的なスタンスにならざるを得ない |
No.26 | 7点 | 天空の蜂- 東野圭吾 | 2018/06/27 11:22 |
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みなさんが指摘しているとおり、著者の抜きんでた先見性を立証する作品。
執筆当初から映画化を意識したかのようなキャッチーなプロットもお見事。 人物描写、とりわけ犯人の背景にある人間関係と犯行動機の作り込みには甘さも感じるが、良質なサスペンスであり、ギリギリ7点の評価 |
No.25 | 7点 | 夢幻花- 東野圭吾 | 2017/07/26 16:19 |
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例によってミステリとしては水準程度の作品であり、読者がロジカルに到達できない真相から、本格としては水準にも達していない。
しかし、一見無関係と思われる細かな伏線を余すところなく回収し、「負の遺産」というテーマに収斂させていくプロットの完成度、明快な叙述によるストーリーテリングの高さは抜群。 主要登場人物がことごとく過去に挫折した経験を持ちながら、懸命に生きていく姿は、逆境に立ち向かう読者へのエールとなっており、読後の印象も極めて爽やか。 著者の実力が遺憾なく発揮された佳作であり、作品のデキには文句はないのだが、著者には「良質な量産品」の域を超える「畢生の本格ミステリ」を書いてもらいたいところ |
No.24 | 5点 | 依頼人の娘- 東野圭吾 | 2017/03/29 17:22 |
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意外に本格度が高い作品が揃っている印象。
ただ、2時間ドラマ的なセオリーの域を出ないプロットとトリック、ご都合主義でやや雑な運びが散見される点も否めない |
No.23 | 3点 | 名探偵の呪縛- 東野圭吾 | 2017/02/01 16:06 |
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世上、前作「名探偵の掟」は高く評価されており、その続編たる本作はそれよりかなり低い評価となっている。
この点については同感であり、私自身は前作もそれほど高くは評価していないので、本作の評価は推して知るべしということになる。 作者の本格ミステリへの郷愁や、執筆にかかる心労が綴られた私小説であるが、素直な反面、圭角が全くなく、意外性も爽快感も感じられない。 また、本格ミステリの概念がないという舞台設定であるが、本格部分にそれが全く活かされていない。 全体として工夫が足りない印象が強い |
No.22 | 6点 | どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 | 2016/10/12 15:58 |
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「最終盤まで犯人候補を2人残しつつ、真犯人を特定しない」というアイデアの勝利。
本作を執筆するうえでは、このアイデアが厳しい制約条件となる訳だが、本格ミステリとしても、エンタテインメントとしても、一定の水準を保持した筆力を評価。 容疑者が限定的であり、真犯人を特定する手がかりがわかりやすい等、プロットが平易で一本調子であることは確かだが、広く読者が推理に参加するためにはやむを得ない配慮だと思う |
No.21 | 4点 | 手紙- 東野圭吾 | 2016/05/10 10:19 |
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加害者の家族に光を当てるテーマの設定は実によいと思う。
一方、人物造形や描かれている現実、とりわけ加害者兄弟の能天気な姿勢や生きざまが、エンターテインメントであることを前提にしても、あまりにもマンガ的で陳腐。 彼らの境遇がもたらす、残酷な現実やそれに立ち向かう絶望的な悲壮感が全く伝わってこない。 作者の主張に対しては、その当否の評論は避けたいが、差別を無原則に肯定し、しかもそれに対する救いを全く用意していないのであれば、作者の主張とは結局何なのかという思いは残る。 以上、重すぎるテーマを消化し切らないまま、振り回されている作品という印象 |
No.20 | 5点 | パラレルワールド・ラブストーリー- 東野圭吾 | 2016/02/19 20:44 |
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好き嫌いの範疇に属する話で恐縮だが、作者の描く女性は総じて従順で没個性な古典的女性像が多いように感じられるところ、本作のヒロインはとりわけ人間的魅力に欠けており、主人公2人がこの女性を巡って熾烈な争いを演じる点には、強い違和感を感じる。
また、彼女の不可解なまでの優柔不断と交際相手の交替が事態を混迷に陥れており、言動に一貫性と合理性が感じられない。 タイトルのネーミングはもはや脱力レベル。 冒頭の山手線と京浜東北線が並走するシーンは、プロットとの親和性と相まって、強く印象に残ったが、正直それだけの作品。 相変わらず洗練されたストーリーテリングを評価してかろうじて5点としたが、同じヴァーチャル・リアリティを扱った「クラインの壷」には遠く及ばない印象 |
No.19 | 6点 | 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 | 2015/12/22 18:02 |
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既読感の強いプロット・トリックで目新しさに乏しく、本格ミステリとしても食い足りなさを覚える。
一方、偶然をご都合主義と感じさせない伏線・心理描写の妙、読者の共感を呼ぶ筆力の高さ(下世話な表現をすれば「お涙頂戴」)は例によって際立っている。 タイトルのネーミングの拙劣さは相変わらずで、ストーリーテリングがやや劣化している印象を受けたのは気になった。 昨今の軽量コンパクト路線の象徴的な作品とも言え、畢生の本格大作が待望されるところ |
No.18 | 5点 | 歪笑小説- 東野圭吾 | 2015/12/10 19:19 |
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最も手堅く笑いが取れる文筆界の楽屋ネタに絞り込んだことで、大きなハズレはなく、水準を超える2~3編も存在。
その結果、「黒笑小説」はもちろん、「怪笑小説」もわずかに超えたものの、強烈な毒のある作品は見当たらず、やや単調さも感じてこの評価 |
No.17 | 4点 | 黒笑小説- 東野圭吾 | 2015/11/11 18:39 |
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文壇の裏話やミステリ作家の悲哀を描いた冒頭の4編はまずまず。
残る9編はオチのユーモアも毒も目新しさとインパクトに乏しい |
No.16 | 5点 | むかし僕が死んだ家- 東野圭吾 | 2015/10/26 16:21 |
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制約条件の多い舞台設定(移動なし、登場人物2名のみ、失われた記憶の復元にのみ焦点)である点を割り引いても、想定の範囲内でしか勝負できていない。
巷間よく指摘されるタイトルの是非については、もともとタイトルだけは上手くない作者であるところ、本作は勇み足気味でアンフェアとの指摘も甘受せざるを得ない印象。 作品としては破綻を見せずキレイに着地してはいるものの、明かされた真相の衝撃度からしても軽量コンパクトと言わざるを得ない |
No.15 | 6点 | 犯人のいない殺人の夜- 東野圭吾 | 2015/10/02 18:45 |
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驚くべき真相を演出した表題作を筆頭に、悪意と皮肉に満ちた良質な短編が揃っており、さすがの出来栄えと完成度を誇る。
一方で他の作品と同様に、本格ミステリとしての踏み込みは浅めで、軽量コンパクトな印象が否めない |
No.14 | 7点 | 新参者- 東野圭吾 | 2015/07/21 17:51 |
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ミステリとしての核は小さいものの、舞台設定も含めた構想力の高さと、ストーリーテリングの妙が際立っている。
後半の短編はやや見劣りするが、作品全体として高水準を維持しているのは間違いない。 しかし、著者の力量の高さを認めるが故に、グリグリの本格で勝負してもらいたい気持ちは強い。 |
No.13 | 7点 | 赤い指- 東野圭吾 | 2015/06/24 17:15 |
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得意(たぶん)の倒叙形式で、犯行とその後の隠蔽工作を通じて、教育の崩壊、家族の孤立化、介護といった現代社会の闇を赤裸々に描き切った。
真相解明にあたっては、細かな伏線を回収しつつ、最後は人情味あふれるアプローチで見事な締めくくり。 重量感とスピード感が絶妙にバランスされたストーリーテリングも円熟の域。 相変わらず達者、素晴らしく達者なのだが、メイントリックはXのバリエーションだし、著者の実力を考えれば、プロットさえ思いつけばいくらでも書けるレベルの作品。 作品のデキとしては文句ないのだが、読者としては「良質な量産品」の域を超える「勝負がかった本格」を書いてもらいたい |
No.12 | 5点 | 怪笑小説- 東野圭吾 | 2015/05/07 15:11 |
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ユーモアも毒も相応に効いているのだが、いかんせん目新しさやパンチ力に乏しく物足りなさが否めない |