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蟷螂の斧さん
平均点: 6.09点 書評数: 1668件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.688 7点 半身- サラ・ウォーターズ 2014/11/29 21:31
(東西ベスト82位)オカルト風味のサスペンス。著者がどんな結末に導こうとしているのか?最初に感じる謎でしたね・・・。その謎を最後まで持ってゆく筆さばきが、巧みであると言わざるを得ません。主人公の日記(心情)が主体で描かれ、相手となる女囚(霊媒)の現在の心の内が描かれないのは何ともいえない不安感を醸し出します。最初に感じた謎は、それほど驚きのある真相ではないのですが、幻想と現実のギャップの描き方がうまいのかもしれません。

No.687 6点 侵入者 自称小説家- 折原一 2014/11/26 09:07
裏表紙より~『北区十条で起きた一家四人殺害事件。発生後半年以上経っても解決のめどが立たず、迷宮入りが囁かれる中、“自称小説家”の塚田慎也は遺族から奇妙な依頼を受ける。「この事件を調査してくれないか」―。以前、同じく未解決の資産家夫婦殺人事件のルポを書いたことから白羽の矢が立ったのだ。百舌の早にえ、車椅子の老人、ピエロのマスクをかぶった男…二つの事件に奇妙な共通点を見出した塚田は、あるアイデアを思いつく。遺族をキャストに、事件現場で再現劇を行うことで犯人をあぶり出すのだ―。ミステリー界の特級幻術師が送る「○○者」シリーズ最新刊。』~
フーダニット物。もし、理詰めで推理する本格物であるならば、その結果暴かれる真相は、結構インパクトがあるような気がしました。しかし、サスペンスものなので、その点若干弱く感じるのは致し方ないか?・・・。前半は事件の概要なので、そのサスペンス感、盛り上がりにやや欠けています。後半は、遺族が事件の再現劇を演じるというリアリティのない展開(笑)なのですが、脚本が面白いので一気読みできました。やや甘めの採点となります。

No.686 7点 死者の中から- ボアロー&ナルスジャック 2014/11/21 11:49
「めまい」(パロル舎版)で拝読。~「高所恐怖症のために警察を辞めた弁護士のもとへ、かつての友人から、妻の様子がおかしいので監視をしてくれとの依頼を受ける。やがてその人妻を愛してしまう。」~解説によると、ヒッチコックによる映画化を期待して書かれた作品のようです。「高所恐怖症」と「転生」をうまく取扱い、サスペンスの傑作に仕上がっていると思います。

No.685 4点 わたしを離さないで- カズオ・イシグロ 2014/11/20 08:21
(東西ベスト74位)裏表紙より~『優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。』~
著者は日本生まれのイギリス人。訳者あとがきによれば、これはミステリではないとのこと。へールシャムという施設は何かという「謎」はありますが、青春小説+○○小説といった感じになるのかも。主人公の淡々とした語り口が、奇怪な感じを盛り上げています。好みでない分野であることと、ミステリー的な要素を斟酌し、この評価としました。

No.684 5点 ふたりのシンデレラ- 鯨統一郎 2014/11/16 19:42
裏表紙より~『「ふたりのシンデレラ」を上演するため、合宿中の劇団を襲う惨劇。主役を巡り、女優や演出家が対立する中、一人は殺され、一人は失踪、一人は重傷を負い記憶を…。シンデレラが仕掛けた罠とは何か?事件の証人であり、犯人であり、犠牲者で、探偵役で、ワトソン役で、記録者で、容疑者で、そして共犯者でもある…一人八役の「わたし」が語る驚愕の真相とは。』~
「シンデレラの罠」(1962)のオマージュ作品(2002)です。オマージュでは綾辻行人氏が1989年に先行。原作は一人四役に対し、本作は一人八役に挑戦したもの。展開は楽しめましたが、ミステリーの基本となる証拠などのトリックに関し、やはり無理があるような気がします。技術的な問題ではなく、ミステリーファンの心理として納得がいくかどうかということですが・・・。

No.683 5点 四〇九号室の患者- 綾辻行人 2014/11/15 17:48
「シンデレラの罠」(1962・セバスチアン・ジャプリゾ著)のオマージュ作品。ただし、その点に関し「あとがき」(角川版)で触れていないことが気になりますが・・・。やはり原作を上回ることはできなかったか(苦笑)。本作は著者の一面ではあると思いますが、折原一氏の作品を読んでいるような錯覚を起こしました。結末には無理があるような気がします。本人が、記憶喪失で、精神的におかしくなっているとしても、○や○に気が付かないのは不自然でしたね。○や○が不明な設定にすれば納得がいくと思います。

No.682 5点 フリークス- 綾辻行人 2014/11/15 17:46
①夢魔の手~三一三号室の患者~②四〇九号室の患者③フリークス~五六四号室の患者~②がオマージュ作品とのことで拝読。(単独で別途書評) 3本とも精神科の患者を題材にしているので、おおよその結末は予想できてしまいます。著者の作品の中で、オチは好みでない方の部類でした。

No.681 7点 仮面の男- ボアロー&ナルスジャック 2014/11/14 18:53
(タイトル男13)(注)本の内容紹介は先に読まない方がいいです。・・・ヴァイオリン弾きのジャックは、ある男から遺産相続の為、行方不明になっている夫に成りすましてくれとの依頼を受ける。その妻にもばれないよう記憶喪失を装うということであった。その裏にはある陰謀が・・・。その陰謀が内容紹介でネタバレしています(苦笑)。ジャックと妻の日記で物語は進行しますが、日記なのでお互いの心のうちはうかがい知れません。二人のすれ違いの「あや」や「心理描写」を巧みに操って読ませてくれます。読者には真相が提示されるのですが、そのことがより効果的で非常に堪能できました。

No.680 6点 象牙の塔の殺人- アイザック・アシモフ 2014/11/12 17:07
解説より~『編中にジャック・ドヒーニという刑事が登場する。いつも部下を連れずに一人で来ては、主人公にシツコクからみ、オダテたりしながらいろいろな事実を聞きだす。サエない風貌だが、何を考えているのかよくわからない。そのくせちゃんと真相を掴んでいて、心理トリックを使って真犯人を引っかける。この妙な刑事、やる事といい雰囲気といい、どうも似てやしまいか。あのコロンボ刑事に。・・・(後略)・・・』~同感でした。しかし、あくまでも主役は助教授のブレイドです。そしてコロンボ並みの推理で・・・。SFでない本格物ということで拝読、楽しめました。

No.679 6点 とむらい機関車- 大阪圭吉 2014/11/10 17:28
「とむらい機関車」は動機が秀逸。「奇妙な味」がありました。これが一番かな。「あやつり裁判」はオチがすぐわかってしまいました。女将が「つぼ半」でアカラサマすぎませんか?(笑)。「抗鬼」はストーリー的には面白いのですが、妻が○を間違えてしまうのか?「う~ん」という感じです。全体を通して、戦前・探偵小説の始まりを感じることはできました。

No.678 6点 心憑かれて- マーガレット・ミラー 2014/11/06 20:22
裏表紙より~『八月も終わりに近づくと、夏の自由に飽いた子どもたちが、また小学校の運動場に戻ってくる。すり傷だらけの手足をかかえ、汗を飛ばして逝く夏を謳歌する彼らの姿を、三十二歳のチャーリーは密かに見守りつづけた。こんなところにいてはいけない。それはわかっていた。精神科医の、そしてあの保護監察官の言葉が脳裏をよぎる。だが、もうしたがうことはできない。ひとりの少女に、どうしようもなく心とらわれていたからだ…!夏のカリフォルニアに精神異常の烙印を押された男が巻き起こす、緊迫の物語。読む者を震撼させる結末の逆転劇は、まさに名手の真骨頂。比類なきサスペンス。』~
事件は3分の2が過ぎるまで起こらないのですが、飽きることはありませんでした。登場人物の誰もが事件を引き起こしてもおかしくないような雰囲気で読ませます。このあたりがサスペンスの醍醐味かもしれません。裏表紙にあるような震撼するような結末ではないのですが、急展開は著者らしさを感じることはできました。

No.677 8点 シンデレラの罠- セバスチアン・ジャプリゾ 2014/11/02 17:35
(東西ベスト41位)サスペンスのお手本のような作品。裏表紙にある一人四役はいわゆる本格物ではないのであまり意味をなさないのでは?、だだの煽りか?(笑)。本作のオマージュ、あるいは挑戦として書かれた作品も多いらしい。綾辻行人・鯨統一郎(未読)山田正紀(既読)の各氏の名が挙がっているので、読んでみたいと思う。サスペンスの傑作と位置づけてよいと思います。

No.676 8点 終りなき夜に生れつく- アガサ・クリスティー 2014/10/25 16:14
(自薦ベスト10)裏表紙より~『誰が言いだしたのか、その土地は呪われた「ジプシーが丘」と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて…』~
著者の過去の作品のエッセンスを組み合わせ、恋愛小説風サスペンスに仕上げたという印象です。恋愛小説から後半事件に発展する瞬間は衝撃を受けましたね。映画化したら面白いと思ったら、既に映画化されていました(苦笑)。著者が自薦ベストにあげている理由は、「ファン(他の作品の読者)の裏の裏を斯いたのですよ」と言っているような気がします。このような大胆な発想がクリスティ氏らしいのかもしれません。

No.675 5点 檻の中の少女- 一田和樹 2014/10/24 16:26
第3回ばらの町福山ミステリー文学新人賞~<サイバーセキュリティ・コンサルタント君島のもとへ、「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺された」と老夫婦が訪れる。 ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。>~
選評・島田荘司氏によればハードボイルド小説になるらしい。一番は読みやすいことですね。真相の解明の段でやや駆け足になってしまった感じがします。その後、かなり長いエピローグで題名の意味や動機に触れているのですが、もっと簡単でも読者は分かるのでは?。

No.674 8点 殺す風- マーガレット・ミラー 2014/10/21 21:51
裏表紙より~『ロンの妻が最後に彼を見たのは、四月のある晩のことだった。前妻の件で諍いをした彼は、友達の待つ別荘へと向かい―それきり、いっさいの消息を絶った。あとに残された友人たちは、浮かれ騒ぎと悲哀をこもごも味わいながら、ロンの行方を探そうとするが…。自然な物語の奥に巧妙きわまりない手際で埋めこまれた心の謎とは何か?他に類を見ない高みに達した鬼才の最高傑作。』~                  
行方不明となっているロンと不倫をしたセルマ、その夫はロンの友人である。残されたロンの妻は・・・。ドロドロとした人間描写が凄まじい。おもわず引き込まれてしまい一気読み。各人それぞれの新しい道を歩み始める予感で、サスペンス小説であることを忘れてしまうほどでした(笑)。さて、ミラー風のラストのオチはどうなるのだろうか?と・・・。期待以上のものでした。著者の既読分では今のところ一番の好みの作品です。評判の「鉄の門」は手に入らず、残念ながら未読。

No.673 6点 潜伏者- 折原一 2014/10/20 19:04
「BOOKデータベース」より~『ノンフィクション作家の笹尾は、容疑者の視点で生々しく綴られた小説『堀田守男氏の手2』をきっかけに、北関東で起きた少女連続失踪事件を追いかけることに。被害者家族との接触を続ける中、冤罪の疑いが晴れぬまま服役を終えた容疑者が出所し、事件は大きく動き出す。小説家は誰なのか?容疑者は無実なのか?そして、真犯人は誰なのか。』~      相変わらずの折原ワールド(叙述)ですが、やや趣が今回は変わっているとの印象。犯人は誰?がメインに打ち出されています。ただ、その点だけを見ると犯人は目星がつきやすいかも?。サスペンスものなので、ファンとしてはその点は許す?(笑)。もし、殺人事件が絡まなかったら、テーマ(冤罪・DV)がテーマだけに、かなり良い作品になったような気がしてなりません。長いけれど一気読みはできました。

No.672 8点 カリブ諸島の手がかり- T・S・ストリブリング 2014/10/18 08:08
裏表紙より~『殺人容疑を受けた亡命中の元独裁者、ヴードゥー教司祭の呪術、ヒンドゥー寺院の死体…多様な異文化が交錯するカリブ諸島を舞台に、アメリカ人心理学者ポジオリ教授が怪事件の数々に遭遇する、皮肉とユーモアに満ちた探偵譚。“クィーンの定員”にも選ばれた、ミステリ史上前代未聞の衝撃的名作。』~                                バラエティに富んだ連作短編集です。やはり「ベナリスへの道」が秀逸。同じようなモチーフで既読のものは、島田荘司氏、乾くるみ氏の作品がありましたが、どちらも衝撃を受けました。本作は1929年で先駆的な役割を果たしており、高く評価したいと思います。

No.671 6点 骨と髪- レオ・ブルース 2014/10/12 19:50
裏表紙より~『「従妹のアンが行方不明になった。財産狙いで夫が殺して逃げたにちがいない」。依頼を受けたキャロラス・ディーンが調査を進めてるうち、次第に不可解な事実が明らかになってきた。かつて夫婦が住んでいた場所でもアンは失踪し、やはり夫が殺して逃げたという噂が流れていた。しかしその「アン」はキャロラスが探しているアンとは別人としか思えない。背格好も性格も違いすぎるのだ。しかし本当に別人なのか?軽妙で洒落たストーリーテリング、巧みで切れのある仕掛けで読者に挑む本格推理。』~                                ミステリーの王道を外したユニークな作品ですね。真相(伏線はしっかりしています)はおもわず笑ってしまいました。

No.670 4点 ジェゼベルの死- クリスチアナ・ブランド 2014/10/11 10:29
(東西ベスト100の24位)読み込み不足か、理解力不足で今一ピンときませんでした。「緑は危険」同様、著者との相性は良くないですね(苦笑)。まず、見取り図(バルコニーの階段、部屋の状況)がないので殺害現場の状況が理解できなかったことです(情けない・・・)。そして登場人物の特に3人ぐらいの人物像が伝わってこないので、前記と合わせ、何がどうなっているのかよくわからないままの読書で、相当時間がかかりました。また、ある人物の妻が突然登場するのですが、その意味も分からないし・・・。トリックもかなり無理があるような気がしますのでこの評価としました。

No.669 6点 編集室の床に落ちた顔- キャメロン・マケイブ 2014/10/03 19:55
裏表紙より~『映画会社に勤めるキャメロン・マケイブは、完成間近の新作からある新人女優の登場シーンを全てカットするようにとの命令を受けた。その翌日、編集室で当の女優が手首を切って死んでいるのが発見される。自殺か他殺か。真相は、編集者のロバートソンが編集室に仕掛けた自動カメラが捉えていたはずなのだが、肝心のフィルムが消えている。捜査の難航をあざ笑うかのように、第二の事件が発生し……。“どんな探偵小説でも無限の終わり方が可能”と主張する作者が仕掛けた、二度と使えぬトリックとは? 「全ての探偵小説を葬り去る」と評された問題作。』~
題名は映画用語で「映画が完成したあと、何らかの理由で本編からカットされた俳優や女優をいう」とのことです。1937年(著者20歳)の作品で黄金期本格ミステリー最大の問題作とされているようです。今でいうアンチミステリーやメタミステリーに該当するのでしょう。この時代に書かれたことに敬意を表したいと思います。ストーリーは面白いし、主人公と警部のやり取りも楽しめます。読後は「犯人がどうしてこんなドジを踏んでしまうのか」と思いましたが、解説で詳しく説明されています。解説が必要な作品ですね(笑)。

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蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.09点   採点数: 1668件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(53)
折原一(48)
中山七里(34)
松本清張(28)
アンソロジー(国内編集者)(22)
西村京太郎(20)
島田荘司(20)
歌野晶午(20)
東野圭吾(20)
綾辻行人(18)