皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.09点 | 書評数: 1668件 |
No.828 | 5点 | 致死量未満の殺人- 三沢陽一 | 2015/11/17 09:22 |
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題名ってつくづく難しいものだと思いました。旧題は「コンダクターを撃て」ですが、これはある意味絶対ダメですね。「致死量未満」もいかがなものか(苦笑)。序章と題名で大筋が読めてしまいました。人間うんぬんは気にならなかったのですが、やはり毒殺トリックにリアリティ(完璧なものを求めるわけではありませんが)を感じられなかったことが惜しい点です。アイデアは買いますが・・・。 |
No.827 | 5点 | ボトムズ- ジョー・R・ランズデール | 2015/11/15 13:17 |
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ミステリーというより、少年成長物語・家族物語の要素が強い作品です。背景に人種差別問題が流れるというならまだ良いのですが、本作は前面に出てきます。よって、ミステリーを読もうとしていた、または、期待していた自分にとって、かなり違和感というか、肌に合わない要素が強い作品となってしまいました。また、ちょっと長いかなとの印象も。しかし、他の書評ではかなり高評価の作品です。 |
No.826 | 7点 | 宵待草夜情- 連城三紀彦 | 2015/11/10 11:00 |
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氏らしさとは、雰囲気全体(筆づかい、ロマン性、トリッキー性等々)を言うと思いますが、私的好みはやはり、トリッキーな部分ですね。そういう意味では、「花虐の賦」「未完の盛装」が良かった。ただ「未完の盛装」における「去年の末」がしっくりこない点で減点対象となってしまいました。残念です。 |
No.825 | 6点 | 月光のスティグマ- 中山七里 | 2015/11/05 09:13 |
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「BOOK」データベースより~『この傷痕(スティグマ)にかけて俺が一生護る――。月夜に誓った幼なじみは、時を経て謎多き美女へと羽化していた。東京地検特捜部検事と、疑惑の政治家の私設秘書。追い追われる立場に置かれつつも愛欲と疑念に揺れるふたりに、やがて試練の時がやってくる。阪神淡路大震災と東日本大震災。ふたつの悲劇に翻弄された孤児の命運を描く、著者初の恋愛サスペンス!』~
主人公(淳平)は、双子の姉妹(優衣・麻衣)と幼馴染であった。震災で生き残ったのは優衣か麻衣か、やがて疑念が浮かんでくる。恋愛サスペンスかと思いきや、中盤から潜入捜査(マネーローンダリング)やテロ遭遇などに展開してゆくので、やや違和感がありました。まあ久しぶりに政治ものを読んだので考えるところが多かったです。やはり一番は東日本大震災が二大政党化が端緒についたばかりであった日本の政治に大きな影響を与えてしまったことかも?。なお本日のニュースで「非正社員4割を超える」とありました。「労働者派遣法」について本書では「民生党」の失政となっていますが「国民党」が制定・改悪したのが原因かと(苦笑)。以上は余談ですが、全体的にはやや詰め込み過ぎたかという感じですね。でも一気読みはできると思います。 |
No.824 | 5点 | 殺人ファンタスティック- パトリシア・モイーズ | 2015/11/03 11:02 |
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裏表紙より~『メイスンは今や事業を隠退し、”地方名士として敬われる”という夢を実現するべく、片田舎クレグウェルで日々を送っていた。ある日、農園の持ち主マンシプル家を訪れた彼は、その帰途、不慮の死を遂げてしまう。目撃者によれば、故障をした車を降りたメイスンは、喚声とともに宙を泳ぐように倒れ息絶えたという。この奇妙な事件もやがて、凶器と思われる拳銃が発見され、殺人であることが決定的となるが、さっぱり糸口が掴めず、遂にティベット警部の登場を待つこととなった……。モイーズが描く、ファンタスティックな殺人の顛末!』~
ユニークな(変人・奇人といわないまでも)登場人物とティベット警部とのやり取りを楽しむ小説かも?。本格度はそれほどでもないし、題名のファンタスティックな殺人(凶悪な殺人ではない?)の意味もよくわからなかった。 |
No.823 | 6点 | 赤の組曲- 土屋隆夫 | 2015/10/30 13:30 |
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裏表紙より~『千草検事は、懐かしい友・坂口秋男の来訪をうけた。「警察署長を紹介してほしい」彼の妻が失踪したというのだ。千草は助力を約束する。坂口の妻らしき女性が、長野の温泉を訪れたという情報が入るが、その女性も失踪してしまう。犯人が残す「赤い」謎―。論理と直感が絡まり合い、ひきたて合い、鮮やかな結末を紡ぎ出す本格推理小説。』~
題名や目次にある「赤」に期待し過ぎたのか・・・。それほどの謎ではなかったのが残念。方言の扱い並びに刑事宅でのエピソードから解決への流れは光っていました。 |
No.822 | 5点 | 奇術師の密室- リチャード・マシスン | 2015/10/28 00:06 |
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裏表紙より~『往年の名奇術師も脱出マジックに失敗し、いまは身動きできずに小道具満載の部屋の車椅子のうえ。屋敷に住むのは、2代目として活躍する息子とその野心的な妻そして妻の弟。ある日、腹にいち物秘めたマネージャーが訪ねてきたとき、ショッキングな密室劇の幕が開く! 老奇術師の眼のまえで展開する、奇妙にして華麗、空前絶後のだまし合い。息も継がせぬどんでん返しの連続。さて、その結末やいかに─鬼才マシスンが贈る、ミステリーの楽しさあふれる殺人悲喜劇。 』~
密室とありますが、密室トリックものではありません。マジックルームという一室で繰り広げられる劇です。語り部は、車いすで動くことも、しゃべることもできませんので、ある意味観客みたいなものです。ユーモアあふれる語り部、バカバカしい?トリックの繰り返しということで、ユーモアミステリーに分類されるのかも。 |
No.821 | 4点 | 禁断の魔術- 東野圭吾 | 2015/10/28 00:03 |
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裏表紙より~『高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作!』~
『禁断の魔術』(2012)所収の「猛射つ」を大幅に加筆・改稿したもの~2015版~で拝読。残念ながら人間ドラマを感じることはできなかったし、内容もありきたりのものでした。 |
No.820 | 8点 | 死のドレスを花婿に- ピエール・ルメートル | 2015/10/23 11:32 |
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裏表紙より~『ソフィーの目の前に転がる男児の無残な死体。ああ、私はついに人を殺してしまった。幸福だった彼女の破滅が始まったのは数年前。記憶にない奇行を繰り返し、彼女はおぞましい汚名を着て、底辺に転落したのだ・・・。ベストセラー『その女アレックス』の原点。あなたの心を凍らせる衝撃と恐怖の傑作サスペンス。』~
解説(千街晶之氏)にもありましたが、「その女ソフィー」が相応しいか?。題名は本格物であると、やや問題がありそうですが、まあ、サスペンスものなので・・・(苦笑)。第2章に入り、「えっ、そんなのありなの?」と唖然としてします。サイコ系サスペンスがお好きな人にお薦めのフランスミステリーです。 |
No.819 | 8点 | 悪女パズル- パトリック・クェンティン | 2015/10/20 13:35 |
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1945年作品。離婚を考える3組の夫婦、婚約者カップル2組、そして主人公ダルース夫婦の計6組の男女が織りなす愛憎劇か?!・・・。プロットはシリーズで一番と思えるほど非常に優れていますね。第2、第3の事件は、○○殺人(私にとっては初物)という本作品の”肝”であると思います。よって、どんでん返しへの伏線として、非常に重要な事件であると感じました。ダルース夫婦シリーズで8点評価が3作品となりましたが、順位は「悪女パズル」>「俳優パズル」>「女郎蜘蛛」です。 |
No.818 | 7点 | サイモンは誰か?- パトリシア・モイーズ | 2015/10/16 21:51 |
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サイモンは誰か?(どちらか?)という謎で引っ張っていきます。前半は、サスペンス色の強い展開です。そして、思いもよらないサプライズが用意されています。満足(笑)。後半は、殺人事件の犯人探しで本格的な展開となります。よって、2度楽しめたという気持ちです。 |
No.817 | 5点 | 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー | 2015/10/14 19:38 |
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密室・○○○○○トリックは、それほど感心するものではなかった。しかし、サイコキラー系は割と好きなので、最後の一行(犯人の言葉)は結構気に入りました。 |
No.816 | 4点 | 大絵画展- 望月諒子 | 2015/10/11 15:29 |
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「BOOK」データベースより~『ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。』~
絵画ものは、どうしても贋作がらみとなり、既視感がぬぐえない。ストーリー展開(コンゲーム)も新鮮味は感じられなかった。 |
No.815 | 7点 | マーチ博士の四人の息子- ブリジット・オベール | 2015/10/09 09:49 |
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裏表紙より~『医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。』~
1992年のサスペンス作品。この手のトリッキーな作品は好みなので高評価としました。殺人者とメイドの交換日記的な展開なのですが、やや長いのが玉に瑕。中編で良かったかも。 |
No.814 | 7点 | だれがコマドリを殺したのか?- イーデン・フィルポッツ | 2015/10/06 16:22 |
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1924年の作品。愛憎劇はじっくり描かれており退屈はしなかった。サプライズは用意されており、面白いと思いますが、やはり時代性を感じる。トリックはやや古いパターンの部類かな?。消去法でいくと、こういう結果にならざるを得ないのですが、三人称形式では、ややアンフェアか?と思われる部分も・・・。といいつつも7点を献上(笑)。 |
No.813 | 6点 | エンジェル家の殺人- ロジャー・スカーレット | 2015/10/03 18:49 |
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奇妙な遺言、動機などのアイデアは評価したいと思います。犯行方法、密室、盗難事件などがあっさり片づけられているので、何が中心なのか、ぼやけてしまった感じです。金への執着心などを中心に人物像をもう少し堀り下げていたら、傑作になっていたかも。 |
No.812 | 5点 | オシリスの眼- R・オースティン・フリーマン | 2015/10/01 17:57 |
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エジプト考古学者が不可解な失踪をし、その2年後に白骨が発見される。その白骨は考古学者のものなのか?・・・。ヴァン・ダイン氏が世界ベスト10に挙げたらしい1911年の作品。しかし、現在から見ると、トリックはかなり古い(苦笑)。本作でも、当時としては最先端?のX線写真が登場しているので、そういう意味から科学的推理のソーンダイク博士という謳い文句になったのでしょう。歴史的な意義を感じるかどうかといった作品ですね。 |
No.811 | 5点 | NかMか- アガサ・クリスティー | 2015/09/28 16:32 |
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裏表紙より~『情報部からナチの大物スパイ“NとM”の正体を秘密裡に探るという任務を帯びたトミーは、妻のタペンスには内緒で任地へと赴いた。だが、タペンスとて一筋縄でいく女ではない。騙されたふりをして先回り。かくして二人は、大規模なナチ・スパイ網のまっただなかへと飛びこむことに…スリル満点の冒険ミステリ。』~
シリーズ第1作「秘密機関」(1922)から約20年後(1941)の本作。主人公も年をとり子供もいる設定です。題名のように内容は、スパイは誰か?であり、どちらかというとフーダニットに近い展開でした。本格ものであれば意外な犯人ということになると思います。しかし、スパイもの、冒険ものとしては、スリル満点とは言えず、この評価となってしまいました。 |
No.810 | 6点 | 追跡者- パトリック・クェンティン | 2015/09/23 18:02 |
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主人公が出張から帰ってくると、自宅には新婚の妻の姿はなく、代わりに男の死体が転がっていた。妻の行方を追うという題名通りの追跡劇で、冒険活劇要素の方が強い作品です。パズル・シリーズにはないコメディタッチの場面(脇役のホテルボーイがアクセントとなりいい味を出している)もあり楽しめました。 |
No.809 | 5点 | 秘密機関- アガサ・クリスティー | 2015/09/22 16:57 |
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初期(1922)の初々しさが感じられる作品。何しろ若い(笑)。著者の冒険・スパイものは概して評判はよろしくないみたいですね。単純なプロットに加え、スピード感、サスペンス感が不足しているのでしょうか。2009年、ガーディアン(イギリスの新聞)が必読小説1000冊を発表。その中に本作は選出されています。また「アガサ・クリスティ ベスト BY 折原一」にて氏は本作を第17位にランクしています。本作の解説をしている杉江松恋氏は本シリーズ「NかMか」をアガサクリスティの私的ベスト10に入れ、本作よりそちらの解説をしたかったとコメントしています(苦笑)。記念碑的作品ということで甘目の採点となりました。 |