皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.09点 | 書評数: 1668件 |
No.868 | 5点 | ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 | 2016/02/22 12:16 |
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日常的な謎、青春もの、安楽椅子ものとして楽しく読めました。 |
No.867 | 7点 | サイコ- ロバート・ブロック | 2016/02/21 19:31 |
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裏表紙より~『シャワーカーテンの隙間からのぞく仮面のような顔。ぎらつく二つの目。メアリは悲鳴をあげはじめた。が、その声は切り裂かれた…肉切り包丁の一閃で!雨の夜、片田舎のさびれたモーテルでなにが起きたのか?大金を拐帯し失踪した婚約者を探すサムが見いだした、恐るべき真実とは?ヒッチコックの映画であまりにも有名なサイコスリラーの原点』~
映画がヒットし過ぎたので、本書はあまり読まれなかったのか?・・・。「悲しみのイレーヌ」の中で紹介された「アメリカンサイコ」を読もうと思ったのですが、エログロだけの内容の乏しいもので、途中で放棄。本家本元を読もうと思いついたわけです。映画ではアンソニー・パーキンスの不気味さだけが印象に残っており、筋は全く忘れていましたので好都合でした。まあ、途中で思い出してしまいましたが・・・(苦笑)。映画と違い、本の犯人は太っていますね。「容疑者Xの献身」もそうでした(笑)。「サイコ」という言葉が本作以降、広まっったことに敬意を表して。 |
No.866 | 4点 | 幸運の逆転- エリザベス・チャップリン | 2016/02/19 10:39 |
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ジル・マゴーンの別名義とのことで拝読。名義が違うと、こんなにも作風が違ってしまうのかと変な感心。裏表紙でネタバレがあるので、途中までサスペンス感もないし退屈で仕方なかった。というより、登場する妻の心境が理解できないことが一番の苦痛。ラストのオチはブラック・ユーモア系で大好きなのですが・・・。短編にすべきだったのかも。 |
No.865 | 7点 | 鉄の枷- ミネット・ウォルターズ | 2016/02/17 09:01 |
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裏表紙より~『資産家の老婦人、マチルダ・ギレスピーは、血で濁った浴槽に横たわって死んでいた。睡眠薬を服用した上で手首を切るというのは、よくある自殺の手段である。だが、現場の異様な光景がその解釈に疑問を投げかけていた。野菊や刺草で飾られた禍々しい中世の鉄の拘束具が、死者の頭に被せられていたのだ。これは何を意味するのだろうか?』~
デビュー作「氷の家」でCWA新人賞、第二作「女彫刻家」はMWA最優秀長編賞、第三作「本作」ではCWAゴールドダガ―賞受賞との経歴の持ち主です。さすが、重厚でうまいとの印象です。ミステリーの部分では、自殺?他殺?の謎、鉄の枷の謎、不可思議な相続の内容などで引っ張て行きます。一方の軸で、登場人物の側面、裏面を徐々に明らかにしてゆく手法で描いています。ミステリー部分より、こちらの方(被害者、その娘、孫の人格形成)が本流のように感じました。なお、シェークスピアの作品が登場しますが、内容を知らない私にも判り易いように説明されており好感が持てました。全体的には、クリスティ氏の手法を用い、背景を非常に重くしたような作品とのイメージですね。 |
No.864 | 6点 | 牧師館の死- ジル・マゴーン | 2016/02/14 07:19 |
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裏表紙より~『クリスマス・イヴの夜、ロイド首席警部は事件の知らせを受け、牧師館に急行した。殺されたのは牧師の義理の息子。単純な家庭内の事件に思われたが、互いに庇いあう家族の前に捜査は難航する。次々と覆されていく偽りの奥から現れた真相とは? 現代本格ミステリの新たな担い手、ジル・マゴーンが描く現代版“牧師館の殺人”。』~
ジャンル分けに困る作品です。アリバイ崩しの本格もの?ともいえるし、方や、心理サスペンスの要素が強い作品でもあるし・・・、一応本格ものということで。クリスティ氏の「牧師館の殺人」とは特に関係はありません。ただし、「さっさと家にひきあげて、ミス・マープルにぜんぶまかせたい心境よ」とか、ミス・マープル似の老婦人がチョイ役で登場したりします。アリバイはお互いを庇い合うため、嘘をついているので複雑で判りにくいのが難点です(自分はアリバイ崩しが苦手なので、そう感じるのかも)。登場人物の心理描写はうまいと思いますが、捜査側の二人の恋愛感情の描写は、本作に限って言えば結構邪魔になっていましたね。著者名義で4冊しか翻訳されていない状況は残念です。 |
No.863 | 7点 | パーフェクト・マッチ- ジル・マゴーン | 2016/02/11 17:28 |
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裏表紙より~『嵐の去った早朝、湖畔で女性の全裸死体が発見された。遺体は最近莫大な遺産を相続した未亡人のものと判明。その前夜、彼女を車に乗せ、そのまま姿を消した青年が犯人と目されている。だが、この事件には腑に落ちない点が多すぎた。ロイド警部とジュディ・ヒル部長刑事のコンビが不可解な事件に挑む。期待の俊英のデビュー作。』~
トリックは単純ですが、それを非常にうまく隠しています。よって、サプライズは大でした(笑)。全裸死体であるにもかかわらず、暴行の痕跡はないという謎で引っ張て行きます。登場人物が少ないのも魅力ですね。「騙し絵の檻」のカットバックには苦労しましたが、本作のカットバックは読み易かったです。 |
No.862 | 6点 | 壜詰の恋- 阿刀田高 | 2016/02/10 12:45 |
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裏表紙より~『砂丘でめぐり会い、めくるめく一夜をともにした気高い美女は、翌朝姿を消してしまった。そして枕元には香水のびんが……。それ以来、わが部屋にこの香水の匂いをまきちらすとき、かならずあの美女がそっとあらわれ、熟れた身体をひらいてくれるのだ。「奇妙な味」の小説の名手のブラック・ユーモア秀作集。』~
(再読)初期(6冊目)の短編集です。ベストは「賢者の贈り物」・・・匿名の女性から手袋、ネクタイ、ポートレート、鍵、地図が順次送られてきた。男はそのマンションを訪れてみると、女の死体が・・・。そこへ不審人物がいるとの通報で警官がやってくる。さて男の運命は?そしてその仕掛けとは?。著者はあとがきで、推理小説としてはあえてアン・フェアな道を選んだと言っていますが、三人称を一人称で描けば、その問題は解決か?。なお、長編で読んでみたいなあと思うような作品でした。表題作の小粋な短篇から、グロテスクな結末を予想させるブラック・ユーモアまでバラエティに富んだ作品集です。気の向いた時に、書棚から著者の作品を引っ張り出して再読するのですが、過日も歌野氏の作品テーマを見つけたりしました。本作の中にも京極氏、島荘氏、黒研氏の作品のモチーフがあるのを発見。これも読書の一つの楽しみですね。 |
No.861 | 6点 | 幸福荘の秘密―新・天井裏の散歩者- 折原一 | 2016/02/08 13:02 |
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裏表紙より~『幸福荘―推理作家小宮山泰三を慕うあやしい住人たちが、南野はるか争奪戦を繰り広げたアパートは瀟洒な三階建てのマンションに建てかわった。その第二幸福荘の前で花束を捧げ泣いていた謎の女性。そして始まる九転十転の逆転劇…。前作『天井裏の散歩者』を凌ぐ衝撃の結末とは。』~
前作では、ヒロイン南野はるかを巡る男たちの争奪戦が楽しめました。本作では登場しないはずと思っていたら、後半に登場で大活躍!。言い寄る男たちを退治するシーンは大笑いでした。前作同様、叙述の大盤振る舞いです。叙述の解説付きなので入門編になるかも。このシリーズは打ち止めのようですが、もう一方のユーモアシリーズ・黒星警部の新作を待ち望んでいるところです。 変に感心したところ・・・前作「天井裏の散歩者」は1993年角川ミステリーコンペティション(懸賞)に参加した13冊の一冊です。そのことが作中で紹介されています。「ダリの繭」(有栖川有栖)→「誰の眉?」(東久邇國彦)、「暗鬼」(乃南アサ)→「暗記」(昼間ユキ)、「黒猫遁走曲」(服部まゆみ)→「捨て犬ブルース」(波多野舞)、「揺歌」(黒崎緑)→「揺籠の歌」(白峰赤彦)、「邪宗門の惨劇」(吉村達也)→「南大門の難題」(牛尾潮)etc・・・こんなことまで考えなければならないなんて作家って大変なんだな。 |
No.860 | 6点 | 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記- 折原一 | 2016/02/07 13:35 |
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裏表紙より~『日本推理文壇の重鎮、小宮山泰三が住む2階建てモルタル造りの幸福荘。そこには古くから小宮山を慕う数多の作家志望の若者たちが集っていた―。幸運にも私はそんな幸福荘に入居することになったが、部屋に残されていた1枚のフロッピーが私を戦慄させた。創作なのか、現実なのか。〈文書1〉から〈文書6〉まで、6つの不思議な連作短編小説を読み終えた私は思わず天井を見上げて…。叙述トリックの名手が、九転十転のドンデン返しであなたに挑む、究極の叙述ミステリー。』~
山田風太郎氏の「誰にも出来る殺人」のパロディー・パスティーシュです。初期の著者作品の黒星警部シリーズに近い、軽いノリの作品でした。前半は、アパート住人による、若くて美人の作家・南野はるかの争奪戦です。後半は、著者らしい叙述のオンパレード。前半の方が楽しめました。叙述は大好きですけれども、後半はちょっとクドイ感じがしました。 |
No.859 | 5点 | 黄色い犬- ジョルジュ・シムノン | 2016/02/05 13:22 |
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メグレ警部の言葉に「推論はしない」とあります。事件が次々と起こるのですが、主人公が推論をしないので、読者も推論の余地がありません。他の方も言っているように、メグレ警部の行動が突飛であり、その根拠が説明されません。よって、何か置いてきぼりを食ったような感じです。全体の雰囲気はいいのですが、ミステリー部分だけに限って言えば、作風は肌に合わないのかも。
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No.858 | 7点 | 悪意の糸- マーガレット・ミラー | 2016/02/04 18:52 |
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解説によると、「ロマンチック・サスペンス」の構造を採用した作品とのこと。話は単純明快、登場人物も少ないので、スムースに頁がすすみます。主人公シャーロット(医師)は既婚の男性と恋仲である。事件担当の刑事はシャーロットに一目ぼれ。刑事は公私混同ではないと言いつつ、シャーロットを口説きまくります。この辺りの洒落た会話を楽しむことができました。そして・・・。やはり、ラストは一筋縄ではいかないところが著者らしい。「ミラー節」発揮といったところですね。 |
No.857 | 5点 | 男の首- ジョルジュ・シムノン | 2016/02/02 08:53 |
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(1985版東西ベスト83位、2012版ではランク外)2008年、英「タイムズ」紙が発表した最も偉大なミステリ作家ベスト10(選出基準は不明です)。その1位はパトリシア・ハイスミス氏 2位ジョルジュ・シムノン氏 3位アガサ・クリスティー氏。ということで、お初のジョルジュ・シムノン氏の作品となりました。しかし、本作は異色中の異色作ということで、入門には向かないとのことが後で判明。「罪と罰」を念頭に置いて描かれていることは、よくわかるのですが、ミステリーとして、どうもしっくりこない点が3か所ほど・・・。犯人とある人物の接点が何もないというような記述(場面設定)は不自然またはアンフェアですね。このこと(接点なし)を前提として読んでいるので、どんな方法で完全犯罪を実行したのか?とワクワクするわけです。しかし、真相は?、何もありませんでした・・・(苦笑)。また、メグレ警部が手紙を読むチャンスがあったことや、ピストルを操作するチャンスがあったことなど、ご都合主義っぽい・・・。と、辛口になってしまいましたが、まだ1冊目なので、評論家の間で高評価の「モンマルトルのメグレ」や、本サイトで高評価の「倫敦から来た男」などを読んでみたいと思います。 |
No.856 | 5点 | パディントン発4時50分- アガサ・クリスティー | 2016/01/29 18:59 |
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2015年、世界中が投票したアガサ・クリスティー作品・ベスト10の第7位です。世界的な評価~本作の良さが良くわかりませんでした。日本人はどうしても本格ものを求めるので、本サイトのように低評価となってしまうのでしょう。同じプロットならば、他にもっと良い作品はありますし・・・。主人公のルーシー(家政婦)の活躍は理解できますが、ベスト10に入るのかな?というのが率直な感想でした(苦笑)。 |
No.855 | 7点 | 本格篇「眼中の悪魔」- 山田風太郎 | 2016/01/27 10:21 |
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表紙がいい!!!。これは「快楽の園」(ボス・1450?~1516))の一部分ですが、非常に本作の内容とマッチしていると思いました。一つは、「司祭館の殺人」(本作のマイベスト)の青年と娘のような感じを受けたこと。もう一つはこの絵はレオナルド・ダ・ヴィンチと同時代に描かれていますが、当時では、かなり先駆的なシュールレアリスムの作品でした。風太郎氏のこれら諸作品も、”先駆的”なミステリー要素を多分に含んでいましたね。数作品に登場する、あるモチーフが、この後の「太陽黒点」(1963)に繋がってゆくのも良くわかりました。
余談ですが、「誰にも出来る殺人」が折原一氏に影響を与えた作品であることの紹介です。氏のブログより~『18歳の頃、このへんてこりんな小説を読んで、「ミステリ作家になれるものなら、こういう作品を書きたいな」と思った。私にとってバイブル的な作品なのだ。ある意味、私の原点なんですね。』~ということで早速オマージュ作品である「天井裏の散歩者」を読まなければ・・・。 |
No.854 | 5点 | 人間動物園- 連城三紀彦 | 2016/01/22 21:42 |
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著者らしい反転の構造は評価したいと思います。しかし、事件現場が特殊設定の為、犯人との交渉もなく、誘拐ものらしい緊迫感がなかったのが残念です。動機もいま一つのような気がします。本作(2002)が「造花の蜜」(2008・誘拐もの~これは傑作と思います)に発展したと感じました。 |
No.853 | 7点 | アガサ・クリスティー完全攻略- 評論・エッセイ | 2016/01/19 13:02 |
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「はじめに」より抜粋~『読もう読もうとずっと思っていたのである。アガサ・クリスティーのことだ。ミステリ評論家を名乗り、ミステリについて語ることでお金まで頂戴し、数千冊のミステリを読んできたというのに、クリスティーの作品をわずか七作品しか読んだことがなかったのである。』~
第15回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)に選出されたアガサ・クリスティー全99作品の評論集です。本書は「ポアロ」「ミス・マープル」「トミー&タペンス」「短編集」「戯曲」「ノンシリーズ」に分けてあるので読みやすくなっています。ネタバレはありません。特徴は、著者がクリスティー氏を理解してゆく経過を読み取れることです。例えば「同じ作家とは思えない」と酷評するも、その背景に離婚問題があった年の作品であることを知るといった具合です。また、作品Aの発展形が作品Bである等々・・・。各作品の評価(おススメ度として★印)やベスト10の選出は、納得できるものもあるし、?のものもありこれは致し方ないところ(笑)。未読で高評価のものがかなりあり、今後の読書が楽しみになりました。残念だった点は、ある作品のネタがある有名作品に応用されたというような表現で、作品名が不明なところです。(この点は非常に興味があるで・・・)霜月蒼氏が選んだベスト10の特徴は、作品の内容を30字以内で表せる作品は入っていないということですね。例えば「○○が犯人」(5文字で表現できる)の作品等々です。 たまたま2015年「世界中が投票したアガサ・クリスティーのベスト10」というサイトを見ましたので、その比較をしてみました。 世界が選んだベスト10 本サイト・点 数 霜月蒼氏(10点に換算) 1位そして誰もいなくなった 8.54 79 9 2位オリエント急行の殺人 7.65 40 8 3位アクロイド殺し 8.17 59 9 4位ナイルに死す 7.46 26 9 5位ABC殺人事件 6.65 26 9 6位予告殺人 5.8 15 4 7位パディントン発4時50分 3.83 6 8 8位白昼の悪魔 6.93 15 10 9位五匹の子豚 7.27 15 10 10位カーテン 6.57 7 10 6位の予告殺人は霜月蒼氏は低評価、当サイトもまあまあといったところ。7位のパディントン発4時50分は本サイトのみ低評価、霜月蒼氏は高評価、好きな作家の折原一氏もマイベスト10に入れている作品です。早速読まなければ(笑)。 |
No.852 | 5点 | 黒猫の三角- 森博嗣 | 2016/01/18 11:56 |
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ミステリーとして評価できる点があまりなかったのが残念です。シリーズ第1作を利用したワンアイデアだけの作品ような気がしました。密室における幽霊証言は駄目ですね(苦笑)。一番問題なのは、リアリティの無さです。動機の理由や天才の存在ということではありません。刑事による尋問の描写です。犯人は男らしいという証言がありながら、ある人物(男)に対する尋問がありませんし、しばらく登場もしません。不自然です。ミスリードかなと思っていましたが、全く関係ありませんでした。不自然=リアリティの無さになってしまいます。映画監督・山田洋次氏の発言が耳に残っています。「フィクションだからこそ、リアリティやディテールが必要で、かつ、こだわっていかなければならない・・・」 |
No.851 | 6点 | 枯草の根- 陳舜臣 | 2016/01/16 13:31 |
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(再読)講談社文庫版・裏表紙より~『舞台は神戸。寒い師走のある晩、老中国人徐銘義が絞殺された。そして5号室でまた……。地方政界の汚職追及に躍起となっている若き日本人記者小島が、一方拳法家兼漢方医なる中華料理店「桃源亭」主人陶展文が、この謎を追うのだが――。ノックスの「探偵小説十戒」の「中国人を登場させてはならない」を見事破った清新な処女作。第7回乱歩賞受賞。』~
トリックに派手なものはないのですが、伏線など細かく丁寧に描かれているとの印象を受けます。真相を犯人の告白に委ねてしまっている点が、少し残念な気がしました。裏表紙及び解説の「ノックスの十戒」に関し、文字通りに解釈しており、主旨を取り違えているような気がしますが・・・。あえて記載するようなことではないような(苦笑)。なお、解釈には諸説あるようですね。東洋人は奇術や魔術を使うからという解釈が多いようですが、当時、低俗なスリラー小説に多く登場していた「邪悪な東洋人」を念頭に置き、小説が低級にならないようにしたのでは?という解釈が妥当なような気がします。 |
No.850 | 7点 | 孔雀の道- 陳舜臣 | 2016/01/16 13:30 |
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(再読)裏表紙より~『英国人を父、日本人を母に生まれたローズ・ギルモアは13年ぶりで日本を訪れた。彼女が幼い頃、神戸の自宅で謎の焼死を遂げた母のことを知りたかった。戦前の日本でスパイ事件に関与したことのある父は、なぜか母について沈黙を続け通して他界した。国際色豊かな推理。昭和45年度日本推理作家協会賞受賞作。』~
スパイ小説やトラベルミステリーのスパイスを混ぜた叙情風味溢れる社会派ミステリーといえると思います。イメージとしては松本清張氏の「ゼロの焦点」あたりか?。本作の読みどころは、命の大切さを重んじるローズの前での犯人の独白と行動です。これは名シーンといえると思います。以下は余談です。著者の作品をミステリーとしてではなく手に取った理由が、中々思い出すことができなかったのですが、本作でやっと判明しました。「比較文化論」の好きな友人が奨めてくれたのが本作で、西洋文化との比較が随所に出てきます。 |
No.849 | 5点 | 闇の金魚- 陳舜臣 | 2016/01/14 20:38 |
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(再読)「BOOK」データベースより~『辛亥革命で清朝が倒れ、孫文たちの革命勢力が台頭する中国。浙江省出身の青年童承庭は、才能を認められ、上海の富豪の後盾で日本に留学する。東京で革命思想を知り、最愛の妻と帰国して反体制運動のレポ役を続けるが、何者かに妻を拉致され旧友も殺害される。承庭は同志と妻の救出を図るが、驚愕の真相が判明。『闇の金魚』は何を暗示するのか?歴史の激浪に翻弄される人間の運命を描く長篇歴史推理。』~
ミステリーの形式を借りた、激動時代の人間ドラマといったところです。云十年前、本書を購入した目的は、ミステリーを読もうという気はなかったはずです。昨年、著者が逝去されたこともあり何冊か再読しようと思い立たもの。ミステリーとしての評価はこの程度で。 |