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[ サスペンス ]
甦える旋律
フレデリック・ダール 出版月: 1980年01月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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文藝春秋
1980年01月

No.2 6点 蟷螂の斧 2016/06/02 06:53
裏表紙より~『ヴァイオリンを胸に抱いて、ぼくの車に身を投げた女・・・その衝撃で過去の記憶をなくした彼女にぼくは恋をし、彼女の記憶が甦えるために色々なことを試みた。だが彼女の過去の断片が判ったとき、それは恐ろしい話だった。二人は逃げる。誰から?どこへ?-フランス推理小説大賞を受賞した長篇ラブ・サスペンス。』~
ラブ・サスペンスということで、ウィリアム・アイリッシュ氏の作品群に近いイメージです。二人は愛し合うようになるのですが、男は過去を知りたい気持ちと、悪い過去なら知らない方がいいと思う気持ちで揺れ動きます。しかし女性の記憶が徐々によみがえってくるという心理サスペンスものです。顛末はある意味で国民性の差を感じましたね。
余談ですが、あるサイトで「フランスミステリベスト100」と「作家別ランキング(上位30人)」を発表しています。ちなみに本作は63位、作家別は24位です。

No.1 6点 mini 2013/11/12 09:57
先月16日に長島良三氏が亡くなりました、慎んで御冥福をお祈りいたします
英米作家しか読まない方には馴染みの無い名前かも知れないが、フレンチミステリーのファンなら知らぬ者は無い仏語翻訳家である
ミステリーに縁の無い読書家だと「エマニエル夫人」の翻訳で知られるが、ミステリー読者だったらメグレ警視シリーズの翻訳がまず出てくるし、長島氏にはシムノンやメグレに関する著作もある
長島良三氏の追悼なら当然メグレ警視シリーズから選ばなければならないだろうけど、当サイトには空さんというシムノン書評のエキスパートがいらっしゃいますし、ここはちょっと別の作家で
私の蔵書の中からフランス作家だけで整理した本箱の中を漁ってたらこれを見つけた、長島氏の翻訳である

さて5~60年代を中心に洒落た文体といかにもフランスらしいエスプリと捻りの効いた作家が何人も活躍した
合作前は戦前デビューだが合作後は戦後作品が主流となるボワ&ナル、フランスミステリー界のオピニオンリーダー的存在ミシェル・ルブラン、トリッキーな作風で日本で特に人気のフレッド・カサック、盲目の天才ルイ・C・トーマ、新鋭ノエル・カレフ、さらに新鋭のセバスチアン・ジャプリゾやJ・F・コアトムールetc
しかしその手の作品ばかり探して読むような読者でもなぜか読まない大物作家が1人居る、フレデリック・ダールである
F・ダールは当時は人気作家で、フランス作家を挙げるならボワ&ナルはまぁ別格としても、少なくともカサックやカレフなどより先に名前が挙げられるべき作家である
日本ではカサックみたいな叙述トリックばかりに目が行きがちだが、この時期のフランス作品は小品ながらセンスの良さで勝負みたいな感じでありF・ダールはその典型である
この「甦える旋律」はフランス冒険小説大賞受賞の初期作で文庫で僅か200ページ程度と短い長編だが、これぞフランス産アサスペンスのエッセンスが詰まっており、フランス流サスペンスの何たるかを知りたいならカサックよりもまずF・ダールを読んだ方が適している


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フレデリック・ダール
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