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[ サスペンス ]
並木通りの男
フレデリック・ダール 出版月: 1986年05月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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読売新聞社
1986年05月

No.2 7点 人並由真 2021/01/05 06:11
(ネタバレなし)
 その年の大晦日の夜。「私」こと、パリ駐在のアメリカ陸軍軍人ウィリアム・ロバーツは、愛妻サリーが先に出席している友人たちのパーティに急いでいたが、並木通りでふらりと車道に出てきた男をひき殺してしまう。善意の第三者の目撃者が、被害者の方が車の前に飛び出したと証言。所轄の警察でウィリアムの罪科は不問となるが、律儀な彼は死んだ男ジャン=ピエール・マセの遺族のもとに自分から説明と謝罪に赴く。だがマセの妻らしき女性リュシェンヌは近所の酒場で泥酔しており、ウィリアムがマセの家に連れ帰っても、半ば人事不省だった。そこに死んだはずの夫マセから<事故にあったが大事はない、自分は入院中だ>との電報が送られてくる。

 1962年のフランス作品。
 1980年代半ばの読売新聞社の翻訳ミステリ叢書「フランス長編ミステリー傑作集(全6巻)の第一巻目。
 評者はだいぶ前に古書で本書を入手したが、この叢書は帯のない状態だと、ジャケットカバー周りにまったく何も(作品のあらすじも概要も登場人物リストすらも)記載されていないので、どういう内容のミステリだか全然ワカラナイ(笑)。ごく初期のHN文庫みたいだね。

 まあ作者フレデリック・ダールの作風が、同じフランスのミッシェル・ルブランみたいな短めでハイテンポなものだろうという一応の知見はあったので、そのつもりでやや遅い深夜に読み始めた。これなら朝までに読み終わるだろうと。そしたら予想を上回るハイテンポさで、活字の級数が大きめの一段組みとはいえ、200ページ以上の翻訳ミステリを1時間半で読了。わんこそばみたいな喉ごしであった。

 とはいえ何らかの災禍に巻き込まれた主人公を見舞う不可解な状況の連続と、終盤ぎりぎりまで明かされない事件の実態、さらに本文最後の見開きまで読者を引きつけるサスペンスは結構な充実度(犬も歩けば、的に、主人公が何かすればすぐヒットする、都合いい流れも多いけれどネ)。

 職人作家の書いたB級の小品というくくりの中での秀作という感触もあるが、ここはひとつ田中小実昌が昔言った名言「軽さもいい味だ」に共感して、評点はちょっとオマケしておこう(笑)。

 国内のテレビ界で2時間ドラマジャンルが元気だった時代に、演出のうまいスタッフとかに任せていたら結構面白いものができたかとも思う。もう実際に映像化されているかも、しれんけど。

No.1 5点 蟷螂の斧 2017/05/10 15:00
大晦日の夜、ウィリアムは男を車で撥ね死亡させてしまった。その妻に連絡しに行くが、死んだはずの男から「怪我で入院、心配するな」と電報が届く。200頁ほどの中編。フランス・ミステリーらしい毒のある結末か?と思いきや、その期待は見事裏切られました(褒め言葉)。


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