皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.19 | 5点 | 幽霊男- 横溝正史 | 2024/11/16 22:00 |
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全体的に多分に劇場的で、しかも舞台が都会、ヌードモデルなどの風俗的味付けから乱歩作品のような雰囲気をまとっている。
派手な奇怪さが前面に出ていて、退屈はしないのだが、物語全体のプロットが結果的に複雑すぎた感は否めない。幽霊男の出現、関与についての偶然も、都合よすぎで出来過ぎだし・・・ 金田一耕助シリーズの凡作として楽しめればよいのかな、という感想。 |
No.18 | 7点 | 貸しボート十三号- 横溝正史 | 2024/10/14 21:39 |
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「湖泥」
とある農村で、村一番の器量よしとされ、村の良家のせがれと結婚が決まっていた娘がお祭りの晩に殺された。北神家と西神家という、確執ある村の両家という舞台設定は横溝作品のテンプレート。祭りの夜の不可解な逢引きや手紙など、雰囲気を盛り立てる道具立てはまずまず。それなりによかったのだが、動機が…抽象的かな 「貸しボート十三号」 表題作。公園の水辺に浮かんだボートに男女の死体。何と、2人とも首を切断されかけたままの状態、ボート内は血の海。表紙絵のイメージも頭に浮かび、おどろおどろしさ満点。大学のボート部を舞台に、男女の愛憎劇が展開される。一番の謎「切断されかけ」たままの首の意味に対する答えとしては、まずまずだったように思う。 「堕ちたる天女」 白昼、トラックの荷台から道路に落ちた石膏像。その中に、人の死体が塗りこめられていた。事件関係者はストリッパー界隈の人々。そこに同性愛の様相も絡んできて、いかにも乱歩・正史時代の作品っぽかった。 各話とも、横溝正史作品のイメージに沿う劇場的な話で、満足した。 ちなみに、本作の表紙絵はどうしても、湖底に女の顔が浮かんでいるバージョンが欲しかったのだが、手に入れることができてうれしい。 |
No.17 | 6点 | 悪魔の降誕祭- 横溝正史 | 2024/10/05 22:57 |
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近々殺人が起こるのではないか…と危惧して金田一のもとを訪れた女性が、事務所で殺害されていた。殺されていたのは、近頃売り出し中のジャズシンガーのマネージャーだった。やがて、そのジャズシンガーが開くクリスマスパーティーで、さらなる悲劇が起こる(表題作)
2件目の、ジャズシンガーのパーティでの殺人事件解明が物語のメイン。密室ではないものの、なかなか不可解状況での殺人で、その真相もなかなか興味深いものだった。併せて収録されている2編もまずまずの仕上がりで、個人的には特に「霧の山荘」がよかった。 とはいえ、「霧の山荘」。私立探偵が、遺体を発見しておきながら、即通報もせずに懇意の警部とともに秘密にしておくなんて……しかもそれを捜査本部に明かしたときに、咎められもしないなんて……ありえないよね |
No.16 | 5点 | 仮面城- 横溝正史 | 2024/10/05 22:48 |
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ジュヴナイルということで、少年探偵団張りの活劇要素が強い。表題作などは、まさにそう。現実離れした、いかにも小中学生向けの過剰に動的な展開で、ミステリや推理を楽しむというよりは少年向けのスリラー小説といった感じ。
決して悪いわけではないが、そういうことで評価はこのぐらい。 |
No.15 | 6点 | 蝶々殺人事件- 横溝正史 | 2021/12/31 15:24 |
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表題作は、殺害現場をくらますための手の込んだトリックに加え、「意外な犯人」を演出する描き方もなされており、作者の脂の乗った時期に書かれた力作であることが十分に感じられた。
コントラバスケースという道具立てを生かした、トリック重視の本格であり、動機などはかなり抽象的。だが作中の「殺人事件の場合、いつもその動機を具体的な事実に求めようとすることは、間違っていると思う」という由利麟太郎の言葉が、そのまま正史のスタンスを表しているのではないかと思うし、確かにそんなものかもしれないな、とも思えてくる。 他2編は、怪奇趣味を前面に出した小粒の短編。総じて、隆盛期の横溝正史の魅力が堪能できる一冊だと思われる。 |
No.14 | 8点 | 病院坂の首縊りの家- 横溝正史 | 2021/01/03 21:00 |
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なんだか本サイトではあまり評価が芳しくないが、私はかなり楽しめた。
昭和28年に起きた生首風鈴殺人事件。真犯人と思われる小雪という女性の手記と失踪で、一応の解決を見たように感じられた事件が、20年の時を経て動き出す。生首風鈴事件の被害者「ビンちゃん」がリーダーを務めていたジャズコンボの同窓会中、生首写真を撮影した写真館の当主が目の前で墜落死。次いでジャズコンボの元メンバーの一人も殺害され、20年前の真相を金田一が暴いていく。 生首が風鈴のごとく吊るされているという、正史らしい舞台演出もよかったし、愛憎交差する人間関係も各巻に付されている家系図でそれほど苦にならず理解でき、絶えず動的な展開に上下巻という厚みも苦にせず読み進められた。相似の人物の入れ替わりというトリックは確かにやりつくされた(特に横溝作品では)感はあるものの、婚礼写真撮影の謎や、胴体消失の謎など、そこには数々の謎が散りばめられており、それらを一つに結ぶ結末はなかなかに読み応えがあった。 氏の有名作品は閉ざされたムラ社会での陰鬱な展開のものが多く、もちろんそれは大きな魅力だが、本作は20年という時期をまたいで(作者の事情で結果そうなったようではあるが)比較的近代的な舞台となっており面白かった。 私としては金田一耕助シリーズの中でも決して見劣りする作品ではなかった。 |
No.13 | 6点 | 真珠郎- 横溝正史 | 2020/05/05 17:06 |
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由利麟太郎を探偵役とした初期作品。
だが、「謎の老婆」「妖艶な美男美女」「由緒ある旧家」「洞窟」…などなど、のちに爆発的人気となった金田一シリーズのテンプレートのような作りである。 後半に突如、隠されていた係累が明らかになるのも氏の作品ではよく見られるパターン。それを予期せずとも、真珠郎の正体は中盤以降で分かった。物語から読み解いたの半分、あと半分は横溝作品をいくらか読んでいることによる推察。 とはいえ、時代を感じさせる持って回った登場人物の言動や妖しさのあふれる筆致、凄惨な事件の様相など、分かっていはいてもやはり楽しませてくれた。 併せて収録されている短編の「孔雀屏風」も小粒ながら非常に秀逸で、報われぬ恋に落ちた女性の切ないまでの企みには唸るものがあった。 金田一シリーズほどの量感がなく、だからこそ横溝正史の世界をまず味わうには非常に適している作品ではないかと思った。 |
No.12 | 4点 | 悪霊島- 横溝正史 | 2018/09/17 12:40 |
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島、「本家」が幅を利かせるムラ社会、過去の謎の事件、カギを握る妖しい魅力の美女、男女の愛憎劇、双生児、洞窟……といった、「横溝テイスト」をふんだんに、悪い意味で「バランスよく」盛り込んだ無難な一作という印象。そういう意味では、集大成と言えなくもない。
トリックやアリバイというミステリ的な謎解きは皆無に等しく、謎の中心は「隠された人間関係」。推測はできるが推理とはいえず、しかも勘のいい読者なら上巻でほぼ全貌が見えてしまうだろう。それが裏切られるのならまだしも、結局予想通りの真相をなぞる後半になってしまい、謎解きの面白さはほとんどない。 先にも書いたように、横溝テイストがたっぷり盛り込まれていることは間違いないので、その作品世界や雰囲気自体が好きという読者にはそれなりに好まれる作品かもしれない。 |
No.11 | 6点 | 迷路の花嫁- 横溝正史 | 2018/03/31 20:37 |
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ミステリとしては△(というか金田一もほとんど登場せず、推理要素はほとんどない)だけど、話としてはなかなか読ませる〇。これが総合評価。
始まりの事件現場は結構陰惨な感じなのだが、それ以降は時代を感じさせるどろどろとした風俗的な人間模様の話に。捜査とかトリックとかの話はほとんどなく、完全に通俗小説化する(乱歩の作風に近いと感じた)。 ただ、それがそれで結構面白くて、暗躍する松原浩三なる人物の動向から目が離せなくなる。繰り返すが、ミステリとしては安っぽいが、結構読ませる作品だった |
No.10 | 6点 | 女王蜂- 横溝正史 | 2017/10/12 20:12 |
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謎が随所に散りばめられ、いろいろと仕組んであり、長編にも耐えうる内容だと思うのだが、本サイトの評価をはじめとした、他作品より一段劣る評価にも共感できてしまう…なんでなんだろう?
19年前の男の謎の死をはじめ、次々に起こる殺人と、絶世の美女、琴恵・智子母子を巡る愛憎劇。通俗小説の色が濃いという評価もあるが、人物の謎の言動、密室の謎など、自分はミステリとしてもよく練られていると感じたし、退屈しない展開で読み進められるのだが…なぜか「どっぷり」できないままにサクサク進んでしまった感じ。ホントになんでなのか、自分でもよくわからない。少なくとも読み易くてよかったとは言えるのだが。強いて言えば「不気味さ」「陰惨さ」が足りないのかな…? そんな感覚だから、高評価をつけている人がいるのも逆にうなずける。密室の真相にはちょっと拍子抜けする感もあったが、19年前の事件の真相などはうまいぐあいに考えられていると思った。 そんなこんなでこの得点だが、横溝ファンは少なくとも読んで損はない作品だと思う。 |
No.9 | 3点 | 悪魔の百唇譜- 横溝正史 | 2017/10/08 07:56 |
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イマイチ。
トランクに詰められた死体、トランプのカードに刺し貫かれた凶器と、謎の提示は魅力的なのだが、前の皆さんの書評にもあるように、とりたてて印象に残らない凡庸な登場人物が多く出てきて、誰が誰だったか思い返しながら読み進めるのが苦痛だった。 推理も精緻さがなく、飛びが多い気がするし、犯人も「怪しんで当たってみたら、ビンゴだった」というような印象。推理の中に「いったんどこかに隠しておいて…」とか「おそらく〇〇から聞いて知っていたのだろう」というような、大雑把なあて推量が散見していて、何だか・・・。後半は「とりあえず読了だけはしよう」という思いで読んでいた。 |
No.8 | 4点 | 迷路荘の惨劇- 横溝正史 | 2017/08/20 16:48 |
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没落した華族が盛期に建てた、抜け道やからくりが仕掛けられた通称「迷路荘」に、関係者が一堂に集まる機会がもたれ、そこで連続殺人の惨劇が起こる。
客人が来る前日に、怪しげな片腕の来訪者があり、そのことに不穏さを感じた館の主人は金田一を呼び寄せるが、案の定、ついたその日から殺人劇が繰り広げられる。 横溝らしい舞台設定ではあるのだが、何故か期待するおどろおどろしい雰囲気に欠けた。なぜかなぁと考えてみると、関係者一人一人を呼んでの事情聴取があまりに冗長でちょっとうんざりしてくる上に、そこでやけにアリバイが検討される割には、結構真相ではそのへんはざっくりしていたから、余計に無駄に感じたことかなぁ。 事件自体も、第一の殺人は不可解な謎が多くあり、「らしい」感じがしたが、第二以降はそうでもなく、お決まりの洞窟やらなんやらでごちゃごちゃしてきて、何となく尻すぼみの展開に感じた。(結局、抜け道のはしごにやすりをかける細工をしたのは誰だったの???) 一言で言えば「無駄に長い」印象があり、読み進めるのがちょっと面倒になった。 ただラストは好きなタイプのひっくり返し方だった。 |
No.7 | 5点 | 三つ首塔- 横溝正史 | 2017/08/18 21:14 |
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題名に世間が(私も)イメージする横溝作品らしさを感じて、期待して手に取ったのだが、ミステリとしてはいま一つかもしれない。
胸糞が悪くなるような愛憎劇と濡れ場の連続、その合間にサクサク起こる殺人劇と、そういうテイストは十分「らしい」のだが、真相がちょっと一足飛び過ぎ。 雰囲気的に「そうなんじゃないの」とは推測できても推理はできない。そもそもミスリードとなる「真犯人以外の人物」についてはアリバイが検討されていたのに、最後にいきなりの種明かしで出てきた真犯人は、どうやって、どのように犯行を重ねていたのか?の検討や説明、さらにはそれまでの伏線もほとんどないと感じる。 一方で、当初ダントツで怪しい主人公格の男性が、良い印象に変貌していくさまこそ、意外に感じてうまくだまされた。「騙し」だと思ったら「騙し」じゃなくて本当だった、という逆の意味で。 |
No.6 | 6点 | 夜歩く- 横溝正史 | 2017/08/18 20:57 |
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話題になっているように、海外某作品で物議を醸した「あの手法」を横溝正史が使うとは… 良くも悪くも、イメージではなかったので驚いた。
ただ、先行の海外某作品は、はっきりと一か所、そのために記述をごまかしている部分があるのに対して、この作品ではそれはない(よね?)。そもそも創作文章の体なので、そういう部分を描いていないというだけのことだが。よって、後発であったこともあって、最後の種明かしでそれほどアンフェアという印象はないのかもしれない。しかし考えようによっては、海外某作品はその「ごまかし」の部分がある意味読者にとってのフェアな(?)手がかりになっているともいえるのだが(とはいえ何といっても最初の試みなので、そんな可能性は一顧だにせず読んでいる読者にとってはやはりアンフェアに感じたこともあるだろう)。 刀の密閉状況のトリック、首の部分の発見のトリックなどは、その場のちょっとしたことの流れでいくらでも破たんする、綱渡りのような(運に頼る部分の大きい)もののように感じるが、猟奇的な事件、複雑に絡み合う親族関係など、横溝テイストがこれでもかと凝縮されており、全体的には満足できた。 |
No.5 | 9点 | 本陣殺人事件- 横溝正史 | 2015/04/07 21:14 |
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トリックは「なんとなく」イメージできる程度だが、まぁそれでいいんじゃないか。むしろ密室とされた動機や、「三本指」の真相、猫の墓の関わり方など、緻密なまでの作者の仕掛け・策に脱帽。確かに「探偵小説」と呼ばれていた時代の、策ありきの様相は色濃いが、本格ミステリの王道をいく、世評の高さに偽りなしの作品と感じた。
3作目の「黒猫亭事件」が光っている。これに類似の発想で描かれた短編は現在多くあるのではないか。表題作があまりにも有名だが、2編目の「車井戸はなぜ軋る」も含め、非常にクオリティの高い、贅沢な一冊である。 |
No.4 | 7点 | 悪魔が来りて笛を吹く- 横溝正史 | 2015/03/08 19:36 |
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密室トリック,なかなか納得◎。しかもこの厚みと展開の中ではそれはあまり重要ではなく,純粋なフーダニットで◎。しかしこの人の作品を読んでいると,華族とか名家とか,そういう高尚な家柄の人間は何か歪んでいるという偏見をもってしまう。
後半怒涛の勢いで分かってくる新事実が多く,飛躍的な想像やなんとなくの勘でしか真相を事前に看破できる感じはないとも思うが,「悪魔が来たりて…」のフルート曲に隠されていた真実には思わずうなった。そこで+1点してこの点数。 横溝作品にしてはすらすら読める印象が強かった。 |
No.3 | 7点 | 犬神家の一族- 横溝正史 | 2013/02/16 13:29 |
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新版「東西ミステりーベスト100」に触発されて再読。
遺産相続にまつわる親族同士の泥仕合が、見立て殺人、顔に大やけどを負ったデスマスクの青年、という映像的インパクトの強い描写によって彩られている作品。そうしたインパクトがあまりに強いのと、角川が版元として初めて映画製作に乗り出した、いわゆる最初の「角川映画」であることとで、世ではもっとも有名な横溝作品とも言える。 トリックでは、ちょっと無理なのではないか、偶然がすぎやしないか・・・と思えるような離れ業・ご都合主義もあったり、真犯人もさほどインパクトを感じなかったり、といった感もある。が、この作品の魅力はその雰囲気であり、それでいいと思えた。 しかし、どう考えても「もめごとを引き起こすため」としか思えない、佐兵衛翁の遺言状は・・・・。 |
No.2 | 8点 | 獄門島- 横溝正史 | 2013/02/16 12:56 |
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新版の「東西ミステりーベスト100」に触発されて再読。
伝統的であるがゆえに閉鎖的な田舎の村、身分や階級が根強く残るやはり閉鎖的な人間関係、そこで起こる不可解な見立て連続殺人・・・と、氏の代名詞的な魅力が凝縮され、横溝作品の中でも最高傑作と名高いのもうなずける。 連続殺人のトリックや真相につながる伏線が、人物の言動や鬼頭家の背景を描く中に巧みに描かれている。視覚的なインパクトやおどろおどろしい雰囲気が前面にある作品だが、ミステリとしての精緻さ、巧みさが織り込まれており、真相にたどり着いたときにはただただ感心した。「見立て殺人」の必然性は確かに弱い(というかない)が、この場合はそもそも殺人動機とそれが一体なわけで、自分はあまり気にならなかった。 それにしても結末は悲しすぎる。どこまでも救われないこうした結末も、横溝作品の多くに見られる特徴ではないか。 |
No.1 | 9点 | 八つ墓村- 横溝正史 | 2011/01/08 21:43 |
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因襲はびこる閉ざされた村,広い古屋敷に住む由緒ある家系・・・こうした,設定だけでも「背筋が寒くなる」横溝世界は,血しぶきが飛ぶホラーよりもよほど怖いと感じます。現代は三津田信三がこの路線を引き継ぐのみ,希少な作家であり作品です。
そうした横溝世界がこれでもかと味わえる作品。夜読んでいると,トイレに立つことが出来なくなります。この作品のモデルとなった「津山三十人殺し」という事件が実際にあったことを知り,ますます震え上がりました。 |