皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.421 | 5点 | マル暴総監- 今野敏 | 2017/05/03 22:02 |
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「マル暴甘糟」シリーズ第2弾(ということを読んで知った。第1弾は未読)。
甘糟は、上司に少しきつい言い方をされるだけで「ひゃあ、すみません」と言ってしまうような”史上最弱のマル暴刑事”。凄みを利かせる同僚たちの中で日々、肩身が狭そうに仕事をしている。そんな甘糟を主人公にした暴対もの。 この作品はかなりエンタメ寄りで、警視総監が「暴れん坊将軍」よろしく白いスーツ姿で繁華街に表れ、マルBたちの悪事を成敗しているという現実離れした話。まぁでも殺人事件の捜査本部があり、犯人を捜査するストーリーにはなっているので一応ミステリ要素はあるが、メインは警視総監と甘糟、そして甘糟の相棒(上司)郡原を巻き込んだ警視総監隠しという感じ。 さっと読めて痛快に笑える、そんな一冊。 |
No.420 | 8点 | 禁断- 今野敏 | 2017/05/03 21:47 |
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「ハマの用心棒」と呼ばれ、暴力団からも恐れられる みなとみらい署の暴対係長・諸橋を主人公としたシリーズの第2弾(第1弾は未読(笑))
横浜・元町で大学生がヘロイン中毒死した。捜査に乗り出した諸橋と相棒・城島。最近横浜にヘロインの供給が急増していること、それに合わせるように関西のマルBがこぞって横浜に乗り込んできているということ、それらには田家川組が何らかの関わりを持っていそうなことなどがわかってくる。 そんな中、2人のもとに宮本という新聞記者がやってきて、ヘロインの供給源は中国とほのめかすような話をした。するとその直後、新聞記者が本牧埠頭で殺害され、事件は一気に深刻な様相へと展開する。ヘロイン供給の黒幕は誰なのか、宮本殺害の犯人は誰なのか—横浜を舞台にした、暴力団との戦いが始まる。 関西系暴力団の動き、街中で頻発する小競り合い、記者の殺害、ヘロイン供給ルートの解明など、さまざまな要素が作中で絡み合ってくるが、それらを一つに結んでいく捜査過程は読み応えがあり、ミステリとしても一定の完成度があると感じる。 諸橋が自分のことを嫌い、疎んじているとばかり思っていた上司や同僚が、実は自分を認めていると気づく、といったような、今野氏らしい「職場の男たち」描写も全開で、とても痛快。 かなりよかった。 |
No.419 | 7点 | 傷だらけのカミーユ- ピエール・ルメートル | 2017/05/03 21:11 |
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相変わらずの疾走感で、読み応えがあったし読み易かった。ただ、周囲の理解を得ることもせずに(事情が事情だけに仕方がないが)単独で突っ走り、無茶をし続けるカミーユにはやきもきして、読んでいて何だか疲れる感じもあった。
後半に明かされる真相も、特に「アレックス」を読んだ読者なら早い段階で気付くのではないかと思う。そういう仕掛けがあるので、ミステリとしても評価できる作品だが、それにしても悲しく切ない話だなあと思う。 ただ、カミーユとアンヌの馴れ初めについて「そんなうまいことハマるか?」「そんな回りくどいことするか?」と感じたり、アンヌがこうなってしまったことの理由付けが、「それだけでここまで許されるか?」「そう思おうとしているカミーユの未練?」と感じたりして、座りが悪く感じる部分もあった。 結局アンヌの本心はどうだったのだろう・・・? |
No.418 | 6点 | 煽動者- ジェフリー・ディーヴァー | 2017/04/23 21:40 |
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キネシクスを駆使して嘘を見破る尋問のスペシャリスト、キャサリン・ダンスを主人公としたシリーズの最新作。
物語は、ある殺人事件の関係者(容疑者)の尋問にあたったダンスが「彼は無実」とその人物を解放したが、直後にそれが当の殺人犯だったことが判明し、捜査から外されるところから始まる。 その結果回された担当は、コンサート会場の小火騒ぎから起きたパニックにより死者が出たという事件。しかしこれが、不運な事故ではなく実は故意に仕組まれたものだったことがわかり、捜査はにわかに深刻さを増す。続けて映画館でも「仕組まれたパニック」が起き、同一犯の悪質な事件であることが明らかになっていく。 物語のメインはこちらの事件の捜査なのだが、冒頭の取り逃がした犯人の事件捜査も同時に進行し、さらには同僚マイケル・オニールが手掛けている農場主の失踪事件も間に入って来て・・・と複線の多い話で、いろんなところに話しが飛ぶのでちょっと読みづらい感じはあった。(この複線が「伏線」になるのかは・・・読んでみて) ミステリとしての破壊力は同シリーズの(ライムシリーズ含む)高評価のものに比べるとあまり。ただ個人的に、ダンスのシリーズはライムシリーズよりも「人間味」「人間臭さ」があって、謎や仕掛けの部分以外もなかなか面白い。未亡人として二人の子を育てる母としての悩み、恋愛事情など、どこか俗っぽい感じが読み易さを後押ししている。 余談だが、このシリーズの作品を読む間隔が空くと、はじめいつもキャサリン・ダンスとアメリア・サックスがごっちゃになる(笑) |
No.417 | 7点 | 防波堤- 今野敏 | 2017/04/23 20:57 |
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「ハマの用心棒」と呼ばれ、暴力団からも恐れられるみなとみらい署の暴対係長・諸橋を主人公としたシリーズ短編集。
相棒は、諸橋の降格人事がなければ自身が係長になっていたはずの「係長補佐」城島。とはいえ「お前がいなけりゃ俺が係長になってたんだ」とニッと笑って諸橋に言えるほどの間柄。諸橋の足りない所や気付かない所を補う抜群の相性で、横浜の町に起きる事件や抗争を治めていく。 起承転結のはっきりした一話一話で、非常に面白い。それぞれに楽しめるので、短編集というスタイルもよく合っていた。同シリーズの他のものも読みたくなる一冊。 |
No.416 | 7点 | 精鋭- 今野敏 | 2017/04/23 20:41 |
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警察小説であることは間違いないが、ミステリではなかった…ごめんなさい。
大学時代ラグビーで鍛えた体育会系の新人警察官が、SATに入隊するまでを描いた物語。主人公には決して強い上昇志向や野望があるわけではなく、目の前にあることに一心に取り組む姿勢、そしてその中で自分の進むべき道を模索する姿がある。辛く苦しい訓練に、ある意味「なんとかなるだろう」ぐらいの勢いで取り組むうちに、精鋭部隊であるSATに入ることになっていく。 相変わらずの端的な描写で、組織に生きる男の痛快な生き様を描いている。 |
No.415 | 7点 | 猫には推理がよく似合う- 深木章子 | 2017/04/08 17:21 |
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ここまでの方々のおっしゃるとおり・・・何を書いてもネタバレになる(笑)
少なくとも、他の深木作品を読んでいる人は、期待していいですよ。 しかし、還暦を過ぎてから作家になった方ですが・・・すごいですね! |
No.414 | 5点 | 怪談のテープ起こし- 三津田信三 | 2017/04/08 17:17 |
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自殺者が最期に残した肉声のテープをおこす、という入りはかなり気持ち悪く、期待したのだが、全体としては小粒な怪異譚を集めた短編集という印象。
現実にこの短編集を編集者と共に編む過程も描かれ、その中でおきた怪異も幕間として書くことで現実感をもたせているが、そうやって現実に寄せる分、怪異性はどうしても小粒になってしまう。 「本当にあった」ということ自体を、ホラー感を醸し出す一番の効果としているのだとは思うが・・・・ |
No.413 | 7点 | 暗い鏡の中に- ヘレン・マクロイ | 2017/04/08 16:57 |
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ここまでの書評を読んで、サスペンスと本格が融合しているというのが本作の特徴とのこと。なるほど。ジャンルには疎いというか無頓着なので(作品の追加の時にもいつも困っている(笑))…
ただ結局、マクロイが基本は本格の作家ということを知っているので、物語の核となる不可思議現象も、はじめから現実的解釈を考えてしまい、サスペンスの雰囲気を味わったとは言い難かった。 作品は普通に面白かった。真相は、トリックについてはちょっと拍子抜けだったが、それ以上に背後にあった人間関係が面白かった。何気ない場面でそのことの伏線が張られていることも、さすがのお手並みと感じた。 |
No.412 | 7点 | 黒面の狐- 三津田信三 | 2017/03/20 23:28 |
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久々の三津田ワールドって感じで、よかったんじゃないでしょうか。
戦後の炭鉱社会の薀蓄は単純に面白かった。やっぱり自分があんまり知らないことについて知る(くどくない程度に、わかりやすく)ってのは楽しいんだなぁと改めて実感。坑内の薄暗い感じと、さびれた炭鉱村の様子がよくマッチしてて、雰囲気出てたと思う。きっと映像化しても面白い(ただし、昨今の洗練された映像とイケメン・美女の組合せではなくて、昔の横溝映画のような、野暮ったさと辛気臭さ、泥臭~い感じでね) ラストに畳みかけられる、「可能性を一つ一つ潰していく」という論理性とセットの「どんでん返しの連続」にはもう慣れた。でも、と言いながら……それを期待していた!!(笑)それなりに満足。 筋道やからくりはわからなかったが、正直、真相は想定内というか予想していた。 |
No.411 | 5点 | コリーニ事件- フェルディナント・フォン・シーラッハ | 2017/03/05 10:50 |
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初の長編小説ということだが、淡々と事実の描写を重ねていく筆致は「犯罪」「罪悪」と変わらず、「小説としての味が弱い」と感じる人がいるかもしれないが、私は読み進めやすくてよかった。
最初は、殺人の動機を探っていくホワイダニットかと思っていたが、物語のテーマはもっと深く、ドイツに戦後も色濃く残る戦争の傷といった社会的なもの。変な言い方だが勉強になった。 ごてごてと余分な回り道や冗長な描写がなく、適度な厚みではないかと思う。 |
No.410 | 6点 | ジョイランド- スティーヴン・キング | 2017/02/26 19:37 |
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ミステリではある。ただ、それがメインではない。
彼女と遠距離恋愛になった大学生が、遊園地でひと夏のバイトをすることに。その遊園地では、昔あるアトラクションで若い女の子が殺される事件があり、しかも犯人はつかまらずに迷宮入りになっていた。以来、そのアトラクションでは殺された女の子が「出る」といううわさが。事件の真相に興味をもったバイト学生は、次第に深入りしていく。 と、説明をすればミステリ色が濃いイメージを持つが、物語は(特に前半は)、遠距離恋愛の彼女との恋の行方や、遊園地のスタッフと関係を築いていく話。後半には、筋ジストロフィーの少年とその母親との交流へと話の主軸は移っていくが、いずれにせよ、そうした青春小説的要素の方が強い。・・・・ただ、それが面白い。 一応、昔の少女殺害事件の犯人を探るフーダニットはある。ただ、何をもって真相に至ったのか、読んだ後も私は理解していない・・・ |
No.409 | 6点 | 自殺予定日- 秋吉理香子 | 2017/02/11 21:51 |
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よく言えばシンプルでわかりやすい、悪く言えばまぁ、浅い、かも。だからリーダビリティは高く、あっという間に読破できる。自分はそれなりに満足できました。
真相はまま予想されたけど……いい転がり方で読後感は良好、そういう意味でもよかった。(ある意味最後のダークなどんでん返しに身構えてもいたが…) 「暗黒女子」を読んでて手に取ったけど、人並由真さんいわく、これは氏にしてはイマイチで「放課後に死者は戻る」がかなりよいらしい。実は図書館で迷い、新しい方をとったのだが、そういうことなら読んでみよう。 |
No.408 | 7点 | アルテーミスの采配- 真梨幸子 | 2017/02/11 11:39 |
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「アルテーミスの采配」と題された「週刊全貌」の企画は、「AV女優の素顔を暴く」という名目でインタビュー記事をまとめるというものだった。だがそのはずが、取材されたAV女優が次々に殺害され、取材にあたった名賀尻に困惑が広がる。やがて、企画の裏に、黒幕や邪悪な計画の存在が匂い始める。取材対象となったAV女優の連続不審死の真相は?そこにある黒幕の正体は?
AV業界を題材としながら、芸能界の光と影や、富や名声にあこがれる人の俗的な本質を描くさまはなかなかに興味深く面白かった。この作家は、そういう俗っぽい人間欲や心の弱さなどを、登場人物の心情描写や語りによって描くのがなかなかに上手い。端から見れば、無思考に、流されて愚かなことをしているようにしか見えない人たちの内面を上手に言語化していると思う。 個人的には、「殺人鬼フジコ」は話が進むにつれてだんだんと大味になっていく印象があったが、こちらはそれよりも丁寧に作りこまれていると感じた。 |
No.407 | 8点 | ぼぎわんが、来る- 澤村伊智 | 2017/02/05 15:58 |
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第22回日本ホラー小説大賞受賞作。
東京の製菓会社で働く新婚の田原秀樹のところに、会社の後輩が訪問者の取り次ぎに来る。後輩が話す伝言には誰も知らないはずの、生まれてくる娘の名前が。慌てて向かうがそこには誰もおらず、かと思うと、急に後輩の腕から血が滴り出す・・・。その後入院し、憔悴しきって会社を辞めてしまう後輩。その後も次々に起きる不審な電話やメールに、秀樹は幼いころ祖父に聞かされた、「ぼぎわん」という化け物の話に思い至る。 途方に暮れる秀樹は、幼馴染の大学教授の伝手で霊媒師・比嘉真琴と、オカルトライターの野崎を紹介してもらい、その力を借りて解決を図ろうとするが― 第一章は上記の田原秀樹の視点で描かれるが、その後第二章では妻の香奈、三章はライター・野崎の視点で描かれる。視点人物の入れ替わりにより、見えていなかった事実や心理が明らかにされ、ことの全貌・真実が次第にはっきりしてくる構成が秀逸。 民俗学を下敷きにして「ぼぎわん」という名の由来や伝承が描かれていることも面白く、ホラーでありながらも幾分かのリアリティを感じる作品になっている。 まるで映画を見ているかのように臨場感を感じながら一気に読んでしまうが、決して安っぽい疾走感で引っ張っているのではなく、緻密に練られたプロットと人物描写で読ませる筆力があった。 よかった。 |
No.406 | 5点 | 小鬼の市- ヘレン・マクロイ | 2017/02/04 17:51 |
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不審な死を遂げた報道機関の支局長・ハロランの後釜に上手いこと収まったフィリップ・スタークという主人公が、その死の真相を追っていく物語。現場に残された不可思議な状況からの謎の提示は魅力満点、その後のストーリーも平板な部分がなく、飽くことなく読み進められるが、ただ大戦中の政治事情が色濃く関係してくる点が難解だった。
ラストは怒涛の勢いで伏線が回収され、マクロイの作りの巧みさが実感できる。ウィリングの登場の仕方は薄々わかっていたので驚かなかったが…。 上記したように、当時の政治事情、各国の立ち位置についてそれほど知識がなく、その点で難しさを感じたので読者としてこの点数となった。作品のクオリティは高いと思う。 |
No.405 | 6点 | 真実の10メートル手前- 米澤穂信 | 2017/02/04 17:35 |
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「王とサーカス」を読んでからこちらを読んだ。「さよなら妖精」のシリーズは読んでいないので、逆から進んでいる感じか(?)。印象として、「王とサーカス」よりも主人公・太刀洗の無骨な雰囲気が強かった。話としてもブラックな要素が強い。こっちの方が好みかも。
作りのクオリティは、話によってややまちまちだった感はある。 |
No.404 | 6点 | ブラック・ヴィーナス 投資の女神- 城山真一 | 2017/01/23 21:23 |
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2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作。
依頼を受けて、株式投資によって希望の金額まで増やす稼業を営む都市伝説の女「黒女神」こと二礼茜。大手銀行を辞めて公機関で働いていた百瀬良太は、ひょんなことから彼女の仕事を手伝うことになる。 卓越した能力をもつ美人女性と、付き人さながらにアシストする冴えない男、多くの謎に包まれた女性の背景と、それが次第に明らかになっていく様子、など、非常に大衆受けしそうな内容で、映像化向き。実際にリーダビリティも高く、サクサク読める。現実離れした点は多分にあるが、エンタメと割り切って読めばそれはそれでよし。 |
No.403 | 8点 | パイルドライバー- 長崎尚志 | 2017/01/23 21:03 |
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住宅街で起きた一家惨殺事件は、15年前に未解決となった事件に酷似した状況だった。退職して家業を継ぐことを考え始めていた刑事・中戸川俊介は現場に向かうが、そこに表れた男に脳天チョップを食らわされる。それは15年前の未解決事件を担当していた、“パイルドライバー”の異名をもつ元名物刑事・久井だった。アドバイザーとして捜査に関わることになった久井とコンビを組むことになった俊介。ぞんざいな態度に始めは反感を感じる俊介だが、類まれなる刑事としての嗅覚と捜査手腕に、次第に見方を変えていく―。
軽快な文体とキャラ立てのよさ、なかなか巧みに仕組まれた伏線で、飽くことなく読み続けられる。捜査路線は15年前の事件との2本立てになるので、やや諸要素が複雑でややこしい点もあるが、逆に言えばよく考えてあるというか、 凝った仕掛けともいえる。脚本家(?)出身らしく、作家としてはあまり聞いてない名だが、普通に十分面白かった。 |
No.402 | 7点 | 逃げる幻- ヘレン・マクロイ | 2017/01/07 19:23 |
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マクロイ作品初読だが、「なんて上手い作家なんだろう」というのが素直な感想。大戦後のヨーロッパの社会情勢、玄人好みの上質な書を書くが売れない作家の夫と大衆的で低俗だが売れている作家の妻という夫婦事情、その他複雑な家庭事情・人間模様が見事にクロスして描かれ、精密に絡んでいる。衆人環視化の中での人間消失、ムアでの殺人、密室殺人と魅力的な謎が順次提示され、様々な謎が積み重ねられていくのだが、ウィリングによる謎の解明がまた見事。
密室の真相がちょっと拍子抜けしたが、それ(密室トリック)だけが単独にならず、犯人解明のライン上に乗っていたので〇。 ただ、当時についての知識があまりないので、特にムア(?)などの描写についてイメージがあまり浮かばなかったのが難点…。 |