皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1153件 |
No.573 | 7点 | そしてミランダを殺す- ピーター・スワンソン | 2018/12/23 20:02 |
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これまでの諸表の点数に流されてしまった面は否めないが、面白いことは保証できる。それは、筆者のリーダビリティの高い文章力によるところが大きい。
仕掛けとしてはさほど目新しさはないかもしれないが、ブッ飛んだ女の性根、偶然も相まって(犯罪が)上手くいってしまいそうな展開など、面白さが持続して読み進めてしまう力がある。特に最後のほうの、追い続けていた男の癖による救われ(かけ)かたは面白かったし、結局すべてが瓦解するラストも妙だった。 女としてどっちが上手(うわて)か?みたいな後半は、多くの読者は心情的にリリーに味方する感じ? 面白かった。 |
No.572 | 7点 | 翼がなくても- 中山七里 | 2018/12/15 10:15 |
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犬養隼人と御子柴礼司の競演というのが、シチリストにとってはたまらない。
ミステリの真相としてはいたってシンプルで、ネタだけで見れば短編でも収まりそうな内容だが、障害者アスリートやそれに貢献する科学技術研究をテーマとして物語を膨らませ、読み応えのある作品となっている。全て筆者の、巧みな人間描写をはじいめとした筆力の為せる技で、さすがである。 沙良のライヴァルの多岐川早苗の、超然としたプロ意識がかっこいいと思った。 |
No.571 | 6点 | 女が死んでいる- 貫井徳郎 | 2018/12/15 10:04 |
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「女が死んでいる」…酔いつぶれて眠った次の日の朝、見覚えのない女の死体が部屋にあった。
「殺意のかたち」…公園で毒物によって死んでいた男。男は少し前に、クモ膜下出血で亡くなった別の男性に30万円という少なからぬ香典を送っていた。 「二重露出」…脱サラして開業した店の前の公園に居ついたホームレス。その悪臭により経営に支障をきたしていることに業を煮やした二人の店主。 「憎悪」…女性が契約的に付き合っているのはプライベートを一切明かさない男。その素性を探ると、有名ファッションデザイナーに結び付く。 「殺人は難しい」…夫はどうやら「ミホ」という女と不倫しているらしい。その殺害を決意した妻だったが― 「病んだ水」…産廃処分場の建設を進める社長の娘が誘拐された。だが、身代金の要求額は「30万円」。場違いに少額な身代金の意味は? 「母性という名の狂気」…いけないとわかっていながら娘への虐待をやめられない。その胸の内が語られている日記の真相。 「レッツゴー」…絶えず男に恋しては振られている姉を呆れたように見ていた妹。そんな妹がついに、自身の恋愛に目覚めた。 叙述的な仕掛けにより、すべての話にいわゆる「どんでん返し」が仕組まれている。ああなるほど、と思えるものから突飛なもの、強引なもの、よく分からないものまでいろいろだが、平均的に楽しませてくれる一冊ではある。 「病んだ水」は様態的にはクリスティの某有名作に似ているが、トリックとして一番頷けた。「殺人は難しい」は、笑ってしまうようなネタだが、発想として面白かった。 |
No.570 | 6点 | 崩れる 結婚にまつわる八つの風景- 貫井徳郎 | 2018/12/08 16:42 |
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著者初の短編集ということらしい。巻末には著者自身が「短編に苦手意識があった」と述べているが、もともと力量の高い作家さんだと思うので基本的に高質で巧みな短編だと思った。
良かったのは表題作「崩れる」と2作目「怯える」。 「崩れる」では、硬質な文体の文中で、夫のことを何度も「カス」と表現しているのがおかしくて仕方なかった(笑)。こういう類の作品ではしばしばでてくる「自分ではそう思っていないダメ夫」だが、ここまでの例は稀にしても、現実に結構近いタイプの男はいると思う。 「怯える」は仕掛けとして一番よかった。この短編集中で唯一(じゃなかったかな?)問題が解決に向かう終わり方をしていて、ホッとした。 劇的な満足感はないかもしれないが、サッと読めちゃうし、小粒な良作が揃っているので、長編を読む合間などにオススメ。 |
No.569 | 8点 | あしたの君へ- 柚月裕子 | 2018/12/08 16:25 |
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家庭裁判所調査官は、少年事件や離婚問題の背景を調査して、裁判官をサポートする仕事。望月大地は、この春に家裁調査官に採用され、調査官補として見習い期間中。「自分は本当にこの職に向いているのか」―常に疑問と不安を抱きながらも、担当された案件で当事者たちに真摯に向き合っていく。
窃盗を犯した、家族でネットカフェに住み着いている17歳の少女。モトカノへのストーカー行為を犯した、品行方正な男子高生。傍から見るととりたてた問題は感じないのに、夫との離婚を強く望む女性。などの、それぞれの案件の裏にある、表面的には見えない事情や真相が、大地の調査によって明らかになっていくという連作短編集。 はじめに調書を読んだだけでは見えなかった内部事情が、少しずつ明らかにされていく展開は「日常の謎」タイプのミステリになっていて、十分に面白い。題材が家裁調査官のため、どの話も必然的に「家族」を問う内容になっていて、人間ドラマとしても読ませる内容である。 これ、シリーズ化してほしいなあ。かなり面白かった。 |
No.568 | 8点 | 連続殺人鬼 カエル男- 中山七里 | 2018/12/01 20:46 |
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フックで顔面を貫通させられ吊るされた女、車のプレス機で圧縮され肉塊にさせられた男、五体をバラバラにされた上に臓器までバラバラにされた少年……と、酸鼻を極める連続殺人と、そこに残された「きょう、かえるを・・・」のメモ。
こういう話、大好き。 解説を読んで初めて知ったのだが、本作品は著者のデビュー作「さよならドビュッシー」とともに「このミス大賞」の最終候補に残ったのだとか。同作者の作品が最後まで残るのは異例のこと(そりゃそうだろう)で、最終的に「ドビュッシー」に軍配が上がったのだが、審査員の中にはこちらを推す人もいたそうで。 このエピソードからも、中山七里の並外れた才能が窺える。 何がどうなって、の仕組みはともかく、正直、真犯人は登場の時点でそうではないかと思っていた。そういう意味ではあたってしまった。だが、作中に挿入される過去の話の人物の正体には完全にヤラれた。「そういうこと!?ヤラれた!!」と思わず声に出して言ってしまった。 ラストのオチも秀逸。始めから堂々と示されているのに、気付きそうで気付かない盲点を作る点で天才だと思う。 とても楽しめた。 |
No.567 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~- 三上延 | 2018/11/25 18:41 |
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五浦大輔と栞子が結婚して7年。二人の間には扉子(とびらこ)という娘ができ、ビブリア古書堂を営みながら生活している。扉子は栞子の素質(?)を受け継ぎ、幼稚園児ながら本を読みふける毎日。そんな扉子が手に取った本を見て、その本に纏わるエピソードを話して聞かせる、というスタイルで書かれている。
このシリーズを読んできた人たちなら聞き覚えがある、坂口夫婦、志田、小菅奈緒などが次々に登場する。娘に話す話ということで、基本的にハッピーエンドのイイ話ばかりで、読後感もあったかい。 坂口夫婦の第一話と、新しい話だったが第二話がよかった。 今後扉子が成長して、「第二の栞子」のような話になっていくのだろうか。 |
No.566 | 5点 | 摩天楼の怪人- 島田荘司 | 2018/11/25 18:26 |
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往年の大女優、ジョディ・サリナスが死に際に御手洗に残した謎。サリナスの女優としての成功譚は、その道を阻む邪魔者を排除する「ファントム」によって支えられ続けてきたのだという。さらに、数十年前に起きたプロデューサーの銃殺事件の犯人は自分だという。しかし、犯行のあった夜は停電中でエレベーターは動かなかった。1階のプロデューサーを殺害するには、30階以上上に住むジョディには階段で昇り降りするしかないが、ジョディのアリバイの空白は10分ほど。挑戦的にその謎を突き付け、ジョディは天に昇って行った―
そこに住むブロードウェイ関係者が次々に殺されていく高層タワーマンション。ビル中のガラスが割れ、その時に転落死した建築家。そして、ジョディの不可能犯罪と、これでもかと不可思議な事件のオンパレードで、その解決はいかに図られるのか、期待と若干の不安をもって読み進めたが・・・結末は、「悪くはないけど目から鱗というほどでもない」といった感じ。 事件の真犯人については「そうきたか」という思いはあったが、種々のトリックは、発想の面白さは認めるけどやはり「飛び道具」の感が強く、種明かしをされてもうなずくしかない。 またこれまでの書評にもあるように、途中にあった「地下帝国」の話は何だったのか?伏線にするつもりで書いていたけど捨てたのか?最後まで何の関りもなく終わってしまって、非常に不思議だった。 |
No.565 | 5点 | 菩提樹荘の殺人- 有栖川有栖 | 2018/11/12 21:46 |
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<ネタバレの要素あり>
「アポロンのナイフ」 犯人ではなく、第一発見者の行動を解き明かす話だった。その行動の動機に物語のテーマがある。面白い趣向だし、うまいと思った。 「雛人形を笑え」 ネタとしては一番チープな感じなのに、なぜか一番印象に残った。 「探偵、青の時代」 火村の学生時代を知る女性によって語られる、当時の火村の推理譚。そう思うと小ネタっぽいが、推理は非常にロジカル。(ただこんなツレがいたらちょっと息苦しいかな…とも思った) 「菩提樹荘の殺人」 最近テレビで売り出し中のカウンセラーが別荘の池のほとりで殺された事件。警察が事件現場の池をさらって、いろんなモノが出てきてから一気にいろんなことが明らかになる急展開だった。 |
No.564 | 5点 | UFO大通り- 島田荘司 | 2018/11/12 21:27 |
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印象に残ったのはタイトル作よりむしろ「傘を折る女」の方だった。
ラジオに投稿された不思議な女性の話。「ある雨の夜、ベランダから外を見ていたら、白いワンピースの女性が横断歩道に傘を置いて車に踏ませて折り、もと来た方へ帰っていった」。このエピソードを聞いた御手洗潔が、安楽椅子探偵よろしくその事情を推理し、ひいては殺人事件の真相を看破する。 謎めいた冒頭に魅かれ、謎の女性側で描かれる事件の描写はスリリングで、単純に楽しんで読めた。傘を折ったあとのエピソードとそこからの御手洗の推理はちょっと偶然と一足飛びが過ぎる感はあるが、面白いのでまぁよい。 表題作「UFO大通り」はもっと現実離れしてる感じだった。 |
No.563 | 6点 | スティール・キス- ジェフリー・ディーヴァー | 2018/11/12 21:16 |
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デパートで殺人犯を追跡中のアメリアの目の前で、客がエスカレーターに巻き込まれる事故が。アメリアは救出を試みるも、客は死亡、さらには殺人犯も取り逃がしてしまう。その後もアメリアは追跡していた殺人犯逮捕に邁進する一方で、警察への捜査協力から身を退いたライムのもとにはそのエスカレーター事故の訴訟に関する依頼が。別々の案件に思えた二つだったが、やがてエスカレーター事故も犯人が仕組んだものであることがわかり、結局二人は手を取り合って捜査を進めることになる―
と、謳い文句に「ライムが捜査から撤退」とあっても結局大して変わらない。まぁそれでいいんだけど。そのほか物語では、麻薬密売者と接触するプラスキーの不穏な動きも伏線にあり、いろいろ絡み合っていて面白い。 今回は「どんでん返し」はわりとオーソドックスで、驚愕というほどではない。一般的な(?)ひっくり返し方という感じだった。 |
No.562 | 5点 | コードネーム・ヴェリティ- エリザベス・ウェイン | 2018/10/21 12:56 |
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大戦中のヨーロッパを舞台にした、戦争小説の要素も非常に色濃いミステリ。
第一部が捉えられた女性捕虜・クイ―二―の手記で、第二部がクイ―ニーの親友・マディの手記。第二部で、第一部の手記に施された仕掛けが明らかになる、という構成になっている。 とにかく第一部が読みにくい。大戦の構造について知識がないせいもあるが、現実と回想が入れ代わり立ち代わり書かれる展開に混乱し、外国的なユーモアだか何だかを交えた文章にもついていけず、かなり我慢して読み進めた。 第二部になり、その意味が明らかになっていくにつれ読むスピードは上がったが、個人的には「我慢の前半」という感じだった。 ミステリというよりは、戦時という困難な状況下での、美しく気高い女の友情といったことがメインテーマだろう。 |
No.561 | 6点 | 湿地- アーナルデュル・インドリダソン | 2018/10/21 12:47 |
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レイキャヴィクの湿地にあるアパートで、老人の死体が発見された。当初は、無害な老人への無慈悲な犯行と思われたが、捜査を進めるうちに被害者の暗い過去が明らかになっていく。単なる流れの犯行と目する捜査本部を尻目に、刑事は過去のつながりを探っていく。その先に現れた真相とは―
とにかくアイスランドの耳慣れない人物名に始めはとまどい、頭に入れるのに苦労する。しかし読み進めていくうちに面白さの方が勝り、後半にかけて勢いが増していく。 基本的に主人公の刑事の捜査過程が順に描かれ、ある意味順当に真犯人にたどり着く構成なので、どんでん返しなどは特にない。ただ物語全体に漂うほの暗い雰囲気が、読んでいて引き寄せられるものがある。 |
No.560 | 5点 | 密室殺人ゲーム・マニアックス- 歌野晶午 | 2018/09/30 18:03 |
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「2.0」を読んでから6年も経ち、読んでみた。
基本的に第1作の「王手飛車取り」が本家で、「2.0」も本作も、その模倣犯の話。そういう意味では設定自体の面白さはどうしても第1作を超えられない。 本作は、その模倣パターンに仕掛けがあるわけだが、作者の言葉にもあるように、そのパターンをやってみたかったことが第一にある感じで、個々の事件(出題)の謎は作りこまれていない印象。極端に非現実的でトリッキーか、極端に地味かのどちらかで、チャットのやりとりを読み飛ばしてさっさ「解答」へと行きたくなる感じだった。 その中でも、Q1の「本」の仕掛けが一番面白かったかな。 自分としては、「2.0」の中で明かされていた「王手飛車取り」の結末で、「伴道全教授」(正体は女子高生)だけが逃げ延びたことになっていたので、その再登場がどこかであるのか期待していたのだが… |
No.559 | 7点 | ブルーローズは眠らない- 市川憂人 | 2018/09/29 13:18 |
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幻の青いバラがついに開発されたという驚きのニュース。しかしそれは、学者のテニエル博士と、教会牧師・クリーヴランドの二者から、それぞれほぼ同時期になされるという異例の事態だった。
マリアと漣は、P署の刑事から2人を調査してほしいと依頼を受ける。しかし両者への面談直後、密室となった温室内でテニエル博士の切断された首が発見され、現場には「実験体七十二号がお前を見ている」という血文字が残されていた。 シリーズ第2弾の本作だが、密室、バラバラ死体など本格の匂いが存分に感じられる中、マリアと漣の間の抜けたやりとりがそれを中和させ、本格的な謎解きに没頭できる。 面白かった。 |
No.558 | 7点 | 貴族探偵- 麻耶雄嵩 | 2018/09/29 13:13 |
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安楽椅子探偵どころか、配下の者に指示して推理をさせているだけという異例の探偵「貴族探偵」シリーズの初作。
「ウィーンの森の物語」…「糸を使った密室トリック」というもはや骨董品のようなトリックだが、その「失敗」から本筋的な話の仕掛けが生まれていて巧い。 「トリッチ・トラッチ・ポルカ」…麻耶氏らしい、ぶっとんだアリバイトリック。 「こうもり」…「地の文では嘘を書いてはいけない」という本格ミステリのルールを完全に逆手に取った読者への仕掛け。なるほど。 「加速度円舞曲」…犯人の「こうであっては怪しい」を潰すための工作の連鎖。 「春の声」…加害者と被害者が三すくみの状況。この真相はちょっと強引だったかな。 私にセンスがないのか、タイトルの意味がよく分からない。後でこの本を見ても、タイトルで話を思い出すことがまったくできないと思う。 |
No.557 | 6点 | 果てしなき渇き- 深町秋生 | 2018/09/29 12:57 |
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妻の不倫相手への暴行が問題となり、刑事の職を追われた藤島は、今は警備会社に勤める身。ある晩、警報が鳴ったコンビニに行くと、そこには無残に殺された店員と客の死体が横たわる惨劇の跡だった。第一発見者としてもと同僚の聴取を受けるも、自分を追いやった警察に不遜な態度でしか応じない藤島。そんな折に、別れた妻・桐子から電話が入る。「娘の加奈子が帰って来ない」。
藤島は警察の手に委ねず、自らの手で加奈子を見つけようと心に決める。加奈子とつながりのある人間にあたり、その行方を追おうとするが、その過程で、件のコンビニ惨殺事件も背後に見えてくるようになり、加奈子が藤島の全く知らない「別の顔」をもっていることを知らされるようになる… 第3回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。 主人公の藤島がとにかく暴力的、非倫理的な人間なので、ハードボイルドの体のようで、後半はノワールに近い。スピード感のある展開に読ませる力はあるが、あまりに暴力的な描写にひいてしまう人もいるかもしれない。 最後には意外な真相も提示されていて、ミステリらしさもあるが、主人公がとにかく「哀れな存在」で、救われない男のままで終わる。 |
No.556 | 5点 | サイレンス - 秋吉理香子 | 2018/09/18 19:49 |
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本家・分家の家柄や、地元神信仰などの風習が根強く残る田舎の島に生まれ育った深雪は、ひときわ綺麗な容姿で目を引く女性だった。中学時に周りの勧めで受けたアイドルグループのオーディションで最終選考まで残った深雪だったが、昔気質の両親はそれを許さず、その時は断念せざるを得なかった。それでも夢をあきらめず、成人後に東京で芸能活動への道を進むが、旬を過ぎた深雪にはすでに入り込む隙はなく、ついに自身がアイドルになる夢をあきらめ、芸能プロダクションのマネージャーに。 そんな中で知り合った都会育ちの洗練された男性と恋に落ち、6年の付き合いを経て「両親に会ってほしい」と彼を生まれ故郷の島に連れ帰る深雪だったが―
夢に憧れ上京するが、夢かなわず、それでも都会に生き続けようとする一女性の物語として、ミステリとしてではなく普通に楽しんで読める。 そのまま上京&都落ちの話として結んでもよかったくらいだが、終末に向かって不穏な雰囲気が少しずつ醸成され、ミステリとして完結していた。 改めて考えると、ちょっと背筋がゾッとするぐらいの怖さは仕組まれている。ありがちといえばありがちな路線かもしれないが、私はそれなりに楽しんで読めた。読むのにほとんど時間もかからないし。 |
No.555 | 5点 | さよならのためだけに- 我孫子武丸 | 2018/09/17 12:52 |
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まぁ、ミステリではないとは思う。
面白い設定の話で、普通に楽しかった。結末は予想通りではあるが、おそらく多くの読者が願っていた結末ではないかと思う(私もそう)ので、読後感もよかった。 月(ルナ)が小生意気な子ども重役にビンタをくらわしたくだりは爽快だった。 |
No.554 | 4点 | 悪霊島- 横溝正史 | 2018/09/17 12:40 |
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島、「本家」が幅を利かせるムラ社会、過去の謎の事件、カギを握る妖しい魅力の美女、男女の愛憎劇、双生児、洞窟……といった、「横溝テイスト」をふんだんに、悪い意味で「バランスよく」盛り込んだ無難な一作という印象。そういう意味では、集大成と言えなくもない。
トリックやアリバイというミステリ的な謎解きは皆無に等しく、謎の中心は「隠された人間関係」。推測はできるが推理とはいえず、しかも勘のいい読者なら上巻でほぼ全貌が見えてしまうだろう。それが裏切られるのならまだしも、結局予想通りの真相をなぞる後半になってしまい、謎解きの面白さはほとんどない。 先にも書いたように、横溝テイストがたっぷり盛り込まれていることは間違いないので、その作品世界や雰囲気自体が好きという読者にはそれなりに好まれる作品かもしれない。 |