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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1741件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.321 6点 水車館の殺人- 綾辻行人 2016/08/31 20:25
 メタ的な視点で見ると、現在の家政婦・野沢が殺されるストーリー上の必然性は希薄だ。突発的犯行だし、それによって謎や手掛かりが増えたわけでもない。死体を直接描写した文章が皆無で、倉本と島田の台詞(及び犯人の一人称の文)で説明されるだけという扱い。気の毒に。

No.320 4点 恋恋蓮歩の演習- 森博嗣 2016/08/29 11:09
 最後の手紙が凄く引っ掛かった。
 “もしかしたら、/自分の子供を愛することだって、/できるかもしれない。”
 この程度の気持で養育権を勝ち取っちゃって大丈夫? この気持自体が各務に誘導された結果、ということだろうか?
 “水平の柱”はわざとらしい。梁くらい私だって判る。ミステリに於いて、犯人(というか何らかの悪意を持ったひと)のミスは相応の原因に基づくべきであって、単に手掛かりを提供する為のようなそれは好ましくない。
 また、各務がそれぞれ別のルートで接触した大笛と保呂草が既に知り合いだった、という偶然はかなり苦しい。

 他にもあちこち不自然な気がするし、そこに目を瞑れるほど面白いというわけではない。

No.319 6点 掟上今日子の家計簿- 西尾維新 2016/08/26 10:48
 叙述トリック講座のあとで実践編が示される親切設計。この話はコミカライズ出来るのか?
 今までの同シリーズに比べるとちょっと物足りなかったかな。

No.318 6点 女學生奇譚- 川瀬七緒 2016/08/18 11:10
 私は、何らかの組織が人海戦術で不可解な状況を演出する、という設定には落胆してしまう。それを認めたらなんだってアリだろ。本書はなかなか面白かったが、最後の部分が物足りない、と言うのが忌憚のない感想。

No.317 5点 今夜はパラシュート博物館へ- 森博嗣 2016/08/18 11:09
 うーむ、アナグラムか。続きを考えてみた。

 巨匠、窓見ろ(まどろみ消去)
 殿、死し、公家、問わん(幻惑の死と使途)
 名乗れ、プツリ、か(夏のレプリカ)
 芋は美味いな(今はもうない)
 相撲に来て死刑(数奇にして模型)
 優美、ショパンの桃源(有限と微小のパン)

 ……てな感じでどうかな。ところで『封印再度』には

 産医、不同意
 いい不動産
 インド風犀
 催淫豆腐

 ……といった手もある。あそこで苦しい作例を挙げたのはオチとしての演出?

No.316 7点 ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 2016/08/09 18:01
 「隼の贄」は、カーター・ディクスン『読者よ欺かるるなかれ』に対するオマージュだよね。

No.315 5点 魔剣天翔- 森博嗣 2016/08/05 18:52
 西崎勇輝を後ろから撃ったら、死体を引き出したって座席の入れ替わりはどうせばれるでしょう。寧ろ適切な位置に移して飛行機ごと燃やしちゃうべき。もしくは2番機に拳銃発射装置のダミーを設置しておくとか。そもそも飛行機の中で殺す必然性があるのか。なんか犯人の考えに筋が通っていないような。
 “パイロットの間では隠せなかったはず”のことをなぜ倉田は黙っていたのか。
 父殺しに協力した弟は許すのか。
 斯様に、森博嗣はミステリのこと良く判っていないんじゃないの、と思わされるポカは多いが、“ダイイング・メッセージは下らない駄洒落である”という伝統は正しく注いで、じゃなくて継いでいるようだ。

No.314 7点 占星術殺人事件- 島田荘司 2016/07/29 11:16
 島田荘司には長文の偽書をトリックに使う作品が複数あるけれど、私はどうも好きになれない。それをやったら何でもアリになってしまうじゃないか。本作で“接着剤”としてアゾート幻想が必要なのは判るし、アンフェアとは言わないが、舌先ならぬ筆先三寸で丸め込まれた印象。
 この謎が“ブームになって議論百出、出版物がどしどし世に出るも、40年以上解かれなかった”と言う設定は強気に過ぎると思う。文次郎手記の内容(死体を配るのは他者にやらせる、精液を残すだけなら女でも出来る)を想像することは可能だから、手記は推理に必須ではない。登場人物が少ないし、順番に疑って行けば真犯人もすぐ俎上に上がる。つまり“解けなかった”とは“決め手に欠ける”ということではないか。では御手洗の場合の決め手は何かといえば、トリックの解明よりも“予想される土地に犯人が居た”ことであり、犯人の後半生を鑑みるにそれは僥倖である。犯人が店を構える以前に謎を解いて嵯峨野をウロウロしていた早過ぎる名探偵がいたかもね。
 中盤の推理合戦で、“血縁者に対して害をなすか?”について、場合によって肯定的だったり否定的だったり、ダブルスタンダードなのが気になった。
 ということで、初めて読んだ時(30年位前!)にはとにかくメイン・トリックに驚愕&興奮したものだが、読み返したらやや冷静な評価に落ち着いた。

 サイコロって吉田拓郎「落陽」へのオマージュ?それは流石にこじつけ過ぎか。

No.313 5点 クララ殺し- 小林泰三 2016/07/26 18:24
 悪くはないが、二匹目のドジョウを狙ったという感がなくもないし、そうまでするほどの物凄いストーリーかは疑問。世界設定のせいで論理が錯綜し過ぎて、驚くべきポイントで的確に驚けないきらいがある。蜥蜴のビルのキャラクターは好き。

No.312 5点 真実の10メートル手前- 米澤穂信 2016/07/21 11:07
 必要以上に後味の悪い結末をいちいち用意するあたりには好感が持てる。
 しかし実のところ、米澤穂信の作風には慣れてしまった。主題に異物を突っ込む手際がどれも似通っているように思う。ストーリー展開には確かに驚くのだが、それがお約束というか、驚いたこと自体に驚けなくなった。短編だと特に顕著。勿論それはこの作者が好きで作品をあらかた読んだ結果の弊害ではあるのだが。

No.311 6点 トリプルプレイ助悪郎- 西尾維新 2016/07/14 11:06
 リュパンや二十面相で育った身にしてみれば、大泥棒はひとを殺さないものだと相場が決まっているのである。従って“一回の盗みにつき三人殺す”という設定は掟破り、いやむしろコロンブスの卵?であるが、しかしそれはなかなかぞくりとさせられる妖しさを放っている。叙述トリックそのものはともかく、それを結構無茶な設定と絡ませるところがいかにも西尾維新そしていかにもJDCトリビュート。文体も含めて気持悪さが快い。

No.310 6点 ダブルダウン勘繰郎- 西尾維新 2016/07/08 10:17
 妙にまっすぐな説教臭い部分は少年漫画のよう。清涼院流水のJDCというトゥー・マッチな設定をひらりと躱して上手く手玉に取ってみせた、という印象。ちょっとした台詞の端々でキャラクターを描き出す腕前は見事。

No.309 7点 不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界- 西尾維新 2016/06/30 11:35
 ありふれたネタでもアリに出来る作家と出来ない作家がいるわけで、主題の周囲をぐるぐる回って適当に話を逸らしているかのように見える饒舌を積み重ねていつのまにか読み手を作品世界に絡め取る筆力は、あからさまな名文美文でないゆえにタチの悪い吸引力を誇る。内容的に殆ど空っぽな本作では特に。

No.308 5点 夢・出逢い・魔性- 森博嗣 2016/06/27 10:32
 幾つかの面白くなりそうな要素を、上手く生かせない形でまとめて組み立ててしまった、という感じで惜しい。
 紅子の推理には瑕がある。“練無が実は男子だと、説明無しでは判らない”ということを前提にしている点。立花亜裕美が“そうじゃないかなって、思ってた”というのはいわば作者自身によるツッコミであって、そこは周到だと思う。
 タイトルは単なる駄洒落としか思えず、感心出来ない。

No.307 8点 きみとぼくが壊した世界- 西尾維新 2016/06/21 09:57
 これはどうしたって、この小説の為の取材と称して保健室登校の巨乳女子高生とイギリス旅行へ行ったけどとても楽しかった、と言いたいが為に書いた小説、としか思えない。(いや、多分、くろね子さんは架空のキャラクターじゃないかと思うんだ……)そんなわけ、あるかあ!

No.306 7点 χの悲劇- 森博嗣 2016/06/21 09:56
 これはここ10年くらいの森博嗣のミステリの中ではかなり良い方だ。但しそれはミステリ要素が優れているからではなく、真賀田四季を遠景に据えて人間の行く末を描く一連の世界観が大きく絡んで来たから、である。Gシリーズが新たなフェーズに突入したという実感が確かにある。
 殺人事件に関してはなんじゃそらという真相だが、しかしミステリの不文律に対するアンチテーゼと言えなくもなく、私は割と好意的に捉えている。さっさとこれを書いて欲しかった。 

No.305 8点 きみとぼくの壊れた世界- 西尾維新 2016/06/10 11:28
 ファンの欲目ではあるが、ミステリとしては小粒のネタを核に据え、周囲に分厚くコロモをかぶせて本を一冊でっちあげる、という場合に、そのコロモがこれほど美味い作家というのもそういないと思う。ネタが小粒なのも、コロモを美味しく味わうにはこれ以上入り組んだミステリ要素は邪魔、という冷静な判断なのだろう。本書では夜月が様刻にすがりつくシーンがあまりに印象的。“本の熟成”は私もよくやる。いろいろ敵に回しそうなミステリ談義も楽しい。
 因みに私は、西尾維新式の過剰なネーミングは好きだなぁ。同姓同名が偶然存在して余計なイメージをしょいこむリスクが少ない、と言うメリットもあると思う。

No.304 7点 メビウスの守護者- 川瀬七緒 2016/05/23 12:40
 このシリーズの法医昆虫学ネタには、今まで知らなかった扉が目の前で開いて行くような興奮を感じる。本書でも中盤の遺体発見のくだりはナイス。
 ちょっと揚げ足取りかなと思いつつ気になった点を挙げると、この殺人者は野山に遺体遺棄などするだろうか? 自宅の庭で上手に処理出来そう。
 あと、通常のフーダニットとは違うせいもあってか主要人物のほとんどが事件のどこかに関連している、という構成が、読み終えてから振り返ると作り物っぽい印象ではある。

No.303 7点 掟上今日子の婚姻届- 西尾維新 2016/05/23 12:38
 最終章手前まで、一体このどこに謎が潜んでいるのかさえ判らなかったが、小さな違和をあつめてひっくり返す手際が痛快(その痛々しい内容はともかく)。

No.302 5点 ファイナル・オペラ- 山田正紀 2016/05/06 10:36
 長過ぎてくどい。こういう資質はSFで使ったほうがやはり良いのでは……。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1741件
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