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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1697件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.277 7点 美森まんじゃしろのサオリさん- 小川一水 2015/10/22 11:41
 イマドキの過疎地を舞台にした軽妙な連作。ミステリ的には地味だが登場人物が生き生きとしていて読ませる。過度に説明せず少々判りにくい書き方も、回りくどいと感じる手前で抑えており良い塩梅(“武者烟”のメカニズムはもうちょっと説明が欲しかった)。作品世界にずっと浸っていたくなる佳品。

No.276 6点 誰がカインを殺したか- 篠田真由美 2015/10/16 10:46
 ミステリ的にはさほどピンと来ないが、キャラクターの良さで読ませる。行動が不自然に感じられる部分もあるが、そもそもシチュエーションが不自然だから仕方ないか。「コックリさんと喫煙と十四歳の研究」が最も面白かった。
 将=すすむ、征=まさし、というネーミングは紛らわしい。“将”を“まさし”と読みそうになって“えーっと、そうじゃなくて読みは……”と何度も止まった。
 尚、巻末の謝辞でやや曖昧な説明になっているが、“三つの箱の選択問題”は“モンティ・ホール問題”と呼ばれアメリカのテレビ番組が元ネタとされる。

No.275 8点 掟上今日子の遺言書- 西尾維新 2015/10/11 11:14
 遺言少女の心情が、私には非常に腑に落ちるものであるのが良かった。
 表紙イラスト、読み終わって見返してみると結構な仄めかしになっている。

 気になった点。松葉杖は、一本だけであれば、怪我をした足(右足)と反対の側に突くのが本来の適切な使い方だが、今日子さんが「右半身に」寄り添ってきた、とある。ギプスに触りたいから(笑)?

No.274 6点 あぶない叔父さん- 麻耶雄嵩 2015/10/07 10:50
 『化石少女』で味を占めたか……。

No.273 4点 教会堂の殺人〜Game Theory〜- 周木律 2015/09/24 10:31
 シリーズの一冊、大きな謎の一部、としては面白いのだが納得出来ない点も多い。
 ①82ページの図版を見ると良く判るが、天井のハッチの縁に手を掛けて懸垂の要領で身体を引き上げるだけの体力が無いと、これ以上先に進めないのでは。
 ②宮司司は、午前二時に脱出のチャンスが訪れることを発見しながら、何故その時に逃げなかったのか。
 ③数学者(&新聞記者)と警察関係者は、同じ“真実を探す”といってもその行動原理というか気の持ちようは違うはずで、後者(船生や毒島)の一匹狼的な追跡行はしっくりこない。

No.272 5点 ゼロの迎撃- 安生正 2015/09/08 11:55
 それなりに面白くはあったけれど、紋切り型の人物像や時々出て来る妙に大仰な文章には困った。ここまでの緊急事態に主人公がこんなに孤立した状態で対処するのもピンと来ない。

No.271 5点 怪盗グリフィン対ラトヴィッジ機関- 法月綸太郎 2015/09/07 09:29
 旭ハジメのイラストがナイスな素敵な本。
 やけに伝聞の多い構成が、量子論的な世界の曖昧さの表現に一役買っている。

 trotter =早足(トロット)の調教を受けた馬。ということは、P・K・トロッターというネーミングは、ディックが馬並みという洒落か。まあ下品。

No.270 5点 ドS刑事 桃栗三年柿八年殺人事件- 七尾与史 2015/09/03 08:51
 描写のリアリティの無さゆえに荒唐無稽なストーリーは却って(辛うじて)成立。発想は面白い。ラストの五点界のくだりにはもう少しページを費やして欲しかった。

No.269 8点 掟上今日子の挑戦状- 西尾維新 2015/08/24 10:37
 「アリバイ証言」がなんか変だ。登場人物の台詞通り、“そんな仕掛けは必要ない”のでは。お湯をちょろちょろ流しても、ドライヤーを直接湯船に浸けても、後始末する人間がいるなら最終的に公開される事件現場は同じでしょう?

No.268 8点 ヒトクイマジカル- 西尾維新 2015/08/19 10:33
 いの字がみいこさん相手に切れる場面が痛くて好き。剣玉の場面も微笑ましくて好き。
 少年漫画みたいな世界観ゆえにOKなトリックを持ち出すあたり、自分が何をやっているかはちゃんと判っていますよ、という感じで良い。

No.267 8点 サイコロジカル- 西尾維新 2015/08/07 09:37
 《堕落三昧》斜道卿壱郎博士の存在感が弱いというかそんな化け物のようには感じられないところが物足りない。博士への畏怖、忠誠、反動、といったものが登場人物の言動に大きく影を落としている割に、本人はこの程度の老人? 研究施設も例えば鴉の濡れ羽島のような異常な場という感じではないし、“特異性人間構造研究”もイメージしづらいので兎吊木垓輔や玖渚友が拘束されることの重さがピンと来ない。全体として、具体的な切迫感があまり感じられないのに、一部の人間だけが妙にテンパっているような印象。
 いーちゃんが犬を殺すシーンが好き。

No.266 5点 黒猫の三角- 森博嗣 2015/08/03 09:30
 読者から犯人を隠す叙述トリックは上手いが、犯人の行動そのものには説得力が感じられず評価半減。特に7月7日を6月6日に変えた件。

No.265 6点 命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇’75- 古野まほろ 2015/07/28 11:38
 衒学趣味を排して、意外なほど骨太な警察小説。濃密な思いのぶつかり合いが描かれていて読み応えがある。ただ個人的には、結末で明かされる雄人と和歌子の関係にさほど抵抗は感じないので、ホワイダニットとしての衝撃には欠けた。あと東京ディズニーランド行での“差額精算”の手掛かりはわざとらしいというか、その場で未緒ちゃんが気付きそうなものだが。

No.264 8点 クビツリハイスクール- 西尾維新 2015/07/28 11:37
 いくら好きでもこれをミステリとして高く評価するのは難しいが、贔屓目に見るなら小うるさい約束事で自縄自縛になるミステリに対する批評として機能していると言えなくもない。面白いんだからいーじゃん。子荻ちゃんが好きです。

No.263 10点 クビシメロマンチスト- 西尾維新 2015/07/22 14:31
 何度目の再読か。ミステリ部分は小粒かもしれないが、ストーリーとキャラクターにガツンとやられたこの作品。私のミステリ生涯ベスト10に選びます。巫女子ちゃんは印象深かったミステリ登場人物ベスト5に入ります。何度読んでも後半1/3は指が痛いよ~。
 “X/Y”についての色々な考察をネットで読んだがすっきりしない。あれが瑕と言えば瑕かな。

No.262 5点 パズル崩壊- 法月綸太郎 2015/07/22 14:30
 音楽関係の無粋なネタバレを幾つか。タッカー、リード、モリスン、ケイルはいずれもザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(米バンド)のメンバー名。「トランスミッション」で“僕”が思わず言う“「ルー・リード?」”も同じひと。
 ニール・ヤングの未発表曲を歌うシーンがあるが、レコード店の試聴室から漏れ聴こえる「ヘルプレス」も彼のナンバー。
 「GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP」はニルヴァーナ(米バンド)のアルバム『イン・ユーテロ』の最後にボーナス・トラックとして収録されているナンバー。原典に三点リーダは付いていない。
 巻末の JASRAC 出願済み表示で、ジョイ・ディヴィジョン(英バンド)の「TWENTY FOUR HOURS」なんて作中に出て来たっけと思ったが、巻頭の4行の詩(というか歌詞)がそれである。
 「SHADOWPLAY」の表記の仕方について、“acting out your own death”でひとかたまりの意味であって、行換えの位置が適切ではないと思う。

No.261 5点 身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり- 古野まほろ 2015/07/22 14:29
 相変わらず必要以上に読みづらい書き方。もはやそれを如何に読み解くかも含めて古野まほろを読む醍醐味となっている。が、もう少し伝わり易くしたほうが、例えば加害者のやむにやまれぬ心情とかが感じ取れる気はする。
 ところで、この犯人隠匿のトリックは、島田荘司『占星術殺人事件』の変奏である。純粋に自分で謎が解けたのではなく、“あの話に似ているなぁ~”という形でなんとなく見当が付いてしまったのは勿体無かった。

No.260 5点 太宰治の辞書- 北村薫 2015/07/16 08:21
 『六の宮の姫君』よりは判り易かったけど……北村薫にはもっと純粋なミステリを書いて欲しい。

No.259 5点 チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン 2015/06/30 09:14
 エラリーは見当違いな推理で必要以上に捜査を引っ掻き回していないか。殺人の謎そのものよりも、それをきっかけに発生するコメディ、を楽しむべきなのだろうか?
 この事件最大の不思議は、“家具をドタバタ動かしているのに、隣室にいた人間は気付かなかったのか?”だと思うのだ。解決してみれば、その謎は確かに解けている……。

No.258 5点 天国ゆきカレンダー- 西本秋 2015/06/24 09:01
 基本設定がああである以上、最後に本当に死んではオチにならないのであって、その“転向”の説得力の如何が作品の出来を決めるわけだが、畑野の仕掛けた罠はシンプルながら有効打で合格点と言える。ミステリというよりは青春小説。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1697件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(89)
西尾維新(68)
アガサ・クリスティー(64)
有栖川有栖(50)
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