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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.428 5点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2017/12/25 09:52
 中盤は退屈。5冊の本のくだりは微笑ましい(なにもそんな芝居じみた連絡方法を使わなくても)。ラスト前で事件の水面下の意外な広がりが明るみに出てやっと気分が乗って来る。消去法推理は好き。
 特に海外の古めの作品だと、テクノロジーの進展具合が摑めず舞台をイメージしづらいきらいがある。閉店時間になると自動的に施錠されるシステムが実用化されている一方、電話交換手も健在。あれっ、連絡するのにわざわざ店を抜け出さなくちゃいけないってことは、この時代まだケータイは無かったんだっけ?

No.427 5点 NO推理、NO探偵?- 柾木政宗 2017/12/25 09:51
 これって石崎幸二のミリア&ユリと何が違うの?いや勿論作品のコンセプトは別物だが結果としてとても似通った印象を受けた。読みながらなんじゃそりゃと繰り返し口に出して突っ込んだが、最終話に免じて許そう。
 こういう文章は!を多用してハイここ笑う処ですよといちいち示すより淡々と記した方がおかしみは増すと私は思う。

No.426 5点 ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン 2017/12/19 11:45
 現代の目で読むと、ロジカルな本格ミステリと言うスタイルに関して色々まだ未整理な状態で書かれた印象。それほど面白いとは思えなかった。毒物の種類は興味深い。
 そういえばメフィスト賞作家の某氏にも芝居上演中の殺人で類似したプロットのものがある。これは多分パクリというわけではなく、“状況がこうなら意外な犯人のポジションはここ”という共通の発想による偶然だろう。

No.425 6点 滑らかな虹- 十市社 2017/12/19 11:43
 中核をなす“ゲーム”は興味深く、厳しく見るならその周辺の事物にはありがちなネタも含まれているが、しかしエピソードを積み重ねて説得力を生み出す手つきはしっかりしている。そこを評価しつつそれでも尚、千二百枚・上下巻は長過ぎる。手紙と回想形式の記述、そして作者が読者に対して隠している何か、となるとどうしても叙述上の捻りを期待してしまうわけで、あまり引っ張り過ぎると色々極端な予想をしてしまい、いざ明かされても驚けなくなる。これは私の読み方が悪いのかもしれないが、スレていない読者の素直な読み方に期待し過ぎじゃないかという気もするのだ。
 子供達はそれなりに生き生きと書き分けられているが、役割に合わせてキャラクターを配分したようだ、と言ったら意地悪だろうか。正直、物凄く印象的な子はいなかったのだが、寧ろそれこそがリアリティとも言える。
 自然教室のなぞなぞは解けず。くっ、小学生に負けた……っ。

No.424 7点 真夜中のフーガ- 海野碧 2017/12/12 13:03
 偶然をどこまで許容するかは、合理的な説明を期待されるミステリに於いて重要な問題だろう。個人的には、物理トリック等の実現可能性は比較的甘く評価出来るが、“無関係に見えたA氏とB氏が実は知り合いだった”のような人間関係のつながりについてはかなり気になる。本作でも、主人公に降りかかったふたつの案件が別ルートでつながっていて、ちょっと首をかしげざるを得ない。結末のエピソードも唐突。とはいえ非常に“読ませる”文体は安定しており、本格ミステリ的な驚きを期待する気持とは別のところで楽しんだ。 

No.423 7点 ディレクターズ・カット- 歌野晶午 2017/12/12 13:02
 私もひとを刺したくなって来ちゃったなぁ。困ったなぁ。図書館で騒ぐ大人がいると結構本気の殺意が湧くんだ。とりあえず鋏は持ち歩かないようにしよう。

No.422 7点 乱鴉の島- 有栖川有栖 2017/12/05 11:13
 島の秘密の方がメインで殺人事件がオマケみたいに感じてしまった。幾つもの仮説のあとで明かされたその秘密もさほど驚きではない。殺人とのつながりも乏しいし、解明の過程で暴く必要はなかったのでは。アリスの海老原に畏まる様がおかしかった。

No.421 8点 迷宮のファンダンゴ- 海野碧 2017/12/04 12:50
 ウィキペディアによると、作者には文芸誌で活動していた前歴があり、歌人としての顔も持つらしいが、ジャンルの外側からスタイルを対象化したかのような作風はもしかするとそういう要素にも由来するのだろうか。
 前作は私にとって存在自体が驚きだったが、二冊目なので多少冷静に読めた。登場人物各人の動きが場当たり的というか、読了後に振り返ると思惑の擦れ違いが或る種の美しい綾を織り成すようなものが理想なのだがそこには至らず、何故このひとはこういう行動を取ったのかと納得出来ない部分が染みの如くポツリポツリと残ったのだった。
 しかし人物造形の妙は多少の矛盾を飲み込んで物語を牽引するに充分で、某人物があっけなく死ぬ様には胸を突かれた。

No.420 6点 このどしゃぶりに日向小町は- 鳥飼否宇 2017/11/30 12:30
 ハヤカワ・ミステリワールドの一冊だが、全然ミステリではない。小林泰三のグロSFに、幾らか地に足の着いた視点を織り込んだ感じ?読者の心構えを考えると、こういうのは他の相応しいレーベルから刊行してくれたほうがありがたい。
 内容自体はまぁ悪くない。しかしルビーの手紙は簡単に解読出来るだろ。あれを結末間際まで引っ張るのは不自然。
 因みに、英題“It's a rainy day, sunshine girl”というのはドイツのバンド“ファウスト”の曲名。このバンド名は、ゲーテ作品等で有名なあの人物ではなく、英語なら fist 、つまり拳の意味。登場人物名や曲名、章題等にもファウスト関連の引用が見られる。

No.419 7点 濱地健三郎の霊なる事件簿- 有栖川有栖 2017/11/30 12:28
 特殊な設定のシリーズ短編集、ではあるが、いつもの有栖川作品とさほどテイストは変わらないように思う。これは良くも悪くも、であって、もう少し斬新な新機軸という感じがあっても良かった気がする。
 敢て突っ込むならば、「霧氷館の亡霊」の事後処理について。“ロシアン・ルーレットの当たり”がひとつだけである保証はないわけで、万全を期すなら全て処分するしかないのでは。

No.418 8点 水上のパッサカリア- 海野碧 2017/11/28 14:02
 的確な読点で矢鱈と長いセンテンスを妙にリズミカルに読ませる非エンタテインメントな文体は個人的にとてもツボ。それが語り手のキャラクターやストーリーと合致して、良い意味での違和感を生み出した。ハードボイルドのパスティーシュのつもりが、レヴェルがあまりに高いので本家の高みに届いちゃった、と言う感じ。
 但し、ネタバレになるが、いくら狐と狸の化かし合い的な世界でも、某作戦が丸ごと虚偽という内幕は、私は好きではない。そこまで仕込んでも割に合わないんじゃないの?そこが惜しい。

No.417 7点 帝王死す- エラリイ・クイーン 2017/11/28 13:58
 特殊かつ限定的な状況を作る為の工夫が面白い。不可能犯罪の魅力的な様相に比して真相はたいしたことないし、帝王一族以外のサブ・キャラクターがあまり生かされていないきらいはあるが、話としては結構好き。

No.416 7点 死屍累々の夜- 前川裕 2017/11/28 13:57
 犯罪恐怖小説との謳い文句の通り、ミステリ度は高くないが、ひとの不安定な心をジワジワ侵食するさまが気持悪い。って褒め言葉です。
 問題の人物が最後まで矛盾を抱えた謎のままだし、その割にカリスマ性めいたものはあまり感じ取れない。ラストに大きなどんでん返しがあるわけではない。と言った物足りなさはあるが、一方でその計算され切っていない感じが妙なリアリティにつながってもいる。

No.415 7点 少女ノイズ- 三雲岳斗 2017/11/28 13:56
 色々とあざといなぁ、と思ったけれど、そういう事柄は有効性が高いから多用された結果としてあざといものに成り下がってしまうのである。キャラクターものとして読むなら悪くない。出番は少ないけど皆瀬准教授が好き。
 ミステリ的にはいまひとつで納得し切れない部分がある(事後従犯に何故その人物を選んだのか?自販機の罠は目的にそぐわないのでは?)。

No.414 6点 僕のアバターが斬殺(や)ったのか- 松本英哉 2017/11/22 11:08
仮想空間での殺人が現実化するという魅力的な謎。それに関するトリック(と言うかホワイダニット)のあまりのつまらなさ。こんなので良いのかとびっくりした。強引な物理トリックを持ち出すほうがまだましだ。
 前半はそれなりに面白かったし、謎解き部分の一行で目の前の景色がガラッと変わってああ成程、というところもあったけど。

No.413 5点 オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン 2017/11/21 11:48
 手掛かりの靴がわざとらしい。推理する前に関係者の足のサイズを調べないでいいのか。
 捜査が余りプロっぽくなくて、第一の事件ではエラリーが好き勝手に仕切っている印象だし、その反面第二の事件ではたいして調べないうちにあっさり意気消沈している。
 エラリーとジューナのシーンがBLみたい。

No.412 10点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2017/11/21 11:47
 何度読んでも腑に落ちないことがある。ネタバレありで書いてしまうが、毒のカプセルのトリック。あれは犯人にとってどういうメリットがあるのか(薬の中に毒を一錠混ぜるのと何が違うのか)。出処を探られたら自分に直結する証拠品のカプセルが警察の手に渡るのはやはりリスキーでは。薬瓶の中身が掏り替えられたのは被害者が死ぬ前一日以内、と誤認させられるのでアリバイ工作になる、と言うこと?作中で明確な説明が欲しかった。
 という不満はあるが、とても大好きな作品。全編を貫く騙しの美意識がなんとも愛おしい。

No.411 5点 首なし男と踊る生首- 門前典之 2017/11/21 11:45
 “殺人計画書”の心理描写はまぁ楽しめた。密室トリックは漫画にすればまだ見映えがするかも。「だいたい人の顔って生首の状態では見ることはないだろう」という台詞には笑った。
 しかしそれ以外は、色々強引だし、文章も拙いし、あまり評価出来ない。島田荘司の失敗作、と言う感じ。ソレを言っちゃあオシマイよ?

No.410 5点 ウィズ・ユー- 保科昌彦 2017/11/21 11:44
 前半は面白かったが読み終わってみると期待外れ。ミステリとして精密な感じではない。仮想空間を扱った小説はよく見かける昨今、特に傑出しているとも言えない。それなりに筆力のある作家だとは思うが、今作ではあまり上手い形にまとまらなかったようだ。

No.409 8点 屍人荘の殺人- 今村昌弘 2017/11/13 09:53
 わははは。こんな手があったとは。
とても面白かった。諸要素が上手く噛み合って、“怪作”にとどまらない立派な本格ミステリに仕上がっている。
 気になった点は、犯人の動機に関わること。男女間のいざこざで自殺者まで出るとは随分な話だし、そんな不祥事を招いた合宿をしれっと再度敢行する面々の発想も不思議だ。ほとぼりが冷めるまで待つくらいOBだって考えるだろう。“去年の合宿で撮影中に集団レイプが発生して退学者、自殺者が出た。映像を公開すると脅されて告発出来ない。部長は加害者の一員だったのでOBに逆らえない”くらいの、各人の動きが取れなくなるような鬼畜な裏事情を想像していたんだけど、結構さらっと流しちゃってるね。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1848件
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