皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1843件 |
No.923 | 5点 | 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 狼の時間- 太田紫織 | 2021/03/09 12:09 |
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第壱骨。グループに潜入する展開に期待が高まったものの、“該当者は誰だ?”と言う謎解きにならず結局は直接行動で対処したのはがっかり。
第弐骨。事故物件について、そんなに多額の請求がなされて、それが正当なものとされている、と言うのは事実? 幽霊より怖い。或る程度の確率で人が自室で死ぬのは当然だろうに。 |
No.922 | 6点 | 壁抜け男の謎- 有栖川有栖 | 2021/03/09 12:09 |
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良作が並んではいるが“物凄く良い一編”は見当たらず、例えば私が有栖川有栖ベスト短編集を編むとしても本書からは採らないだろう。 |
No.921 | 5点 | 死角に消えた殺人者- 天藤真 | 2021/03/09 12:08 |
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この事件に対してこの真相では捻り過ぎで却ってつまらない。また、各人のキャラクターが悪い方向のツボに嵌まって、読み進むにつれてどんどんイヤな感じに。
集団自殺と言う概念が一度も出て来ないのは時代ゆえ。吉川父娘のエピソードが胸に残った。 |
No.920 | 5点 | 壁が囁く- 佐野洋 | 2021/03/09 12:06 |
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加害者が感じた閉塞感を“説明”しちゃっている。それが読者にジワジワ迫って来るように“描写”出来たら良かったと思う。
それはそうと、あんな探偵になら尾行されてみたい。 |
No.919 | 8点 | 新本格魔法少女りすか 4- 西尾維新 | 2021/03/03 14:10 |
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1巻から一貫して裏表紙に掲げられて来た“なぜ、少女なの?”が、単なる雰囲気モノのフレーズではなく伏線だったとは。力業で世界を丸ごと掻き混ぜるような落とし方は、考えてみると〈刀語〉も〈伝説シリーズ〉もそうだったなぁ。ポカンと口を開けて見届けるしかなかった。
楓のキャラクターは本気で気持悪い。折口きずなの位置付けが中途半端な気はする。最後の行のその後にまた膝を打つネタが。 |
No.918 | 7点 | エゴに捧げるトリック- 矢庭優日 | 2021/03/03 14:08 |
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キャラクターや物語としての吸引力は少々物足りないが、それはそれとしてよくまあこんなことを思い付いたものだ。考えていた揚げ足取りは件のトリックで全てチャラ。
但しソレは結末でアッと驚かせるべく配置されているので、同系統の某作のように謳い文句として売りに出来ないのは苦しいね。SF設定だけど少しでも多くのミステリ読者の目に留まって欲しい。 |
No.917 | 7点 | 鋼鉄都市- アイザック・アシモフ | 2021/03/03 14:08 |
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貧すれば鈍する。人は差別をする。後半、政治の話にシフトしつつ意外にも面白いが、結末はアレでいいのか?
あまりに滑らかなロボットは、優秀なマシンと言うより金属製のホムンクルスみたい。出来過ぎで却って興を殺がれる部分も。 腕のチェックだけでロボットと判断するのは早計だよ。ベントリイ君16歳が少々子供っぽ過ぎでは。ダニールが食べた物を取り出して処理する場面では吹き出してしまった(ボッコちゃん?)。 |
No.916 | 7点 | クイーンのフルハウス- エラリイ・クイーン | 2021/03/03 14:07 |
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「ドン・ファンの死」。ダイイング・メッセージはともかく、犯人特定の手掛かりが短編にちょうど良いサイズ感で、読んでスッキリした。
「ライツヴィルの遺産」。結末で仕掛けた罠は無効。下心の有無を他人が観測は出来ない。 「キャロル事件」。思惑が絡み合って事態がずれていく様が面白く、読み返して台詞の裏側を知るとまた味わい深い。 |
No.915 | 6点 | 火村英生に捧げる犯罪- 有栖川有栖 | 2021/03/03 14:07 |
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「あるいは四風荘殺人事件」。ああいうトリックをああいう距離感で書くのは何かずるい。作中作ではない普通の形(って何て呼べばいいの?)で書いて欲しかった。作中作の欠点を火村が指摘する趣向かと期待したんだけど……。
「殺風景な部屋」。容疑者の風貌や人となりを勝手に想像する、と言う演出は意味が無いのでは。アリスのその先入観が読者に対する目晦まし(性別誤認とか)になる趣向かと期待したんだけど……。 |
No.914 | 8点 | 新本格魔法少女りすか 3- 西尾維新 | 2021/02/27 13:52 |
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ストーリーとしての動きは少なく前後の巻の橋渡しみたいだが、それでも尚ガンガンぶつかり合うエモーションに泣ける。ゲームの戦略の構成も巧みだと思う。水倉鍵のキャラクターは鬱陶しいけど結構アリ。 |
No.913 | 6点 | 炎の背景- 天藤真 | 2021/02/27 13:50 |
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面白い逃走劇。
しかし、第三章の末尾で新聞を見たおっぺは何に気付いたのか、何をどうするつもりで引き返したのか、それがどのようにつながって第四章の対決場面が成立するのか(罠に対して大物が直接動く保証など無いでしょ?)、さっぱり判らない。上手く大団円に持ち込めなかった作者がそれっぽい流れで誤魔化したような感が無きにしも非ず。 |
No.912 | 4点 | 城- フランツ・カフカ | 2021/02/27 13:49 |
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有栖川有栖作品で紹介されていたので手に取ってみた……のだが、これは読みにくい。いや~しんどかった。
地の文として人物の行動が描かれている部分は、そこに戯画的なおかしみを見出すことも出来る。問題は人が話している部分――これが“会話”と言うよりも交互に長台詞を述べ立てているだけで、その内容も空虚この上なく、恰も読者の忍耐力を試しているよう。これを延々と書き続けられる作者は病気だったんじゃないか。 しかし最終章でアッと驚く真相と言って言えなくもないかもしれないような見解が語られるので(そこだけミステリだ)、うっかり読み始めてしまったなら最後まで読まないと元が取れない。読んでいるうちに自分が何をしているのか曖昧になって行く感覚があり、そうだ、円城塔に似ている。 |
No.911 | 5点 | 心地よく秘密めいた場所- エラリイ・クイーン | 2021/02/27 13:48 |
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バージニアの日記の自意識過剰気味な書きっぷりは面白い。
余計なこと考えずに動機“キューイ・ボーノ”を追及すれば、警察はすんなり犯人に辿り着けたんじゃない? |
No.910 | 5点 | 涼宮ハルヒの溜息- 谷川流 | 2021/02/27 13:48 |
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映画撮影と言うネタはいまひとつ。
しかし、シリーズ化によって基本設定が“前提”になったことではっきり判ったけれど、世界に於けるハルヒのポジションはあまりにも哀しい。自覚を許されないまま箱庭に閉じ込められているのである。 お祭り騒ぎの狂騒的展開を目で追いつつも、私は胸が締め付けられるようだった。皮肉ではない。 |
No.909 | 8点 | 霊長類 南へ- 筒井康隆 | 2021/02/22 11:14 |
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パニック小説は非常時(コロナ禍)に読むと効くわ~。
もし自分がこういう状況に陥ったら、生き延びることを優先して、余計な行動はせずにどこかに隠れる。他人は見捨てるだろう。 と思いつつ読んだので、登場人物たちの或る意味で人情味豊かな言動は不思議で羨ましい。 |
No.908 | 8点 | 妻は忘れない- 矢樹純 | 2021/02/22 11:13 |
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ネタバレするけれど、気になった点。
表題作の終盤、Yが鑑定に応じる。しかし鑑定したらアウトなのである。どうせ負けるのにどういう思いで譲歩したのか。 実はYは、敗北必至だとは考えていなかったのでは? 三股をかけていたのでY自身にも父親が誰だか判らず、故に最初は突っぱねたが、相手側が譲らないので、幾ばくかの可能性に期待して鑑定に応じたのだ。つまり、不義の事実は、あったのでは? 読み返してみると、妊娠の件はともかく、“故人との不義”がYの出任せだったとはどこにも明記されていないのである。 短編集としての難点は、(「裂けた繭」のみ構成上の問題でソレを免れているが)語り手が同じ人物に思えてしまうこと。コレは、風景や空気感、心の揺らぎを繊細に描く筆力があるために却って嵌まってしまう罠? 似たような主人公ばかり書く作家は別に珍しくないから、単に“そういう作風”で片付けていいのだろうか。しかし私には、本書の諸作は、ミステリ〈で〉人物〈を〉描いているタイプに見える。従って、ストーリーや謎が別物でも、キャラクターが同系統だと二番煎じ三番煎じとの印象が残ってしまうのだ。 |
No.907 | 8点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 | 2021/02/22 11:12 |
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この手の作品の場合、あれこれ気付いちゃうのは読み方としては“失敗”なのである。その点で、講談社の売り方は無神経と言うか読者のひねくれ具合を侮っている。『小説の神様』のおかげで“ミステリ作家”のイメージが薄れたのは寧ろ好機だったかも。そこそこ良く出来たキャラ萌え小説、くらいに思っておけば楽しめるのでは。
最後の種明かしの書き方が色々と上手い! M・Y氏の某作を想起した。エピローグの煮え切らなさに得も言われぬ心地。 |
No.906 | 7点 | ネフィリム 超吸血幻想譚- 小林泰三 | 2021/02/16 11:51 |
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なかなか死なない体なのをいいことにやりたい放題。残虐プレイと冷静かつ論理的な文体の組み合わせが笑いを誘う。つまりこの作者の基本的な芸風そのもの。SF的に展開した『ΑΩ』に対してこちらはホラー調だけど、そんなことは枝葉に過ぎないのだ。最初から最後まで血みどろな話で、読み終えて本を閉じたらページの間からドロリと溢れて来た。 |
No.905 | 6点 | 地球・精神分析記録 ――エルド・アナリュシス――- 山田正紀 | 2021/02/16 11:50 |
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最初期のプリミティヴな勢い溢れる幾つかの長編を経て、ゲーム性と虚構性による或る種の冷徹な面白さへと階梯を昇り始めた作品、なんだけどまだ過渡的な印象。後年、過剰になって紙幅を肥大させる神学・民俗学や精神医学からの引用だが、この時期はまだ抑制されていて、今読むと物足りないくらいだ。4章の“犯罪が企業化した社会”の設定は、連作長編の1エピソードで終わらせるには勿体無い。 |
No.904 | 7点 | 白い兎が逃げる- 有栖川有栖 | 2021/02/16 11:49 |
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謎解きに挑戦する楽しさではなく、上手く組み合わさったパズルの完成形を鑑賞するソレ(悪い意味ではない)。「地下室の処刑」の真相が凄いツボ。でもやはり、時刻表はちょっと苦手で……。 |