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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.800 8点 消されかけた男- ブライアン・フリーマントル 2010/07/20 18:26
「東西ミステリーベスト100」海外編の41位は、エスピオナージュの傑作、チャーリー・マフィンシリーズの第1作。
昨年久々に新作「片腕をなくした男」が出たから、なんと30年以上続いているシリーズだ。一時期出版がとだえ、作者自身が新潮文庫から「消されかけた男」だったが、見事復活したようでなによりです。
本書は、終盤の大どんでん返しで話題になったが、一見さえない男・チャーリーの置かれた立場が、リストラ寸前の中間管理職サラリーマンの共感を呼び、この結末に喝采を送ることになるのは当然でしょうね。

No.799 8点 キドリントンから消えた娘- コリン・デクスター 2010/07/19 21:06
モース主任警部シリーズの第2作。
2年前の女学生失踪事件に関して、モースの結論が四転五転するところが最大の読みどころで非常にスリリングで面白かった。
ただ、よりプロットを錯綜させているものの、基本的に前作「ウッドストック行最終バス」の焼き直しと思えるのも事実。
本格ミステリといっても、直感型の探偵役のため、ロジカルなパズラーとは一線を画する作風といえます。
なお、原題の”Last Seen Wearing"は、ヒラリー・ウオーの名作と同じですね。

No.798 6点 はなれわざ- クリスチアナ・ブランド 2010/07/19 20:46
大胆なアリバイ・トリックがタイトルの由来ですが、それほど感心するトリックではなかった。
コックリル警部自身がツアー客全員のアリバイ証言者というところが面白いが、シリーズ愛好者でないと、なかなか進展しないプロットが退屈に感じられると思います。

No.797 6点 あなたに似た人- ロアルド・ダール 2010/07/19 18:01
”奇妙な味”系の短編ミステリの名手といえばダールでしょうが、作品によって結構出来不出来(というより、好みに合う合わないかもしれないが)の差が大きい作家だと思った。
この作品集では、有名どころの「おとなしい凶器」と「南からきた男」しか印象に残っていない。

No.796 7点 ポオ小説全集3- エドガー・アラン・ポー 2010/07/19 17:45
「東西ミステリーベスト100」海外部門にはエドガー・アラン・ポオの短編が3作入っている。そのうち当全集第3巻収録で最初の推理小説といわれる「モルグ街の殺人」は36位。密室トリックとしてはツッコミどころもあるけど、今読んでも古さを感じない内容でしょう。
なお、第4巻の収録になるが、暗号解読ものの名作「黄金虫」は40位、逆説的な隠し場所トリックの代名詞「盗まれた手紙」は64位だった。

No.795 7点 寒い国から帰ってきたスパイ- ジョン・ル・カレ 2010/07/19 17:12
東西冷戦時代のドイツを舞台にしたリアリズム・エスピオナージュの傑作。主役はある意味「ベルリンの壁」だろう。
読者サービスに徹したエンタテイメント小説とは対極に位置するような作品なので、重たい文章とシリアスなシーンの連続に、読了後ぐったり疲れてしまった。

No.794 8点 暗殺者- ロバート・ラドラム 2010/07/19 16:58
最近で言うと「ダ・ヴィンチ・コード」や「ミレニアム」などの位置づけに近い作品で、陰謀を中心にした総合エンタテイメント小説。
作者の他の作品と違うと思ったのは、主人公のボーンの造形がしっかりと書き込まれているところ。したがって、描かれる陰謀サスペンスに荒唐無稽さはあまり感じられないし、物語にどっぷりと嵌ることができた。

No.793 7点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2010/07/19 16:36
国名シリーズの中では「ギリシァ棺」と並んで、派手な展開をみせる作品。
エジプト十字架の特殊な形状によって、××ネタであることを隠蔽するというアイデアが創作の出発点だったと思われます。
初心者の頃に読んだので、気持よく騙された記憶があります。

No.792 8点 笑う警官- マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 2010/07/19 15:43
「東西ミステリーベスト100」海外編の30位は、大河警察小説シリーズの代表作。
同じ北国でも北海道警ではなくて、ストックホルムが舞台。
全10巻でスウェーデン社会の10年間の変遷を描きながら、マルティン・ベックを始めとする個性豊かな刑事群像が読ませる(次作で大活躍するラーソン刑事がよかったなあ)。
第4作の本書は、冒頭から緊迫した展開を見せ、完成度ではシリーズ随一だと思います。

No.791 6点 赤い収穫- ダシール・ハメット 2010/07/19 15:14
タイトルが「血の収穫」となっている東京創元社版で読みました。
過激なバイオレンス描写が、硬質で省略の多いハードボイルド文体に合っていて、「マルタの鷹」よりハメットの作風がいくらか分かったような気する。
しかし、発刊当時はともかく、現在では歴史的意義しか感じない作品でした。

No.790 7点 初秋- ロバート・B・パーカー 2010/07/19 14:48
私立探偵・スペンサーシリーズの代表作といわれる作品。
ひょんなことから預かった自閉症気味の無気力少年を、私立探偵がハードボイルドの心でもって自立させる物語。
シリーズとしては全くの異色作で、ハードボイルドを超越しているというより、逸脱しているようにも見える。しかし、最後はなかなかの感動ものでした。

No.789 8点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2010/07/19 14:18
ドルリー・レーン四部作では「Yの悲劇」と人気を分けあう傑作ですが、この2作はテイストがだいぶ異なるので、プロットはそれぞれ別のクイーンが考えたように思えます。
作品の舞台は、「Y」の古典的閉鎖空間と「X」の現代的広域空間で対照的ですし、真犯人の意外性は、「Y」は人物の属性そのものの意外性ですが、本書は物語の状況設定の中で意外性を出そうとしていると思います。
証拠・伏線に関しては、「Y」では明白に提示しその解釈を推理する方式に対して、本書もその傾向が多少あるものの、証拠と明示せずに伏線としておき、解決編でロジカルに提示されているように感じました。
好みでいえば「Y」ですが、パズラーとしては本書のほうが出来がいいのではないでしょうか。

No.788 9点 ブラウン神父の童心- G・K・チェスタトン 2010/07/18 21:54
本格ミステリの短編集として、その中で使われたアイデアが後のミステリ作家に与えた影響はホームズ譚を凌ぐでしょう。
なにせ、「Xの悲劇」や「ABC殺人事件」もある意味では、本書収録作の追随作品でしかないのですから。
作者は、他の作品でも”逆説=意外性”という命題を徹底して追求していますが、ブラウン神父シリーズが一番ストレートで理解しやすいと思います。
この第1作品集では、「見えない男」や「折れた剣」という有名作品や、「イズレイル・ガウの誉れ」が好みです。

No.787 8点 さむけ- ロス・マクドナルド 2010/07/18 21:34
「東西ミステリーベスト100」海外部門の24位というのは意外と評価が低いですね。
私立探偵のアーチャーが尋問マシーンの如く行動するのは、たしかにハードボイルド小説の形態なんですが、本格ミステリもびっくりの真相が用意されていた。最後の一行はタイトルに呼応して読者を震撼させるものがあります。
事件が現在・過去の3件ある上、いつも通り人物関係が錯綜しているので、途中の交通整理が大変でしたが。

No.786 7点 わらの女- カトリーヌ・アルレー 2010/07/18 20:52
億万長者の遺産めあてに結婚する女性・ヒルダガルデが主人公ですが、いわゆる悪女ものではないですね。
主要登場人物は3人しかおらず、タイトルから大凡のプロットが読めるのが難点ですが、花嫁募集広告に応募する際の手紙文などから覗える30代女性の造形は、いかにもフランス人女性作家が書いたサスペンスという印象でした。

No.785 8点 グリーン家殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2010/07/18 18:17
「東西ミステリーベスト100」海外編の22位に入った本書は、館ミステリの代表格として、戦後の日本ミステリ界に与えた影響は甚大でしょう。
「そして(犯人以外)誰もいなくなった」と揶揄されるように、フーダニットとしては大きな欠点もありますが、次々と殺人事件が発生し家人が少なくなるにつれ、屋敷を蔽う陰惨な雰囲気とスリルが増殖していく所は、いまでも読み応え充分だと思います。

No.784 6点 高い砦- デズモンド・バグリイ 2010/07/18 18:01
正統派の冒険小説。
山中に墜落した飛行機の生き残りの乗客と、ある武闘集団の戦いを描いているだけですが、いわば素人集団VSプロ集団という構図が面白い。乗客側の専門分野を駆使した反撃、とくに古代の投石機を再現した武器などが印象に残っています。

No.783 6点 マルタの鷹- ダシール・ハメット 2010/07/18 17:48
私立探偵を主人公としたハードボイルドという点と、「マルタの鷹」の争奪戦というプロットがちょっとミスマッチだという印象。
文体は新しいのに、物語が旧いタイプの小説と言う感じです。
主人公にもあまり魅力を感じなかった。

No.782 7点 興奮- ディック・フランシス 2010/07/18 17:26
「東西ミステリーベスト100」海外編の19位は、英国スリラーで競馬シリーズの代表作。
ミステリ趣向として、ある小道具を使った不正レースのトリックは推理クイズ本などで有名になってしまいましたが、テーマはいつもどおりで、男の不屈の精神。
今回の主人公は純粋な巻き込まれ型でないのが不満点ですが、一旦屈服した男の再生の物語はやはり読ませます。

No.781 8点 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ 2010/07/18 17:10
この作品も読了時の感動と現在の客観的評価の狭間で揺れる微妙な立ち位置の古典本格ミステリ。
レドメイン家兄弟を被害者とする連続殺人のプロットは、真相が透けて見えるのですが、登場人物の造形(特に真犯人)や中心となる舞台の一つ、イタリアのコモ湖畔の情景描写など、非常に文芸臭が漂い印象に残っています。

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