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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.855 7点 写楽 閉じた国の幻- 島田荘司 2010/07/26 21:06
著者初の本格的な歴史ミステリ。
「成吉思汗の秘密」や「時の娘」は、始めに仮説がありそれを証明するアリバイ崩し的な歴史ミステリと言えると思いますが、写楽の謎(=写楽は何者だったのかという謎に収斂する)は、一種のフーダニットものに通じる魅力があり、本書の「真犯人」も島荘らしい奇想天外さで楽しめた。
現代編は主人公の家庭環境の話題など冗長と思える点とか、本作で解明されない事象が残ったりで不満ですが、蔦屋重三郎視点で描かれる江戸編のエピソードはなかなか軽妙で、その中にさりげなく写楽のアリバイ崩しの伏線である暦の話題を入れるなど、巧妙な構成になっていると思います。

No.854 6点 闇の奥へ- クレイグ・トーマス 2010/07/26 20:41
英国情報局長ケネス・オーブリーが登場する冒険スパイ活劇サーガの一冊。
同シリーズの作品では、映画化された「ファイアフォックス」が有名ですが、本書はミッチェル・ガントではなく、部下の工作員パトリック・ハイドが主役で、謀略と活劇が堪能できる。
しかし、時代の趨勢で現在ではもはや流行らないストーリーだという感は否めない。

ちなみに、本シリーズの原題にはほとんど動物の名前が入っていて、本書の場合は”The Bear's Tears"。

No.853 7点 誓約- ネルソン・デミル 2010/07/26 19:03
ベトナム戦争時の残虐行為疑惑で軍事裁判にかけられる元陸軍中尉を主人公にした法廷ものサスペンスの超大作。
シリアスな内容で重厚長大なうえに、テーマが日本人読者に馴染まないと思いますが、思いのほか物語に引き込まれました。
のちに「模倣犯」を書いた宮部みゆきが、本書を「このミス」で1位に挙げているのが分かるような気がします。
しかし、デミルは「ゴールド・コースト」や「プラムアイランド」などのエンタテイメント志向の作品のほうが好みだ。

No.852 6点 フリーキー・ディーキー- エルモア・レナード 2010/07/26 18:43
クライム小説といっても深刻さや暗欝さがないの作者の特徴でしょうか。
本書も、休職中の警官を始め、レイプを訴える女優、暇を持て余す大金持ち、ベトナム反戦の影を引きずる爆弾狂など、ちょっと常識を外した登場人物たちが、それぞれの欲望のままにオフビートな騒動を繰り広げます。
映像的でスタイリッシュなクライム小説という印象です。

No.851 6点 古い骨- アーロン・エルキンズ 2010/07/26 18:21
「このミス’89年版」海外部門の3位にランクインしたのはスケルトン探偵シリーズの邦訳第1作。
探偵役が、発見した白骨から生前の容貌はもとより性癖まで推理してしまうというのがユニーク。探偵の特異な設定によりプロットもパターン化されるから、シリーズがこれほど続くとは思わなかった。

No.850 6点 真夜中のデッド・リミット- スティーヴン・ハンター 2010/07/25 21:58
冒険小説の傑作「極大射程」などの”スワガー・サーガ”で大ブレイクする前に書かれた軍事サスペンス。
核ミサイル基地を占拠した武装集団と、その奪還に挑むデルタ・フォース部隊の戦闘アクションもので、作者の武器オタクぶりが全開ですが、後半の圧倒的サスペンスに比べ前半の冗長さがちょっときつい。
人間ドラマぽいシーンを挟んでいるのが、あまりに類型的に思えてしまいました。

No.849 8点 羊たちの沈黙- トマス・ハリス 2010/07/25 21:32
映画&原作本とも大ヒットした本書は、やはり”サイコ・サスペンス小説の傑作”で、その呼称は揺らがないと思います。
物語の本筋は、FBIの女性訓練生スターリングが、女性の皮をはぐ連続殺人鬼<バファロー・ビル>を追うというストーリーなんですが、脇役であるはずの精神科医”人喰いハンニバル”ことレクター博士の存在感があまりにも突出していて、その特異なキャラクターが物語全編を支配しています。
収監中のレクター博士がスターリングにアドバイスするシーンでは、彼が一種の安楽椅子探偵かと思えてきました(笑)。

No.848 6点 このミステリーがすごい!’89年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/07/25 20:52
創刊第2号となる本書は、企画ものが増えてミステリ情報誌として体裁が整ってきたように思います。覆面座談会による一年の総括、わが社の隠し玉など興味を引く企画が増えた。
また、アンケート回答者も内外とも60~70人に増え、ランク付けもある程度客観性を持つようになった。海外部門の投票に、実作者の宮部みゆき、大沢在昌、山口雅也などが参加し彩りを加えていてコメントも楽しめる。

ベストテンを見ると、海外部門は予想通りというべきか、サイコサスペンス・ブームの火付け役となったあの傑作が1位。
国内部門は、ハードボイルドの新星「私が殺した少女」が1位というのは少々意外ですが、島田荘司、岡嶋二人、志水辰夫など妥当な顔ぶれ。新本格派は全滅。「8の殺人」(第18位)などはユニークだと思ったが、広い支持を得られなかったようだ。

No.847 6点 透明人間の告白- H・F・セイント 2010/07/25 18:20
サバイバル風の冒険小説、というより風刺小説かもしれません。
突如”透明人間”になってしまった男の、通常生活の中の苦難の数々を、馬鹿らしいほど丁寧に描いています。
SF風の異常な設定なのに、透明人間だとこういう点が困るだろうとか、リアル過ぎる考察は一種のユーモアを醸しだしますが、ミステリ趣向が弱いので物足りない気もする。

No.846 6点 男たちの絆- マイクル・Z・リューイン 2010/07/25 17:55
失踪人課のパウダー警部補シリーズの3作目。
モジュラー型の警察小説で、複数の事件を並行して描いていますが、核は父親が失踪した12歳の少年との交情で、なかなか読ませます。ただ、身障者である部下の女性刑事への対応など、前作の趣向の繰り返しが気になりました。
前作「刑事の誇り」でパウダーの魅力を書ききった感じで、それを超えることは出来なかったように思います。

No.845 6点 スリーパーにシグナルを送れ- ロバート・リテル 2010/07/25 17:29
内容紹介文を読んで、ソ連の元スパイ養成所教官の亡命を題材としたエピオナージュかと思っていたら、物語がどんどん変な方向にずれていく。登場人物も、主役級のCIA工作員2人組を始め、脇役までも変な性癖を持つユニークな人物ばかりで、シニカルなユーモアが漂い面白かった。
結末はかなり意外だと思いますが、ネタバレ気味の解説を先に読んだのでカタルシスは半減してしまった。

No.844 7点 赤毛のストレーガ- アンドリュー・ヴァクス 2010/07/24 21:29
やくざな私立探偵バークを主人公にしたバイオレンス風ハードボイルド、シリーズ第2弾。
毎回ニューヨークの暗部をテーマにしていますが、今回は未成年ポルノの世界に乗り込みます。
次作の傑作「ブルー・ベル」には及ばないものの、軟弱系ネオ・ハードボイルドへのアンチテーゼのような熱気と過激さで独特のテイストがあります。

No.843 7点 北壁の死闘- ボブ・ラングレー 2010/07/24 21:14
いま時、流行らないかもしれませんが、第二次大戦末期のナチス・ドイツの秘密計画を絡めた山岳冒険小説です。
邦訳された80年代後期は、こういうストレートな冒険小説の人気が下火になっていたので、遅れてきた冒険小説の傑作という感が強い。アイガー北壁の最難所”神々のトラヴァース”をめぐるリアルな登攀シーンや緊迫したアクションが読みどころ。

No.842 7点 死の味- P・D・ジェイムズ 2010/07/24 17:22
アダム・ダルグリッシュ警視(長)シリーズの8作目。
教会で浮浪者とともに死体で発見された元国務大臣の死の謎を追っていますが、従来にも増して長大かつ重厚な捜査小説で、内容的にも読み終えるとぐったりとなる。
新たに女性警部をメンバーに加えていますが、コーデリアのような役割ではなく、シリアスな人間ドラマを助長させるような感じを受けました。重すぎて続けて読むのはちょっときついシリーズ。

No.841 7点 推定無罪- スコット・トゥロー 2010/07/24 16:57
読み終えて事件の構図を整理すると、二時間ドラマ風の設定であったことが分かりますが、登場人物それぞれの思惑を錯綜させながら伏線を散りばめた前半部と、法廷テクニックを駆使した後半のスリリングな展開で、真相が見えにくい一級品のミステリに仕上がっていると思います。
美人検事補殺しの捜査を担当するはずの主席検事補サビッチが徐々に重要容疑者になっていく訳ですが、そのサビッチの一人称視点で語られる心情が物語に深みと重みを加えています。

No.840 7点 夢果つる街- トレヴェニアン 2010/07/23 21:29
覆面作家トレヴェニアンは一時、既存作家の変名という説(たとえば「暗殺者」のロバート・ラドラムの変名説)が流れましたが、今では正体が明らかにされています。
スパイ冒険小説で名を馳せた作者ですが、本書は一転して非常に地味な警察小説で、モントリオールの”ザ・メイン”という街が舞台であり主人公でもあるといえます。
退職間際の警部補の主人公がいて殺人事件が発生しますが、ミステリ的興味よりも、吹きだまりの様な街に住む人々の生きざまを活写することに重点が置かれ、その人間模様が読みどころ。
何ともいい難い重厚な雰囲気が漂っていて好みではありますが、エンタテイメント小説を期待すると裏切られる。

No.839 6点 このミステリーがすごい!’88年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/07/23 18:55
「東西ミステリーベスト100」が出た2年後、創刊号である「このミス’88年版」を本屋で見つけ即購入した。
アンケート回答者は国内編26名(団体)海外編13名で少数精鋭?の感がありますが、回答者に鮎川哲也や大沢在昌のビックネームも入っています。(アルバイト探偵シリーズが15位にはいっていますが、大沢は海外部門の投票のみに参加)

海外部門で、ベストセラーの「推定無罪」を差し置いて、渋めのトレヴェニアンが1位というのはいかにも「このミス」らしいところ。
国内部門は、時勢がら冒険・謀略ものが幅を利かせているものの、デビューしたての新本格第一世代2名がベストテン入りという快挙。

回答者・鮎川先生は6作全て新本格作品を挙げ、コメントに曰く「かつて本格ものの作家は文章力が劣るといわれたが、この新人たちは揃って達筆云々」というのは、当時の書評家の論調と比べると相当違和感があります(笑)。

No.838 6点 オデッサ・ファイル- フレデリック・フォーサイス 2010/07/23 18:11
一時期やたら”ナチス”ネタの冒険・陰謀ものが流行りましたが、本書がその先駆かもしれません。
元ナチ将校の行方とその援護秘密組織を追う記者を描いたドキュメンタリー風のサスペンスですが、作者の緻密な取材力を覗うことが出来るものの、題材にあまり魅力を感じなかったためこの評価です。

No.837 6点 中途の家- エラリイ・クイーン 2010/07/23 18:01
国名シリーズとライツヴィルものの中途の作品。
探偵クイーンの造形に厚みが感じられ、消去法によって論理的に犯人に至るロジックにもそこそこ満足できましたが、物語が地味でリーダビリティに少々欠けるように思います。

No.836 7点 血の絆- A・J・クィネル 2010/07/23 18:01
正統派の海洋冒険小説。
子供の生死を確認すべく未亡人がおんぼろのヨットでインド洋へ旅立つ。途中次々と仲間になる3人の男女との交情、インド洋の島々の情景など、印象に残るシーンに溢れています。
元傭兵もののバイオレンス・サスペンスもいいが、日常からの逃避の読書として最高の時間を過ごせる名作。

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