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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1080 8点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2010/08/25 21:08
純愛ネタの文芸的テイストと、本格ミステリ的趣向を兼ね備えた小説で、読みやすく素直に楽しめた作品。
石神が採った究極の手段が文芸もののテイストと相容れないという意見はもっともですが、本格ミステリとして読んだので気にならなかった。探偵役の「幾何の問題と見せかけて、じつは関数の問題..」なんていう台詞はゾクゾクとさせるものがありました。
強いて注文をつけるとすれば、天才対天才という構図をもっと前面に出した方がよかったと思う。

No.1079 7点 どんなに上手に隠れても- 岡嶋二人 2010/08/25 20:45
タイトルからも「あした天気に..」と同系統のサスペンス小説を感じさせ、そのとおりの身代金奪取の仕掛けと誘拐の目的に意外性を持たせたなかなかの良作でした。
複数の登場人物に色々思惑を持たせた関係で、ごたごたした印象がありましたが、本書も誘拐ミステリの秀作だと思います。

No.1078 5点 深泥丘奇談- 綾辻行人 2010/08/25 20:13
幻想的怪奇譚の連作短編集。
京都を思わせる架空の街を背景に、小説家の「私」が遭遇する不可思議な事象の数々を、私小説風に淡々と描いています。
日常の謎ならぬ”日常の怪奇”という感じで、岡本綺堂などの昔の怪奇譚の趣があるといえば褒めすぎかもしれませんが、作者の別の一面を見せてくれている異色作だと思います。まさか奥さんの代作ではないでしょうね?

No.1077 6点 女王国の城- 有栖川有栖 2010/08/25 18:49
人気シリーズ久々の第4弾という事で、期待が大きすぎたのか、自分のミステリ嗜好が変わったのか、微妙な読後感でした。
不満点を列挙すると、新興宗教集団と超常現象という陳腐な設定、初期の瑞々しい青春ミステリ風味の減退、無駄に長く横道にそれる前半部の冗長なプロット、既読感のある(たぶん、梶龍雄作品)隠された構図などがその理由だと思います。
ただ、終盤の解決へのロジック(とくに、凶器の拳銃に関するもの)などは初期作を彷彿させ、さすがと思いましたが。

No.1076 6点 怪盗グリフィン、絶体絶命- 法月綸太郎 2010/08/25 18:11
ミステリー・ランド叢書の中には、これ本当に子供に読ませていいの?とトラウマを心配させる作品もあるように思いますが、本書はコンセプトどおり、大人も子供も楽しめる軽快な冒険スパイ小説でした。
正義の怪盗という主人公の造形や、テンポのいい二転三転するプロット、作者らしいロジカルな展開と、このタイプのミステリとしては過不足ない良作だと思います。

No.1075 7点 電氣人閒の虞- 詠坂雄二 2010/08/24 20:52
遠海市の都市伝説・電気人間を探る人々が次々と不審死するというお話。前作の「遠海事件」とは直接繋がりはないが、小説家・詠坂も再登場します。
本書は、ワン・アイデアに支えられた騙りのミステリで、前例のあるトリックながら、電気人間のある特性によって、読者が絶対に見抜けない仕掛けになっている所が作者のアイデア。終盤のアノひと言はなかなか衝撃的ではありましたが一般受けは難しそう。
読み終えると、タイトルが別の意味を持ってくるところも感心しました。

No.1074 6点 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? - 詠坂雄二 2010/08/24 20:34
「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」という副題が付いているように、首切断理由の分析も入ったホワイダニットには違いないのですが、周到な騙りに満ちたミステリでした。
小説家・詠坂雄二が書いた犯罪実録小説の体裁をとりながら、タイトル、副題、そして大量殺人犯という佐藤の人物造形までをもミスディレクションに繋げ、小説が終ったあとのページにも仕掛けを施すという凝りようです。
一読地味な印象ですが、読めば読むほど味が出る感じがする逸品です。

No.1073 5点 リロ・グラ・シスタ- 詠坂雄二 2010/08/24 18:50
個人的に注目している作家ですが、デビュー作の本書は、色々と大掛かりなトリックを詰め込み過ぎの感じで、またアイデアは非常に面白いものの、いずれも前例があるものなので、手放しでは楽しめませんでした。
学園ものの本格ミステリながら、一人称ハードボイルドという特異なスタイルは、ある構図をミスリードするためとはいえ、どうもすっきりしません。また、各章毎に色つきのページを配する装丁には退いてしまいます。

No.1072 6点 新参者- 東野圭吾 2010/08/24 18:05
よく言われるように、まさに東野版の捕物帳の味わいがありました。わざわざ、主人公を人形町界隈を所管する署に異動させて舞台設定に怠りなしです。
連作ミステリとしては、日常の謎テイストでツイストを効かせた第1話が秀逸ですが、終盤の数作品は、全体を貫く本筋の事件をまとめ上げるための物語になり完成度が落ちているように思いました。
しかし、第1話の掲載から5年間かけて断続的に書いた作品にしては巧く仕上げていると思います。

No.1071 6点 タイム・リープ あしたはきのう- 高畑京一郎 2010/08/24 17:40
タイム・パラドックスを主題にした学園ものSFミステリ。
時間移動期間が1週間限定としている設定が、このタイプの小説の複雑さを回避していてるように思います。時間パズルの問題としてはライトノベルの水準を超えた質の高さでした。
読了後に、最初にもどりプロローグを読み返すと、読者をもタイム・リープさせる仕組みになっている所が面白い。

No.1070 7点 ラットマン- 道尾秀介 2010/08/23 20:49
凝った設定や特異な造形の人物が登場しない分、中盤までは物足りない感じを受けるかもしれませんが、終盤にあらわになる高度な騙しのテクニックは素晴らしいです。
とくに、サプライズとともにタイトルの意味が浮かびあがるラストが秀逸です。

No.1069 5点 ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 2010/08/23 20:23
首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡サスペンスですが、世評ほど出来がいいとは感じられませんでした。
主人公に肩入れするほどの魅力が感じられず、逃亡する男に次々と援助者が現れたり、ご都合主義的偶然を多用しているところは、スプラスティック・コメディならいざ知らず、逃亡サスペンスとしては緊迫感をそぐプロットだと思いました。
なによりも、内容の割に長すぎますね。

No.1068 4点 犬坊里美の冒険- 島田荘司 2010/08/23 20:00
女性の司法修習生を探偵役に据えた長編ミステリ。
冤罪とか裁判制度に対する問題提起をひとつの主題としながら、神社の離れからの死体消失という不可能トリックを扱っていますが、いつもながら、氏の描く若い女性キャラがどうも受け入れがたい。また、人を喰ったような死体消失トリックには脱力しました。
裁判制度という主題とバカミス系トリックがちょっとマッチしていないという印象です。

No.1067 7点 悪意- 東野圭吾 2010/08/23 17:39
序盤はフーダニットの興味もあるが、殺人動機の謎を中心に据えた良質のホワイダニット・ミステリでした。

手記を書いた人物が小説家である点がポイントではないかと思います。
かつての、コード型の本格ミステリを「人間が描けていない」と批判する論調に切り返すような、「人間が描けている」手記そのものをトリックにしているところに一番感心しました。
ただ、隠された動機は、タイトルによるヒントもあり、ある程度予測がつくものでしたが。

No.1066 4点 空海 七つの奇蹟- 鯨統一郎 2010/08/23 17:39
弘法大師・空海が、まだ「真魚」と称していたときに、修業で巡る四国各地で起した奇蹟の逸話を基にした連作ミステリ。空海が登場する他の2長編と比べると非常に軽い内容で、奇蹟のトリックも各話ともひねりがなく子供騙しレベルでした。
歴史ネタ&ミステリ度ともに低級な出来です。

No.1065 3点 パラドックス学園 開かれた密室- 鯨統一郎 2010/08/23 17:39
登場人物が重なっているので、一応「ミステリアス学園」の姉妹編かと思います。
ドイル、ポー、アガサなどの大学生が登場し、あの作品を連想させたり、カーが密室殺人の被害者になるなどプロット自体はパロディ趣向充分なんですが、事件の真相のバカバカしさ、いくつか挿入された逆説の陳腐さなど、嗜好から大きく外れた作品でした。

No.1064 5点 あすなろの詩- 鯨統一郎 2010/08/22 21:45
作者にとっては珍しい学園もののミステリですが、それ以上に破格の展開を見せるプロットで、非常に異色な作品になっていると思います。
前半部の、大学の文芸部サークルの同人誌作成を巡る読み心地のいい青春小説のテイストが、後半部に入って嵐の山荘ものの大量殺戮の物語に急展開するプロットが刺激的でした。作者のぬるめの他作品を読んでいれば、作風の相違に驚くこと間違いないと思います。

No.1063 2点 「神田川」見立て殺人- 鯨統一郎 2010/08/22 21:24
間暮警部の事件簿シリーズの第1短編集。
昭和の懐かしのメロディに乗せて、歌詞を無理やりこじつけた見立て殺人を扱っています。
作者は、よほど70年代の歌謡史に思い入れがあるのか、桜川東子シリーズ以上に歌謡曲ネタに固執していますが、ミステリとしてはクズといっていい連作でした。

No.1062 3点 哲学探偵- 鯨統一郎 2010/08/22 21:05
「なみだ特捜班」の高島警視らが狂言回しになって、哲学者まがいの競馬場のおっさんが探偵役を務める連作ミステリ。
いくつか不可能トリックを扱った魅力的な謎がありますが、探偵役を始めとする登場人物のキャラが立っていない。コンセプトがいまいちよく分からない連作でした。

No.1061 5点 親鸞の不在証明- 鯨統一郎 2010/08/22 20:54
「金閣寺に密室」「いろは歌に暗号」に続く長編歴史ミステリの第3弾。
六郎太と静のコンビが狂言回しとなって、名僧に関わる過去の事件を描くのがシリーズの定型で、密室、暗号につづいて今回はアリバイ(不在証明)かと思っていると、最後に背負投げを喰らうことになります。
この歴史シリーズ、余計なギャグもなく比較的まじめに書いているのは好印象です。

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