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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1126 6点 ビロードの爪- E・S・ガードナー 2010/09/03 18:56
80冊以上書かれたペリー・メイスン弁護士シリーズの第1作。
このシリーズはあまり読んでないのですが、少なくとも本書のメイスンは思っていたより熱血漢でハードボイルド的なところがあったのが意外でしたね。
本書は、法廷ミステリの趣向がないのが物足りないですが、そこそこのどんでん返しがあり楽しめました。

No.1125 6点 自宅にて急逝- クリスチアナ・ブランド 2010/09/03 18:35
親族が集まる邸宅で、遺言状を書きかえる寸前に邸主が殺されるという、クラシック・ミステリの定番のプロットで幕を開けますが、そこからの展開が一筋縄ではいかないブランドの本領発揮で、親族間での推理合戦(というか、告発中傷合戦?)が面白い。
蚊帳の外状態だった、コックリル警部の最後の推理は鮮やかですが、足跡のない殺人のトリックはバカミスのたぐいでした。

No.1124 6点 修道女フィデルマの洞察- ピーター・トレメイン 2010/09/03 17:56
7世紀の古代アイルランドを時代背景にした歴史ミステリ連作の第2弾。
探偵役フィデルマは修道女でありながら、今で言う弁護士、裁判官の資格もあって、おまけに王の妹という設定で、ほとんど反則に近いオールマイティさです。海外の歴史ものに共通する、文化・宗教がらみの馴染みのない固有名詞が頻繁に出て来るのが煩わしいですが、端正な本格ミステリになっています。
最終話の「晩祷の毒人参」は、探偵役の設定を逆手にとって、修道女と弁護士という二つの立場のために、彼女にとって悩ましい結末を用意していて印象に残る作品です。

No.1123 4点 レディ・モリーの事件簿- バロネス・オルツィ 2010/09/03 17:33
論創社版の”シャーロック・ホームズのライヴァルたち”シリーズの第1弾、ミステリ史上初の女性警官を主人公にした連作短編集。
発表された年代を考えると、ミステリの趣向的にあまり期待できませんが、予想通りの内容で、ほとんどの作品は真相がミエミエでした。連作の最後に探偵役のプライベートが明かされる構成は「隅の老人」と似ていますね、内容は全然違いますけど。

No.1122 8点 静寂の叫び- ジェフリー・ディーヴァー 2010/09/02 20:44
人質・立て篭もり脱獄囚3人組とFBI危機管理チームとの交渉・対決を描いた傑作サスペンス。
本書は、リンカーン・ライムシリーズでブレイクする直前に出版されましたが、「ボーン・コレクター」以降の作品に目につくあざとい読者サービス的な展開を排し、重厚かつ緻密な描写で丁寧な創りは好感が持てました。
二人の主人公格、FBIの交渉エキスパート・ボターと、人質となった聾学校生徒たちに付き添う教育実習生メラニーをはじめ、脇役にいたるまで多士多彩な登場人物がいずれも魅力的。
スリリングな交渉シーンや最後のどんでん返しに至るまで、緊密度が高く非常に読み応えのある内容でした。

No.1121 6点 夜の冒険- エドワード・D・ホック 2010/09/02 20:03
ノン・シリーズのミステリ短編集で、ほとんどが非パズラー系の作品が収められています。10年程前に出た「夜はわが友」の姉妹編という感じですが、本書の方が総じて出来がいいように思います。
ダークな雰囲気なもの、奇妙な味、ウールリッチ風の都会派ロマン、謀略もの、心理サスペンスなど、パズラー作品にはない多彩な作風を披露してくれていて満足でした。

No.1120 7点 五番目のコード- D・M・ディヴァイン 2010/09/02 18:38
ディヴァインの6作目は、連続殺人の「ミッシングリンク」をテーマとした作品で、容疑者にもなる新聞記者を探偵役にした巻き込まれ型の本格ミステリです。
テーマの割に派手でスリリングな展開ではありませんが、主人公ジェレミーの屈折した造形など、いつもながらの丁寧な人物造形がさえていて、犯人特定のきっかけも、その人物の性格と行動の食い違いが関係しているところなどはさすがです。
当然ながら「ABC殺人事件」を意識させますが、むしろ犯人隠匿のテクニックはクリステイの別の作品を連想させました。

No.1119 5点 探偵術教えます- パーシヴァル・ワイルド 2010/09/02 18:09
通信教育探偵もののユーモア連作ミステリ。
探偵を目指すお抱え運転手モーランが、通信教育で学んだ探偵テクニックを実践する段階で起す騒動を、教育担当の主任警部との往復書簡の形式で描いています。
なかでは、「モーランと消えたダイヤモンド」が、過去の消失トリックを扱った探偵小説のパロディとモーランの暴走ぶりが楽しい。

No.1118 6点 大博奕- ロス・トーマス 2010/09/01 23:39
ウー&デュラントのコンビが主役を張るクライム・ミステリの第1弾。原題は”Chinaman's Chance"=わずかなチャンス。
当シリーズは、その後3作目まで出ていますが、二人の出生の秘密やコンビのなれそめなど肝の部分が、本書でしか語られていないので、これが簡単に読めない現状は非常に不幸です。
プロットが凝り過ぎて複雑なうえ、会話もストレートでないので、初めはとっつきにくい印象がありますが、はまると癖になる面白さを秘めていると思います。

No.1117 5点 モルグの女- ジョナサン・ラティマー 2010/09/01 20:51
私立探偵ビル・クレインが登場するシリーズ第3弾。
文体はハードボイルドですが、内容は集団探偵ものの本格ミステリです。
モルグから消えた美女の正体や、事件の真犯人も意外で、パズラーとして充分楽しめます。探偵役三人組のブラックなアメリカン・ユーモアに溢れた会話が一番の読みどころだと思いますが、訳文がいまいちで良さがうまく伝わってきません。出来れば新訳で再読したい作品です。

No.1116 5点 十日間の不思議- エラリイ・クイーン 2010/09/01 20:28
「ハイト家」「フォックス家」に続くライツヴィルを舞台にした第3弾。
この作品は、これ以降のクイーン作品を楽しめるかどうかの試金石となる作品だと思った。「ギリシャ棺」でも同様の趣向はあったが、それをより推し進めた感じです。
比較的長めの小説で、肝心の事件もなかなか発生しない。ハワードの記憶喪失と脅迫事件、ホーン家を巡る家族間の人間模様が描かれるが、出来が悪いとは思いませんが、なぜか物語に入り込めずに読み終えてしまいました。
なお、鮎川哲也氏の解説は重大なネタバレがあり、事前に読まない方が楽しめます。

No.1115 7点 ザ・ポエット- マイクル・コナリー 2010/09/01 17:44
ハリー・ボッシュ刑事が出てこない初のノン・シリーズ作品。
殺人課の刑事ばかりを狙い、現場にエドガー・アラン・ポーの詩の一節を残す連続殺人鬼「詩人」と、犯人を追う新聞記者マカヴォイの追及活動を描いたジェットコースター・サスペンス。
刑事である双子の兄が犠牲者のひとりであるにしても、新聞記者がFBIの捜査陣に加わるというご都合主義的な所もありますが、終盤の二転三転するプロット、どんでん返しは実に読み応えがありました。あざとさはジェフリー・ディーヴァーを髣髴とさせます。
なお、コナリーの単発作品は、後の作品でボッシュシリーズに合流するケースが多く、本作も同様で、一種のサーガを形成しているため、ノン・シリーズを含め全て発表順に読むことをお薦めします。

No.1114 6点 殺しにいたるメモ- ニコラス・ブレイク 2010/08/31 21:20
第二次大戦終戦直後の帰還兵の歓迎会での毒殺事件を扱った本格ミステリ。
衆人環視の毒殺トリックがメインで、ハウダニット興味充分ですが、意外と早めにその真相が明かされ、フーダニットの方に移ってしまうのはちょっともったいない感じがします。しかし、終盤のナイジェルのロジカルな推理はなかなか圧巻で、エラリイ・クイーンはだしです。

No.1113 7点 東方の黄金- ロバート・ファン・ヒューリック 2010/08/31 21:08
中国版「水戸黄門」+「大岡越前」、ディー判事シリーズ初期の傑作です。旧版「中国黄金殺人事件」で読みました。
知事としての最初の赴任地での事件を扱っていて、冒頭の見送りの場面から、赴任地の地理的要素まで重大な伏線になっていたりします。
例によって複数の事件がモジュラー形式で進展し、物語として読みどころが盛りだくさんで堪能しました。判事のささいな気付きで、大きな陰謀が暴かれる終盤が結構スリリングです。

No.1112 6点 カナリヤ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2010/08/31 20:31
ファイロ・ヴァンスの蘊蓄もさほど気にならず、ポーカーによる心理的探偵法など華のある展開が気に入っていて、シリーズの中で比較的好きな作品です。
機械的な密室作りや、陳腐なアイテムによるアリバイ創りなどは、現在の基準で考えると見るべきものがないかもしれませんが、アリバイが崩れる劇的シーンなど強く印象に残っていて、初読当時は相当楽しめた覚えがあります。
しかし、心理的探偵法が本作限りになったのは、作者もその限界に気付いたのでしょうか(笑)。

No.1111 6点 タラント氏の事件簿- C・デイリー・キング 2010/08/31 20:09
ミステリ連作短編集。
超常現象的な不可解な謎・不可能トリックが多用されていて、そこそこ楽しめました。また、レギュラー・メンバーが固定されていて、作品ごとに人間模様が変化していく所も面白い。
収録作の中では、古写本の消失トリックもの「古写本の呪い」、マリー・セレスト号事件に挑戦したような「第四の拷問」が印象に残るパズラー作品。「最後の取引」は、賛否が分かれるかもしれませんが、それまでのホラー要素の作品があってこそで、連作を締めくくる手法としてアリだと思いました。

No.1110 6点 月が昇るとき- グラディス・ミッチェル 2010/08/31 18:28
サーカスがやって来た町で発生する連続切裂き魔の事件を、13歳の少年の視点で描いています。
異常な事件にもかかわらず、ノスタルジーを誘うファンタジー風の物語になっていて、仁木悦子の子供を主人公としたミステリを髣髴とさせました。
シリーズ探偵の心理学者ミセス・ブラッドリーが登場しますが、あくまでも脇役に徹していて、本書に関しては作者がパズラーを志向していないことが分かります。

No.1109 6点 四人の女- パット・マガー 2010/08/31 18:09
パット・マガーの第5作は、「被害者を捜せ!」「七人のおば」同様に”被害者当て”のミステリではありますが、明確な探偵役は置かずサスペンス風の物語になっています。
プロローグでクライマックスのバルコニーからの墜落死のシーンを見せておき、カットバック手法で、殺人を企てる人気コラムニストと”被害者候補”の4人の女性の関係が描かれていきます。
ミスディレクションが充分な効果をあげていないように思いますが、主人公ラリーの上昇志向で自己中心的な性格と心情の描写は卓越したものがあり、その点は満足できる内容でした。

No.1108 7点 ある詩人への挽歌- マイケル・イネス 2010/08/30 18:57
雪深いスコットランドの片田舎に立つ古城を舞台に、城主の墜落死の謎をメインに据えた本格ミステリ。
複数の人物の手記によって事件が語られていき、語り手が変わるごとに事件の様相が次々と変転していくという、重層的で多重解決もどきのプロットが面白い。
作者の他の作品と比べても、ゴシック・ミステリ的な雰囲気は異色で、好みのテイストですが、序盤の読みずらい文章は読者を選ぶかもしれません。

No.1107 5点 死体置場は花ざかり- カーター・ブラウン 2010/08/30 18:42
アル・ウィラー警部シリーズの軽ハードボイルド。
適度なお色気と軽快なテンポのプロットで、60年代には日本でも人気を博したと聞くシリーズで、結城昌治や都筑道夫などが影響を受けた作品を書いています。
本書が一応の代表作でしょうか。モルグからの死体消失、男女死体の入れ替りの謎などのパズラー趣向もあり、会話も洒落ていてそれなりに楽しめました。

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