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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1160 6点 ホッグズ・バックの怪事件- F・W・クロフツ 2010/09/14 17:57
田舎に隠退した医者とその関係者が次々と失踪する事件にフレンチ警部が捜査に乗り出します。地元警察の自転車を借りて聞き込みに奔走するフレンチは、田園ミステリの趣があって新鮮な感覚がありました。
終盤の2章を使ったフレンチの謎解きがなかなか圧巻。推理の開陳場面では、小説のどのページに伏線が張られていたかという数十箇所の注釈付きという凝りようです。ただ、文庫の表紙絵はある人物の関与をあからさまに示唆するもので、アリバイ崩しが主とはいえフーダニットの興味を削ぐものになっています。

No.1159 6点 模像殺人事件- 佐々木俊介 2010/09/14 17:42
山奥で道に迷いある屋敷に辿りつく探偵小説作家、顔を包帯で隠した二人の男の真贋問題、その物語を手記にして謎を解く構成など、扱われているガシェットは横溝正史や三津田信三を髣髴させるはずですが、淡々と煽りのない展開は全く異質な味わいがありました。
ミステリとしての本質の謎が何なのか解らないまま進展するプロットは読者を選びそうです。屋敷に住む人々の造形が書き込み不足なのですが、これは仕掛け上やむを得ないのかもしれません。

No.1158 6点 法廷外裁判- ヘンリー・セシル 2010/09/13 18:39
デビュー作「メルトン先生の犯罪学演習」で知られるヘンリー・セシルは、判事を務めながら余技的にミステリを書いていたようで、作品のほとんどが法廷ものです。
本書は、殺人容疑で終身刑を言い渡された主人公が脱獄し、判事や弁護士、事件関係者を監禁して私的に裁判をやり直しさせるというプロット。
訳文が古いのが玉に瑕ですが、嘘を吐いたことがないという主人公の設定が効いていて、洒脱で皮肉な真相が面白い。

No.1157 4点 『夢見』の密室- 小森健太朗 2010/09/13 18:25
古代文明ミステリーファイルの第?弾。
エジプト、バビロニアなどを題材にしてきた当シリーズ、今回はマヤ文明ですが、歴史ミステリ的な趣向は一切なく、マヤ終末予言に関わる宗教団体を舞台背景にして、密室殺人をシリーズ探偵・星野君江が謎解くというストーリー。
ごく普通の本格ミステリになっていて期待はずれでした。宗教団体の施設が山梨山中にあるのは退いてしまいます。

No.1156 6点 呪い- ボアロー&ナルスジャック 2010/09/12 14:58
主要登場人物は、獣医夫婦と近くの島に住むアフリカ帰りの女の3人だけですので、ミステリ的な仕掛けは予想の範囲内ですが、二人の女性の間で揺れ動く獣医の心情描写とアフリカの呪術への恐怖心理でサスペンスを盛り上げていて面白く読めました。
満潮時には島へ渡る道が水没する趣向など、フランス映画を見るような目に浮かぶ舞台設定も秀逸です。

No.1155 5点 収穫祭- 西澤保彦 2010/09/12 12:24
単行本二段組みで600ページを超える大作ですが、その分量に見合うほどの満足感は得られなかった。
30年近く前の台風の最中、ある村の一地区で起こった数家族の大量惨殺事件を、発見者である中学生少年の視点で描いた第1部まではよかった。ダークで性的雰囲気も漂うテイストで、作者のもう一つの持ち味が出ていると思う。
しかし、中盤以降失速してしまう。部分的記憶喪失というご都合主義の設定と”信頼のおけない語り手”の物語は、ミステリを読みなれていれば真相が透けて見えてきます。竜頭蛇尾に終わった惜しい作品。

No.1154 6点 聖アンセルム923号室- コーネル・ウールリッチ 2010/09/11 23:00
ウールリッチは長らく母親とともにホテル暮らしをしていて、そのホテルの一室に献辞をした作品もあったと記憶していますが、本書はホテルの一室自体が主人公のようなオムニバス短編集です。
19世紀末から20世紀半ば過ぎまでの60年間あまりの間、その部屋を利用した様々な人々の悲喜劇が綴られていて、ミステリ趣向はないものの、余韻が残る物語に溢れています。特に第1話と繋がる最終話のエピソードには参りました。さすが、ウールリッチです。

No.1153 7点 百舌の叫ぶ夜- 逢坂剛 2010/09/11 22:16
公安警察VS百舌シリーズの第1弾。
組織暴力団、公安側ともにどこかダークな雰囲気が漂う人物達を配し、人間関係が複雑に絡み合うことで弩級のサスペンスを醸し出しており、最後の仕掛けも大いに楽しめた。
主要人物がバッタバッタと退場していって、シリーズ2作目以降は搾りかすのようになってしまいましたが。

No.1152 7点 災厄の紳士- D・M・ディヴァイン 2010/09/11 15:06
ディヴァイン後期の作品ですが、相変わらず人物造形を逆手にとったミスディレクションが巧妙で、読者の目を真犯人に向けないように構成されています。前半のジゴロ青年視点の倒叙形式から、一転してフーダニットに変わるプロット自体が仕掛けになっているなど騙しのテクニックは面白く読めました。
初期作ほど物語に深みがなく、後半の構図は「こわされた少年」とダブるなどの不満もありますが、まずまずの佳作だと思います。

No.1151 8点 国境- 黒川博行 2010/09/11 14:28
ノワール風でありながら軽妙な語り口のクライム小説、二宮&桑原コンビの「疫病神」シリーズ第2弾。
北朝鮮に潜入する日本の極道、もうその設定だけで面白さは保障されてます。国境の凍結した川を渡るシーンなど、並みの冒険小説顔負けの緊迫感でありました。
しかし、将軍様のことを「あのパーマ・デブ」なんて言っちゃって大丈夫なのか?

No.1150 5点 泥棒が1ダース- ドナルド・E・ウェストレイク 2010/09/10 21:01
不運な泥棒・ドートマンダーシリーズの短編集。タイトルは「1ダース」ながら収録作はなぜか11編です。
完璧な犯罪プランのはずが、予想外の事態が発生して、とんでもないドタバタ劇に発展していくというのが長編の黄金パターンですが、短編だと無理な部分があるため多少物足りない作品が目立ちました。
それでも、「悪党どもが多すぎる」は長編さながらで、銀行の金庫に忍び込んだドートマンダーに待っていた不運は爆笑もの。編中では抜群に面白かった。

No.1149 8点 伝説なき地- 船戸与一 2010/09/10 20:43
いわゆる”南米三部作”の掉尾を飾るノワール系の冒険小説。
ベネズエラの涸れた油田地帯を舞台に、隠された大金と貴重資源を巡る闘争劇を描いています。
その地に住みつくコロンビア難民や助太刀する日本人テロリスト、利権のため殲滅を画策する資産家グループなど、登場人物たちの欲望、信仰、慈愛、暴力が交錯し、血とアドレナリンに溢れた物語は圧倒的な迫力に満ちていて、最後のカタストロフィに至るまで読み応え充分でした。
「このミス」創刊号の国内部門第1位作品ですが、最近あまり読まれないジャンルになっているのは残念です。

No.1148 6点 死体をどうぞ- ドロシー・L・セイヤーズ 2010/09/10 18:38
ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第7作。
探偵作家ハリエットが旅行中の海岸で発見した死体を巡るオーソドックスな探偵小説で、長尺の割に女史の作品の中では読みやすいのが良。
警察とハリエットにピーター卿が参戦し、延々と推理合戦が繰り広げられるのが一応の読みどころですが、容疑者たちのアリバイに関する幾多の推論が、たった一つの事象によって崩壊する様は結構インパクトがありました。

No.1147 7点 誘拐- 高木彬光 2010/09/10 18:05
弁護士・百谷泉一郎(夫婦)シリーズの3作目。
犯人を「彼」と表記した変則倒叙形式の第一部が効いています。別の誘拐事件の裁判を傍聴し、自身の犯罪の参考にする訳ですが、最後の最後に犯人が採った究極の自己防衛に繋がる伏線が張られていたりします。
第二部以降、誘拐が実行された後の警察の捜査状況は、再読ということもあり少々スリルに欠け、容疑者候補を多数登場させる点も意図が分かり易く感じました。二度目の東京駅での身代金受渡しのエピソードなどほとんど意味がないように思えます。また、百谷明子が採った傍聴人に対する思い切った手段はなんら根拠がないですね。発見されない罪体に関わる法的陥穽は、皮肉に満ちていて面白かったですが。

No.1146 6点 どもりの主教- E・S・ガードナー 2010/09/09 18:31
弁護士ペリイ・メイスン、シリーズの第9作。
作者の脂の乗り切っていた時期の作品で、テンポよく次々事件が発生し、謎も多く、なかなか複雑なプロットでした。秘書のデラ・ストリートや探偵のポール・ドレイクと、いつもの面々も大活躍します。
終盤、事件現場のヨットハーバーにて、メイスンの謎解きによって、登場人物たちの行動がパズルのピースが嵌る様にきれいに明らかになるのが圧巻です。

No.1145 6点 流れ星の冬- 大沢在昌 2010/09/09 18:04
老齢の大学教授を主人公にしたハードボイルド。
人に言えない闇の稼業を過去に持つ大学教授・葉山の周辺に、何者かが迫ってくるというプロットで、65歳の熟年ハードボイルドという変化球ながら、いつもながらの大沢節でやはり読ませます。
主人公が40年前の拳銃を持っていた不自然さや、ややスピード感が欠ける展開に不満がありますが、男の行動原理はハードボイルドそのものです。

No.1144 7点 黒い薔薇- フィリップ・マーゴリン 2010/09/08 21:56
女性主人公、シリアル・キラー、リーガル・サスペンスと、90年代の売れ筋サスペンスの三大要素を全て兼ね備えた傑作サスペンスです。
”薔薇の殺人鬼”の重要容疑者となる人物が、あらかじめ主人公の女性弁護士に弁護を依頼しておくという捻った設定で、読者の予想を外して二転三転するプロットが非常にスリリングだった。
終盤の、息つく暇もない展開は、まさにジェットコースター・サスペンスの面目躍如といったところ。

No.1143 5点 雨降りだからミステリーでも勉強しよう- 事典・ガイド 2010/09/08 18:14
主に’50~’60年代に英仏米で出版された未訳本を片っぱしから紹介した海外ミステリガイド。
これを持っていれば、海外ミステリ通を気取れるのではと思い大学時代に手にしましたが、いかんせんマニアック過ぎます。特に前半部に次々出て来る作家は、当時(今も?)聞いたことのない作家ばかりで、パトリック・クエンティンやビル・バリンジャーの名前が出てきてほっとしたことを憶えています。
著者の植草甚一氏は、クライム・クラブ叢書や創元推理文庫(ジャンル的に黒猫マークが多い)の出版選出を担当した人ですが、その殆どが今では絶版本というのも肯けます。

No.1142 6点 雨の国の王者- ニコラス・フリーリング 2010/09/08 17:46
オランダの警察小説・ファン・デル・ファルク警部シリーズの代表作。
雨のアムステルダムを舞台にメグレ風の警部が地道な捜査をし犯人を挙げる様なストーリーかと思いきやちょっと違った。
本書は、莫大な財産を持ちながら妻を残し失踪した中年男の行方を警部が追う私立探偵小説風のプロットで、ドイツ、オーストリア、南仏と舞台を移しながら、失踪した大会社の後継者の人物像を浮き彫りにしていく。
ボードレール詩集「悪の華」のなかの一編に出て来る「雨の国の王」が示唆するものが、この物語の全てといっていい意味合いを持ち、本書を印象に残る作品にしています。

No.1141 6点 雨に殺せば- 黒川博行 2010/09/08 17:17
大阪府警捜査一課の刑事・黒マメコンビシリーズの第2弾。
銀行の現金輸送車強盗殺人から容疑者・関係者が次々と死体となっていく深刻な事件なのに、二人の刑事の軽妙な関西漫才風やりとりがアクセントになって絶妙の読み心地。しかも中身はなかなかの本格編ということで、これは初期の秀作です。
後のサントリーミステリ大賞「キャッツアイころがった」よりだいぶ出来がいいように思いました。タイトルがいまいち意味不明ですが。

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