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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1215 7点 森を抜ける道- コリン・デクスター 2010/10/09 18:16
モース主任警部シリーズもややマンネリぎみか、と思っていた時期に出た中期の佳作。
女性失踪の謎が事件の中心なのは初期作を思わせますが、新聞社への事件を暗示するような詩の投稿を発端に、モースの推理のころがしではなく、複数の読者が紙上で謎に挑戦するというプロットが捻っていて面白い。
最後の、”名探偵の役割”に関する仕掛けには、作者の会心の笑みが目に浮かぶようです。

No.1214 6点 キッド・ピストルズの醜態- 山口雅也 2010/10/08 17:54
パラレル英国を舞台にしたパンク刑事コンビ連作シリーズの第6弾。中編3作収録。
シリーズの「慢心」や復帰作「最低の帰還」の出来がいまいちだったので、不安と期待半々で読みましたが、「だらしない男の密室」と「革服の男が多過ぎる」がパズラーの水準を軽くクリアしていて楽しめました。
前向性健忘症や多重人格症などの、ミステリ的に便利な使い古された病症ネタを使いながら、予想外の捻りが施されている点はさすがと思わせます。

No.1213 4点 二巻の殺人- エリザベス・デイリー 2010/10/08 17:31
古書研究家の素人探偵ヘンリー・ガーマジが登場するシリーズ第3作。
発端の、100年前の伝説と同じようにバイロン詩集第2巻を持つ女性の出現という”つかみ”の謎の部分が、物語に有機的に活かされていないので拍子抜けの感がありました。
この時期のポケミス共通の、訳文が古いというハンデもありますが、探偵役を始めとして登場人物の描き分けも不十分で、退屈な読書になってしまいました。
第1作の「予期せぬ夜」は小粒ながら面白かった憶えがあるので、やはり翻訳技術のせいでしょう。シリーズは1940年代に16冊も書かれているようなので、新訳が出れば手を出すと思います。

No.1212 6点 バカミスの世界 史上空前のミステリガイド- 事典・ガイド 2010/10/07 18:35
「このミス」の人気コーナー?からスピン・オフしたような企画本。
思いついても誰も書こうとしない”おバカ”なアイデアや珍トリックを使った古今東西のミステリガイドで、その歴史から始まり、北村薫×若竹七海の対談、折原一の分析評論、山口雅也のインタビュー、さらにはバカミス・ベスト100のレビューと盛りだくさん。あのマルツバーグや霞流一のバカミス短編も収録されていますが、これはイマイチ。
バカミスにも2タイプあって、もとからおバカを狙っているもの(たぶん、霞流一、鯨統一郎ら)と、作者はまじめに書いているのにトリックがおバカ(たぶん、ディクスン・カー、島田荘司ら)という折原一の分析は肯ける。
しかし、意外と既読本が多いのには驚いた。知らず知らずのうちに、この世界に嵌っていたようだ。
因みに、本書の編者の小山正氏は若竹七海女史のパートナー、そのうち、あの葉村晶シリーズのなかで店長がバカミス・フェアを企画するかも。

No.1211 7点 サイモンは誰か?- パトリシア・モイーズ 2010/10/07 18:11
ヘンリー・ティベット主任警視シリーズの第14作目。
これは著者久々の出来のいいパズラーだと思いました。遺産相続人である甥と名乗り出た二人の男性の真贋を巡る謎とやがて発生する殺人、というありがちなプロットですが、ひとひねりした真相が面白い。
妻のエミーの果たした役割を考えると、このシリーズは警察ものではなく、コンビ探偵ものであることが再認識できます。

No.1210 7点 冒険小説の時代- 評論・エッセイ 2010/10/06 18:59
「本の雑誌」の目黒孝二氏が北上次郎名義で出した冒険小説の初の書評集。
書かれたのが80年代の初頭、国内の冒険小説界の黎明期であるだけに、当初は、西村寿行など若干ジャンル的に違和感のある作家が含まれるが、志水辰夫、船戸与一らが出てきて俄然熱気を帯びた書評になっています。冒険小説に対する捉え方が作者自身不安定であるところを隠さず、徐々に”活劇小説”に収斂していく過程など興味深く読めました。

No.1209 8点 闇に浮かぶ絵- ロバート・ゴダード 2010/10/06 18:39
19世紀の英国を舞台にした准男爵家の家督相続を巡る歴史ミステリ。
人物関係が幾重にも交錯していますが、「千尋の闇」ほど重層的で複雑なプロットではない分、物語世界にどっぷりとはまることが出来ました。
失踪していた長男らしき男の出現と、その真贋を中心の謎として、ロマンスと陰謀が万華鏡のように物語を彩っています。
ゴシック・ミステリの王道を往く騙り部ゴダードの傑作だと思います。

No.1208 5点 課外授業- 評論・エッセイ 2010/10/05 18:09
副題に「ミステリにおける男と女の研究」とある通り、海外ミステリの”ミステリ以外の部分”を取り上げた評論(エッセイ)集。
このミステリのトリックが凄いとか、プロットが独創的だという話は一切なし。だから、「課外授業」なのだろうけれど、ごく普通のミステリ読みである身には食い足りない。
「小説『スカイジャック』における離婚の研究」あるいは「小説『ながい眠り』における職業の研究」と掲げられてもねえ。メジャーな作品をあまり題材に挙げていないのも興味が湧かなかった理由かもしれません。

No.1207 6点 ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女- スティーグ・ラーソン 2010/10/05 17:42
”世界的ベストセラー”の惹句を掲げた小説を読んで満足できた憶えがないので、ハードルを下げて挑んだのがよかった。なんとか最後まで読み通すことができました。
ジャーナリスト出身作家らしく、スウェーデン社会の暗部も描かれていて興味深いが、この物語にはその大部分が不要のような気がする。大実業家一族の隠された過去とか、密室状況下の島からの人間消失というミステリ部分だけで充分。色々な要素を詰め込みすぎで、徒に長大になっているように思った。
女性主人公の造形も劇画チックなありがちスーパーヒロインで、感情移入はむずかしい。第2部以降は、彼女を中心に物語が構築されているようで、読まなくてもおおよそ内容が察せられます。

No.1206 7点 夜明けの睡魔- 評論・エッセイ 2010/10/04 18:54
海外ミステリの読書案内本のなかでは、かなり良質な内容で、切り口がユニークで興味を掻き立てられる書評が多く楽しめた。
第1部の<夜明けの睡魔>は、ミステリマガジンに80年から連載され、主に当時の翻訳話題作を毎回取り上げている。ラヴゼイ、ジョイス・ポーター、デクスターなどの本格派から、ニーリイ、フリーマントルまで幅広い。ヒラリー・ウォーのフェローズ署長ものをパズラーとするのは強引ですが。
第2部<昨日の睡魔>は、古典の名作を取り上げ、乱歩の呪縛を解いた客観的再評価を試みていて面白い。「そんなに傑作ですか?Yの悲劇」から始まり、各名作を容赦なく斬っているが、最後はきっちりフォローしている点に、作者のミステリ愛を感じる。
東京創元社の文庫で再読したが、早川書房編集部の何人かに感謝の言葉を述べた「あとがき」を再録しているのには笑った。

No.1205 7点 暗く聖なる夜- マイクル・コナリー 2010/10/04 18:17
前作「シティ・オブ・ボーンズ」でロス市警を退職したハリー・ボッシュの私立探偵としての第1作。
シリーズも9作目でマンネリ回避の意味もあると思うが、私立探偵ものということで、初めてボッシュの一人称形式になっています。
ただ、プロット自体は刑事時代のものとさほど変わらず、未解決事件の再調査の過程で予想外の真相が浮かび上がるというもの。年末各種ベストテンの上位に入った作品ですが、出来はシリーズの標準作だと思います。まあ、期待が大きすぎたのかもしれませんが。最後のエピソードはシリーズ読者にとって感涙ものではありました。

ちなみに本作下巻では、ロバート・クレイスが生み出した私立探偵エルヴィス・コールがカメオ出演するオマケの趣向があるので、お見逃しなきよう。

No.1204 6点 雪崩連太郎幻視行- 都筑道夫 2010/10/03 17:52
トラベル・ライター雪崩連太郎シリーズの第1連作短編集。
地方の不思議な事象や怪奇現象を取材中に、事件に遭遇するというのが基本パターン。
事件の謎は一応解決されるのだが、最後にどこか割り切れない部分が残るという不思議な味わいがありました。怪奇小説と本格ミステリを融合したユニークな短編集。

No.1203 8点 ゴールド・コースト- ネルソン・デミル 2010/10/03 17:20
天性のストーリー・テラーぶりが存分に発揮されたデミルの傑作のひとつだと思います。
アメリカ上流階級の古い荘園屋敷が並ぶロングアイランド北岸、ゴールド・コーストに住む弁護士夫婦の隣に、マフィアのボスが引っ越してきたところから物語が始まります。
主人公の弁護士ジョン・サッターのジョーク混じりの語り口は作者の真骨頂。一風変わった夫婦のセックスライフから、乗馬、テニス、ヨットセーリングなど上流階級の生態が映像的に描かれていて、門番夫婦をはじめ周囲の人々の存在感ある造形の確かさにも脱帽です。
隣人ベラローサが、主人公夫婦それぞれを別のアプローチでアチラの世界に取り込む手際はいかにもと思わせますね。カピッシ?
サッターの一人称の語りが軽妙な分、終幕のカタストロフィがより衝撃的なものに思えました。栄枯盛衰、時代は常に移り変わるというテーマが浮かびあがってくるエンディングも素晴らしい。

No.1202 5点 殺意の演奏- 大谷羊太郎 2010/10/02 18:42
芸能界ネタと密室トリックが作者のトレード・マークのようで、乱歩賞の本書も例に漏れない内容でした。
二つの密室トリックに二重構造の暗号、メタミステリのような技巧的な全体の構図まで、本格パズラーに対する並みはずれた情熱は感じましたが、筆力が伴っていないので、小説としてあまり面白いとは思えなかった。

No.1201 5点 二重死体- 桜田忍 2010/10/02 18:08
著者の作品は(福田洋名義を含めて)初読み。
警備員の環視状況下におけるマンションでの墜落死がメインの謎で、主役級の大高ら所管刑事達の緻密でリアルな捜査状況はそれなりに読ませます。中盤で一つのトリックを早々に明かしておきながら、事件の様相が次々と変転していくのも面白かった。
難点は、無味乾燥の文体で登場人物に魅力が感じられないのと、真犯人の設定が反則ぎみなところ。図解入りの最初の殺人のトリックは、B級本格にふさわしいバカバカしさがある。B級でもB級なりに読む楽しみがある。

No.1200 7点 時をきざむ潮- 藤本泉 2010/10/01 19:08
岩手県の海沿いの閉鎖された村を舞台にした土俗伝奇ミステリ、”エゾ共和国”シリーズの第2弾。
排他的な白蟹村近辺での連続アベック失踪事件を発端に、捜査する所轄の巡査が、最後に巻き込まれ目にする村の禁忌が最大の読みどころ。古代儀式や満潮時には沈没するある仕掛けなど、不気味な村そのものが一種の主人公になっていると思います。
ただ、本格ミステリ寄りの工夫は、かえってシリーズのテイストからずれている感じもします。

No.1199 6点 蝶たちは今…- 日下圭介 2010/10/01 18:41
主人公の大学生が旅先の宿でボストンバックをすり替えられる。その中に入っていた手紙の謎を発端とするサスペンス・ミステリで、乱歩賞受賞作です。
手紙の差出人も宛名の人物も既に死んでいたという、”死者から死者への手紙”という謎はなかなか魅力的です。中盤の平板な展開と、真相が何となく察せられる技巧の拙さがありますが、フランス・ミステリを思わせる幻惑的な雰囲気は好みです。

No.1198 6点 的の男- 多岐川恭 2010/10/01 18:07
成り上がりの実業家の男が7人の人物から次々と命を狙われる物語を、連作短編形式で描いたクライム小説。
それぞれのエピソードで色々な殺害方法が繰り出され、結局失敗に終わるのですが、なかにはギャグとしか思えない殺人手段があって面白い。
多少の緊迫感もありますが、一歩間違えればクライム・コメディになってしまうところを絶妙のバランスでサスペンスを醸し出しています。最後のオチはいまいちですが。

No.1197 5点 暗い日曜日- 仁木悦子 2010/10/01 17:51
ミステリ短編集(角川文庫版)。
主人公(視点人物)もしくは探偵役が、仁木兄妹、三影潤、浅田悦子、小さい子供というふうにヴァラエティに富んだ構成になっていて、本格&サスペンスと作風もバランス良く分かれた作品集でした。
なかでは、本格パズラーの仁木兄妹もの「暗い日曜日」が読み応えのある力作。

No.1196 7点 針の誘い- 土屋隆夫 2010/10/01 17:37
千草検事シリーズの3作目で、子供の誘拐事件と衆人環視状況での母親殺しがメインの本格編。
後者のトリックはちょっとアレですが、小さなトリックを積み重ねて真相を隠蔽する手際はなかなか巧妙だと思った。重厚ではないが、硬質な文体が誘拐ミステリの緊迫性を助長しており物語の雰囲気創りは成功していると思います。書かれた時代を考慮すれば、誘拐ミステリの佳作と言えると思います。

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