皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.1700 | 3点 | 愚者は怖れず- マイケル・ギルバート | 2012/03/17 17:45 |
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| シリーズ探偵のヘイズルリック警視も端役で登場しますが、本書は謎解きの要素はあまりなく、ジャンルでいえば”社会派スリラー”というのが適切でしょうか。
終戦間もないロンドンが舞台で、男子中学の校長・ウェザロールが、食品の闇市場を牛耳る犯罪組織に脅迫を受けながらも立ち向かっていくというストーリーですが、正直言って面白さが判らなかった。 プロットが充分に整理されておらず、意味を読みとれない文章が時々出て来る翻訳のせいもあって読みずらい。また、頑固で正義感の強い主人公ウェザロールの心情描写がほとんどないので感情移入もできない。 |
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| No.1699 | 6点 | いわゆる天使の文化祭- 似鳥鶏 | 2012/03/16 21:56 |
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| 高校生・葉山君と卒業生・伊神先輩が探偵役を務める学園ミステリ、シリーズの第4弾。
日常の謎を長編でやるのは難しい面もあると思うのですが、なるほど今回はそうきましたか。途中で何となく違和感があったものの終盤まで見抜けなかった。読み直してみるとなかなか巧妙な仕掛けになっていました。 ただ、いろいろ詰め込み過ぎてプロットがゴチャゴチャしており、スッキリ騙されたという感じにはならなかった。たとえば化学準備室のエピソードはいらなかったのではと思う。 |
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| No.1698 | 6点 | ホット・ロック- ドナルド・E・ウェストレイク | 2012/03/14 22:26 |
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| 不運な泥棒ドートマンダーの初登場作品。
リチャード・スターク名義の”悪党パーカー”と同様に、犯罪プランナーを主人公とした金品強奪もののクライム・ミステリながら、こちらはスラップスティックな味付けが特徴です。 シリーズの後の作品群は、ドートマンダーを悲惨で笑える窮地に立たせるドタバタ劇が興味の中心なんですが、第1作の本書は意外と強奪方法のハウダニットにも力点が置かれていてテイストがだいぶ違います。 目的の”ブツ”エメラルドの所在が、展示場から警察ビル、精神病院、銀行など次々と変転するたびに、繰り出す強奪計画が段々と過激になっていくのが笑える。一種の連作短編の趣もあります。 小悪党の仲間、相棒のケルプ、運転役のスタン・マーチのレギュラー陣は、まだ持ち味全開じゃあないのが少々残念。 |
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| No.1697 | 4点 | 歪笑小説- 東野圭吾 | 2012/03/12 21:59 |
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| 出版社や小説家先生の生態をネタにしたユーモア連作集。
本書の原稿に目を通した時の、版元・集英社担当者のリアクションを想像して読むのも面白いかも。 ただ、これまでの「〇笑小説」シリーズと比べると、ブラックさや過激さが減退していて、変に編集者や若手作家に対して気を使っているように思えるのは気のせい? 今の東野圭吾なら何を書いても許されると思うんですが(笑)。 |
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| No.1696 | 7点 | ふくろうの叫び- パトリシア・ハイスミス | 2012/03/11 16:53 |
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| ”パラノイアの女王”と称されるハイスミス中期の心理サスペンス。短編のような研ぎ澄まされたキレ味は感じなかったが、その分思ったより読みやすい。
主人公のロバートをはじめ、いずれも精神状態が不安定な男女4人が織りなす恋愛トラブルが悲劇に発展していくという話ですが、読者の不安感を煽るように登場人物たちが徐々に壊れていく様の描き方が巧妙です。とくに離婚したばかりの元妻ニッキーのロバートに対する悪意・嫌がらせの連打は作者の真骨頂でしょう。 女性の家を覗き見するロバートという冒頭のシーンを読んだ時には、終盤になってこの人物に感情移入することになろうとは思わなかった。 |
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| No.1695 | 5点 | ブンデスの星、ふたたび- 井上尚登 | 2012/03/09 18:12 |
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| プロ・サッカーチーム”ビッグカイト相模原”のホペイロ(用具係)坂上君が、選手やスタッフがらみの日常の謎を解く、シリーズの第3弾。
今回は、提示される謎が今まで以上に魅力に欠ける印象で、真相も分かり易いものが多くミステリ的には低調です。スタッフ仲間のドタバタ劇では、洗濯係の光恵さんのキャラが相変わらず強烈ですが、一方でマンネリ感も否めず。と、思っていたら、撫子さんのケータイ紛失事件の最終話は、連作ミステリならではの”意外な犯人像”の設定で◎でした。 |
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| No.1694 | 5点 | 迷宮の暗殺者- デイヴィッド・アンブローズ | 2012/03/07 18:00 |
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| これはジャンル分類が困難な”トンデモ本”でした。
秘密工作員チャーリーを主人公とする暗殺ものと、脳神経科の女医スーザンが巻き込まれる陰謀もののパートが交互に同時進行で描かれ、途中まではなかなか読ませるのですが、二つのストーリーが統合される中盤でぶっ飛びの展開に突入します。ここで読むのを放棄する人が多数いそうです。 まあ、本書冒頭のエピグラフが、荘子の”胡蝶の夢”とジェームズ・ボンドですからね。ある程度変な話だと覚悟はしてましたが、ここまで”おバカ”をやってくれるとは・・・・・脱帽です。 |
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| No.1693 | 6点 | 奇面館の殺人- 綾辻行人 | 2012/03/05 23:10 |
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| 久々の「館」シリーズの本書は、初期作を思わせるゲーム性が前面に出ていて懐かしい感じがした。「十角館」から四半世紀、齢50を過ぎた今でも、このようなモノを書いてくれたことに感謝。
季節外れの”吹雪の山荘”、仮面を付けた登場人物たち、首なし死体などなど、繰り出されるガシェットはいい。終盤の名探偵・鹿谷による重層的な推理の開陳もスリリングでよかった。 ただ、動きの少ない中盤の展開はじりじりさせ、招待客たちが名前でなく仮面の種類で紹介されるので分かりずらい面もあった。登場人物表があれば助かったのですが(笑)。 エピローグは蛇足の感。最後のジャック・フットレルの命日というのは何のつながりもないように思える。 |
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| No.1692 | 6点 | タイタニック号の殺人- マックス・アラン・コリンズ | 2012/03/02 22:48 |
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| 豪華客船タイタニック号の最初で最後の航海に乗り合わせた”思考機械”の生みの親、米国の推理作家ジャック・フットレルが、メイ夫人とともに船上の密室殺人に挑む歴史ミステリ。20世紀に起きた大惨事を背景に、実在の作家が探偵役を務めるという、通称”大惨事シリーズ”の第1作です。
謎解きミステリとしては推理味が薄くあまり面白いと思わないが、作者の狙いは、登場人物すべてを実在の乗員乗客とするなど史実をベースにしたリアルな物語の構築にあるのでしょう。 沈没事故から生み出された幾つかの有名なエピソードがさりげなく挿入されているので、事前の知識があるとより楽しめます。たとえば、フットレルが船室で読んでいる実在の小説『愚行』の内容(=タイタン号という客船が氷山に衝突するストーリー)とか、殺害現場の客室番号に則り、事件を”C13号客室の問題”と称する遊び心などが微笑ましい。 大惨事シリーズは、第2作が飛行船ヒンデンブルク号事故と”聖者”サイモン・テンプラーの作者レスリー・チャータリスとの組み合わせですが、それ以降邦訳が止まっているのが惜しい。このあとの作品には、ヴァン・ダインやアガサ・クリスティなども登場するらしい。 |
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| No.1691 | 6点 | 聴き屋の芸術学部祭- 市井豊 | 2012/02/29 22:47 |
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| ”聴き屋”体質の大学生「ぼく」が謎解く4つのミステリ。
殺人事件のフーダニット、日常の謎、安楽椅子探偵っぽいものと、それぞれ趣向を変えたミステリが収録されています。コミカルなエピソードに紛れ込ませる形で伏線を巧妙に張ったうえのロジカルな解法が基本になっていて、それが作者の持ち味のようです。第2話の「からくりツィスカの余命」だけは、ロジックよりトリックがキモになっていて、逆に個人的には編中で一番よかったのですが。 芸術学部の個性豊かな学生が多く登場するのだけれど、なかでも極度のネガティブ思考の持ち主である”先輩”が面白い。彼女のキャラで+1点加点しました(笑)。 |
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| No.1690 | 7点 | 犯罪- フェルディナント・フォン・シーラッハ | 2012/02/27 22:43 |
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| 刑事弁護士の「私」が関わった様々な犯罪者たちを描いたドイツ製の連作ミステリ短編集。
狂言廻しの「私」が淡々と語る犯罪と、その主人公である犯罪者たちの人生は実に多様で、物語のテイストもそれぞれ異なり、11編続けて読んでも飽きることがなかった。ノワール、グロテスクな話、奇妙な味、トリッキィな騙り、不条理な愛、ハートウォーミングな感動物語など、あらゆるタイプのミステリを取り揃えた感じ。 なかには、”日本のミステリや劇画からヒントを得ているのでは?”と妄想させる作品があった。アレとアレは、どうしても「ゴルゴ13」と「殺しの双曲線」を連想してしまう(笑)。 個人的な好みで、ベスト3は「ハリネズミ」「正当防衛」「エチオピアの男」を選ぶが、再読したらガラリと変わるかも。 |
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| No.1689 | 6点 | 憧れの少年探偵団- 秋梨惟喬 | 2012/02/26 12:14 |
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| 乱歩の”少年もの探偵団”にあこがれる男女5人の小学生による連作ミステリ。
日常の謎が中心のお気楽なジュヴナイル小説と思いきや、密室殺人をはじめ凶悪事件が大半というのがやや意外でした。 第1話はクリスマス・イヴの密室殺人。この聖夜だから可能なトリックがなかなか。怪人二十面相=〇〇説とか、事件と関係ないウンチクも楽しい。ただ、小学生が名探偵であることを悩むというのは無理があるでしょう。 第5話の、町のケーブルカーから女性が消失する謎も単純ながら盲点を突いたトリックでした。 好みで言えば、手掛かり・伏線が巧妙だと思った第4話の「不愉快な誘拐」がベストかな。物語のホンワカした雰囲気もジュヴナイルらしくていいです。 |
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| No.1688 | 7点 | 真鍮の評決- マイクル・コナリー | 2012/02/23 23:12 |
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| ”人はみな嘘をつく。”
”警官は嘘をつく、証人は嘘をつく、依頼人は嘘をつく。陪審員ですら嘘をつく・・・・・・裁判は嘘のコンテストだ。” リンカーン弁護士シリーズの第2弾は、ミッキー・ハラーとハリー・ボッシュ刑事との初共演という話題作です。 同僚弁護士が殺害されたことによって、ハリウッド映画界の大物の弁護を引き継ぐことになったハラー。上巻は、米国の司法システムを一通りなぞるようなスローテンポな展開だが、ボッシュの策略を見抜くハラーという形で二人が対峙してから面白くなる。 ハラーのいう「魔法の銃弾」(=一発逆転の決定的証拠)は推測できたのだが、そこからは意表をつく展開の連打。この反則気味の構図の反転、怒涛の展開がかなり読ませます。騙しの技巧が全開なうえ、今作はハラーと彼を取り巻く人々の造形もよく書き込まれており、これはリーガル・サスペンスの傑作でしょう。 エピローグに置かれたもうひとつの”サプライズ”は、初期のボッシュ・シリーズできっちりその伏線が敷かれており、思わずニヤリとさせてくれる。 |
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| No.1687 | 6点 | 鮫島の貌 新宿鮫短編集 - 大沢在昌 | 2012/02/19 17:55 |
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| 新宿鮫シリーズ初の短編集。長編での流れがあるので、短編はどうしても外伝的エピソードになりますねぇ。
鮫島視点の物語と、上司の桃井、恋人の晶、"バーテン”などの第三者視点の話を交互に置き、”鮫島の貌”を浮き彫りにしていく構成になっています。 もともとの掲載誌の関係で、漫画(アニメ)の主人公とのコラボといった軽めのものもありますが、「雷鳴」「再会」「水仙」なんかは、鮫島の刑事としての鋭い感性が発揮された”ミステリ趣向”充分の好編でしょう。 あと、名前のせいで医者になるのをあきらめたという鑑識の藪の真実が、”こち亀”の両さんに暴かれる「幼な馴染み」が楽しい。「狼花」の後日譚である「霊園の男」など、シリーズ・ファンでないと話が見えてこない作品もありましたが。 |
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| No.1686 | 6点 | 王子を守る者- レジナルド・ヒル | 2012/02/17 23:44 |
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| 先月亡くなったレジナルド・ヒルのノン・シリーズ長編。(1982年刊)
タイトルは何かの象徴かと思っていましたが、小説の内容そのまんまでした。 もとロンドン警視庁の王室警護班で以前アーサー王子の警固を担当していたマクハーグ警部は、いくつかの運命のいたずらによって、ある組織から命を狙われる王子と再び関わることになる......。 男女の恋愛を絡めた謀略系の冒険サスペンスで、どちらかというとパトリック・ルエル名義の作風の方に近い異色作と言えるでしょう。 ”ロミオとジュリエット”のようなアーサー王子と米国の富豪の孫娘との関係や、秘密結社フリーメイソンが関わった謀略などはちょっとベタ過ぎるかなと思いますが、残り40ページを切ってからの山荘の活劇は緊迫感があってよかった。 マクハーグ警部の口調が、ディック・フランシスの主人公を思わせて気になったのですが、訳者が同じ菊池光氏でした。 |
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| No.1685 | 5点 | 草津・冬景色の女客- 中町信 | 2012/02/15 18:06 |
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| 推理作家・氏家周一郎シリーズ。
妻の早苗が所属するヨガ教室の合宿バス・ツアー途上、草津温泉で所属員が次々殺されていくというお馴染みのストーリー展開。殺人事件が連続して起こっても今回もツアーは中止にならず普通に継続しますし、被害者の一人が謎めいたダイイング・メッセージを残すのもいつもどおりです(笑)。 プロローグの死体発見シーンの叙述が絶妙のミスリードになっているのですが、ある人物の内面描写が真相と矛盾しており、そこはアンフェアじゃないかな。 |
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| No.1684 | 2点 | 装飾庭園殺人事件- ジェフ・ニコルスン | 2012/02/13 23:53 |
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| 内容紹介欄に”伝説のメタ・ミステリー”とあったので、ある程度の脱力感を覚悟していたのですが、許容範囲を超える真相でした(笑)。ミステリのプロパー作家が書いたものだったら最低点にしていたかも。
作者はミステリを書いたつもりはないと言うかもしれないが、発端の不審死から始まって、多くの関係者たちの脱線気味の語りによる真相解明へのプロセス、最後は一同を集めた謎解き披露と、いちおう本格ミステリの体裁をとっていて、このオチはないでしょう。 |
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| No.1683 | 6点 | 南神威島- 西村京太郎 | 2012/02/10 22:31 |
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| 最初期の短編集(講談社文庫版)。本書の初版は’70年に自費出版されたものらしい。その5年前に乱歩賞を取った作家が....と思うけれど、乱歩賞作家といっても当時はそんなものなのかな。
自身の作風を色々模索している感じで、結果的にバラエティに富んだ作品が揃っている。共通するのは文芸寄りということで、作家名を伏せれば西村京太郎の作品とは誰も思わないだろう。 収録作の中では、南九州の離島に赴任した医師が遭遇する悪夢のような出来事、表題作の「南神威島」が一番印象に残った。これは閉鎖集団もの伝奇ミステリの傑作でしょう。 あと、「青の炎」を思わせる青春ノワール風の「幻想の夏」、大都会の孤独とやるせないラストの「手を拍く猿」、貧乏詩人の不条理な殺人動機「カードの城」など、人間の内面にせまる緊密度の高い作品ぞろいです。 |
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| No.1682 | 6点 | 破壊者- ミネット・ウォルターズ | 2012/02/09 18:50 |
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| ウォルターズ8作目の邦訳作品。発端は陰惨な溺死体の発見ですが、いつもほどの重苦しい雰囲気はなくて、分量はあっても文章が平明なので比較的スムーズに読めた。
いつもの多視点ではあるものの、主に捜査陣側の視点で語られていて、鑑識の報告書や関係者の証言内容がそのまま列記された章もあり警察小説の趣がある。ドーセット州警察とは別方向から事件にかかわる地元巡査ニック・イングラムが魅力のある人物で、その不器用なロマンスも物語のアクセントとなっていて良。 容疑者は早々に被害者の夫と、愛人の売れない俳優の二人に絞られているが、捜査が進む毎にその一人の人物造形が揺らいで正体がつかみきれない所が面白い。 ただ、「〇〇(真犯人)のような人間のすることは、理屈では理解できないんだよ」という終盤のニックの台詞に象徴されるように、読者が論理的に謎解きに挑むタイプのミステリではないです。 |
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| No.1681 | 7点 | 明治開化 安吾捕物帖- 坂口安吾 | 2012/02/04 11:09 |
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| 角川文庫版で8編は読んでいましたが、シリーズ全20編を通読したくなり、ちくま文庫の坂口安吾全集の中の「明治開化 安吾捕物帖(上・下)」を読んでみました。上下巻で900ページ以上あり読み疲れました。
「安吾捕物帖」にしても学陽書房の別題「勝海舟捕物帖」にしても、このタイトルは誤解を招きそう。安吾は前口上を述べるだけで小説には登場しないし、勝海舟は安楽椅子探偵を務めますが、ダミー推理で名探偵を引き立てるだけの役割なので主人公ではありません。 また、時代設定は明治20年前後なので、同心や岡っ引きがでてくるわけでもなく、現代の感覚では”捕物帖”というのも違和感がありますね。本来は、”名探偵・結城新十郎の事件簿”とかにすべきでしょうが、それだとインパクトに欠けるかな。 ”気楽に推理を楽しんで・・”と、前口上で作者が書いているとおり、最初の数作品はゲーム性の強い犯人当て探偵小説でした。 多めの登場人物で複雑な人間関係のものが多く、短編にもかかわらず結構読むのに苦労しました。「舞踏会殺人事件」や「ああ無情」が印象に残りましたが、いずれもロジック面は弱いです。 ところが、読み進めるにつれて明らかに作風が変化しており、徐々にゲーム性より物語性を重視したものになっているのが興味深い。 南洋の真珠採り漁船上の惨劇「血を見る真珠」や、幕末動乱によるある夫婦の数奇な運命を描いた「時計館の秘密」などが顕著で、パズラーとしてはアレですが読み応えはありました。 そのぶん、シリーズ・キャラクターの探偵集団、新十郎、ライヴァルの虎ノ介、戯作者・因果、勝海舟などの登場場面が最後の謎解きだけという作品が多くなり、探偵小説としては物足りないかもしれない。 |
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