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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2474件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1914 5点 私を知らないで- 白河三兎 2013/04/18 21:09
中学生の男女3人を主軸に展開される抒情性のある青春恋愛ミステリ。
最初のうちヤングアダルト向けの軽妙な作品と思って読んでいたら、中学生にとっては重いテーマを扱っていたので、戸惑うところもあった。
クールに装う主人公の「僕」、熱血漢で直情型の高野、貧しい家庭で育ちクラスから無視される美少女「キヨコ」の三人。ともに陰の部分を持ち、物語が進むにつれそれぞれの印象が変わっていくところが巧く書けていると思う。
ただ、ミステリとしては謎そのものが薄味でインパクトに欠けるので、この程度の評価にしておきます。

No.1913 7点 遮断地区- ミネット・ウォルターズ 2013/04/17 13:14
低所得者層が集まる団地を舞台に、前科のある小児性愛者が移住してきたことを契機にして、排除デモが制御不能の大暴動に発展していくというパニック小説。

「氷の家」や「女彫刻家」などの初期の暗くて重い作風とは異なり、本書は比較的ライトなキャラ立ての登場人物たちによるドキュメンタリー風の群像劇で、テンポのいい緊迫のサスペンスでした。
並行して描かれる少女失踪事件に警察小説風の謎解きの要素はあるものの、本筋との絡みがやや中途半端な感じで、大暴動と監禁された女性医師の危機的状況の行方が最大の読ませどころでしょう。
500ページを超える分量を、あっという間に読み終えることが出来た。

No.1912 5点 ノックス・マシン- 法月綸太郎 2013/04/14 11:22
海外古典探偵小説に関する有名なネタを主題にしたSF?短編集。

「ノックス・マシン」とその続編風の「論理蒸発」は、”ノックスの十戒”に中国人ルールがあるのはなぜか?、”シャム双子の謎”に読者への挑戦が挿入されていない理由は?といったネタを、双方向タイムトラベルなどのSFガジェットを駆使して解き明かす奇想譚ですが、ハードSFっぽい論理展開がミステリ読みにはついていくのが少々きつい。
「引き立て役倶楽部の陰謀」は、ホームズ=ワトソン形式の古典探偵小説の伝統を守るために、有名なワトソン役たちが集まって、”危険思想”の持ち主であるアガサ・クリステイを抹殺しようと協議する話で、クラシック・ミステリの薀蓄が満載なメタ&パロディ趣向が楽しい。たしかに彼らにとって「アクロイド殺し」なんかを書かれたらたまらないだろうね。

No.1911 6点 夏を殺す少女- アンドレアス・グルーバー 2013/04/11 21:58
精神病院で不審死した少女の事件に係るドイツのベテラン警部と、オーストリアで名士の連続事故死に疑問を持った女性弁護士が、個別に調査するうちに過去の忌まわしい事件背景が浮かび上がってくるといったストーリー。

非英語圏(オーストリア)のミステリゆえの憶えずらい人名というハンデがあっても、序盤からグイグイと読者を引っ張っていく力強いリーダビリティが本書の持ち味でしょう。
ダブル主人公の調査過程が交互に語られ、2人の軌跡がいつどういう形で出合うのかという興味で読ませます。
事件の構図自体は早い段階で想像がつくもので、謎解きモノとしては少し物足りないですが、終盤のサスペンスが良です。

No.1910 7点 美人薄命- 深水黎一郎 2013/04/09 20:34
独居老人宅を回って弁当を配達するボランティアの大学生と、戦時中の悲恋を語る老婆との交情を中心に描いた物語。

とぼけたギャグを連発しつつ、時には予言めいたことを告げるこのカエ婆さんに不思議な存在感があり、謎らしき謎もないまま物語が進行しても充分に面白く読めますが、作者が「一般小説に擬態した本格ミステリ」というように、カエ婆さんが前に登場した「ジークフリートの剣」同様に、途中に張られた伏線が終盤で回収され、隠された事実が立ち現れる様は今回も見事です。(帯の煽り文句は少々オーバーだとは思いますが)
哀切でありながらも爽やかな真相が涙腺を刺激して心地いい読後感でした。

No.1909 5点 人形パズル- パトリック・クェンティン 2013/04/07 13:31
海軍中尉のピーターは、妻で女優のアイリスとサンフランシスコで久方ぶりに夫婦水入らずの休暇を取るつもりが、何者かに殺人容疑者に仕立て上げられ逃避行&探偵活動をするはめに....、といったダルース夫妻の呪われた週末を描くパズル・シリーズの第3弾。
本書は、前2作の限られた容疑者集団内のフーダニットとは趣を変えて、ドタバタ劇風の軽快なスリラーになっています。
クライマックスの公演中のサーカス会場での象のエドウィナの活躍など、それなりに楽しいのですが、本格モノを期待するとやや物足りないかもしれません。最後の最後でタイトルが暗示するどんでん返しがあって一応の面目躍如とはなっていますが。
事件の背景を説明する終盤近くの長々とした犯罪論文の引用は退屈で蛇足の感がありました。

なお、パズル・シリーズ全6冊を読んでの私的相対評価は、
俳優>巡礼者>悪女>迷走>人形>悪魔、の順としておきます。

No.1908 6点 ロスト・ケア- 葉真中顕 2013/04/06 12:55
読者を一瞬思考停止に陥らせるようなサプライズが終盤にあって、そういった新本格風のミステリ趣向も面白いことは間違いないのですが、本書の本質は高齢者介護という今日的題材を扱った社会派の要素だと思う。

”そういう立場の人々”をキリスト教の教義に絡めて、”救済”の真の意義を問う、<彼>の行動原理には考えさせられるものがありました。

No.1907 6点 スケアクロウ- マイクル・コナリー 2013/04/05 13:45
LAタイムズの記者ジャック・マカヴォイとFBI女性捜査官レイチェルが、「ザ・ポエット」事件以来12年ぶりにコンビを組んで、再びシリアルキラーに対峙するといったストーリー。

インターネットを使って個人情報を改竄・工作するサイコパス”案山子”という犯人像は、ディーヴァーの「ソウル・コレクター」など幾つか書かれていて二番煎じ感は否めないが、敵の”農場”での攻防をはじめとする終盤のスリリングな展開は、さすがコナリーと思わせる。
ただ、”ブン屋もの”としては、デジタル・ジャーナリズムの影響を受け、新聞社の人員整理の対象となった記者マカヴォイの矜持の描き方は中途半端で消化不良の感がある。

No.1906 5点 口笛探偵局- 仁木悦子 2013/03/31 10:58
学習雑誌などに連載されたジュニア・ミステリ集の2巻目。
前巻と比べると殺人事件を扱った本格的な謎解きモノが多くなっている印象がある。なかでは、クイーンや鮎哲の某有名作を連想させるアリバイトリックを使った「なぞの黒ん坊人形」はなかなかの良作。
表題作の中編「口笛たんてい局」は、4人組の小学生探偵団が立て続けに3つの事件に遭遇し、3度とも悪漢グループに監禁される、というお約束満載の冒険譚で楽しい作品。
謎解きモノ冒険モノともに、ほのぼのとした後味の良い読後感が共通していますが、なかには「やさしい少女たち」のような異色作があるので油断できない。

No.1905 6点 跡形なく沈む- D・M・ディヴァイン 2013/03/26 23:16
スコットランドの小都市を舞台に、ある人物の秘密を抱えた女性が移り住んできたことを契機に、殺人事件に続いて女性の失踪事件が発生する.....といった粗筋のディヴァインの生前最後に発表された作品です。

自治区役所の議員・職員を中心に登場人物が大人数で男女の関係が幾層にも絡まっていますが、主人公格の元婚約者男女をはじめ、脇役までの人物描写の書き分けはさすが円熟期の巧さを感じます。
物語の最初のうちは本筋が掴みずらかったのですが、主人公のひとりジュディスの一家が物語の中軸とわかってスッキリしました。ある女性の失踪事件以降やや中だるみを感じる部分もありますが、ミスリードを交えた終盤の展開が結構スリリングに仕上がっています。フーダニットとしてはやや恣意的で弱いかなと思いますが、読み応えのある作品でした。

No.1904 5点 透明な暗殺- 佐野洋 2013/03/24 17:29
公選法違反や繰上げ当選といった選挙ネタを扱った初期の中短編集。

「透明な暗殺」と「三人目の椅子」のふたつの中編は、二転三転するプロットはそれなりに面白いと思うものの、真犯人の立ち位置、ある女性と三流新聞の記者の役割、隠された裏の構図など、全体の構成がよく似ており、おおよその着地点は推測できるもので意外性という点では物足りない。
無人島のヌーディスト写真を巡る奸計「裸人の島」は凡作レベル。

No.1903 6点 牝狼- ボアロー&ナルスジャック 2013/03/22 20:26
第二次大戦時のドイツ占領下リヨン、捕虜収容所から脱獄した「私」は事故死した囚人仲間に成りすまし、ある姉妹のマンションに匿われることになるが....というあらすじです。

タイトルから想像できるように、作者が初期の頃に十八番とした悪女ものの心理サスペンスです。
事故死した友人の文通相手であるエレエヌと霊媒師もどきの妹アニュス、死んだ友人の姉ジュリアの、三人の女性の三様の思惑が絡んだ心理劇が読ませます。
なぜジュリアが主人公を偽者と告発しないのかという謎を中途半端に決着させたのはもったいないですが、悪夢的で余韻を残すエンディングは作者の持ち味がよく出ているように思います。

No.1902 4点 あなたが名探偵 (講談社文庫版)- アンソロジー(出版社編) 2013/03/19 21:44
解決部分を袋とじにした”読者への挑戦”もののミステリ・アンソロジー。
同じタイトルの東京創元社版ではなく、’70年代に出版された叢書「現代推理小説体系」の月報に掲載されたものをまとめた講談社文庫版です。

鮎川哲也、西村京太郎、佐野洋、森村誠一、陳舜臣、夏樹静子、斎藤栄など、昭和を代表する錚々たる本格派作家17名による19作品が収められていますが、内容を一言でいうと”お粗末”。現代の感覚からは、犯人を特定する条件が不十分と思えるものが数多く含まれています。(合格点を与えられるのは鮎川哲也、西村京太郎と都筑道夫ぐらいかな)。
ただ、仁木悦子の「横丁の名探偵」も推理クイズとしては平凡ですが、ご隠居が八っつあん熊さんらを相手に安楽椅子探偵を務める”落語でミステリ”という形式はユニークで面白い。

No.1901 6点 修道女フィデルマの探求- ピーター・トレメイン 2013/03/18 13:08
7世紀の古代アイルランドを背景にした歴史ミステリ連作短編集の第3弾。

5編とも犯人当てを主軸とした端正な謎解きモノで、主人公フィデルマが訪れた修道院で愛憎劇がらみの殺人事件に遭遇するといった同じようなプロットが続くのが難点ですが、いくつか印象に残るものがありました。
個人的なベストは、複数の民族が留学して集う修道院の学問所内の密室殺人を扱った「ウルフスタンへの頌歌」で、密室トリック自体は平凡ですが、設定を活かした伏線と犯人特定のロジック展開が巧いと思います。
次点は離島にある僧院を舞台にした「不吉なる僧院」で、真相は分かりやすいものの、序盤の謎が魅力的です。

No.1900 6点 福家警部補の報告- 大倉崇裕 2013/03/16 10:18
刑事コロンボ、古畑任三郎の系譜をつぐ倒叙形式ミステリの連作短編集の第3弾。

日常はドジで小ボケをかます小柄な女性警部補が、証拠ともいえない些細な違和感から抜群の推理力を発揮して犯人に肉薄していくといったギャップが面白く、シリーズ3作目にしてマンネリ感なく、逆にキャラクターが馴染んできて楽しめました。欲を言えば、犯人を落とす”決め手”にもう少し意外性があればと思います。
あと、各編とも犯人の人物像も工夫されていて、とくに2話目の東映ヤクザ映画の主人公のような(高倉健を連想させる)犯人像というのも異色ですが、ただ、このような偽装工作と人物像はアンマッチな気がしました。

No.1899 5点 妖女ドレッテ- ワルター・ハーリヒ 2013/03/14 12:07
冷酷な荘園主の後妻ドレッテを慕う使用人ロルフ。主人の殺害計画を立てるが、何者かがその計画どうりに密室状況の書斎で荘園主を射殺しロルフとドレッテが疑われる、といった話です。

戦前にドイツで発表された本格ミステリというのが珍しいです。
ただ、あらすじ紹介を読むとガチ本格ですが、密室の仕掛けは(早々に解明されメインの謎ではないとはいえ)残念レベルのトリックで、物語も通俗的で犯罪心理小説風な展開と共に時代性を感じてしまいます。
序盤の敗戦国ドイツの退廃的な雰囲気・描写はいいと思うが、ドレッテの人物造形がいまいち伝わってこない。

No.1898 5点 灰色の手帳- 仁木悦子 2013/03/12 23:36
学習雑誌などに掲載されたジュニア・ミステリ作品集の1巻目。

いずれも子供を探偵役に据え、中学生向けには手がかりを提示したロジカルな犯人当ての謎解きミステリ、小学生向けには悪漢グループを相手にした冒険ものというふうに内容に工夫を凝らしていて好感がもてます。
読み応え充分の長編「消えたおじさん」が目玉作品だと思いますが、ほかにも中学生時代の仁木兄妹が探偵役の「みどりの香炉」、童話でミステリという「ころちゃんのゆでたまご」などが楽しい。

No.1897 5点 首のない女- クレイトン・ロースン 2013/03/10 22:55
奇術店から大道具の”首のない女”を強引に持ち去った謎の娘を追うため、サーカス一座を訪れたマーリニと「私」は、主宰者の不審死などに続いて女性の首なし死体に遭遇する、といった奇術師探偵グレート・マーリニ登場のシリーズ第3弾。

これまでのような不可能トリックといった趣向はないものの、重要な会話の途中に横やりが入り、話が別方向に逸れて読者を焦らすような展開は、やはりカーを思わせるところがあります。怪しい人物が無駄に多く、プロットがごちゃごちゃしているため読み進めるのに辛抱が必要ですが、終盤の首なし死体に関する考察や、犯人特定のロジックはまずまずかなと思います。
なお、スチュアート・タウンと名乗る探偵小説作家が登場しますが、これは「虚空から現れた死」を書いたときのロースンの別名義でもありますね。

No.1896 5点 ふざけた死体(ホトケ)ども- 海渡英祐 2013/03/07 14:05
かつての宰相と同姓同名で性格まで似ている吉田茂警部補が、部下の佐藤部長刑事らと毎回奇妙な死体状況の事件の謎を解いていく連作短編集の第2弾。

「チャイナ・オレンジの秘密」ばりの奇妙な死体状況が多かった前作と比べると、今回提示されたWHYの謎の魅力はやや減退ぎみ。シチュエーションもほとんどがアパートやマンションの一室を事件現場とするもので、読み進めるにつれマンネリを感じてしまう。それでも、最初の「ケーキの好きな死体」は、死体工作の謎解きのロジック展開がなかなか秀逸な作品でした。

No.1895 6点 手斧が首を切りにきた- フレドリック・ブラウン 2013/03/05 18:14
マザーグースの一節から採った題名はサイコ・サスペンスを思わせますが、物語の展開は青春クライム小説といった感じです。
根が善良な性格のためギャングになりきれない青年ジョーと、純朴な少女エリーのボーイ・ミーツ・ガール風の現在進行形の物語の合間に、ジョーのトラウマの原因となった子供時代の”ロウソクと手斧”の悪夢体験のエピソードなどが、ラジオの実況中継風、映画や舞台の台本風に挿入されるという凝った構成が才人ブラウンらしいです。
最初のほうにある程度暗示されているため予想の範囲内とはいえ、かなり後味が悪いエンディングは極端に好みが分かれそうですが、昨今のイヤミス・ブームには合っているかもしれません。

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