皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.1900 | 6点 | 福家警部補の報告- 大倉崇裕 | 2013/03/16 10:18 |
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| 刑事コロンボ、古畑任三郎の系譜をつぐ倒叙形式ミステリの連作短編集の第3弾。
日常はドジで小ボケをかます小柄な女性警部補が、証拠ともいえない些細な違和感から抜群の推理力を発揮して犯人に肉薄していくといったギャップが面白く、シリーズ3作目にしてマンネリ感なく、逆にキャラクターが馴染んできて楽しめました。欲を言えば、犯人を落とす”決め手”にもう少し意外性があればと思います。 あと、各編とも犯人の人物像も工夫されていて、とくに2話目の東映ヤクザ映画の主人公のような(高倉健を連想させる)犯人像というのも異色ですが、ただ、このような偽装工作と人物像はアンマッチな気がしました。 |
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| No.1899 | 5点 | 妖女ドレッテ- ワルター・ハーリヒ | 2013/03/14 12:07 |
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| 冷酷な荘園主の後妻ドレッテを慕う使用人ロルフ。主人の殺害計画を立てるが、何者かがその計画どうりに密室状況の書斎で荘園主を射殺しロルフとドレッテが疑われる、といった話です。
戦前にドイツで発表された本格ミステリというのが珍しいです。 ただ、あらすじ紹介を読むとガチ本格ですが、密室の仕掛けは(早々に解明されメインの謎ではないとはいえ)残念レベルのトリックで、物語も通俗的で犯罪心理小説風な展開と共に時代性を感じてしまいます。 序盤の敗戦国ドイツの退廃的な雰囲気・描写はいいと思うが、ドレッテの人物造形がいまいち伝わってこない。 |
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| No.1898 | 5点 | 灰色の手帳- 仁木悦子 | 2013/03/12 23:36 |
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| 学習雑誌などに掲載されたジュニア・ミステリ作品集の1巻目。
いずれも子供を探偵役に据え、中学生向けには手がかりを提示したロジカルな犯人当ての謎解きミステリ、小学生向けには悪漢グループを相手にした冒険ものというふうに内容に工夫を凝らしていて好感がもてます。 読み応え充分の長編「消えたおじさん」が目玉作品だと思いますが、ほかにも中学生時代の仁木兄妹が探偵役の「みどりの香炉」、童話でミステリという「ころちゃんのゆでたまご」などが楽しい。 |
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| No.1897 | 5点 | 首のない女- クレイトン・ロースン | 2013/03/10 22:55 |
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| 奇術店から大道具の”首のない女”を強引に持ち去った謎の娘を追うため、サーカス一座を訪れたマーリニと「私」は、主宰者の不審死などに続いて女性の首なし死体に遭遇する、といった奇術師探偵グレート・マーリニ登場のシリーズ第3弾。
これまでのような不可能トリックといった趣向はないものの、重要な会話の途中に横やりが入り、話が別方向に逸れて読者を焦らすような展開は、やはりカーを思わせるところがあります。怪しい人物が無駄に多く、プロットがごちゃごちゃしているため読み進めるのに辛抱が必要ですが、終盤の首なし死体に関する考察や、犯人特定のロジックはまずまずかなと思います。 なお、スチュアート・タウンと名乗る探偵小説作家が登場しますが、これは「虚空から現れた死」を書いたときのロースンの別名義でもありますね。 |
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| No.1896 | 5点 | ふざけた死体(ホトケ)ども- 海渡英祐 | 2013/03/07 14:05 |
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| かつての宰相と同姓同名で性格まで似ている吉田茂警部補が、部下の佐藤部長刑事らと毎回奇妙な死体状況の事件の謎を解いていく連作短編集の第2弾。
「チャイナ・オレンジの秘密」ばりの奇妙な死体状況が多かった前作と比べると、今回提示されたWHYの謎の魅力はやや減退ぎみ。シチュエーションもほとんどがアパートやマンションの一室を事件現場とするもので、読み進めるにつれマンネリを感じてしまう。それでも、最初の「ケーキの好きな死体」は、死体工作の謎解きのロジック展開がなかなか秀逸な作品でした。 |
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| No.1895 | 6点 | 手斧が首を切りにきた- フレドリック・ブラウン | 2013/03/05 18:14 |
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| マザーグースの一節から採った題名はサイコ・サスペンスを思わせますが、物語の展開は青春クライム小説といった感じです。
根が善良な性格のためギャングになりきれない青年ジョーと、純朴な少女エリーのボーイ・ミーツ・ガール風の現在進行形の物語の合間に、ジョーのトラウマの原因となった子供時代の”ロウソクと手斧”の悪夢体験のエピソードなどが、ラジオの実況中継風、映画や舞台の台本風に挿入されるという凝った構成が才人ブラウンらしいです。 最初のほうにある程度暗示されているため予想の範囲内とはいえ、かなり後味が悪いエンディングは極端に好みが分かれそうですが、昨今のイヤミス・ブームには合っているかもしれません。 |
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| No.1894 | 6点 | 歌麿殺贋事件- 高橋克彦 | 2013/03/03 11:42 |
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| 浮世絵三部作の2作目「北斎殺人事件」から登場する美術研究家・塔馬双太郎を探偵役に据えた連作短編集。美術雑誌編集者の「わたし」をワトソン役にして、歌麿が絡む贋作疑惑・詐欺商法など6つの事件を解決していく。
作者の造詣の深い分野だけに、美術雑誌社や評論家を誤誘導し浮世絵好事家の裏の裏を突く悪徳業者の多様な騙しのテクニックがリアルっぽくて興味深い。後半の数編は、塔馬が悪徳業者を逆に嵌めるコンゲーム風の面白さがあります。 なかでは、プロの美術評論家との虚々実々の真贋対決と意表を突くトリックが冴える「歌麿真贋勝負」と、塔馬が”写楽=歌麿説”を開陳する「歌麿の秘画」が印象に残りました。 |
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| No.1893 | 6点 | 山師タラント- F・W・クロフツ | 2013/03/01 20:32 |
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| 前半に犯罪行為を描き、後半がフレンチの捜査過程になるといった、クロフツが中期以降に多用した倒叙ものかと思っていたら本書はちょっと違いました。
野心家タラントを中心にした詐欺まがいの医薬品販売事業を巡る群像劇風の前半部は結構面白いです。いわば”ゼロアワー”もので、犯人を明示せず事件の直前で終わることで、フーダニットものになっています。また、終盤の数章は裁判シーンに費やすというクロフツの作品では珍しい構成になっています。 ただ、そのためフレンチ首席警部の捜査編は、すでに読者が知っている事件背景を後追いするだけのものになっていて少々退屈に感じました。また、結末のどんでん返しが唐突であっけないです。 |
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| No.1892 | 6点 | 定吉七番(セブン)の復活- 東郷隆 | 2013/02/26 20:26 |
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| スイス・ユングフラウの氷河に消えた殺人許可書を持つ丁稚、”なにわの007”こと定吉七番が、四半世紀の時を経て平成ニッポンに復活するという、スパイアクション・シリーズの第6弾。
関西の独自カルチャーや大阪ルールといった地域限定の小ネタとギャグを連発しつつ、現代を風刺したパロディ趣向も健在で、四半世紀ぶりというブランクを感じさせません。いやテンションは旧作以上でしょう。 新潟出身の国会議員マキコと復活した闇将軍、テーマパーク好きの某国将軍様の長男など、危ないキャラクターたちが集結する終盤のハチャメチャな展開が楽しい。これは、旧作5作の復刊もあるかもw |
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| No.1891 | 5点 | ハニーよ銃をとれ- G・G・フィックリング | 2013/02/24 12:06 |
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| 長時間のキスで女性を窒息死させるwという”接吻窒息魔”による殺人が連続する中、引退した映画監督から妻と娘の護衛を依頼されたハニーは、映画監督宅の年越しパーティに赴くが・・・といった、美貌の私立探偵ハニー・ウェスト・シリーズ第2弾。
前作と多少の舞台設定の違いがあっても、お色気シーンとハニー危機一髪の場面を繰り返す、お決まりの軽ハードボイルドです。二作目にして早くも飽きてきました(笑)。 最後に関係者を一堂に集めての謎解きがあり、”意外すぎる犯人”が指摘されますが、たしかに伏線がいくつか張られていたとはいえ、かなり無茶な設定です。 |
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| No.1890 | 7点 | 落日の門- 連城三紀彦 | 2013/02/21 11:28 |
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| 二・二六事件を背景に、首謀者の青年将校とその妻、同志、暗殺対象の大臣の娘などが織り成す騙し絵風の5つの物語。
”前夜”を描いた第1話「落日の門」は、この連作反転ミステリにおける登場人物関係図のような感じですが、2話目以降の後日譚で怒涛の連城マジックが連発されます。 なかでも、一夜限りの娼婦と無名の客との逢瀬に隠された真相を、小説家が作中作で推理する「残菊」、処刑直前に首謀者の妻が夫の愛人に対して採った行為の真意「夕かげろう」の2作の騙りが秀逸です。 二人の人物の立ち位置が大逆転する「家路」は、作品世界が非現実的すぎて無理があると思うのですが、連城ファンなら十分納得できるかも。 |
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| No.1889 | 6点 | ケープコッドの悲劇- P・A・テイラー | 2013/02/17 23:54 |
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| 避暑地ケープコッドを舞台にした米国黄金期の本格ミステリ。大手実業家ポーター家の雑用係で60歳になる老人アゼイ・メイヨを探偵役に据えたシリーズの第1作です。
本書は、有名作家の死体を貸小屋で発見することになった近所のコテージの女主人”わたし”の視点で語られていき、会話文が主体なこともあって確かにコージー・ミステリの雰囲気がありますね。 探偵役が個性的で、警察を使って関係者を呼び寄せるために自動車を盗んだり、証言を拒む人物を脅したりと、アゼイじいさんの突拍子もない探偵活動には面喰いました。また関係者を一堂に集めた終盤の謎解きでは、過去の多くの職業の体験が推理の拠り所となっていて男版ミス・マープルといった感じもします。ただ、論理的な謎解きとは言えないところがあって、そこはちょっと気になりますが。 |
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| No.1888 | 7点 | 立春大吉 大坪砂男全集1- 大坪砂男 | 2013/02/15 11:49 |
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| 高木彬光や山田風太郎らとともに、江戸川乱歩から”戦後派五人男”と称された鬼才・大坪砂男の初の文庫版全集。全4巻(予定)の1巻目の本書は”本格推理編”です。
戦後の混乱による男女間の悲劇を心情描写を中心に語る抒情的文体と、密室殺人・足跡のない殺人や実現性の薄い機械的殺人トリックといったコテコテの本格趣向が融合した作風が作者の持ち味のようで、そういった作品に印象に残るものが多かった。 「立春大吉」「涅槃雪」が篇中の代表作かなと思いますが、旧家三代の女性が時を経て、同日同時刻に庭の古井戸で変死するという魅力的な謎の「三月十三日午前二時」が結構好み。シリーズ探偵役・緒方三郎が往復書簡形式で謎解きをする構成も良。 高野山の寺で龍が昇天し、骨壷が鳴り中から赤子が出てくるといった奇想が連打される「大師誕生」は、バカミス度合いが小島正樹を連想させるw その他では、作者がダメだししながら物語が進行するメタ構成の実験作「黒子」、ブラウン神父ものの贋作「胡蝶の行方」なんかも印象に残りました。とくに後者の”ホワイ”が秀逸です。 |
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| No.1887 | 7点 | 特捜部Q 檻の中の女- ユッシ・エーズラ・オールスン | 2013/02/13 11:31 |
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| デンマーク発の人気警察小説、未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」シリーズの第1作。北欧ミステリ(主に警察小説)の多彩さ、クオリティの高さを再認識させられた傑作です。
主役コンビの設定、キャラクターが面白い。 コペンハーゲン警察のはみ出し刑事、カール・マーク警部補が命じられた新設の部署は署内の薄暗い地下室。そして部下は雑用係のシリア人アサドたった一人。コーランとお祈り用ジュータンを常に携帯するアサドの奇人ぶりや二人の掛け合いが軽妙です。 その一方で、二人の捜査過程の合間にカットバックで挿入される、拉致監禁された女性国会議員の陰惨な状況描写は緊迫感にあふれており、タイムリミット・サスペンス的興味でグイグイ引っ張られる。この硬軟交えた構成が巧みで、かなりボリュームがあるにもかかわらず一気に読めました。 マーク警部補の部下二人が死傷した過去の未解決事件や、アサドの怪しげな過去など、興味をつなぐサイド・ストーリーも盛りだくさんで、シリーズ次作以降が楽しみです。 |
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| No.1886 | 7点 | 山魔の如き嗤うもの- 三津田信三 | 2013/02/11 12:27 |
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| 怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズの第4長編を再読。
解説によると、意外なことに作者は横溝正史へのオマージュ的な意識は全くないとのことですが、わらべ唄の見立て連続殺人、顔のない死体、旅芸人一座など、どう見ても「悪魔の手毬唄」を想起せざるをえませんw (復員服の男は「犬神家」ですが)。 メインの謎である”一家全員の突然の消失”のカラクリに関しては、初読時たまたま直前に梶龍雄の某作を読んでいたため、その類似性が気になったのですが、今回再読してみると伏線の張り具合や見せ方に違いがあり、こちらのほうが巧妙だと感じました。 ホラー部分は比較的弱いかなと思いますが、恒例の”一人多重解決”や蝦蟇油壺のロジックなど、本格ミステリ部分が充実していると思います。 (文庫版には、舞台となる山村の略図イラストがあって位置関係が分かりやすい) |
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| No.1885 | 6点 | 小鬼の市- ヘレン・マクロイ | 2013/02/09 23:37 |
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| 第二次大戦下の、ドイツの潜水艦が出没するカリブ海の小さな島国を舞台にした冒険スリラー風のミステリ。
これまでの本格寄りのシリーズ作品とかなりタイプが違ったのですが、最後に明らかになる趣向で、「さすが、マクロイ!」と唸らせてくれました。 主人公である通信社の新任支局長スタークが探る前任者が残した謎のスプーク・ネタは、登場人物が限られ時代設定を考えれば、それほどの意外性はないものの、黒幕を指摘するプロセスのロジカルさなどに本格派らしい持ち味を感じます。 ただ、「ひとりで歩く女」の翻訳が先になってしまったのは止むを得ないとしても、帯と内容紹介の一文は作者の意図に反すると思われるもので、セールスポイントを重視するあまりの版元の勇み足でしょう。誰もが途中まで読んで「あれ?」と思うはず。 |
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| No.1884 | 6点 | 犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題- 法月綸太郎 | 2013/02/08 11:06 |
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| 黄道十二星座をモチーフにしたパズラー短編集の2巻目。「犯罪カレンダー」の法月綸太郎風アレンジといったところでしょうか。
ギリシャ神話のエピソードを活かしてパズラーを構築するという作者の苦労・労力が、それほどミステリの面白さにつながっていない感もありますが、最初の2作品は完成度が高いように思います。 1話目の「宿命の交わる城で」は、メイン・プロットが作者自身の某長編と同じですが、見せ方を180度変え、最後まで悟らせない複雑な仕掛けがすごい。意味深なタイトルもいいです。 次の「三人の女神の問題」は、チェスタトン的ロジックによる構図の反転が面白い。ギリシャ神話のモチーフが編中で一番活かされているように思います。 残りの作品で共通して気になったのは、犯人の意外性を演出するための、その人物の配置方法ですね。 |
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| No.1883 | 6点 | 刑事くずれ- タッカー・コウ | 2013/02/05 15:39 |
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| ハードボイルドや犯罪小説といったタフ・ノヴェルから、ドタバタ・コメディ風のユーモアミステリまで、幅広い作風で知られるドナルド・E・ウェストレイクが別名義で書いたフーダニット・ミステリ。元刑事ミッチ・トビンが探偵を務めるシリーズの第1作です。
女性がらみの不祥事で同僚刑事を見殺しにし市警を追われた過去に囚われ続ける主人公という設定や、無駄を省いた乾いた文体からは、ネオ・ハードボイルドの雰囲気があり、一方で、被害者である組織の大幹部の愛人が残した書きおきを分析し容疑者を絞り込む過程とミスリードの仕掛けに本格ミステリ的な技巧を感じます。本格とハードボイルドのコラボといった感がありジャンル分けが悩ましいですね。 当シリーズのもう一つの特徴は、本書における犯罪組織をはじめ、ヒッピー集団、精神病患者の療養施設など、いずれも特殊な社会・集団内の殺人を扱っていることで、容疑者を限定するところにも本格色が現れているように思います。 |
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| No.1882 | 7点 | コモリと子守り- 歌野晶午 | 2013/02/04 12:34 |
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| 舞田ひとみ高校生編。ひとみの中学までの同級生で、引きこもりの少年を物語の中心に据えたボリュームのある長編で、本書は仕掛けを凝らした誘拐ミステリの秀作と評価したいです。ただ、これまでのシリーズの流れから、タイトルは「舞田ひとみ17歳、子守りときどき探偵」でもよかったのでは?とも思いますが。
幼児虐待、生活保護、引きこもりなどの社会性のあるテーマを背景にしつつ、スマホの特殊機能やコインロッカーの新システムといった最先端知識を駆使した構成は、”現代の誘拐ミステリ”としてなかなか読ませます。連続幼児誘拐事件の裏の構図の手がかりもフェアに提示されていて、丁寧に読めば途中で読み解くことも可能でしょう。 謎解きが終わった後の、100ページにわたるエピローグは確かに長すぎるのですが、青春ミステリ風のラストシーンはいいですね。印象的です。 |
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| No.1881 | 6点 | 第三の皮膚- ジョン・ビンガム | 2013/02/02 11:04 |
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| 世間知らずで気弱な19歳の青年レスリー・マーシャルが、ダンス・ホールで知り合った女性にそそのかされて、前科もちの男と二人で押入り強盗を働くが・・・・、といったクライム・ストーリーです。
レスリーが守衛殺しの共犯とみなされたことで、てっきり物語はノワールの方向に向かうものと思っていたのですが、途中から母親アイリーンの視点が多くなり、一種の家族小説の様相になっていくのがユニークです。この母親の心理的葛藤・妄執の推移の描写がおもしろく読みどころだと思います。ただ、この結末はどーなんでしょうか、少しモヤモヤ感が残りました。 なお、タイトルの「皮膚」の意味は、”一皮むけた”とか”化けの皮がはがれる”などと使われる「皮」とたぶん同義で、(アイリーンが思索するところの)三つ目の皮とは、人間本来のこどものような純真な資質をあらわすようです。 |
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