皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.88点 | 書評数: 2474件 |
| No.2194 | 6点 | ゴースト・スナイパー- ジェフリー・ディーヴァー | 2014/12/24 22:36 |
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| ライムのもとに女性検事補ローレルが訪れた。反米活動家モレノをバハマで暗殺した黒幕はアメリカ政府の諜報機関で、その首謀者を法廷で裁くべく、彼女はライムに捜査協力を依頼する。だが現場は遠く証拠が収拾できないなか、暗殺者によって目撃証人が次々と抹殺されてゆく事態に-----------。
リンカーン・ライム、シリーズもいつの間にか本書で10作目。 本書の目玉は、車椅子のライムが初めて米国を離れ、カリブ海に浮かぶバハマまで出っ張ることでしょうか。諜報機関の最新兵器やスナイパーが相手ということもあって、いつもよりアクション・スリラーの様相が強い仕上がりです。 中盤に何度か仕込まれているどんでん返しは、もう”期待通りのどんでん返し”で、サプライズ感はあまりないのですが、ダミーの犯人像を次々と繰り出してくる終盤の展開でだいぶ盛り返していますね。 ただ、このところ対峙する”敵”に初期作と比べていまいち歯応えを感じないことも事実。 次作の「スキン・コレクター」に期待しよう。 |
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| No.2193 | 4点 | 九連宝燈殺人事件- 藤村正太 | 2014/12/22 20:16 |
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| ”麻雀推理”と銘打たれたミステリ短編集(6編収録)。
作者の麻雀推理(役満)シリーズは、70年代に長編「大三元殺人事件」のほか4冊の短編集があり、本書は第1短編集のようです。乱歩賞を獲る前に、賭けマージャンで生活費を稼いでいたという作者だけに、その経験を活かした内容となっていて、阿佐田哲也の麻雀小説のように随所に手牌を図示しているところなど面白く読めるのですが----------。 残念ながら謎解きミステリとしては、”本格ミステリ冬の時代”を実感できるような内容となっていますw ”推理モノ”というだけでは売れないため加えたプラスアルファ部分(麻雀)のほうに重点が置かれてしまい、結果的に推理部分がお座成りになっているように思います。 そんな収録作の中でも、最初の「国士無双殺人事件」がまずまずの出来で、アリバイ・トリックや手掛かりは麻雀の特殊ルールに拠るものですが、麻雀に興味ない人が本書を読むとは思えないのでこれは許容範囲でしょう。 表題作は、ゲン担ぎに凝る主人公が不吉なジンクスがある大役満”九連宝燈”をアガってしまったことから巻き込まれる殺人事件の話ですが、ありがちな真相で先の展開が読めてしまうのが残念です。 それにしても、普通の会社員や公務員が雀荘で初めて会った素性の分からない人物と平気で賭けマージャンの卓を囲むという設定が、ちょっと理解できないですね。 |
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| No.2192 | 6点 | ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 | 2014/12/20 16:32 |
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| アウトドア派の”僕(⇒俺)”は、ブログで知り合った同じ趣味をもつ仲間たちと毎年恒例のオフ会を行うため、小笠原諸島の孤島へ赴いた。ところが翌朝、参加者のうち男女2人が行方不明に、続いて洞窟で変死体が見つかる----------。
いかにもメフィスト賞受賞作といった趣向の作品。 ネタバレになってしまうが、読者に隠された”特殊設定”が明らかになると謎がスルスルと解けるという点で、倉阪センセの一連のバカミスと同種の臭いがする。 島に着いた途端に主人公の人格が変わってしまったり、終盤の下ネタの連発には笑ってしまうが、それらがキッチリ伏線や手掛かりになっているのには感心させられた。手術直後だとその部位の皮膚の色が違って目立つだろ!といったようなツッコミは野暮に思えてしまう。ただ、タイトル当ての趣向はウリにするほどのものではなかった気がしますが。 また一人、京大推理研出身の楽しみな作家が現れた(かな?)。 |
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| No.2191 | 5点 | 殺意のわらべ唄- 風見潤 | 2014/12/20 13:12 |
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| 消息が不明だった風見潤氏が亡くなっていたことが判明したらしい。(ソースは青学推理研の後輩・北原尚彦氏のTwitter)
風見潤氏といえば”幽霊事件”シリーズなどのジュヴナイル・ミステリの書き手という一般的イメージですが、個人的には海外ミステリ・SFの翻訳&アンソロジストという印象が強い。 主なところでは、エドワード・D・ホック「こちら殺人課!レオポルド警部の事件簿」、ジョン・スラデック「黒い霊気」、ランドル・ギャレット「魔術師を探せ!」、さらには昨年「ビブリア古書堂」で話題になったSFアンソロジー「たんぽぽ娘」など、なぜか現在ではマニアの探求本的なものが多い。 本書は大人向けの本格ミステリーで、大学講師・神堂と恋人の奈々との素人探偵コンビシリーズの第1作。 ”てるてる坊主”などの童謡に見立てた製薬会社役員の連続猟奇殺人がテーマとなっていますが、派手な事件の割には解決があっけないというか、コンパクトな分量のため大きく広げた風呂敷を無理やりまとめた感があります。トリックの一部も自身の作品とダブっていたように記憶しています。 |
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| No.2190 | 4点 | 探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて- 東川篤哉 | 2014/12/18 18:54 |
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| 両親ともに名探偵という小学4年生の少女アリサと、彼女の子守り役を依頼される「なんでも屋」の”俺”のコンビによる連作短編集。溝ノ口を中心に南武線沿線で起きた事件を扱った地域限定ミステリになっている。
「平成の赤川次郎」か「日本のエドワード・D・ホック」を目指しているのか、このところ出す新刊ことごとく新しい探偵キャラクターを創造してくる。シチュエーション・コメディのマンネリ防止のためということは分かるが、新しい設定がそれほど活かされているようには思えないのだけど。 前作の「一服堂」のようにミステリの仕掛けの部分で工夫があればまだ評価できるのだけど、今作はミステリ部分も低調に感じた。 第1話のバカミス風トリックはどこかで似たようなものを読んだ気がするし、第2話の南武線のアリバイ崩しを扱った手掛かりは地元の人でないとピンとこないだろう。 |
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| No.2189 | 6点 | 怪しい店- 有栖川有栖 | 2014/12/16 18:47 |
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| いろいろな”店”を題材にした作家アリス&火村シリーズの連作中短編集。”宿”がテーマだった「暗い宿」の姉妹編のような位置づけの作品集で下記5編を収録。(一部ネタバレあり)
「古物の魔」は骨董屋の店主殺し。火村が言うように、”殺害時刻を誤認させる工作がアリバイ偽装のためではない”という、犯人の動機が非常にユニークです。火村と船曳捜査班との関係が何となく探偵ガリレオっぽいですね。 「燈火堂の奇禍」は、古書店の事件ということで、当然のごとく”日常の謎”を扱ったアームチェア・ディテクティヴになっているw 「ショーウィンドウを砕く」は倒叙もの。全て犯人視点で語られる火村や大阪府警の面々がちょっと新鮮な感じを受ける。 「潮騒理髪店」は、田舎町へ取材で訪れた火村の視点で語られる”日常の謎”もの。ミステリ的には普通ですが全体の雰囲気がよく、編中の個人的ベスト作品。 最後の「怪しい店」は、1話目の「古物の魔」と同様に、大阪府警の船曳班の捜査に火村とアリスが協力するオーソドックスなフーダニット。出来自体は可もなく不可もなくというところ。 |
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| No.2188 | 7点 | オルゴーリェンヌ- 北山猛邦 | 2014/12/14 15:30 |
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| 将来のミステリ作家を目指し、書物が禁止された異国を旅する英国人少年クリスは、検閲官に追われる少女ユユと出会う。突如現れた少年検閲官エノとともに、オルゴール作り職人が住む海に囲まれた洋館を訪れることになるが、そこで3人を待っていたのは不可解な連続殺人だった---------。
「少年検閲官」シリーズの第2弾。海面上昇による世界の終末感が漂い、”ミステリ”をはじめあらゆる書物が焚書の対象となっているという異世界を舞台にした幻想的な本格ミステリです。 ミステリの諸要素”ガジェット”を宝石状の結晶にして隠すとか、少女の体をオルゴールにする”少女自鳴琴”(オルゴーリェンヌ)といったファンタジー要素が出てきますが、骨格はガチのクローズドサークルもの本格編で、作者お得意のアレ系トリックが連打されます。3つ目の密室殺人のトリックにちょっと疑問点があるものの、「黒死館」や「本陣」を連想させる趣向はなかなか面白かった。 もう一人の少年検閲官や、ある人物を交えた多重推理・多重解決の末に、明かされる真相はかなり意外性があり、哀切感と余韻が残るラストもいい感じで、傑作と評価したい。 |
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| No.2187 | 5点 | このミステリーがすごい!2015年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2014/12/12 18:57 |
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| 毎年恒例の「このミス」を購読。例年とはちがって今年は真面目に各項目毎にコメントしようかなと思いますw
まずはランキング。国内1位は昨年に続きノンシリーズ短編集で、他誌と合わせて3冠となった。あとひとつ、「本ミス」か裏ドラ(本格ミステリー・ワールドとか)が乗っていれば文字どうり”満願”だったのに、惜しいw あとは連城三紀彦の2冊トップ10入りや、従来「このミス」と相性が悪かった乱歩賞作品の上位ランクインが目を引いた。 海外1位はアレw ですが、版元による新しいキャッチコピー”海外ミステリ・ランキング完全制覇、史上初の6冠達成!”は、誤解をあたえそうな内容で思わず苦笑してしまった。原書房が怒りそう。 内外とも上位陣は他誌のランキングと似ており、このミスの独自性が全く見えないのは昨年と同様です。 今年の目玉企画は、”国内短編ミステリー・オールタイム・ベスト10”投票ですが、同様の企画が半年前に個人Twitter上で実施されており、二番煎じといわれても仕方がない。しかもTwitter投票のほうが投票人数など遥かに規模が大きく、ベスト100まで作品に関するコメントが付く充実ぶりだったので、比べるとどうしても見劣りがする。 次に”私の隠し玉”コーナー。過去「このミス」にランクインした作家を対象としているらしいが、興味を持てる作家はごくわずかしかいないので読む気にならない。最近ヒット曲がないのに昔の持ち歌で登場する一昔前の紅白歌合戦を連想させるw さて、もはや唯一の楽しみは”我が社の隠し玉”コーナー。 個人的注目作品は〈クラシック部門〉では、まずパトQの本邦初訳2作品。ダルース夫妻シリーズの最後の未訳作「死への疾走(仮)」(論創社)もさることながら、ジョナサン・スタッジ名義のウェストレイク医師シリーズ第1作(原書房)が楽しみ。 クリスチアナ・ブランド「猫とねずみ」の続編(東京創元社)は、前作で端役だったチャッキー警部による本格的謎解きモノらしい。 ロジャー・スカーレットは、「白魔」(バック・ベイの殺人)の完訳版(論創社)で、これで5作全部邦訳が揃う。 あと、DMディヴァインの初訳作品、キールグッド&マーヴェル「放送局の殺人(仮)」なども期待したい。 一方〈現代作家部門〉では、巨匠カーの孫娘シェリー・ディクスン・カーのデビュー作(扶桑社)が遂に邦訳される。タイムスリップ&切り裂きジャックを扱ったヴィクトリア朝ミステリらしいが、出来栄えはともかく話題になるのは間違いないだろう。 今年の「このミス」に上位ランクインした「その女アレックス」(ヴェルーヴェン警部シリーズ)と「もう年はとれない」のシリーズ作品が早くも出るのも嬉しい。そのほか、コナリー、ディーヴァーの常連組に、トム・ロブ・スミスの新作も楽しみだ。 |
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| No.2186 | 7点 | その女アレックス- ピエール・ルメートル | 2014/12/10 22:59 |
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| 非常勤の看護師アレックスは、パリ市内の路上である男に拉致され、倉庫の天井から吊るされた檻の中という過酷な状態で監禁される。一方、カミール・ヴェルーヴェン警部ら捜査班は、目撃者の通報を受け必死の捜索を行うも、所在はおろか被害者女性の身元さえ掴めなかった----------。
今年の主要ミステリ・ランキング全て1位、史上初の4冠を達成した話題のフランス・ミステリ。ですが、個人的には4冠よりも「本ミス」にもランクインしたことが驚きです。本書は、本格ミステリ読みにはあまり好まれないと思われるタイプの、残虐なシーンや重い題材を含んだクライム・ノヴェル+警察小説なのですから。 ”あなたの予想はすべて裏切られる!”とキャッチコピーに謳うように、あらすじ紹介の監禁事件はほんの発端で、第2部、第3部と移る度に物語の様相が180度変転、読者の先入観を利用したサプライズ展開が本書の最大の読ませどころです。 また、人称代名詞の「彼女」をまったく使用せず、全て「アレックスは~」「アレックスの~」とした文章も特徴的で、(作者の正確な意図は分からないが)何度も変転するヒロイン像に対する感情を、読む者に強く惹きつけ続けさせることに成功していると思う。 |
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| No.2185 | 6点 | 六花の勇者 5- 山形石雄 | 2014/12/08 20:44 |
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| 〈運命〉の神殿に辿り着いたアドレットたちは、そこで”勇者の紋章”の創造主”一輪の聖者”に出合う。そして、凶魔の統率者テグネウが仕掛けた〈黒の徒花〉の内容を知り、対策を議論する矢先に、フレミーが衝撃的なひと言を放つ---------。
選ばれし6人の勇者が魔神と凶魔たちに戦いを挑む冒険ファンタジー、シリーズの第5弾。 神殿の迷宮内を舞台にして、〈黒の徒花〉というテグネウが放った一手により勇者たちが疑心暗鬼に陥り仲間が分裂する事態となる本編。ストーリーそのものは動きに乏しく、同じところをグルグル回っている印象を受けますが、物語の終盤で、遂にシリーズを通した謎の核心、「7人目」の正体が明らかになる。 これまでの流れだと、いったいどのように収拾をつけるのか全く想像がつかなかったのだけど、なるほど!これは考えましたね。〈黒の徒花〉というファクターが加わってからストーリーが混沌としてきた感がありましたが、ようやくスッキリしましたw エピローグの描写から、次回はハンスとチャモを主軸とした物語になるのだろうか。 |
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| No.2184 | 7点 | 闇に香る嘘- 下村敦史 | 2014/12/06 23:19 |
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| 人工透析を受けている孫娘のために、「私」村上和久は中国残留孤児だった兄・竜彦に腎臓移植のドナー検査を依頼するも、何故か拒絶される。和久は”兄”が血縁のない偽者ではないかと疑い、真相を突き止めようとするが---------。
第60回江戸川乱歩賞受賞作品。各選考委員絶賛で、今週の週刊文春ミステリーベスト10総括でも、千街晶之氏が「乱歩賞六十年の歴史に残るであろう傑作」と最上級の評価をしていたので期待して読んだ。 「私」は、戦時下満州の劣悪環境が原因で41歳のときに失明している。つまり、盲目の主人公による一人称視点という困難な設定に挑戦している点が素晴らしい。 当然ながら情景描写はなく、触覚、聴覚、臭覚で得た情報だけで謎解きが展開されるのだけど、この設定がミステリの仕掛けの部分に巧く活かされ、終盤の驚愕の反転図につながっています。中盤までは、戦時中の満洲でのエピソードや視覚障碍者の実情が事細かく語られ”じれったい”展開ですが、それらのなかに張られた伏線が最後にきれいに回収され、まさに人間ドラマと謎解きが見事に融合していると思います。 なおネットの感想などで、ロバート・ゴダードの「闇に浮かぶ絵」からのパクリ疑惑を見受けますが、”正統を名乗る二人”の真贋テーマは昔からある題材(=たとえば、カーの「曲がった蝶番」)ですし、プロットも作風も全く異なっていると思います。 |
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| No.2183 | 5点 | フライプレイ! 監棺館殺人事件- 霞流一 | 2014/12/04 21:59 |
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| 売れないミステリ作家の神岡と担当編集者の里子は、別荘を訪ずれたマリーを誤って殺してしまう。いっそのこと、この平凡すぎる殺人を本格ミステリのガシェットで派手に飾って小説にしようと企てるが--------。
「探偵スルース」+「熱海殺人事件」とあるように、一幕モノの推理劇を思わせる構成になっている。 乱歩や横溝、ポーなどの古典探偵小説の見立てと密室殺人を巡って、4人の登場人物が推理を披露し、ロンド形式で犯人を指摘するなど、次から次へと事件の様相が反転していく展開が面白い。真相も結構シニカルです。 しかしながら、本書には根本的な疑問点があるように思える。 推理劇は”観客”がいて初めて成立するはずなのに、”役者”しかいないシーンでも演技をしているとしか思えない場面が散見されるのはどういうことだろう? これは読者向けのミスリードとしか考えられず、結果的にアンフェアな描写になっていると思う。 |
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| No.2182 | 6点 | 人間の顔は食べづらい- 白井智之 | 2014/12/02 18:35 |
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| 人間のクローンを食肉とするため飼育する近未来の日本。クローン生産工場で働く柴田和志は、顧客の国会議員あてに発送した首なしクローン肉のケースの中に切断したはずの生首が混入してたことから、脅迫事件の重要容疑者となるが、それはあくまでも壮大な悪夢の始まりに過ぎなかった----------。
かなりのキワモノ設定でグロい描写もあることから、完全に読者を選ぶタイプの怪作です(Amazonのレビュー評価が総じて低いのも分からなくありません)。 しかし、本格ミステリとして見ると(粗いところもありますが)非常によく練られており、その筋の方々が投票するほうの年末ランキングでは、上位に入るのは間違いないように思われます。 本格ミステリとして評価したい点を挙げるとすれば、中盤の生首の混入方法を巡る容疑者同士の推理合戦や、終盤のクイーンばりに犯人を特定するロジック展開、意外な”名探偵”登場からのどんでん返し等々で、さらに、この設定であれば真っ先に考慮すべきメイントリックにもヤラレタ感がありました。 ただ、この人物はいったい何のために登場させたのだろう?といった細かい疑問点もありましたが。 どちらかといえば、横溝正史賞ではなくメフィスト賞に応募すべきだったかもしれないと思えた作品。 |
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| No.2181 | 6点 | 化石少女- 麻耶雄嵩 | 2014/11/30 18:55 |
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| 京都にある名門私立高校で不可解な殺人事件が次から次へと発生する。古生物部の部長・神舞まりあは、たったひとりの後輩部員・桑島彰に、どの事件も生徒会の幹部6人の仕業だと自信満々で推理を披露するのだが---------。
テストのたびに赤点をもらい成績は学年の最下層という化石オタクの女子高生・神舞まりあを”探偵役”に据えた連作ミステリ。 ”全知全能の神様”鈴木太郎シリーズとは対照的に、各話とも”お守り役”の彰に推理を即座に却下されてしまうという構成がユニークです。そのため読者もはっきりした真相を知らされずに読み進めることになるのですが、連作のラストで作者らしい黒いオチが待っていました。(やや小粒感がありますが) まりあの”赤点推理”を個別の作品で見ていくと、化石採掘のため出かけた地方で不可解な事件に遭遇する第4話「自動車墓場」のバカミス的トリックと、体育用具室の密室殺人を扱った最終話「赤と黒」が面白い。 たまたま今月は、森川智喜、円居挽、麻耶雄嵩と京大推理研出身のミステリ作家を3作読みましたが、示し合せたようにどれもラノベ風の連作短編集になっていてテイストも似てましたね。 |
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| No.2180 | 6点 | 黒い瞳のブロンド- ベンジャミン・ブラック | 2014/11/28 21:45 |
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| ある夏の日、私の探偵事務所を訪れた優美な女は、髪はブロンドだが瞳が黒色という珍しい取り合わせだった。その女クレアから、突然姿を消したかつての愛人を捜してほしいと依頼されるが、私の行く先々で死体が転がり、最後に辿り着いたところには意外な人物の姿があった---------。
あの「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」の公認続編を標榜するフィリップ・マーロウの復活譚。チャンドラーが遺した創作ノートにタイトルだけ記された”The Black-eyed Blonde”を元に、ブッカー賞作家ジョン・バンヴィルが別名義で書き下ろした作品です。 信奉者が多い名探偵のパスティーシュを書くと、とかく「ポアロはそんな言い回しをしない」とか「マーロウはもっとストイック」といったクレームがついて回るのは世の常で、これはある程度やむを得ないところでしょう。たしかに、本書のマーロウは度々リンダ・ローリングへの想いが出てくるなど、女性に対するストイックさに欠けるようです。 それでも、プロットは”ネオではない”古典ハードボイルド小説の定型を忠実に再現するなど、割と健闘している方だと思います。ただ、ラストの処理に関しては、ある意味「長いお別れ」をも貶めているといったような否定的な感想が多いのではと思いますが。 なお、本書にはテリー・レノックスの行末などの”前作”のネタバレに触れている箇所があり、またラストの衝撃を味わうためにも「長いお別れ」を先に読んでおくことが必須です。 |
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| No.2179 | 5点 | 奥秩父狐火殺人事件- 梶龍雄 | 2014/11/26 21:04 |
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| 次作映画の取材のため奥秩父の小村を訪れた五城は、山間で何者かに狙撃された江森道代を助ける。狐憑きの家系といわれる江森家と関わるうちに、26年前に道代の母親に起きた悪魔的事件を知り、やがて江森家の人々を標的とする連続殺人事件に対峙することに-------。
若手の映画監督・五城賀津雄を探偵役とするシリーズの一冊。 狐憑き信仰が蔓延る閉鎖的な寒村、過去の残虐な狐落し儀式の因縁、隠された血縁関係などなど、伝奇的舞台設定は(登場人物も言うとおり)横溝正史の作品世界を髣髴とさせるところがありますが、ピチピチの女子大生7人が江森家の離れに夏合宿で住み込んでいるという設定が、ああ、やっぱりカジタツ作品だったなと思い出させますw 冒頭のシーンを始めとして、あんなことが伏線だったのか!というぐらい多く張られた伏線の巧妙さはいつもどおりで、「反転図」と題された最終章での五城の謎解きはなかなかのものです。横溝的世界観そのものがミスディレクションになっているというか.....。 ただ、途中の展開がやや通俗的で、全体的にごちゃごちゃしている感は否めず、評価としてはこれぐらいになってしまう。 |
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| No.2178 | 6点 | 殺し屋ケラーの帰郷- ローレンス・ブロック | 2014/11/24 19:00 |
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| 殺し屋稼業を引退し名前を変え、妻娘の三人家族でニューオリンズで良き市民として暮らすケラー。ところがサブプライムローン問題の余波で、新しい仕事のリフォーム事業が傾きだしたところへ、身を潜めていた殺し屋の元締めドットから連絡が入る--------。
殺し屋ケラー・シリーズの第5弾。ハッピーエンドの前作でシリーズ完結、とはならず、今作が本当に”最後の仕事”となるらしい(たぶんw)。本書は、中短編5編を収録した連作短編集の形をとっていますが、主要登場人物一覧があり、時系列的につながりがあるので長編として読める。 本書の特徴の1つは、家庭人の殺し屋ケラーと妻ジュリアのスタンスの変遷。第1話では妻ジュリアに恐る恐る復職を告白するが、かつての本拠地ニューヨークで大修道士を標的にする第2話「ケラーの帰郷」になるとジュリアが仕事の顛末を聴きたがったり、第3話の「海辺のケラー」ではケラーとともに豪華客船での殺しに関わったりで、この辺が妙に面白い。 もう一つの特徴は、ケラーの切手蒐集の趣味がより比重を増し、ほぼ全編で物語に絡んでくることだろう。第4話「ケラーの副業」では、殺しの仕事はむしろサブストーリーで、切手売買の仲介を巡る物語のほうがメイン。それでも面白く読ませるのがブロック。 それにしても、ケラーとドットの洒落ていて息の合ったあの会話がもう読めなくなるのは残念だ。 |
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| No.2177 | 5点 | 謎の環状列石- 藤村正太 | 2014/11/22 22:04 |
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| 青白い怪光が飛んで落ちるのを目撃した中学生の晴彦は、多摩地方の雑木林に向かいストーンサークルと謎の電気部品を見つける。隣に住む高校生・昌史と共に探索するうちに、奥多摩で起きた会社員の墜落死事件と関連があるのではと気付く---------。
昭和51年に学研の学習雑誌に前後編2回に分けて掲載された作品をもとに、新構想を加え全面改稿のうえ朝日ソノラマ文庫で出版されたジュヴナイル・ミステリ。前編の掲載誌が「中3コース3月号」で、後編が「高1コース4月号」というのが、読者の年次が4月で新しくなる学習雑誌ならではで面白い。 UFOや宇宙考古学のウンチクをネタにして興味を惹かせる工夫が感じられますが、今読むと謎解きの部分が中高校生向けとしては安易な内容で、小学生対象レベルに思えてしまう。(それとも30年以上前なら、子供も今ほどスレておらず、もっと素朴だったのか?) アリバイトリックに使われたアイテムは、たしかに当時は普及しておらず斬新なものですが、こちらも時代を感じてしまいますね。 |
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| No.2176 | 7点 | ゴーストマン 時限紙幣- ロジャー・ホッブズ | 2014/11/20 23:04 |
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| カジノの現金輸送車から強奪された120万ドルの札束には、48時間後に爆発するインク爆弾が仕込まれていた。犯罪立案者マーカスに過去の借りを返すため、ゴーストマンこと「私」はその”時限紙幣”の奪還命令に応じるが--------。
ロジャー・ホッブズのデビュー作となるクライム・ノヴェル。 刊行前から話題になり日本での評判も上々とは聞いていましたが、実際、とても弱冠23歳のときに書いた作品とは思えない出来栄えに驚きました。 麻薬マフィアのボスが絡むタイムリミット・サスペンスの”現在”パートと、マレーシアを舞台にした5年前の銀行襲撃計画の顛末が語られる襲撃(ケイパー)小説の”過去”パートが交互に描かれ、一冊で異なるタイプの2つの小説を味わえる。各章のラストでサスペンスを繫ぐ構成上のテクニックが上手いと感じた。 解説でも述べているが、主人公ゴーストマンは変装を武器とする犯罪者ながら、ハードボイルド風の語りもあり、現在パートでは事件の真相を追う私立探偵を思わせるところがある。FBIの女性捜査官との絡みではワイズラックも飛び出し、後半になるにつれ人物的魅力が増してきたように思う。 「私」の師匠アンジェラや犯罪プランナーのマーカスとの関係など、今後の展開が楽しみであり是非とも続編も読んでみたい。 |
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| No.2175 | 6点 | ダンデライオン- 河合莞爾 | 2014/11/18 19:10 |
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| 東京郊外の廃牧場にあるサイロでミイラ化した女性死体が見つかる。密閉されたサイロ内のその死体は、あたかも空中浮遊中に鉄パイプで串刺しされた状態。しかも被害者は、姫野刑事が幼いころ同じアパートに住み、「空を飛ぶ娘」の民話を語って遊んでくれた女子大生・日向咲(えみ)だった-------。
警視庁の鏑木警部補率いる特捜班4人が活躍するシリーズの3作目。 サイロ密室の浮遊死体に続いて、高層ホテルの施錠された屋上の焼死体と、今回も不可思議な事件を担当しますが、若い姫野刑事の過去や、左翼組織グループが関係することで公安警察が絡むという、やや複雑なプロットになっています。 現在の捜査状況の合間に、双子の女性の片割れ・日向咲の16年前のエピソードが挿入される構成が効果的で、事件の隠された構図を徐々に明らかにしていくとともに、巧妙なミスディレクションになっています。「双子」ということで当然いだくアノ疑いの斜め上をいく真相には見事に騙されました。アンフェアぎりぎりの描写もありますが、貧困家庭という事実で、そういう作為もあり得るかなと思います。トリックのためのトリックにならず、きっちりと人間ドラマに寄与している点を評価したいです。 しかし、たんぽぽ(ダンデライオン)の花言葉のひとつが「解き難い謎」とは......。 |
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