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[ ハードボイルド ] サンセット77 私立探偵スチュアート・ベイリー |
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ロイ・ハギンズ | 出版月: 1966年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
早川書店 1966年01月 |
早川書房 1983年12月 |
No.2 | 6点 | kanamori | 2014/08/24 00:00 |
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私立探偵ベイリーは、実業家キャリスターの依頼を受け身辺警護のためにホノルルに向かう豪華ヨットに同乗する。家族ら5人だけの船内には異様な緊張感が高まり、やがてライフル弾で頭を撃ち抜かれたキャリスターの死体が発見される(第1話)--------。
ロサンゼルス市サンセット通り77番地に事務所を構える私立探偵、スチュアート・ベイリーを主人公とする連作中編集。 「サンセット77」は、私立探偵モノとして「ハワイアン・アイ」と共に’60年代に日本でもテレビ放映された人気シリーズだったようですが、本書の小説版はネットで仕入れた情報とはやや雰囲気が違う。TV版では、相棒のスペンサーや駐車係のクーキーなど、仲間のレギュラーキャラクターが物語を彩っていたのに対し、この小説版ではベイリー単独の探偵譚となっていて、若いころのマーロウ物を通俗的にした感じを受けました。 内容的にはminiさんも書かれてますが、密室トリックや凶器の消失トリックなど、3話とも本格ミステリ顔負けのトリックが施されている点が面白いです(動機や必然性が弱く、実現可能性などを度外視したところもありますがw)。 なお、個人的ベストは太平洋上の豪華ヨットという舞台装置がハードボイルド小説としては異色な第1話「死は雲雀に乗って」。 |
No.1 | 6点 | mini | 2014/03/14 09:56 |
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1914年生まれ、つまり今年が生誕100周年作家を漁る、第3弾はロイ・ハギンズ
何度も繰り返しになるが、今年の生誕100周年作家は大物作家が少なく、全体にマニアックな顔触れである、その中でハードボイルド系で名前を挙げたいのがハギンズだ ロイ・ハギンズを知っていたらそこそこのハードボイルド通であろう、ただし”そこそこの”と微妙な表現にしたのはそれほどのマイナー作家でもないからだ ハードボイルドにさほど関心の無い読者には無名だろうが、活躍時期が中期頃のロスマクと重なり、TVドラマ化もされたりで当時のアメリカでは文字通り”そこそこの”人気作家だったらしい ただ今では忘れられていて、大御所ロスマクの陰に隠れてしまっているようだ ”ブールバード”というのは仏語のブールバールが由来のシャンゼリゼ通りみたいな”街路・大通り”の意味で、サンセット・ブールバードと言えばロサンゼルスを代表する有名な大通りの1つである、よく分からんが札幌や名古屋の大通りみたいなものなんだろうか その一画サンセット・ストリップに事務所を構えるのが私立探偵スチュアート・ベイリーである 再三名前が引き合いに出されるロスマクと活躍時期が被るせいか、初期のロスマク同様にチャンドラーに影響を受けているようで、私立探偵ベイリーもマーロウをもう少しお気楽な通俗調にした感じだ この『サンセット77』は雑誌に連載された中編3本を纏めた中編集で、事件はそれぞれ全く独立しているのだが共通する美女を介して話を繋げており、もしかしたら単行本化に合わせて加筆したのかも知れない ロスマクもハードボイルド作家としては”トリック使い”なのは有名だが、『サンセット77』収録の中編3本も全てトリックが使われており、この時期のある種流行だったのだろうか ただトリックのネタ自体はまぁジャンル相応か(苦笑) 第1話目の「死は雲雀に乗って」は後処理に工夫は凝らされているものの、多分この手のトリックが使われたのだろうと真相はほぼ看破してしまった、狙いは分かるが残念ながら動機が弱いのが弱点 第2話の「殺人ベッド」は密室トリック自体はちょっと強引だが、トリックネタといかにもなハードボイルドらしい話の展開とのバランスが取れており集中のベスト 第3話の「闇は知っていた」は凶器消失の謎にユニークなトリックが使われ、トリックだけなら最も印象に残るが、トリックを弄する理由付けが弱く、館もの風の舞台設定もあまり面白くない |