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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.51 6点 泡坂妻夫引退公演- 泡坂妻夫 2012/09/16 22:05
雑誌に掲載されたままだった短編を、シリーズ・キャラクターや類似テーマ別に分類・編集した、箱入り2冊セットの単行本未収録作品集。

亜智一郎やヨギ・ガンジーのお馴染みのシリーズもののほか、紋章上絵師の「わたし」が関わる家紋にまつわる因縁話の連作シリーズ、奇術道具専門店シリーズなど、作者のプロフィールを具現化したような多彩な作品が揃っているので、(作品の出来はともかく)往年のファンのひとりとして楽しく読めました。
なかでも、江戸城の雲見番・亜智一郎シリーズ7編のトボケタ雰囲気が相変わらず面白い。もし最終話が書かれていたら、幕末動乱が背景になるだろうから、タイトルは「亜智一郎の遁走」とでもなったのだろうか。
あと、どの分類にも入らない作品では、ホラー系やSFコントのほか、中編の本格ミステリ風戯曲「交霊会の夜」が印象に残った。

No.50 5点 鬼子母像- 泡坂妻夫 2010/08/21 14:52
ミステリ短編集。
なにげない日常の中に妖美な非日常を紛れ込ませた、奇妙な味の短編12編が収録されています。
怪異と官能、人情ものなど、話のネタ自体は目新しいものはありませんが、短編小説の職人芸を味わうことができました。

No.49 5点 からくり東海道- 泡坂妻夫 2010/08/21 14:52
大久保長安の埋蔵金を巡る伝奇時代小説。
このジャンルの先達の名作群と比べると、派手な趣向やスリリングな展開に欠けるように思います。後半になって物語が別方向に向かうのも、掴みどころがない感じをうけました。
終始「ですます」調で通す文章は、始めは異和感がありましたが、馴染んでくると心地よく読めるようになりましたが。

No.48 4点 揚羽蝶- 泡坂妻夫 2010/08/20 21:28
作者の本来の仕事(?)紋章上絵師とマジシャンを題材にそれぞれ4編収録された短編集。
職人ものといっても、従来の抒情的な恋愛を絡ませた物語と比べると残念な内容。奇術ものもトリックを中心とした派手なものではないので、ちょっと拍子抜けした短編集でした。

No.47 5点 比翼- 泡坂妻夫 2010/08/20 21:12
職人もの、奇術ネタ、怪異譚、恋愛ものと4つのタイプに分けられた短編集。
全盛期の短編作品と比べると、正直出来は落ちる感じがします。ただ、奇術ネタ3編のうち、「スペードの弾丸」に出て来た女性マジシャンにはニヤリ。老境にはいっても遊び心は忘れてませんね。

No.46 6点 恋路吟行- 泡坂妻夫 2010/08/20 20:46
大人の恋愛、親子の絆、夫婦愛などを主題にして、ふとしたことから意外な事象が浮かび上がるというような作品が10編収録されています。
ミステリ的な興味でみると派手さはあまりないものの、「恋路吟行」や「藤棚」が秀でていると思いますが、「忘勿草」「子持菱」は文芸的に印象に残る名品。

No.45 6点 砂のアラベスク- 泡坂妻夫 2010/08/20 20:21
恋愛ミステリ短編集。
著者の恋愛ものの短編は、どちらかというと古風でストイックな登場人物がイメージされますが、本書収録4編のうち「裸の真波」以外は、現代的な男女が織りなす恋愛ものでした。
モロッコを舞台にミステリアスな禁断の愛を描いた「砂のアラベスク」が印象に残りました。

No.44 5点 猫女- 泡坂妻夫 2010/08/20 19:14
大手陶芸会社の一族が、化け猫の祟りに遇った如く次々と不審死を遂げていく、猟奇的殺人を扱った長編ミステリ。
ホラー風味の本格ミステリで、不可能犯罪や細かい伏線もありそこそこ楽しめました。
著者の長編ミステリには、「アクロイド殺し」や「Yの悲劇」など古典ミステリのプロットに影響を受けたものがいくつかあるように思いますが、本書もある作品をモチーフにしているのではと思います。

No.43 5点 夢の密室- 泡坂妻夫 2010/08/20 18:56
ミステリ短編集。
本格ミステリかと思って読み進めていくと、全然違う構図の物語になるような、ツボを外した作品が多かった。
「夢の密室」にはステロタイプな密室トリックが出てくるが、夢の話だし、「凶漢消失」は、古文書に書かれた物語が世界初のミステリ小説かという魅力的な話が尻すぼみに終わる。ちょっと掴みどころのない短編集でした。

No.42 6点 雨女- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:40
ミステリ短編集。単行本「ぼくたちの太陽」が文庫化に際しタイトル変更となったもの。
収録前半3編の「女」シリーズはホラー・奇妙な味風のミステリ、後半3編が本格編で、「ぼくたちの太陽」が突出して面白い。ドタバタ調の物語の中にトリックと伏線が張られているところは、亜シリーズを彷彿させました。

No.41 7点 折鶴- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:31
恋愛ミステリ短編集。
4編収録されていますが、いずれの作品も和服の仕立てに関わる時代遅れの職人を主人公にしています。
ミステリ趣向を表立てることなく、男女の心情の綾を抒情的に描いた作品集で、小さな騙りが恋愛小説のなかに自然に溶け込んでいる創りは、正に職人芸の域です。なかでは、「角館にて」が個人的に気に入っています。

No.40 6点 からくり富- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:31
夢裡庵先生捕物帳シリーズの第2短編集。
ミステリの趣向は前作と比べると薄味な感じを受けますが、神田明神の祭り、浅草の見世物小屋、富くじ騒動など、江戸の風物・情景が実に鮮やかで読み心地のいい捕物帳に仕上がっていると思います。
なかでは、隠された犯罪トリックと発覚のきっかけが面白い「からくり富」が個人的ベスト。

No.39 6点 びいどろの筆- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:31
八丁堀同心・夢裡庵先生捕物帳シリーズの第1短編集。
当シリーズの特徴は、各話で視点人物と探偵役がリレー方式で変転していくところ。宝引の辰シリーズの視点人物の変転という趣向を、さらに一段階凝らしたということだろうか。
収録作の中では、表題作の「びいどろの筆」がよく出来ていると思います。絵馬に描かれた人物が弓で殺したように見えるという状況は、「なめくじ長屋」シリーズで多用された不可解趣向を連想させます。

No.38 6点 蔭桔梗- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:30
短編集「折鶴」と同系統の、時代おくれの職人の世界や、大人の男女の情愛をテーマにした短編集。
ただし、「折鶴」と異なるのは、収録11編にミステリといえる作品がないことで、「恋文」の連城と同じく、ミステリ以外の作品で直木賞というのは複雑な思いがしたことを憶えています。

No.37 4点 弓形の月- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:30
二人の女性を中心にした”特異な愛のカタチ”が主題のミステリで、扱われているネタは「湖底のまつり」と共有するものです。
しかしながら、「湖底のまつり」は終始幻想的な雰囲気の中で展開するものの、最後は論理的に閉じる物語だったのに対し、本書は通常のミステリが最後は幻想ミステリになってしまいます(そのように理解しました)。その点が、ちょっと嗜好を外れていて楽しめませんでした。

No.36 5点 蚊取湖殺人事件- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:30
文庫オリジナルの短編集。
紋章上絵師、奇術趣味、本格ミステリ作家と、作者の色々な側面を見せてくれるヴァラエティに富む作品集ですが、完成度の点ではちょっと落ちると思います。本格ミステリに限ってみれば、バカミス的トリックの「雪の絵画教室」とか、凝った犯人当ての「蚊取湖殺人事件」などが面白かったですが。

No.35 3点 春のとなり- 泡坂妻夫 2010/08/19 17:30
昭和20年代後半の東京下町を時代背景にした青春小説。
作者の半自叙伝ではと思いますが、物語に大きな動きがなく淡々と展開していくプロットは、残念ながら冗長でした。
作者と同年代の読者であればノスタルジーに浸れるかもしれません。

No.34 7点 黒き舞楽- 泡坂妻夫 2010/08/18 17:48
青年人形師の妻が次々と不審死していく謎に、古い浄瑠璃人形の因縁話を絡めた恋愛風ミステリ。
人形師の小学生時代に教師だった30代の女性の視点で、地方都市の人間関係が語られていきます。連続する死が描かれているものの、女性の母親の造形など日常の情景が読み心地のいい香気をはなっていましたが、最終章で明らかになる真相には唖然となりました。本書は”特異な愛のカタチ”を追及してきた作者のミステリにおける到達点といえる作品だと思います。

No.33 4点 写楽百面相- 泡坂妻夫 2010/08/18 17:48
写楽の謎に寛政年間の謀略が絡む時代ミステリ。
歴史ミステリとして期待して読みましたが、正直リーダビリティに欠ける内容でした。
一番不満なところは、次々と実在の人物が登場するが、読者に対する説明が不親切な点で、ある程度この時代の知識がないと人物整理だけで精一杯だと思います。

No.32 5点 斜光- 泡坂妻夫 2010/08/18 17:48
5年前に失踪した妻が地方の温泉街で踊り子をしているのを目撃した夫と、5年前の殺人事件を追う刑事。二人の視点で並行して物語が展開していき、終盤で交叉するというストーリー。
作者は、同性愛など”特異な愛のカタチ”を主題にしたミステリをいくつか書いていますが、本書もその趣向の別ヴァージョンでした。
最終章の真相が語られる男女の会話が、あまりにも読者向けの説明口調なのが残念。

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kanamoriさん
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