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文生さん
平均点: 5.87点 書評数: 403件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.103 8点 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? - 詠坂雄二 2015/03/05 11:08
佐藤誠というキャラクター自体が遠海事件の真相を隠すミスディレクションになっている構成は見事という他ない。
ストーリーそのものは序盤に起こった殺人事件について捜査をしていくだけという地味なものであるが、佐藤誠という不可解な存在に引っ張られてぐいぐいと引き込まれていく。
ただ、『佐藤誠の物語』としての落とし所は少し物足りなさを感じてしまった。80人以上も殺した殺人犯なのだから最期まで不気味な一面を残しておいても良かったのではないだろうか。

No.102 8点 球形の季節- 恩田陸 2012/04/10 21:10
平凡な日常が静かに崩れていく様を描いたSF青春ミステリー。
ショッキングな描写はほとんどなく、何かがとんでもないことが起こっているという不穏な空気感だけで物語を引っ張っていく。
ラストでは何ひとつ解明されないまま唐突に終わりを迎え、ミステリーとして考えるのならば論外だが、思春期の漠然とした不安をSFという形を借りて描いた作品としてこれはそれ以外ないという〆だったと思う。

No.101 6点 ユリゴコロ- 沼田まほかる 2012/04/10 20:47
平凡な家庭で育った男が突如、見舞われる不幸の連鎖。
そんな中、実家で偶然見つけた異様な手記。
前半、その手記を中心に物語は展開されるが、狂気と屈折した情愛の入り混じった内容は衝撃的でサスペンスにも満ち、強く引き付けれるものがあった。
ただ、現実に戻ってからの終盤の展開は予定調和であり、ミステリーとしての仕掛けも見え透いていてパワーダウンを感じたのは残念。

No.100 4点 死者を笞打て- 鮎川哲也 2012/04/10 01:30
鮎川作品の中に実在の作家をモデルにした人たちが登場するパロディ作品だが、
作家たちが無駄にカッコイイのでリアリティに欠け、パロディとして面白味のない作品となってしまった。
事件自体も平凡で他の代表作のような切れは皆無。

No.99 8点 危険な童話- 土屋隆夫 2012/04/10 01:23
社会派ミステリのような刑事の地道な捜査とそれとコントラストを成すように挿入される幻想的な童話。
これがやがてひとつに繋がり、謎が解ける瞬間がこの作品の白眉。
犯人の仕掛けたトリックについてはさほど見るべき点はないが、本格ミステリとしての構成の美しさにはため息がでる。

No.98 7点 獄門島- 横溝正史 2012/04/10 01:11
本格ミステリとしての様々な仕掛けが魅力的である一方で指摘のある通り動機や見立て殺人の必然性には甘さを感じ、東西ミステリーベスト100の第1位は過大評価の感が強い。
とは言え、決して駄作というわけではなく、戦後復興期のミステリの中でも上位に位置する傑作であることは確かである。

No.97 6点 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン 2012/04/09 13:07
扉の内側からテープを貼り付けられた目張りの密室という設定が独創的で伏線の使い方も巧み。
ただ、トリック自体は単純な機械的トリックなので真相が分かった時の驚きには欠ける。
ストーリー自体も奇術師カップルの恋愛を軸に語られ、カーらしいケレンミに乏しく物足りない。

No.96 6点 赤後家の殺人- カーター・ディクスン 2012/04/09 12:56
得意の怪奇性と不可能犯罪の要素を存分に盛り込み、知名度もそれなりに高い作品だが、やはり毒殺による密室というのが不可能性を薄め、トリックについても見当がつきやすいのが難点。

No.95 6点 人喰い- 笹沢左保 2012/04/08 13:02
笹沢左保の初期の作品は本格要素満載でそれなりに楽しめはするのだが、指摘のある通り、トリックに新味も使い方に工夫もないのが難点。
本作も派手なトリックはいくつかあるが、いずれも前例があるものばかりで、使い方に特にひねりがあるわけでもないので傑作と呼ぶには今ひとつ物足りない出来。

No.94 6点 魔女の隠れ家- ジョン・ディクスン・カー 2012/04/07 13:10
1930年のデビューからの数年、雰囲気優先でミステリとしての面白味に欠けていた初期と1934年の『プレーグ・コートの殺人』以降、傑作を連発した全盛期とを繋ぐ過渡的作品。
トリック自体は地味だが、おどろおどろしい雰囲気にミステリ的な仕掛けが有効に作用しており、バランスの良い作品に仕上がっている。

No.93 9点 ユダの窓- カーター・ディクスン 2012/04/06 11:51
ワンアイデアの密室トリックを『ユダの窓』という魅惑的なワードで引っ張っていくプロットがまず見事。
この効力によって本作は密室殺人を扱ったミステリの最高峰という評価を得ることになる。
そしてなんと言っても法廷ミステリーとしての完成度の高さ。
状況証拠がすべてクロの男の無罪をいかに勝ちとるか?
その論戦の面白さは特筆もの。
得意のオカルトを封印したカーの意外な才能を見ることができる名作。

No.92 5点 墓場貸します- カーター・ディクスン 2012/04/06 11:34
プールからの人間消失を扱った長編ミステリー。
人が消えるトリックはよく考えられてはいるが、単純なトリックを組み合わせた奇術的な手法であり、ミステリーとしての面白味には欠ける。
物語としても特筆できる要素はなく、凡作の域を出ていない。

No.91 6点 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー 2012/04/06 10:08
カーのデビュー作。
往年の作品と比べるとミステリとしては色々と物足りない作品だが、強烈な怪奇性をはじめとしてストリーテラーとしての才は垣間見ることができる。
荒削りではあるが捨てがたい味のある佳品。

No.90 2点 テニスコートの謎- ジョン・ディクスン・カー 2012/04/05 14:41
カー作品における足跡のない殺人ものといえば、『白い僧院の殺人』と『貴婦人として死す』、それに本作が挙げられるが、この作品は他のふたつと比べて出来は大きく劣る。
肝心のメイントリックが全く面白味がない上に推理小説として他に見るべき点もない。
カーの長編の中でもかなりつまらない部類の作品である。

No.89 8点 貴婦人として死す- カーター・ディクスン 2012/04/05 14:34
『白い僧院の殺人』と並ぶカー作品における足跡のない殺人の双璧。
メイントリックの素晴らしさでは白い僧院だが、それに対して本作はメイントリック以外にも小技が隅々にまで効いており、ミステリー小説としての総合力ではこちらに軍配を上げたい。

No.88 4点 青銅ランプの呪- カーター・ディクスン 2012/04/05 12:38
冒頭の謎の提示はなかなか魅力的。
やはり、人ひとりが忽然と姿を消すというシチュエーションにはわくわくするものがある。
しかし、状況の説明を読んだ時からまさかあのネタじゃないよななどと考えていたらまんまそのネタだったのにはガッカリ。
トリックがあまりに古典的な上に説得力がなさすぎるのだ。
物語として存外楽しめたので最低点にはしないけれどトリックだけの評価ならば1点が妥当な作品。

No.87 7点 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン 2012/04/05 12:27
足跡のない殺人と言えばこれというくらい有名な雪密室の決定版。
まさにシンプルイズベストという言葉がふさわしい見事なトリックです。
ただ、物語自体は他のカーの作品と比べると平坦で面白味に欠け、個人的にはいまひとつのめり込むことができなかった。

No.86 6点 招かれざる客- 笹沢左保 2012/04/04 12:37
笹沢左保の初長編であり、第5回江戸川乱歩賞候補次席作品。
トリックやミステリー的ガジェットをふんだんに盛り込むという著者の特徴がすでに現れており、本格好きにとってはたまらない限りだが、トリック自体はどこかで見たようなものが多く、使い方自体もいまひとつ浅い感じがするのが残念な所。

No.85 3点 空白の起点- 笹沢左保 2012/04/04 12:26
目撃者が犯人という本格ファンの気をひくに十分な趣向に対し、トリック自体はベタすぎてひねりに欠けるのがなんとも残念。

No.84 7点 三毛猫ホームズの推理- 赤川次郎 2012/04/04 12:17
赤川次郎といえば読みやすさだけが取り柄の薄味の作風というイメージですが、最初期のこの作品ではその読みやすさに加え、ミステリー的なアイディアがふんだんに盛り込まれ、良質の娯楽作品に仕上がっています。特に、リアリティには欠けるものの、意表を突いた密室トリックには驚かされました。

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文生さん
ひとこと
本格脳なので本格度が高いほど評価も高くなります。ただし、本格好きと言ってもフェアプレーなどはどうでもよい派なのでロジックだけの作品は評価が低めです。トリックやプロットを重視した採点となっています。
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー、土屋隆夫、竹本健治、山田正紀
採点傾向
平均点: 5.87点   採点数: 403件
採点の多い作家(TOP10)
ジョン・ディクスン・カー(18)
アガサ・クリスティー(14)
カーター・ディクスン(11)
横溝正史(11)
森村誠一(9)
竹本健治(9)
東野圭吾(9)
米澤穂信(8)
土屋隆夫(8)
エラリイ・クイーン(8)