皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
文生さん |
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平均点: 5.85点 | 書評数: 457件 |
No.157 | 6点 | 葉桜の季節に君を想うということ- 歌野晶午 | 2017/11/09 15:09 |
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ミステリーとしての仕掛けそのものは素晴らしいと思うのですが、作中の描写になんとなく違和感を感じていたので最後のどんでん返しにあまり驚くことができませんでした。それに、世界観が反転するようなタイプのミステリーは大好物であるものの、この作品に関しては描かれている世界にそのものに魅力を感じなかったのでそう意味でも評価はそこそこどまりになってしまいます。同じ作者の作品でも本作の前後に書かれた「世界の終わり、あるいは始まり」や「女王様と私」の両作は作品舞台が非常に魅力的に感じただけに作者の代表作が自分の感性と合わなかった点が残念です。 |
No.156 | 2点 | 完全殺人事件- クリストファー・ブッシュ | 2017/11/09 14:50 |
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ミステリーにハマり始めた頃に読んだ作品で、大風呂敷を広げた割にトリックがしょぼくてひどくがっかりしたのを覚えている。ストーリー的にも盛り上がるのは冒頭だけで、あとは終始グダグダの残念な作品。 |
No.155 | 5点 | ふたたび赤い悪夢- 法月綸太郎 | 2017/11/09 11:01 |
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エラリー・クイーンをリスペクトしている作者の名探偵の挫折から復活を描いた作品。「頼子のために」から本作の流れがちょうどクイーンの「10日間の不思議」から「九尾の猫」の流れに当たる。まあ、「頼子のために」自体は ニコラス・ブレイクの「野獣死すべし」のリスペクトだが。
本作は名探偵復活の物語としてはなかなか読ませるのだが、肝心の事件がミステリーとしてあまり魅力的ではないのでどうしても全体の印象としては薄いものになってしまう。 |
No.154 | 5点 | はなれわざ- クリスチアナ・ブランド | 2017/11/08 16:58 |
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1985年版東西ミステリベスト100の38位に選ばれ、一時はクリスチアナ・ブランドの最高傑作と目された作品である。しかし、読んでみると物語の起伏が乏しく、中盤が相当だるい。感情移入がうまくできないために、どうしても作者の狙いがピンとこず、せっかくの仕掛けも「なんだ、そんなことか」と感じてしまうのだ。ちなみに、1955年発表の本作は1941年発表のクリスティ作「白昼の悪魔」と共通点が多々見受けられる。もちろん、ストーリーやトリックは別物なのだがミステリーとしての構造がそっくりなのだ。
具体的には、バカンスで地中海に訪れた探偵、そこで起きる殺人事件、関係者全員にアリバイがあり、それをひとつずつ崩しながらやがて真相に到達するといった具合だ。 後発だけあって本作の方がより大胆な仕掛けを施しているのだが、テンポよく話が進む白昼の悪魔の方がミステリーとしての切れ味を感じることができた。そして、明確な比較対象があるため、本作の評価はどうしても低いものになってしまう。 |
No.153 | 7点 | 終りなき夜に生れつく- アガサ・クリスティー | 2017/11/08 09:54 |
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1967年の発表のクリスティ晩年の作品であり、あまり期待していなかったのですが非常に面白かったです。ミステリー要素はあまりないものの、恋愛サスペンス風なストーリーにぐいぐいい引き込まれていきました。タイトルも秀逸で皮肉なラストも印象深いものがあります。ただ、メイントリックが自著の使い回しだったのが残念。 |
No.152 | 3点 | 病院坂の首縊りの家- 横溝正史 | 2017/11/08 09:23 |
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上下巻の大作であり、20年間に及ぶ難事件を扱っているがこれがあまり面白くない。とにかく登場人物がやたら多くていたずらに混乱を招いている上に、事件もスケールが大きそうだった割に特に面白みを感じることもなく終焉をむかえていくので肩透かし感が半端ないのだ。何より自著の過去作で用いたトリックをそのまま使い回しているのがいただけない。これが金田一耕助最後の事件だというのは残念だが、思えば名探偵の最後の事件というのはどれもこんなもんだよなあという気もする。 |
No.151 | 2点 | 狐の密室- 高木彬光 | 2017/11/08 09:08 |
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神津恭介と大前田英策の2大探偵が夢の競演を果たして密室殺人に挑むという割に事件そのものがかなりこじんまりとしている。密室殺人も初歩の初歩といったトリックが使われており、これならわざわざ神津恭介が登場するまでもなかったよなあといった感じ。著者晩年の作品であり、創作力の衰えを企画でカバーしようという意図が見てとれる凡作である。 |
No.150 | 6点 | ABC殺人事件- アガサ・クリスティー | 2017/11/07 17:15 |
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新しいジャンルを確立したという意味で「アクロイド殺し」や「そして誰もいなくなった」と並ぶ重要作品であり、全体のプロットもよく練られている。しかし、現代の読者にとっては初歩的すぎて作者の狙いはバレバレだろう。 |
No.149 | 5点 | シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー | 2017/11/07 17:07 |
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江戸川乱歩の「帽子収集狂事件」推しと並んで不可解な坂口安吾絶賛の本作。トリックの新境地と言っているがどこにそんな要素があるのかと首をかしげてしまう。クリスティの作品としてはせいぜい中の下ぐらいの作品ではないだろうか。 |
No.148 | 7点 | 準急ながら- 鮎川哲也 | 2017/11/07 08:05 |
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アリバイ崩しを主軸とした作品ですが、トリック自体は作者の代表作と比べると小粒です。それでもアリバイを主張する容疑者に対してあーでもない、こうでもないと試行錯誤するさまは読み応え十分で本格ミステリとしての面白さを十分に堪能することができました。作品全体としても破綻なくまとまっており、手堅い佳作といった感じです。 |
No.147 | 7点 | 蝶々殺人事件- 横溝正史 | 2017/11/06 14:05 |
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読者への挑戦状を挿入するなど金田一シリーズよりもパズラーに特化した作品です。時刻表を駆使したトリックが用いられているという点でも横溝作品としては貴重。第2の殺人のトリックもユニークで本格好きにはおすすの作品です。 |
No.146 | 5点 | 悪魔が来りて笛を吹く- 横溝正史 | 2017/11/06 13:40 |
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岡山を始めとする地方ものに名作が多い金田一シリーズにおいて東京ものの最高傑作という位置付けの作品。確かに、本作は没落貴族の悲哀をメインに12人を毒殺したことで有名な帝銀事件を絡ませ、作者のストーリーテリングぶりが存分に発揮された力作に仕上がっている。しかし、物語の充実ぶりに対してミステリーの骨格は案外貧弱でどうしても物足りなさが残ってしまう。密室トリックなども全く面白みに欠け、無理に組み込む必要はなかったのではないだろうか。 |
No.145 | 6点 | オイディプス症候群- 笠井潔 | 2017/11/05 22:17 |
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哲学者の密室でハイデガーの実存主義をテーマにしたのに対して本作ではフーコーの構造主義が主題となっている。ただ、哲学者の密室が事件の謎と実存主義の思想が密接に結びついていたのに対して、本作は両者の関係がやや遊離している点が完成度を低くしていると言えるだろう。それでも、個人的には推理と哲学論議を強引に結びつけていない分、本作の方が読みやすく、肩の力を抜いて楽しめることができた。本格ミステリとしてもまずまずの出来で、哲学論議も実存主義よりは構造主義の方が興味深いものがあった。まあ、せっかくの孤島ものなのにサスペンス感があまりなかったのはどうかと思うけれども |
No.144 | 5点 | 哲学者の密室- 笠井潔 | 2017/11/05 21:58 |
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密室殺人をクローズアップした大作だが、本作の主題は密室トリックにあるわけではない。密室殺人をガジェットに用い、そこにハイデガーの実存哲学を絡ませて戦争における大量死の意味を読み解こうというのが狙いだ。しかし、その哲学論議には全く乗れず、竜の密室やジークフリートの密室などの解釈はどうでもよいことをグダグダ言っているようにしか聞こえなかった。期待していた密室トリックも大作を支えるには小粒で今ひとつ。大変な労作であることは確かで、作中に挿入されたユダヤ人収容所のエピソードなどはかなり読みごたえはあるものの、全体的に自分が望んだ作品ではなかた。 |
No.143 | 7点 | 覆面作家の夢の家- 北村薫 | 2017/11/05 19:39 |
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肩の力を抜いてサクサクと読める軽ミステリーの佳作。完結編である第3弾はラストシーンの美しさに1点プラス。余韻の残る良い最終回でした。 |
No.142 | 6点 | 覆面作家の愛の歌- 北村薫 | 2017/11/05 19:34 |
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2重人格のヒロインと主人公との掛け合いが楽しいシリーズ第2弾。
ミステリーとしての出来はそこそこですが、気軽に楽しめるものを探している人にはおすすめのシリーズです。 |
No.141 | 8点 | 針の誘い- 土屋隆夫 | 2017/11/04 20:14 |
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赤ん坊誘拐事件と身代金受け渡し時に起きた殺人事件の謎を追う本格ミステリ。
独創的なトリックなどはありませんが、細かい仕掛けの積み重ねが実に効果的に作用しており、作者の円熟味を感じさせる傑作です。独特の抒情性を感じさせる「危険な童話」もよいが、謎解きの完成度の点から言えば本作が土屋隆生の最高傑作だと言えるでしょう。 |
No.140 | 6点 | 覆面作家は二人いる- 北村薫 | 2017/11/04 13:18 |
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ミステリーとしては小品で可もなく不可もないという感じですが、編集者の主人公とぶっとんだ設定のヒロインの掛け合いが楽しい作品です。円紫さんシリーズの生真面目コンビのふたりが苦手だったのでそのギャップもあり、こちらのシリーズは思いのほか楽しく読むことができました。 |
No.139 | 4点 | 点と線- 松本清張 | 2017/11/04 13:10 |
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国内ミステリーのメインストリームが戦後の探偵小説から高度成長期の社会派推理小説へと舵を切るきっかけとなった記念碑的作品。
ただし、本作の軸となっているのは鮎川哲也ばりのアリバイ崩しであり、本格ミステリの骨格を色濃く残している。そして、本格ミステリとしては残念ながら高い評価は与えられない。 有名な4分間の空白はプロットに大きな歪みを残す結果となっているし、肝心のアリバイ崩しも1957年の作品とはいえ、アリバイ捜査をしているのにあれの存在になかなか気づかないとはいかがなものか。初期作品だけあって社会派ドラマにも見るべき点は少なく、歴史的価値を除けば凡作域を出ていないと言えるだろう。 |
No.138 | 6点 | 成吉思汗の秘密- 高木彬光 | 2017/11/03 17:20 |
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中学生の時に読んだ際は、「すごい!完璧な推理じゃないか」と感銘を受けたものだが、歴史の知識を蓄積した後で読むとかなりこじつけが目立つ作品だった。しかし、義経もジンギスカンも有名であるので両者を巡る推理はフィクションとしてはそれなりに楽しく読めることも確かである。 |